聖女リオノーラの反逆〜千年の恋のためクズ夫を寝取ってください〜

専業プウタ

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7.私の企み。

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「魔水晶を使った。血縁者が一緒に触れると赤く光るんだ」
得意げに語るシリルに、愛おしい人の影を見る。

変わってしまったところもあるけれど、やはり彼は私の愛した元夫。

「その魔水晶を貸してくれる?」

千年の転生の歴史を紐解く。
地位や名誉も持った男ほど、子との血縁を疑う。

第2王子も第3王子も母親似。
エイブラハム国王も自分とそっくりなカルティスに王位を継がせたいという考えがあるのかもしれない。

「俺がクレイグだと分かっても、君はベルナール王国に戻るのか?」
私の意図を察するように発せられたシリルに心臓が止まりそうになる。

「⋯⋯」
「天命だからか?」
何も答えられない私に対して寂しそうにシリルが呟く。

私の下に人は平等。
傲慢な考えを持っていたが、彼だけは違う。
彼は私にとって特別な人。

「ごめん。君はそういう人だよな。リオノーラ、君が所望するなら魔水晶を貸すよ」

「ありがとう、シリル。そういえば、貴方、公務はどうしたの?」

「気にすることはない。毎月、帝国民に顔出しして挨拶する定例会のようなものだ」

「何を言ってるの? 帝国民はその1ヶ月に1回を待ってるのよ。今すぐ行って? 私も行くわ」

私の剣幕に再びシリルとコンラッドが顔を見合わせた。
心の中で葛藤があっても、こういう瞬間に2人の仲の良さを感じる。

「リオノーラ様は、ベルナール王国にいることになっているのではないですか?」
コンラッドが首を傾げる。私は思わずシリルの顔を窺い見た。

「国境の検問の情報から推察した? それだけじゃないわよね。貴方って昔から結構束縛男だったもの。ベルナール王国に諜報員をいれてるでしょ」
私の追求にシリルが目を泳がせた。

私の一挙手一投足に反応して、私の全てを知りたがった彼。シリルが千年もの間どんな気持ちだったのか気づいてしまい胸が痛くなった。

「諜報員どころか、ベルナール王城の各所に盗聴の魔法道具を仕掛けていますよ」
「お、おい!」
すかさず内情を暴露するコンラッドに、シリルが焦りだす。

「そう⋯⋯シリル、こんな私をずっと好きでいてくれてありがとう」
自分でも驚く程掠れた声、らしくもなく弱気な発言。

今まで何の疑問も抱かずお役目として、国の指導者の妻になった。
好きでもない男と体を重ね子孫を残す。
(彼には、どう映っていたの?)

シリルが急に私の顔を隠すように、そっと抱きしめてきた。
頬に熱いものが伝っている。
双眸から止め処なく溢れ出る涙。

恥ずべきものはない。
私は自分の過去には、自信を持って生きてきた。
しかし、彼の前では恥ずかしい。
私は首を振りながら涙を飛ばす。

顔を上げて歪む視界の中のシリルを見つめる。
「今から、公務でしょ。私をお披露目して」
「そんな無理をしなくても」
私はそんな酷い顔をしているのか、シリルが戸惑っている。

「私らしく、自分の天命を全うする。でもね。これ以上、貴方を失望させたくない」
「何か企みがあるなら手を貸すぞ」
私の意図を悟ったのかシリルが悪い顔をする。

きっと彼は私が天命に縛られ、彼の胸に飛び込めないと思っている。

「花の種をできるだけ集めてくれる? その種を、本日皇城に訪れる来客全員に配って」
「その雑務を皇帝である俺にこなせと? 使用人の仕事だろう」
苦笑するシリルは私の頼まれごとを嫌がってはいない。

「じゃあ、ここにいる間は私に使用人をつけて」
「人と馴染むのが苦手で、損ばかりしているような使用人が好きなんだよな」
ずっと昔に言った私の台詞を彼が覚えていて、胸が張り裂けそうだ。

「そうよ。人と簡単に上手くやれてしまうような器用な子より、育てがいもあるし信頼できるから好きなの」
「相変わらず変わった好みをしてるな。とりあえず、しばらくは俺が君のわがまま担当係になるよ」
親指で私の眦に溜まった涙を拭うシリルは、間違いなく私の愛した優しい彼。

「⋯⋯皇帝陛下に聖女様⋯⋯2人だけの世界に入らないでください。疎外感がえげつないです。リオノーラ様、大衆の前に出られるなら、お着替えなさった方が宜しいのではないですか?」
遠慮がちにカットインしてきたコンラッド。
私とシリルは思わず恥ずかしくなり顔を見合わせた。

「いいの。シリルの選んでくれた私の瞳の色をしたワンピースで、アントワーヌ帝国の皆様にご挨拶するわ」

シリルは私の言葉に照れたように頬を染めた。
ドレスで着飾れば、質素な日常を送っている大衆との距離は遠ざかる。
私が今からアピールするのは富ではない。

人々の心にいかに入り込んでいくかは、私の得意分野。
人心を掌握し、目的を達成する。
愛する元夫と再会した事で、本来の私を取り戻せそうだ。

♢♢♢

「花の種だ。配る時間はもうないな」
気まずそうにシリルが私に沢山の花の種を渡してくる。

「十分よ。貴方の愛を受け取ったわ」
私は彼からバケツ一杯の沢山の種をを受け取る。
そのまま、本日特別に解放されている皇城の門まで急いだ。

普段は入れない皇城の門を目を輝かせて潜る人々。

私は城門に立っている一人の騎士に耳打ちした。
「この種を皆さんにお配りして! シリル・アントワーヌ皇帝陛下からの命令よ」
私の言葉が聞こえただろう騎士たちが目を白黒させる。

「あの⋯⋯貴方様は?」
「私は聖女リオノーラ。あとでお披露目だから、ここだけの秘密ね」
私に尋ねてきた灰色の髪をした騎士に囁きかける。他の騎士と違って連なる幾つかの勲章をつけてる彼。おそらく、この中では一番権力がある。

「皇命だ。周辺の騎士たちは直ちに集まれ!」
一斉に集まってくる騎士たち。

灰色の髪の騎士が、花の種を全ての来客に取り急ぎ配布するよう指示を出す。
騎士たちは散り散りになり、迅速に動き出した。

「ありがとう。貴方、名前は? 判断が早くて助かったわ」
「アルフレッド・オベールです」
「素敵な名前、覚えておくわ」
アルフレッドを筆頭に騎士たちが種を配るのを見届け、皇城に戻ろうとした時だった。

「もしかして、聖女リオノーラ様ですか?」
突然、幼く甲高い声がして私は後ろを振り向いた。
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