もし明日、死ねるなら

宵月

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最後にも妥協を

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「あと1時間だよ。ちょうど。」

「…あぁ。」

「どこ行く?」

「ここにいる。」

「本当にこれでいいのかい?これから僕は君を殺さなきゃならないのに。」

「いい。」

天井にある丸い電球が目を焼く。

そこに影を落とすのは少年だけだ。

「死にたくないって縋って欲しいと言っただろう?」

「生憎だが期待には答えられそうにないと言った。」

少年は目尻を釣り上げ怒った素振りをしたまま俺を見る。

唇を尖らせ可愛いアピールだろうか。

馬鹿らしい。

「なら、死ぬまでの1時間僕に付き合ってもらおうかな?」

その表情のままそう、言った。

「…急になんで。」

「あまりに死にたそうにしてるなら僕が殺そうってだけだよ。どうだい?最後のツアーにはちょうどいいだろう?」

さっきの拗ねた表情から一変して彼の唇は楽しそうに上がる。

でも、別に。

それでもいいかと思った。

「…付き合う。どこ行く。」

「川沿い。この辺って川あるよね?」

「…あるけど。」

大きく浅い下流の川だが。

むしろビル群の多いこの街に浅い川があるだけで凄いと思うが。

いつ氾濫してもおかしくないような高く適度にいい位置に、川はあった。

「そこ行こうよ。夕日を見るにはいいだろう?」

少年がなにをしたいのか、俺にはどうしても分からない。

分かりたくもない。

こんな自由なやつに振り回されたくはない。

最後じゃなければ。

着替えることもせず、ジーンズにTシャツのまま、スニーカーを履いて玄関を出ていく。

もう二度と戻ってこないかもしれないのにそれもいいやと思ってしまう。

思入れもないまま終わった部屋はカシャンと言う音と共に終わった。
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