聖女リオノーラの反逆〜千年の恋のためクズ夫を寝取ってください〜

専業プウタ

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9.彼の好きな花。

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コンラッドが掴んでいる二の腕をじっと見つめると、彼は慌てて手を離した。

「リオノーラ様、流石に暴走しすぎです。勝手にベルナール王国をアントワーヌ帝国の友好国にしないでください。アントワーヌ帝国には何の得もありません」
「あるじゃないですか、聖女の私が滞在し帝国民に奉仕します」
私が腰に手を当てながら言うと、コンラッドは頭を掻き出した。

「リオノーラ様は聖女というより悪女ですよね。皇帝陛下の惚れた弱みに漬け込みすぎです。皇帝陛下が貴方の願いなら何でも受け入れると分かっていてやってますよね」
コンラッドは私と彼の過去の関係性を随分聞いている。
(妬けるくらい、仲が良いわね)

「ドラゴンを貸して頂けますか? それと、アントワーヌ帝国の詳細な地図、領主のリストもください」
「3日前にドラゴンに乗って気絶したんじゃないんですか? しかも、先程皇帝陛下と心が通じ合っていたのに、2週間旅をしたら国に帰るというのは残酷過ぎです。リオノーラ様は悪魔ですか?」
コンラッドは不思議な人だ。
シリルを陥れようとしたと言ってた割に、今はすっかり兄の顔をしている。

「悪魔だなんて初めて言われました」
私が顔を近づけると、コンラッドは頬を染め後ずさった。
レシャール侯爵夫人に似た麗しくも儚く見えるこの顔に弱い男は多いらしい。

使えるものは使って、目的を達成する。
ベルナール王国で縮こまっていた私はもういない。

⋯⋯私はもう決めたのだ。

「リオノーラ」

シリルが廊下の向こうから歩いて来るのが見えた。
私はコンラッドの横をすり抜け、彼の元に向かう。

適当な扉を開けると運よく誰もいなかった。
シリルの手を引き、部屋の中に連れ込む。

扉を背にしたシリルは私をじっと見つめていた。
手には先程私がプレゼントしたブーゲンビリアが握られている。

「シリル、貴方の好きな花よね」
「違う、これは君の好きな花だ。君が好きだから俺も気に入っていると言った。俺が好きなのは君だけだ」

シリルが顔を近づけてくる。
私は首をゆっくり振った。

「私、正式に離婚してくるわ。必ず貴方の元に戻って来るから、結婚しましょう」
シリルの瞳が私のプロポーズを聞いて潤み出す。
ベルナール王国を友好国にした理由をわかって貰えたようだ。

私はリオノーラとしての人生で、最後にすると決めた。

セリア、カルティスと真っ向からやりあえば、心が穢れ聖女の力を失うと恐れた。
次に転生できるだけの力がなくなると恐怖し萎縮。
淡々とした自分らしくない生活を送る私。

そんな私は千年も私を求め続けた人にも気づかれない。

千年も前に「永遠の愛」を誓った相手と結ばれるのなら、私はここで終わりで十分。
聖女らしくなくても、私らしく愛する人と生きていきたい。

「君は本当に残酷だな。千年も追い求めたんだ。プロポーズくらい俺にさせてくれても良いのに、君はいつも全て自分で決めてしまう」

肩をすくめて呆れたような表情のシリル。

確かにクレイグにプロポーズしたのも私。
こんなに好きになれる人は現れないと思って、勢いでしたプロポーズ。
千年の時が、あの時の答えを出した。
(やっぱり、私には貴方だけ)

「千年間で私がプロポーズしたのは貴方だけよ。しかも2回!」
私はシリルの黒髪に手を差し入れながら囁く。
お互い見た目も変わってしまったけれど、求め合う魂は不変。

「リオノーラ、君って人は」
シリルが唇を寄せて来るので、私はそれを人差し指で制した。
「ダメよ。それは正式に夫婦になってから」

突然、後ろの扉が開きコンラッドが部屋に入ってくる。

「そこは口付けしましょうよ。流石に、酷いですよ。僕とは⋯⋯」
どうやらコンラッドは扉の前にいて聞き耳をたててたようだ。

確かに彼をクレイグと間違えてキスしようとしてしまったが、あれは私らしくなかった。淡々と生きるのも、感情に完全に流されてしまうのもダメ。

「コンラッド様、先程、頼んだドラゴンの件はどうなってますか?」
「ドラゴン? 何のことだ?」
コンラッドがシリルに説明をすると、一瞬で彼の顔が険しくなった。

「俺はリオノーラが街を回るのも反対だ」
「どうして? 困っている人がいたら手を差し伸べるのが貴方だったはずよ」
「困っていたら、俺は自分で何とかしてきた。何とかできないなら、それまでと諦めた『生』もある」

生まれて直ぐ亡くなった虫、動けない木としての「生」。
私の経験していない辛い過去を持つ彼。

心は痛むけれど、私は自分勝手にも心のままに主張した。

「貴方も私も次があると思いながら生きていきた。皆は違うの。だから助けたい。少しでもより良い今を、一度しかない人生で味わって欲しい。シリルなら、分かるよね」
彼の宝石のような双眸を見つめながら語り掛ける。

「はぁ、本当は分からないって言いたいよ。でも、君がそう思うなら理解したい」
私はコンラッドの言う通り悪魔かもしれない。
シリルがどれだけ私を深く想っているかを知っていて、自分の主張を通そうとしている。

「皇帝陛下、リオノーラ様には僕が付き添いましょうか?」
「俺が付き添いたい!」
「現実的に無理ですよね。公務が詰まってます。建国祭も近いですし」
私はベルナール王国の解放日とアントワーヌ帝国の建国祭の日程が被っていた事を思い出す。

ノックする音と共に開かれた扉の先には、焦ったような表情をしたマイロがいた。

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