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夕日と、ススキと
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「夕日、綺麗だね。」
川辺に座って話す言葉はそれかと呆れる。
正直バカだろうと思う。
ススキが邪魔して視線の先は穂ばかり。
それのどこが綺麗なのだと思うが少年は立っている。
視線の先が違うのだろう。
「…別に。」
邪魔する穂が金色に輝いて緑に沈んでいく。
そんな視界だ。
立ち上がるのも面倒で少し視線をあげるけれど黄金色の穂で埋め尽くされる。
あと、30分程だろうか。
まだ緑の残った黄色が、何となく教える。
日が沈めばきっとこの首とはおさらばだ。
そう、心の中で言葉にしても実感もわかなければそれでもいいやと諦めている自分もいた。
馬鹿はどっちだろうか。
現実逃避は、逃避行はもう終わりだ。
逃れることすら出来ない死を受け入れる他なければ抗うことすらしなかった。
その間必要とされることはなかった。
これが証明だ。
必要ない。
そう言われているのと同義だ。
「多少は生きる気になったかい?」
「…全然。」
「へぇ。」
少年の瞳はこちらをむくことは無い。
「なぁ、これならいっそ一瞬で殺してくれよ。」
「あぁ、もちろん。僕は縋る姿は見たくても苦しむ姿を見て喜ぶようなやばい人間ではなかったからね。」
その言葉もまるで、俺に向けられてるようには思えないほどだ。
「君は、どうしてそこまで死にたいんだい?」
少年の言葉は疑問系だが確信めいたものを感じる。
答えは、知っているのだ。
そして俺はそれに答えることはない。
「本当に、哀れというか、気の毒というか。」
少年は立ち上がり背伸びをする。
「なぁ、君は今、どんな気分だい?」
空を仰ぎながら少年は問う。
「…最悪だよ。」
「そうかい。それはよかった。」
「よくないだろ。」
「まぁ、そうだね、どうしたってその気分は変わらないだろう?」
少年の幼い手は宙を舞って手元には鎌が握られる。
あと数秒で、彼の腕がこれを振り下ろすのだろう。
体より大きな鎌は彼が本当に死神だったのだと言いつけるようだ。
「変わらないさ。どうしても。」
そう、どうしても。
何があっても。
「そうだろうね。だって、君は何もしていないじゃないか。」
「…は?」
何を言っているんだこいつは。
血が首筋を伝う。
「誰かの生きたいも知らないくせに。」
吐き捨てるような言葉が逆光で見えなくなる。
「求めていた救いも知らないくせに。離れゆく近さも知らないくせに。」
ただ、冷淡に、ひたすらに変わらない声のトーンで告げられる言葉が鎌より刺さる。
「君は僕とは正反対だ。なのに。」
「…それがどうした。」
でも俺の答えはNOだ。
「お前の辛いと俺の辛いは違う。」
反抗的な態度、だろう。
「死ぬのと死にたいも、違う。」
彼の唇が初めて三日月を描く。
瞳は鎌と同じように突き刺すように。
「縋れば助けが来るかもしれないのに。」
「それがなんになる。」
「間違ってても正しいと言う人がいるかもしれないのに。」
奥歯を噛み締めるような表情をした少年があまりにもお菓子を取られた少年のようで。
「そうだろうが縋らないよ。」
川は絶えず流れる。
それと同じようにきっとこの思いも変わることは無い。
「…そうかい。」
少年は笑った。
無邪気に。
ただただ純粋に。
「それじゃ、バイバイ。君ほど面白い人間はいなかったよ。」
それが聞こえた時俺の首筋に鋭い痛みが走った。
川辺に座って話す言葉はそれかと呆れる。
正直バカだろうと思う。
ススキが邪魔して視線の先は穂ばかり。
それのどこが綺麗なのだと思うが少年は立っている。
視線の先が違うのだろう。
「…別に。」
邪魔する穂が金色に輝いて緑に沈んでいく。
そんな視界だ。
立ち上がるのも面倒で少し視線をあげるけれど黄金色の穂で埋め尽くされる。
あと、30分程だろうか。
まだ緑の残った黄色が、何となく教える。
日が沈めばきっとこの首とはおさらばだ。
そう、心の中で言葉にしても実感もわかなければそれでもいいやと諦めている自分もいた。
馬鹿はどっちだろうか。
現実逃避は、逃避行はもう終わりだ。
逃れることすら出来ない死を受け入れる他なければ抗うことすらしなかった。
その間必要とされることはなかった。
これが証明だ。
必要ない。
そう言われているのと同義だ。
「多少は生きる気になったかい?」
「…全然。」
「へぇ。」
少年の瞳はこちらをむくことは無い。
「なぁ、これならいっそ一瞬で殺してくれよ。」
「あぁ、もちろん。僕は縋る姿は見たくても苦しむ姿を見て喜ぶようなやばい人間ではなかったからね。」
その言葉もまるで、俺に向けられてるようには思えないほどだ。
「君は、どうしてそこまで死にたいんだい?」
少年の言葉は疑問系だが確信めいたものを感じる。
答えは、知っているのだ。
そして俺はそれに答えることはない。
「本当に、哀れというか、気の毒というか。」
少年は立ち上がり背伸びをする。
「なぁ、君は今、どんな気分だい?」
空を仰ぎながら少年は問う。
「…最悪だよ。」
「そうかい。それはよかった。」
「よくないだろ。」
「まぁ、そうだね、どうしたってその気分は変わらないだろう?」
少年の幼い手は宙を舞って手元には鎌が握られる。
あと数秒で、彼の腕がこれを振り下ろすのだろう。
体より大きな鎌は彼が本当に死神だったのだと言いつけるようだ。
「変わらないさ。どうしても。」
そう、どうしても。
何があっても。
「そうだろうね。だって、君は何もしていないじゃないか。」
「…は?」
何を言っているんだこいつは。
血が首筋を伝う。
「誰かの生きたいも知らないくせに。」
吐き捨てるような言葉が逆光で見えなくなる。
「求めていた救いも知らないくせに。離れゆく近さも知らないくせに。」
ただ、冷淡に、ひたすらに変わらない声のトーンで告げられる言葉が鎌より刺さる。
「君は僕とは正反対だ。なのに。」
「…それがどうした。」
でも俺の答えはNOだ。
「お前の辛いと俺の辛いは違う。」
反抗的な態度、だろう。
「死ぬのと死にたいも、違う。」
彼の唇が初めて三日月を描く。
瞳は鎌と同じように突き刺すように。
「縋れば助けが来るかもしれないのに。」
「それがなんになる。」
「間違ってても正しいと言う人がいるかもしれないのに。」
奥歯を噛み締めるような表情をした少年があまりにもお菓子を取られた少年のようで。
「そうだろうが縋らないよ。」
川は絶えず流れる。
それと同じようにきっとこの思いも変わることは無い。
「…そうかい。」
少年は笑った。
無邪気に。
ただただ純粋に。
「それじゃ、バイバイ。君ほど面白い人間はいなかったよ。」
それが聞こえた時俺の首筋に鋭い痛みが走った。
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