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まだ何も成し遂げていない
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A病院に行くのにはタクシーを利用する。タクシーを捕まえようと大通りに向かうのだが、その道中今まで感じた事がない程に、道行く人々の視線が気になった。
私は今指名手配されているのだろうか?
あの人は私服警察官だろうか?
私は今、不審な動きをしていないだろうか──、
不安に苛まれながらも大通りに出て、タクシーを捕まえるべく手を上げるとすぐに1台のタクシーが目の前に止まった。
私は急いで乗り込むと、運転手にA病院までお願いしますと伝える。
愛する人をこの手で──、
そんな考え私には理解出来なかった。でも、今なら分かる。なんてことは無い。
同じ状況になれば、皆ここに思考が辿り着く筈なのだ。
A病院には30分程で着き、私は運転手さんにお礼を言ってタクシーを降りた。
病院の自動ドアを潜り、真っ直ぐと受付に向かう。そこで"小峠伊奈絵"さんの病室はと尋ねると、すんなりと場所を教えてくれた。病院の警備なんてこんなものだ。
場所は入院病棟3階。
バクバク動く胸を押さえ込み、伊奈絵が居る部屋を目指した。
目的地に着くと、部屋の扉が開かれており数人の大人達が入口付近で話をしていた。
私は少し離れた所から中の様子を伺った。
瑠二君は居るのか? 天敵オダマキは?
なかなか良く見えない。更に角度を変え目を凝らす──、
居たッ!
瑠二君とオダマキが、仲良く二人並んで心配そうな顔を浮かべているではないか。その瞬間、私の決意は固まった。
このまま私の監視が無くなればどうなる事か──、
バッグに手を入れ包丁を確認する。
ある。研ぎ澄まされた刃が。
柄を握りしめ、飛び出すタイミングを見計らう。
どうせ捕まるのだ。日本の警察はそこまで馬鹿ではない。このまま恋が叶わないのであれば、いっそ、いっそ──、
いつ飛び出そうかと考えていたその時、突然後ろから声をかけられた。
「伊奈絵のお友達かな?」
私は思わず声を上げ、傍目から見ても分かる程高く飛び上がってしまった。
「ごめんごめん、驚かせちゃったかい?」
「い、いえ。すみません」
必死にその場を取り繕うも、そのやり取りが病室の中に居た人達の耳に入ってしまったようだ。
「どうかしたのですか?」
そう言って部屋の入口まで出てきたのは瑠二君だった。
私はその姿に見とれてしまった。まさに私のタイプそのもの。この宝石の様な存在である彼が、他の女に……
「な、菜抽子さん、何でここに!」
包丁を握る手に、より一層の力がこもった。そして目に飛び込んできたオダマキの姿。
まずはお前からだッ!
「オダマキィィィィイイッ!!」
部屋に飛び込みバッグを投げ捨てる! そしてギラリと光る得物を振りかざし、オダマキ目掛けて一直線に走った!!
突然飛びかかってきた私に対し、女らしい仕草で悲鳴をあげる小田真紀。
「きやぁぁぁぁっ」
何がきゃぁだ! このメス豚が! 殺してやる!! お前のせいで私は! 私はなぁァァァァァッッ!!
──ドンッ
包丁は小田真紀には突き刺さらず、私の体は近くに居た男の人に跳ね飛ばされた。
ガシャンとベッド横のテーブルに体をぶつけるも、包丁だけは手放さなかった。
すかさず身を翻し、ベッドに眠る伊奈絵の喉元に包丁を突き立てた。
負ける、ッかァァァッ!!!
まだ何も成しえていない!
今まで何の為に頑張ってきたのか!
ただの犯罪者で終わってどうする!
「動くなぁァァァ!! この女の喉、掻っ切るぞォォッ!!」
その場に居合わせた全員の動きが止まり、世界から音が奪われたかのような静寂に包まれる。
「小田真紀と小峠瑠二。こっちへ来なさい」
静まり返った病室で、私の言葉がこの場を支配した。
私は今指名手配されているのだろうか?
あの人は私服警察官だろうか?
私は今、不審な動きをしていないだろうか──、
不安に苛まれながらも大通りに出て、タクシーを捕まえるべく手を上げるとすぐに1台のタクシーが目の前に止まった。
私は急いで乗り込むと、運転手にA病院までお願いしますと伝える。
愛する人をこの手で──、
そんな考え私には理解出来なかった。でも、今なら分かる。なんてことは無い。
同じ状況になれば、皆ここに思考が辿り着く筈なのだ。
A病院には30分程で着き、私は運転手さんにお礼を言ってタクシーを降りた。
病院の自動ドアを潜り、真っ直ぐと受付に向かう。そこで"小峠伊奈絵"さんの病室はと尋ねると、すんなりと場所を教えてくれた。病院の警備なんてこんなものだ。
場所は入院病棟3階。
バクバク動く胸を押さえ込み、伊奈絵が居る部屋を目指した。
目的地に着くと、部屋の扉が開かれており数人の大人達が入口付近で話をしていた。
私は少し離れた所から中の様子を伺った。
瑠二君は居るのか? 天敵オダマキは?
なかなか良く見えない。更に角度を変え目を凝らす──、
居たッ!
瑠二君とオダマキが、仲良く二人並んで心配そうな顔を浮かべているではないか。その瞬間、私の決意は固まった。
このまま私の監視が無くなればどうなる事か──、
バッグに手を入れ包丁を確認する。
ある。研ぎ澄まされた刃が。
柄を握りしめ、飛び出すタイミングを見計らう。
どうせ捕まるのだ。日本の警察はそこまで馬鹿ではない。このまま恋が叶わないのであれば、いっそ、いっそ──、
いつ飛び出そうかと考えていたその時、突然後ろから声をかけられた。
「伊奈絵のお友達かな?」
私は思わず声を上げ、傍目から見ても分かる程高く飛び上がってしまった。
「ごめんごめん、驚かせちゃったかい?」
「い、いえ。すみません」
必死にその場を取り繕うも、そのやり取りが病室の中に居た人達の耳に入ってしまったようだ。
「どうかしたのですか?」
そう言って部屋の入口まで出てきたのは瑠二君だった。
私はその姿に見とれてしまった。まさに私のタイプそのもの。この宝石の様な存在である彼が、他の女に……
「な、菜抽子さん、何でここに!」
包丁を握る手に、より一層の力がこもった。そして目に飛び込んできたオダマキの姿。
まずはお前からだッ!
「オダマキィィィィイイッ!!」
部屋に飛び込みバッグを投げ捨てる! そしてギラリと光る得物を振りかざし、オダマキ目掛けて一直線に走った!!
突然飛びかかってきた私に対し、女らしい仕草で悲鳴をあげる小田真紀。
「きやぁぁぁぁっ」
何がきゃぁだ! このメス豚が! 殺してやる!! お前のせいで私は! 私はなぁァァァァァッッ!!
──ドンッ
包丁は小田真紀には突き刺さらず、私の体は近くに居た男の人に跳ね飛ばされた。
ガシャンとベッド横のテーブルに体をぶつけるも、包丁だけは手放さなかった。
すかさず身を翻し、ベッドに眠る伊奈絵の喉元に包丁を突き立てた。
負ける、ッかァァァッ!!!
まだ何も成しえていない!
今まで何の為に頑張ってきたのか!
ただの犯罪者で終わってどうする!
「動くなぁァァァ!! この女の喉、掻っ切るぞォォッ!!」
その場に居合わせた全員の動きが止まり、世界から音が奪われたかのような静寂に包まれる。
「小田真紀と小峠瑠二。こっちへ来なさい」
静まり返った病室で、私の言葉がこの場を支配した。
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