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14.母の浮気相手
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結局、私は自分が一人になるのが怖い気持ちもあって、HIROに家まで送ってもらった。
「す、凄過ぎ、都内の一等地にこんな場所があったなんて⋯⋯豪邸というか、博物館みたいな⋯⋯」
高い壁に囲まれた門を潜った所で、HIROが若干私の家に引いていた。
「ここでいいよ。送ってくれてありがとう」
「い、いや、心配だから家の中に入るまで送るよ。凄いな、門から家に入るまで距離あり過ぎ。身分の違いというか、世界の違いを感じるな」
「やめて! HIROは絶対にそんな事を言う人にならないで! 私たちは同じ世界に住んでいるし、身分なんて存在しないから」
HIROを応援し続けたファンとして、私にはHIROには成功しても祖父のようにはなって欲しくなかった。私は彼にはいつまでもヤンチャでダンスが好きな男の子でいて欲しいと思っていた。
「うん、そうだよな」
私の言葉を聞いてHIROは嬉しそうにニカっと歯を見せて笑った。
家の前までつくと、左手にスマホを握りしめ右手の爪を噛みながらウロウロしている母がいた。
「り、凛音ちゃん⋯⋯ごめんなさい。お誕生日だったのに、お母様が帰って来なくて驚いたでしょ。実はトラブルがあって⋯⋯お願いだから話を聞いて」
私を見るなり、母が私に縋り付いてくる。
これは前にも見た光景だ。
私は前は母を突っぱね、タイミングよくきた東雲亮平からのメッセージに激怒した。
「分かったから、お母様も落ち着いて話をしよう。良かったら、庭のパティオで話さない? もうすぐ夕暮れで暑さも和らいでいるし⋯⋯」
「凛音ちゃんがそうしたいのなら⋯⋯あの、そちらの方は?」
「小柳真紘と申します。『スーパーブレイキン』と言うグループでアイドル活動をしています。凛音さんの⋯⋯えっと、仲間です!」
「凛音がお世話になっています。見覚えがあると思ったら凛音が応援しているグループのHIRO君ね」
私は母の言葉に驚いてしまった。
HIROの事はこっそり応援しているつもりだったが、彼女にはバレていたようだ。私も母がこっそりモデルの東雲亮平を応援した事を知ってたし、家族間の隠し事はなかなか難しいのかもしれない。
私たちがパティオに移動すると、なぜかHIROもついて来た。母と仲良く話していて、追い返せなくなってしまう。
ショートカットに眼鏡のお手伝いさんがお茶とケーキを運んできた。
(この方が鈴木さんという名前だった気がする⋯⋯)
「ありがとう。鈴木さん」
お礼を言った私を母が驚いた目で見つめていた。
「凛音お嬢様、お誕生日おめでとうございます。ちなみに私の誕生日は来月の8日です」
おそらく私がお手伝いの斉藤さんに特別休暇と手当を与えた事で、誕生日とういう記念日をアピールして来たのだろう。自分が違うことをすると、周りがいつもと違う言動で返してくるのが当たり前だけど不思議に感じた。
「凛音ちゃん、あのね⋯⋯本当にごめんなさい。私⋯⋯」
母が意を決したように口を開くと、母のスマホに次々とメッセージが来た。
『亮平です。素敵なホテルでしたね』
『僕でよければいつでも話聞きます』
『七海さんは今でも綺麗っすよ』
母の手元に置かれたスマホのメッセージを私は静かに見つめていた。
母が慌てて電源を切ろうとしたので、私はそれを手で制して首を振った。
本当に不自然だ。
メッセージに対して母は何の返信もしていないのに、とにかく不倫を匂わせるメッセージが送られ続けてくる。
私が帰宅したことは門にある防犯カメラをハッキングできれば分かるだろう。恐らく祖父は母がハニトラに引っかかって不貞行為をしたと私に思わせて母を突き放して欲しいのだ。
私は震える母から静かにスマートフォンを取り上げた。
私はすかさず東雲亮平に連絡する。
『もしもし、モデルの東雲亮平さんですか? 私、柏原七海の娘の柏原凛音と申します。私の母と一晩ホテルで過ごしたようですが、不貞行為はあったのでしょうか? 返答次第にでは多額の慰謝料を請求しなくてはいけないので、正直に答えてくれますか?』
『えっ? 娘? いや、慰謝料って何すか?』
『東雲さんってモデルですよね。柏原清十郎の妻に手を出して、この業界でやっていけるなんて思ってるんですか? 頭ん中お花畑ですか?』
『いや、その、でも、俺は頼まれただけなんっすよ⋯⋯』
『知っています。頼まれてどこまでしたのか聞いてるんです』
『知っているってどういう事っすか? あ、あの巨大組織の方から頼まれて、仕方なく柏原七海さんをホテルに足止めさせていただけです。神に誓って何もしてません。申し訳ございませんでした!』
電話はブチっと勢いよく切られた。
柏原グループは東雲亮平から見れば会社ではなく逆らえない闇の組織らしい。
彼は金を握らされて後先考えず行動をしてしまうような見た目だけの足らない男ようだ。
「凛音ちゃん、あの⋯⋯本当にごめんなさい。私が迂闊だったの。推しとちょっと話してみたいと思ってしまって。ホテルの一室で少し話をして帰ろうとしたら、扉が壊れたとかで出られなくなって⋯⋯」
「そっか⋯⋯でっ、東雲亮平とどんな話をしたの?」
「はあ、実は会わなきゃ良かったって思ったわ。話の内容以前に喋り方が『何とかっす』みたいな感じで洗練されてないの。あれはどこの方言なの?」
「体育会系の方言っすね」
HIROがケタケタ笑いながらカットインしてきた。
深刻な雰囲気を柔らかくしてくれているのだろう。
「確かにアイドルやモデルって偶像崇拝というか、会ってがっかりしないように会わない方が良いのかもね」
私はチラリとHIROを見ながらいうと、彼は自分を指差しながら頬を膨らませて不満そうな顔をした。
「もしかして、今回の件はお義父さんの仕業?」
「そうだよ。お母様は何で離婚に応じないの? 多額の慰謝料を貰って離婚すれば良いじゃん」
はっきり言って3年も不倫している父親が気持ち悪くて仕方がない。
娘の為にも母には離婚を決意して欲しいと思っていた。
「す、凄過ぎ、都内の一等地にこんな場所があったなんて⋯⋯豪邸というか、博物館みたいな⋯⋯」
高い壁に囲まれた門を潜った所で、HIROが若干私の家に引いていた。
「ここでいいよ。送ってくれてありがとう」
「い、いや、心配だから家の中に入るまで送るよ。凄いな、門から家に入るまで距離あり過ぎ。身分の違いというか、世界の違いを感じるな」
「やめて! HIROは絶対にそんな事を言う人にならないで! 私たちは同じ世界に住んでいるし、身分なんて存在しないから」
HIROを応援し続けたファンとして、私にはHIROには成功しても祖父のようにはなって欲しくなかった。私は彼にはいつまでもヤンチャでダンスが好きな男の子でいて欲しいと思っていた。
「うん、そうだよな」
私の言葉を聞いてHIROは嬉しそうにニカっと歯を見せて笑った。
家の前までつくと、左手にスマホを握りしめ右手の爪を噛みながらウロウロしている母がいた。
「り、凛音ちゃん⋯⋯ごめんなさい。お誕生日だったのに、お母様が帰って来なくて驚いたでしょ。実はトラブルがあって⋯⋯お願いだから話を聞いて」
私を見るなり、母が私に縋り付いてくる。
これは前にも見た光景だ。
私は前は母を突っぱね、タイミングよくきた東雲亮平からのメッセージに激怒した。
「分かったから、お母様も落ち着いて話をしよう。良かったら、庭のパティオで話さない? もうすぐ夕暮れで暑さも和らいでいるし⋯⋯」
「凛音ちゃんがそうしたいのなら⋯⋯あの、そちらの方は?」
「小柳真紘と申します。『スーパーブレイキン』と言うグループでアイドル活動をしています。凛音さんの⋯⋯えっと、仲間です!」
「凛音がお世話になっています。見覚えがあると思ったら凛音が応援しているグループのHIRO君ね」
私は母の言葉に驚いてしまった。
HIROの事はこっそり応援しているつもりだったが、彼女にはバレていたようだ。私も母がこっそりモデルの東雲亮平を応援した事を知ってたし、家族間の隠し事はなかなか難しいのかもしれない。
私たちがパティオに移動すると、なぜかHIROもついて来た。母と仲良く話していて、追い返せなくなってしまう。
ショートカットに眼鏡のお手伝いさんがお茶とケーキを運んできた。
(この方が鈴木さんという名前だった気がする⋯⋯)
「ありがとう。鈴木さん」
お礼を言った私を母が驚いた目で見つめていた。
「凛音お嬢様、お誕生日おめでとうございます。ちなみに私の誕生日は来月の8日です」
おそらく私がお手伝いの斉藤さんに特別休暇と手当を与えた事で、誕生日とういう記念日をアピールして来たのだろう。自分が違うことをすると、周りがいつもと違う言動で返してくるのが当たり前だけど不思議に感じた。
「凛音ちゃん、あのね⋯⋯本当にごめんなさい。私⋯⋯」
母が意を決したように口を開くと、母のスマホに次々とメッセージが来た。
『亮平です。素敵なホテルでしたね』
『僕でよければいつでも話聞きます』
『七海さんは今でも綺麗っすよ』
母の手元に置かれたスマホのメッセージを私は静かに見つめていた。
母が慌てて電源を切ろうとしたので、私はそれを手で制して首を振った。
本当に不自然だ。
メッセージに対して母は何の返信もしていないのに、とにかく不倫を匂わせるメッセージが送られ続けてくる。
私が帰宅したことは門にある防犯カメラをハッキングできれば分かるだろう。恐らく祖父は母がハニトラに引っかかって不貞行為をしたと私に思わせて母を突き放して欲しいのだ。
私は震える母から静かにスマートフォンを取り上げた。
私はすかさず東雲亮平に連絡する。
『もしもし、モデルの東雲亮平さんですか? 私、柏原七海の娘の柏原凛音と申します。私の母と一晩ホテルで過ごしたようですが、不貞行為はあったのでしょうか? 返答次第にでは多額の慰謝料を請求しなくてはいけないので、正直に答えてくれますか?』
『えっ? 娘? いや、慰謝料って何すか?』
『東雲さんってモデルですよね。柏原清十郎の妻に手を出して、この業界でやっていけるなんて思ってるんですか? 頭ん中お花畑ですか?』
『いや、その、でも、俺は頼まれただけなんっすよ⋯⋯』
『知っています。頼まれてどこまでしたのか聞いてるんです』
『知っているってどういう事っすか? あ、あの巨大組織の方から頼まれて、仕方なく柏原七海さんをホテルに足止めさせていただけです。神に誓って何もしてません。申し訳ございませんでした!』
電話はブチっと勢いよく切られた。
柏原グループは東雲亮平から見れば会社ではなく逆らえない闇の組織らしい。
彼は金を握らされて後先考えず行動をしてしまうような見た目だけの足らない男ようだ。
「凛音ちゃん、あの⋯⋯本当にごめんなさい。私が迂闊だったの。推しとちょっと話してみたいと思ってしまって。ホテルの一室で少し話をして帰ろうとしたら、扉が壊れたとかで出られなくなって⋯⋯」
「そっか⋯⋯でっ、東雲亮平とどんな話をしたの?」
「はあ、実は会わなきゃ良かったって思ったわ。話の内容以前に喋り方が『何とかっす』みたいな感じで洗練されてないの。あれはどこの方言なの?」
「体育会系の方言っすね」
HIROがケタケタ笑いながらカットインしてきた。
深刻な雰囲気を柔らかくしてくれているのだろう。
「確かにアイドルやモデルって偶像崇拝というか、会ってがっかりしないように会わない方が良いのかもね」
私はチラリとHIROを見ながらいうと、彼は自分を指差しながら頬を膨らませて不満そうな顔をした。
「もしかして、今回の件はお義父さんの仕業?」
「そうだよ。お母様は何で離婚に応じないの? 多額の慰謝料を貰って離婚すれば良いじゃん」
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