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第三章 【誓】
攻めても守っても
しおりを挟む表カットマンVSカット攻撃型。
カットマン対決となった第四戦。甘芽中が一気に優勝を決めるか、はたまた念珠崎中が待ったをかけるのか──
ブッケンがカットで返せば、それを水沢夏もカットで返してくる展開。
水沢夏のカットも上手いもので、ブッケンを前に出させない様、常に台の奥を狙いボールを送りつけている。
先にミスをした方が負ける、我慢比べにも似た打ち合いに、ブッケンの手にも汗が滲む。
──行かなきゃ……相手は格上、自分から流れを掴みに行かなきゃ──
先に動いたのはブッケン。
このままでは拉致があかないと、深く入ってきたボールに対し、強引にドライブを打ち込んだ。
「ブッケンのドライブ!」
「入れっ!」
しかしブッケンのドライブは、相手の台を通り越しそのまま床へと落ちて行った。
ブッケンの攻めの主体はチキータ、フリックと前に出てこそ威力を発揮するものが多く、ドライブはそれ程得意とはしておらず、とりわけこの距離からの攻めを苦手としている。
【0-1】
その後サーブが打ち込まれてから、再び繰り広げられるカットの応酬──
どちらも粘り強くカットを続けるも、痺れを切らしたブッケンが再び仕掛ける。
今度は強引に前に出て、ライジング気味にチキータを狙った。
──よしっ──
得意のチキータが低弾道で相手のコートで跳ね上がる。
【1-2】
その後も同じような試合展開が続く。
表カットの水沢夏は、時折見せるそのラバーの特性を活かした速いスマッシュで得点を狙い、ブッケンは前に落ちたボールに対し果敢に攻めて出た。
【6-5】
ブッケンのバックハンドスマッシュ──
大山先輩に教えてもらった得意のショット。
しかしまるで見透かされたように動き出した水沢夏に、カウンターで返され失点。
【6ー6】
念珠崎ベンチも気が気ではない。ここを落とせば負けが決まる中戦うブッケン。誰もがその努力を目の当たりにしている為、見守る方も一球ごとに手に力がこもる。
【8-7】
──いけるっ! このセット取れる! 私の努力は無駄じゃなかった。あの水沢夏さんと互角にやれてる──
第一セット終盤、ここを勝負と見たブッケンのラケットのグリップが天を向く──
努力を積み重ね手に入れた、逆回転チキータ。
【10-8】
それは鋭く美しく曲がり、しぶとく粘る水沢夏を突き放す一打となった。
更には最後も得意のチキータを沈めたブッケンが、なんとかこのセットをものにすることに成功。念珠崎ベンチも思わずガッツポーズが飛び出した。
【11ー8】
セットカウント【1-0】
そんな親友の活躍に、思わず乃百合の顔もほころび、喜びを隠さず、隣の桜に話しかけた。
「やりましたよ! 桜先輩! やっぱりブッケンって凄いですね!」
そんな乃百合に対し桜は冷静である。まだまだ勝負を楽観視できる状態ではないのは明らかだ。
「確かにこのセットを奪い切ったのは大きいね。でも、まだまだここからだよ。全てをさらけ出したブッケンに対し、水沢夏にはまだ隠している武器があるからね」
「粒高ラバー……ですか」
「そう。全中のまっひー戦と同じ、このセット、水沢夏は殆ど裏面を使っていない」
「でもでも、ブッケンだってカットマンを身につけていますし、緩急に対応するのもなんとかなるんじゃ……」
「それはあるかもね。それともう一つ、水沢夏は観察眼がいいんだよ。後半、必ず何か仕掛けてくるはずだよ。私達も、もしブッケンが戻ってきた時ちゃんとアドバイスが出来るように、しっかりと試合を観ておこうね」
「はい! 頑張りますっ!」
──第二セット──
水沢夏のサーブから始まるこのセット。水沢夏はコースを狙った速いサーブを選択した。
勢いに押されるように下がりながらカットで返したブッケンに対し、前に出て更にスマッシュを浴びせてくる水沢夏──
──セットが変わって積極的になった!?──
いきなりのスタイルチェンジに戸惑うブッケン。慌ててラケットで捉えに行くも、完全にタイミングを外されてしまった。
──裏面!? ボールが全然来てないっ……釣られた──
【0-1】
続くラリーでも水沢夏が駆け引きの上手さを見せつける。
わざと短く出しブッケンにチキータを打たせると、すかさずそれを粒高ラバーでブロックして見せた。
回転の影響を受けづらい粒高ラバーであるならば、コースさえ読めればブッケンのチキータをブロックする事は容易である。
──読まれてた……のかな。今度はもっと慎重にいかなきゃ──
【0-2】
傾きかけた流れを引き寄せに行く、ブッケンのバックハンドスマッシュ。
それを受けた水沢夏は、冷静にコースを突きガラ空きのコートへと流し込んだ。
【0-3】
──さっきまでと全然違う……まるで別人と戦っているような……そんな感じ。私も切り替えていかなきゃ──
第二セットに入ってからは、粒高ラバーを駆使した水沢夏に翻弄されっぱなしのブッケン。
得意のチキータを放つも、水沢夏のブロックを崩す事が出来ない。
【3-7】
そして再び水沢夏はカットマンスタイルへと変化していく──
──────ッ!!
──また!? やっとスマッシュの打ち合いに慣れてきた所だったのに……──
再び繰り広げられるカットの応酬。
リードを許した状態でこの均衡状態は、ブッケンにとって焦りを引き起こすのには効果的すぎる作戦──
──行かなきゃ……──
ブッケンの放ったスマッシュが相手のミドルに飛んでいく。と同時に、水沢夏はうまく体制を入れ替えてカウンターで捌いた。
【4-9】
──やられた……──
もどかしい試合展開。
守ってるだけでは取れない──
かといって攻めれば取られる──
痺れを切らしたブッケンのスマッシュをキッカケに、試合は早いラリーへと発展してく。
そしてそれを制したのは水沢夏の粒高ラバー。
球速差に完全にタイミングを外されたブッケンの力無い打球を、目の覚めるようなスマッシュで水沢夏がねじ込み、このセットを終わられた。
【5-11】
セットカウント【1-1】
共にセットを奪い合い、イーブンに持ち込まれた第三セット──
体を深く沈め、自陣深くに構える水沢夏。戦型はカットマンといえ、ブッケンの目にはエサを巻き、それをしたたかに待ち受ける獣の様に見えてた。
──攻めなきゃ……でも攻めたらやられる……どうしよう……──
攻め手が見つからぬまま、カットの打ち合いに付き合うブッケン。時折前に出ようと試みるも、得点を奪う事に成功する確率は低い。
チャンスに前に出ると言うよりは、前に出させられていると言う感覚に近いだろう。
本当にチャンスなのか、誘い玉なのか、その判断に迷い積極性が失われていく。
【2-5】
試合の主導権は完全に水沢夏に握られていた。
はたから見ればそれほど二人の間に力の差は無く、ちょっとしたきっかけさえあれば逆転してもおかしくはない様にも見えてる。
しかし水沢夏の試合運びがそれを許さない。
精神面で優位に立ち、試合の流れを掴み、点を取れないという錯覚を覚えさせていた。
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