君と1日夢の旅

宵月

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君と一緒にまた来たよ

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いい香りのする店内。


美味しそうなパンが綺麗に並んでいる。


一つ一つが、形も色も綺麗で美味しそうだ。


「みて!流生!ハート型のパンがある!」


「それはプレッツェルだね。」


「この大きいのは?」


「…食パン…かな。絶対違う気がするけど…」


「じゃあこのなんかたくさん入ってるの!」


「…レーズンパンじゃないよね…シュトーレン…聞いた事ないや。」


「どれも美味しそうだね!」


「すごく美味しいよ。きっと。」


香りと、見た目と、それだけでも十分に美味しさを感じる。


どれを頼もうかと迷う。


「どれがいいと思う?」


「ハート型のやつがいいと思うよ!すごく美味しそう!」


「はは…ハート型ってだけで選んでいるだろう。」


「可愛いからいいの!」


理由はそれだけか、と思うけど、五つ入っている細いプレッツェルの袋を手にとった。


レジに行くとまず持ち帰りか聞かれ、ここで食べていくというと飲み物は必要かと聞かれる。


飲み物欲しいけど…何にするかなんて決めていない。


「…じゃあホットコーヒーで。」


そういうとつくねは


ただでさえ輝いている瞳を輝かせた。


レジから離れ、つくねを抱き上げるとその瞳をこちらへと向けて手…というか腕をパタパタさせている。


「流生って、コーヒィのめるの?!」


「え、うん…好きで飲んでたわけじゃないけど…」


「苦いって聞くから美味しいものじゃないのかと思ってた…」


「うーん…まあ、僕はそこまで気にしないからだけど、炭みたいな味だよ。」


「確かに…だって石油みたいじゃないか。」


「…飲む気失せるからやめよう、この話。」


「でも流生は大人なんだね!コーヒィが飲めるなんて!」


「眠気覚ましのために飲んでただけなんだけどな…」


カフェインが眠気覚ましにいいのは周知の事実だし。


飲みすぎるからよくないわけだけど。


「眠りにくくなるよ。」


「…それは飲み過ぎじゃないか。」


気づかれたか、と思いながらイートインスペースの階段を上る。


上がった先には誰もいなかったが。


なぜかコーヒーだけが机に置かれていた。


湯気のたった、温かそうなコーヒー。


キッチンのところにも誰かがいるわけではなかった。


おかしいな…と思うけど一瞬のうちにどうでもいいか、と思い直し、その席に座った。


「このお店いいよね!なんか隠れ家みたい!」


「確かに…前に来たときも思ったな。」


隠れ家みたいなお店で、紅茶を飲むおばあちゃんと、ケーキのようなものを食べる母。


母もおばあちゃんもそのケーキのようなものが大好きだった。


パイの生地よりはさっくりとしたクッキーのような生地にくるみが包まれていて、とても美味しかった事を覚えていた。


「ほらー早く食べて次行こ次いこ?」


飛び跳ねるつくねを見てはっと我に返り、すぐにプレッツェルの袋を開けた。
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