9 / 31
9.結婚する気ある?(冬馬視点)
しおりを挟む
「冬馬さん、私、もう怪我が治っているので自分で歩けますよ。食事の続きをしましょう」
かなりいいムードだったはずなのに、未来は既に冷静になっていた。
食事の続きじゃなくて、ラブシーンの続きがしたかったが我慢する。
おそらく結婚まで我慢できるのは、一生分の女を抱いてきた俺くらいだと自分を慰めた。
席につくと、彼女はこれからの人生計画を語り出した。
「高卒認定試験を受けようと思ってます」
「受かったら、春から大学に通うのはどうかな?」
俺は親がなんと言おうと、彼女と結婚するつもりだ。俺の妻になるとパーティーやら奥様会に出席する必要がある。そこでは当然学歴マウントをとってくる人間がいるから、未来が嫌な思いをしない為にも大学は卒業しておいたほうが良いと思った。彼女は敏腕社長と才女の子で地頭は良いだろうから受験は問題ないだろう。
「大学ですか? お金が掛かるから考えていなかったです」
「学費なんて俺が出すよ。できれば女子大にして欲しいかな。インカレとかも入らないで欲しい」
自分がこんな気持ちの悪い束縛男だとは思わなかった。自分で言っていて彼女に引かれないか心配になる。
「流石に大学の費用を冬馬さんにお願いするのは申し訳ないです」
「なんで? 俺たち結婚するんだよ。行きたい学部とかないの?」
「もし、大学に通うなら、法学部に行きたいです」
迷いのない彼女の瞳から目が離せなくなる。
「法律に興味があるの?」
「私、検事になりたいと思ってます」
一瞬、頭の中に沢山「?マーク」が浮かんだ。彼女は俺と結婚すると言ってくれたはずなのに検事になりたいと言っている。
「なんで、検事になりたいのかな?」
検事の知り合いがいるが、2年に1回くらいの頻度で転勤している。彼女が俺との将来を実は想像してないのではないかと不安になった。
「人を騙したりする悪い人間に相応の罰を与えたいんです。子供っぽい理由ですよね」
彼女の言葉に心臓が止まりそうになる。
「人を騙すのは良くないよね⋯⋯」
俺が消え入りそうになりながら吐いた言葉に頷くと彼女は続けた。
「やはり、一刻も早く働きたいので大学進学ではなく予備試験を受けようかと思います。合格すれば司法試験の受験資格が得られるので」
俺は自分の妻が働いているのを想像できなかった。実際、俺の母も祖母も曽祖母も所謂専業主婦だ。俺は彼女との間に大きな価値観の違いを感じていた。
「やっぱり、ズルいですよね⋯⋯」
彼女が小さく呟くのを俺は聞き逃さなかった。
ひゅっと心臓に冷たい空気が入ったような感覚に陥る。
「未来、何か思い出したんじゃ?」
「すみません、冬馬さんの事は何も思い出せてません」
彼女が申し訳なさそうに謝ってくるのをみて、ホッとしている自分が嫌いになりそうだ。
「冬馬さん、実は私、今、脳が普通の状態じゃないんです」
彼女は自分の脳が瞬間的に物事を記憶して理解できる状態にある事を教えてくれた。その特別な状態で受験するのをズルいと考えるのが如何にも彼女らしい。
「新しい事はどんどん記憶できるのに、冬馬さんの事を思い出せないんです。辛い思いをさせてしまい申し訳ありません」
「過去のことは、一生思い出さなくても俺は構わないよ。新しく思い出を作って行けば良いって言ったでしょ」
罪悪感に苛まれながら、俺はテーブルに置いたままになっている指輪を彼女の左手の薬指にはめる。彼女が頬を染めながら微笑みかけてきて、価値観が違くても嘘を一生つき続けてでも一緒にいたいと思った。
「未来、来週あたりに俺の両親に会って欲しい」
俺の突然の申し出に驚いたのか彼女は目を丸くした。俺は彼女が記憶を取り戻しても、俺から逃げられないよう外堀から埋める事にした。
「えっ、ご両親にですか? 私、なんかで大丈夫でしょうか⋯⋯気に入って貰える自信がないです」
「大丈夫だから、そんな今から緊張した顔をしないで。未来はこの俺が惚れた女の子なんだから、もっと自信を持ってよ」
こわばっている彼女を宥めるように声をかける。
うちの親はフラフラしてた俺が落ち着くとなれば、喜んで彼女を歓迎するだろう。しかしながら、結婚する前に彼女の身元を探られるのは、できれば避けたい。『小山内進の隠し子』であると分かれば、色々面倒だと難色を示すのは分かりきっている。もし、そのような事になっても、俺は彼女以外の女と結婚するつもりはない。
考え事をしていたら、彼女が食器を片付け始めていた。
「ご馳走様。今日も、すごく美味しかった。片付けは俺がやるよ。この後、どこか行きたいところある? ドライブとかネズミーランドとか⋯⋯」
カシャン。
お皿が落ちる音がする。
「すみません。冬馬さん⋯⋯私⋯⋯」
ゆっくりと振り向いた彼女が、割れた皿を拾おうとする。
明らかに目が虚ろで先程の溌剌とした感じがない。
「割れた皿なんて俺が片付けるから!」
そう言って彼女に手を伸ばそうとした瞬間、彼女は倒れて意識を手放した。
かなりいいムードだったはずなのに、未来は既に冷静になっていた。
食事の続きじゃなくて、ラブシーンの続きがしたかったが我慢する。
おそらく結婚まで我慢できるのは、一生分の女を抱いてきた俺くらいだと自分を慰めた。
席につくと、彼女はこれからの人生計画を語り出した。
「高卒認定試験を受けようと思ってます」
「受かったら、春から大学に通うのはどうかな?」
俺は親がなんと言おうと、彼女と結婚するつもりだ。俺の妻になるとパーティーやら奥様会に出席する必要がある。そこでは当然学歴マウントをとってくる人間がいるから、未来が嫌な思いをしない為にも大学は卒業しておいたほうが良いと思った。彼女は敏腕社長と才女の子で地頭は良いだろうから受験は問題ないだろう。
「大学ですか? お金が掛かるから考えていなかったです」
「学費なんて俺が出すよ。できれば女子大にして欲しいかな。インカレとかも入らないで欲しい」
自分がこんな気持ちの悪い束縛男だとは思わなかった。自分で言っていて彼女に引かれないか心配になる。
「流石に大学の費用を冬馬さんにお願いするのは申し訳ないです」
「なんで? 俺たち結婚するんだよ。行きたい学部とかないの?」
「もし、大学に通うなら、法学部に行きたいです」
迷いのない彼女の瞳から目が離せなくなる。
「法律に興味があるの?」
「私、検事になりたいと思ってます」
一瞬、頭の中に沢山「?マーク」が浮かんだ。彼女は俺と結婚すると言ってくれたはずなのに検事になりたいと言っている。
「なんで、検事になりたいのかな?」
検事の知り合いがいるが、2年に1回くらいの頻度で転勤している。彼女が俺との将来を実は想像してないのではないかと不安になった。
「人を騙したりする悪い人間に相応の罰を与えたいんです。子供っぽい理由ですよね」
彼女の言葉に心臓が止まりそうになる。
「人を騙すのは良くないよね⋯⋯」
俺が消え入りそうになりながら吐いた言葉に頷くと彼女は続けた。
「やはり、一刻も早く働きたいので大学進学ではなく予備試験を受けようかと思います。合格すれば司法試験の受験資格が得られるので」
俺は自分の妻が働いているのを想像できなかった。実際、俺の母も祖母も曽祖母も所謂専業主婦だ。俺は彼女との間に大きな価値観の違いを感じていた。
「やっぱり、ズルいですよね⋯⋯」
彼女が小さく呟くのを俺は聞き逃さなかった。
ひゅっと心臓に冷たい空気が入ったような感覚に陥る。
「未来、何か思い出したんじゃ?」
「すみません、冬馬さんの事は何も思い出せてません」
彼女が申し訳なさそうに謝ってくるのをみて、ホッとしている自分が嫌いになりそうだ。
「冬馬さん、実は私、今、脳が普通の状態じゃないんです」
彼女は自分の脳が瞬間的に物事を記憶して理解できる状態にある事を教えてくれた。その特別な状態で受験するのをズルいと考えるのが如何にも彼女らしい。
「新しい事はどんどん記憶できるのに、冬馬さんの事を思い出せないんです。辛い思いをさせてしまい申し訳ありません」
「過去のことは、一生思い出さなくても俺は構わないよ。新しく思い出を作って行けば良いって言ったでしょ」
罪悪感に苛まれながら、俺はテーブルに置いたままになっている指輪を彼女の左手の薬指にはめる。彼女が頬を染めながら微笑みかけてきて、価値観が違くても嘘を一生つき続けてでも一緒にいたいと思った。
「未来、来週あたりに俺の両親に会って欲しい」
俺の突然の申し出に驚いたのか彼女は目を丸くした。俺は彼女が記憶を取り戻しても、俺から逃げられないよう外堀から埋める事にした。
「えっ、ご両親にですか? 私、なんかで大丈夫でしょうか⋯⋯気に入って貰える自信がないです」
「大丈夫だから、そんな今から緊張した顔をしないで。未来はこの俺が惚れた女の子なんだから、もっと自信を持ってよ」
こわばっている彼女を宥めるように声をかける。
うちの親はフラフラしてた俺が落ち着くとなれば、喜んで彼女を歓迎するだろう。しかしながら、結婚する前に彼女の身元を探られるのは、できれば避けたい。『小山内進の隠し子』であると分かれば、色々面倒だと難色を示すのは分かりきっている。もし、そのような事になっても、俺は彼女以外の女と結婚するつもりはない。
考え事をしていたら、彼女が食器を片付け始めていた。
「ご馳走様。今日も、すごく美味しかった。片付けは俺がやるよ。この後、どこか行きたいところある? ドライブとかネズミーランドとか⋯⋯」
カシャン。
お皿が落ちる音がする。
「すみません。冬馬さん⋯⋯私⋯⋯」
ゆっくりと振り向いた彼女が、割れた皿を拾おうとする。
明らかに目が虚ろで先程の溌剌とした感じがない。
「割れた皿なんて俺が片付けるから!」
そう言って彼女に手を伸ばそうとした瞬間、彼女は倒れて意識を手放した。
52
あなたにおすすめの小説
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
幼馴染に10年片想いしてたら、冷酷御曹司にプロポーズされました
ほーみ
恋愛
春の匂いが、駅前の並木道をくすぐる。満開の桜の下、私はひとり歩いていた。駅までの道は、高校時代、彼とよく歩いた道だ。
制服姿の学生が笑いながらすれ違っていくのを横目に、私はスマホを見下ろした。
「今日、伝えるって決めたんじゃなかったの?」
送信したきり返信のないメッセージ。画面には「既読」の文字があるだけだった。
――渡瀬 湊。私が10年間片想いをしている、幼馴染。
溺婚
明日葉
恋愛
香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。
以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。
イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。
「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。
何がどうしてこうなった?
平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?
溺愛のフリから2年後は。
橘しづき
恋愛
岡部愛理は、ぱっと見クールビューティーな女性だが、中身はビールと漫画、ゲームが大好き。恋愛は昔に何度か失敗してから、もうするつもりはない。
そんな愛理には幼馴染がいる。羽柴湊斗は小学校に上がる前から仲がよく、いまだに二人で飲んだりする仲だ。実は2年前から、湊斗と愛理は付き合っていることになっている。親からの圧力などに耐えられず、酔った勢いでついた嘘だった。
でも2年も経てば、今度は結婚を促される。さて、そろそろ偽装恋人も終わりにしなければ、と愛理は思っているのだが……?
契約結婚のはずなのに、冷徹なはずのエリート上司が甘く迫ってくるんですが!? ~結婚願望ゼロの私が、なぜか愛されすぎて逃げられません~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
恋愛
「俺と結婚しろ」
突然のプロポーズ――いや、契約結婚の提案だった。
冷静沈着で完璧主義、社内でも一目置かれるエリート課長・九条玲司。そんな彼と私は、ただの上司と部下。恋愛感情なんて一切ない……はずだった。
仕事一筋で恋愛に興味なし。過去の傷から、結婚なんて煩わしいものだと決めつけていた私。なのに、九条課長が提示した「条件」に耳を傾けるうちに、その提案が単なる取引とは思えなくなっていく。
「お前を、誰にも渡すつもりはない」
冷たい声で言われたその言葉が、胸をざわつかせる。
これは合理的な選択? それとも、避けられない運命の始まり?
割り切ったはずの契約は、次第に二人の境界線を曖昧にし、心を絡め取っていく――。
不器用なエリート上司と、恋を信じられない女。
これは、"ありえないはずの結婚"から始まる、予測不能なラブストーリー。
久我くん、聞いてないんですけど?!
桜井 恵里菜
恋愛
愛のないお見合い結婚
相手はキモいがお金のため
私の人生こんなもの
そう思っていたのに…
久我くん!
あなたはどうして
こんなにも私を惑わせるの?
━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━ʚ♡ɞ━━
父の会社の為に、お見合い結婚を決めた私。
同じ頃、職場で
新入社員の担当指導者を命じられる。
4歳も年下の男の子。
恋愛対象になんて、なる訳ない。
なのに…?
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
家族から邪魔者扱いされた私が契約婚した宰相閣下、実は完璧すぎるスパダリでした。仕事も家事も甘やかしも全部こなしてきます
さら
恋愛
家族から「邪魔者」扱いされ、行き場を失った伯爵令嬢レイナ。
望まぬ結婚から逃げ出したはずの彼女が出会ったのは――冷徹無比と恐れられる宰相閣下アルベルト。
「契約でいい。君を妻として迎える」
そう告げられ始まった仮初めの結婚生活。
けれど、彼は噂とはまるで違っていた。
政務を完璧にこなし、家事も器用に手伝い、そして――妻をとことん甘やかす完璧なスパダリだったのだ。
「君はもう“邪魔者”ではない。私の誇りだ」
契約から始まった関係は、やがて真実の絆へ。
陰謀や噂に立ち向かいながら、互いを支え合う二人は、次第に心から惹かれ合っていく。
これは、冷徹宰相×追放令嬢の“契約婚”からはじまる、甘々すぎる愛の物語。
指輪に誓う未来は――永遠の「夫婦」。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる