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11.発現する力。
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「2人乗りするのですか?」
「前回、ドラゴンに乗った時に気絶したそうなので、怖かったら目を瞑ってくださいね」
コンラッドの言葉に静かに頷く。
確かに前回は空中で気絶してしまい、シリルに心配を掛けた。
全ては私の心が不安定だったことが原因。
ドラゴンが空中に舞う。
宙に浮いたような感覚に、一瞬不安になり右耳のイヤリングに触れた。
(シリルを近くに感じる。だから大丈夫)
ふと後ろを見ると、マイロは1人でドラゴンを乗りこなしていた。彼は乗馬も上手いし要領は似ているのかもしれない。
「コンラッド様、シリルを見守っていてくれてありがとうございます」
一番大切な人なのに、私はシリルを最も傷つけた女。
シリルの近くにコンラッドのような人がいて良かった。
「仲は良くないと言いましたよね。実際、僕は彼が皇帝に即位後も失脚させられるものなら、隙を突いて皇位を奪ってやろうと虎視眈々と機会を窺っていましたよ」
「兄としては? コンラッド様はシリルを見守っているように見えますよ」
私の言葉にコンラッドは気まずそうに肩をすくめた。
「リオノーラ様の結婚式に参加した後、皇帝陛下は失意のどん底に落ちました。正直、引き摺り下ろすのも躊躇われる程にやつれ、何も食べられず痩せ細っていました」
時に冷たい目をするようになったシリルを怖いと感じていた。悲しみの後に来る怒り。きっと、私が彼に繰り返し抱かせた感情。彼がやつれた姿を想像するだけで胸が痛い。
「僕は全てを手に入れたと思っていた彼の過去を聞きました。千年、1人の女性を決して届かぬ存在になっても思い続けた⋯⋯羨ましい反面、同情しました。初めて無敵な彼の弱い部分を見て、応援しなくてはいけないような不思議な使命感に駆られているだけです」
「そうでしたか。コンラッド様は優しい方ですね。親兄弟でも人の不幸を蜜の味と思う人間もいますわ。シリルのお兄様が貴方で本当に良かったと心から思います」
私は眼下に望むアントワーヌの城下町を見た。
粒のように小さく見える多くの人々。
色鮮やかな建物が犇めき合う街に、商店が連なる広々とした大通り。
遠目にも活気に溢れているのが分かる。
「リオノーラ様は狡い方ですね。人々の心を掴む人心掌握に長けた指導者の一面を見せたと思えば、急に守ってあげたくなるようなか弱い女の一面を見せる。体が震えています。高いところはやはり苦手なのではありませんか?」
「慣れていないだけです。人々の暮らしが見える空。こんな素敵な場所にいるのに怖がっていたら勿体無いですわ。狡いと指摘されたのは初めてです。私自身も気が付かなかったけれど、私って狡猾かもしれません」
コンラッドは感受性の強い人。
だからこそ、強く見えても繊細なシリルの側に彼がいて良かった。
コンラッドが手綱を緩めると、ドラゴンが降下し始めた。
眼下には栄えている城下町とは違い、郷愁を感じさせるような小さな集落。
「もしかして、あれがバルテッロ村ですか?」
降下のタイミングで風が強くなり、舞い上がった髪を手で押さえながらコンラッドに尋ねた。
「はい。リオノーラ様は髪をバッサリ切ったらどうですか? 貴方様は魅惑的で危険過ぎます。このままでは皇帝陛下が不憫です」
コンラッドは女好きな見た目をしているのに、初心な男。
リオノーラの見た目は、私が転生した中でも最上級に美しい。
「その提案は却下させて頂きます。シリルには出来るだけ、私に魅力を感じて欲しいですから。千年転生を繰り返しても、心は恋する乙女なんです。コンラッド様は想い人はいないのですか?」
私は陽の光を集めキラキラと輝く銀髪を自分の口元に持っていってキスをしながら、呆れるコンラッドに尋ねた。
「いませんね。皇位継承権争いに躍起でしたから。政略的に婚約をした方はいましたが、僕が皇位を継がないと分かると離れて行きました」
「そう。それは幸運でしたね。辛い時に一緒いてくれない方と結ばれずに済んだのですから」
縁は結ぶよりも切るほうが難しい。そして、人の本質を見抜くのも至難の業。
私はセリアが表向きは可愛い妹だったので、彼女の本質が見えてきても目を背けようとした。次期国王であるカルティスを愛し寄り添うのは天命だと思い、必死に彼の身勝手な本質からは目を逸らした。
「リオノーラ様は本当に人の心を掴む天才ですね。皇帝陛下が貴方様を人心掌握の天才だとおっしゃってました。人は皆、リオノーラ様を気が付けば愛してしまうと⋯⋯」
「そんなことはありませんわ。私は、どうして妹が私を嫌っているのかさえ分かりません」
確かに私自身も大衆の心を捉えるのは得意だと自負している。
人が塊になった時の同調圧力と熱気を利用した誘導。
でも、一対一になった時、分かり合うのは何度「生」を繰り返しても難しい。
大地に辿り着き、コンラッドに抱えられながらドラゴンの背から降りる。
「妹君は嫉妬しているのではないですか? 距離が近いと嫉妬が生まれやすいです。自分とは全く違う人間なのに、常に比べてしまいます。僕も全ての魔力を持つ皇帝陛下の能力に嫉妬して苦しい思いをしました」
「コンラッド様の使える魔法は?」
「僕は光と水の魔法を使えます。正直、あまり役には立ちません」
「ご謙遜なさらないでください。一番素敵な魔法です。その2つがあれば人を助けられますわ」
私が微笑みながら言った言葉に、コンラッドが照れたように目を逸らす。
女慣れしてそうな振る舞いをする癖に、実はかなり純粋な方だ。
しばらくすると、後ろから追ってきたマイロも到着した。
シェリルが私を見つけるなり、ピンクの瞳を輝かせながら駆け寄ってくる。
「リオノーラ様、本当に来てくれたの? こっちよ」
小さな可愛い手が私の手を引く。
「待ちなさい、シェリル! 聖女様に失礼はやめて!」
集まってくる村の女性の1人が発する言葉に周りが同調。
「失礼ではないわ。シェリルがこの村に私を連れて来てくれたのよ。皆様、聖女リオノーラです。以後、よろしくお願いします」
私はそれからシェリルの母ミランダを治療し、2週間もの間アントワーヌ帝国を回った。
「2週間、長いようで短かったですね。リオノーラ様は本当に下々の者まで平等に接するのですね。ひょっとして、この旅は皇帝陛下への提言の意味も兼ねてます?」
コンラッドとはかなり仲良くなった。
彼は人が何を考えているのか常に察して行動する。
バディーを組む側としてはありがたい相手。
「提言? そんな烏滸がましい事はしませんわ」
ドラゴンを降り、皇宮に向かいながらコンラッドの鋭い指摘に笑ってしまった。
「リオノーラ様、お疲れですよね。際限なく聖女の力を使っていましたしお身体が心配です」
マイロのが心配してくれているが、この2週間驚く程自分の聖女の力が強まっているのを感じていた。
底なしに沸き起こってくる体内の聖女の力と、アントワーヌ帝国に漂う光の粒子が結合するような感覚。
「マイロこそ、疲れていない? 移動中はボンヤリしている私と違い、貴方はドラゴンも操っているのだもの」
「私は体力だけは自信があります。リオノーラ様、右足首から血が出ております」
私は思わず溜息を吐いた。
足場にあった枯れ枝で擦ったのだろう。
自分の傷は病は治せないというのは聖女の力の弱点。
咄嗟に跪いたマイロが私の負傷した足首に触れてくる。
触れられた箇所に温かな熱を感じた。
「えっ?」
「失礼致しました。無遠慮にリオノーラ様のお身体に触れてしまいました事をお詫びさせてください」
「そんな事は良いのよ。見て!」
私は消えた傷をマイロとコンラッドに見せた。
「前回、ドラゴンに乗った時に気絶したそうなので、怖かったら目を瞑ってくださいね」
コンラッドの言葉に静かに頷く。
確かに前回は空中で気絶してしまい、シリルに心配を掛けた。
全ては私の心が不安定だったことが原因。
ドラゴンが空中に舞う。
宙に浮いたような感覚に、一瞬不安になり右耳のイヤリングに触れた。
(シリルを近くに感じる。だから大丈夫)
ふと後ろを見ると、マイロは1人でドラゴンを乗りこなしていた。彼は乗馬も上手いし要領は似ているのかもしれない。
「コンラッド様、シリルを見守っていてくれてありがとうございます」
一番大切な人なのに、私はシリルを最も傷つけた女。
シリルの近くにコンラッドのような人がいて良かった。
「仲は良くないと言いましたよね。実際、僕は彼が皇帝に即位後も失脚させられるものなら、隙を突いて皇位を奪ってやろうと虎視眈々と機会を窺っていましたよ」
「兄としては? コンラッド様はシリルを見守っているように見えますよ」
私の言葉にコンラッドは気まずそうに肩をすくめた。
「リオノーラ様の結婚式に参加した後、皇帝陛下は失意のどん底に落ちました。正直、引き摺り下ろすのも躊躇われる程にやつれ、何も食べられず痩せ細っていました」
時に冷たい目をするようになったシリルを怖いと感じていた。悲しみの後に来る怒り。きっと、私が彼に繰り返し抱かせた感情。彼がやつれた姿を想像するだけで胸が痛い。
「僕は全てを手に入れたと思っていた彼の過去を聞きました。千年、1人の女性を決して届かぬ存在になっても思い続けた⋯⋯羨ましい反面、同情しました。初めて無敵な彼の弱い部分を見て、応援しなくてはいけないような不思議な使命感に駆られているだけです」
「そうでしたか。コンラッド様は優しい方ですね。親兄弟でも人の不幸を蜜の味と思う人間もいますわ。シリルのお兄様が貴方で本当に良かったと心から思います」
私は眼下に望むアントワーヌの城下町を見た。
粒のように小さく見える多くの人々。
色鮮やかな建物が犇めき合う街に、商店が連なる広々とした大通り。
遠目にも活気に溢れているのが分かる。
「リオノーラ様は狡い方ですね。人々の心を掴む人心掌握に長けた指導者の一面を見せたと思えば、急に守ってあげたくなるようなか弱い女の一面を見せる。体が震えています。高いところはやはり苦手なのではありませんか?」
「慣れていないだけです。人々の暮らしが見える空。こんな素敵な場所にいるのに怖がっていたら勿体無いですわ。狡いと指摘されたのは初めてです。私自身も気が付かなかったけれど、私って狡猾かもしれません」
コンラッドは感受性の強い人。
だからこそ、強く見えても繊細なシリルの側に彼がいて良かった。
コンラッドが手綱を緩めると、ドラゴンが降下し始めた。
眼下には栄えている城下町とは違い、郷愁を感じさせるような小さな集落。
「もしかして、あれがバルテッロ村ですか?」
降下のタイミングで風が強くなり、舞い上がった髪を手で押さえながらコンラッドに尋ねた。
「はい。リオノーラ様は髪をバッサリ切ったらどうですか? 貴方様は魅惑的で危険過ぎます。このままでは皇帝陛下が不憫です」
コンラッドは女好きな見た目をしているのに、初心な男。
リオノーラの見た目は、私が転生した中でも最上級に美しい。
「その提案は却下させて頂きます。シリルには出来るだけ、私に魅力を感じて欲しいですから。千年転生を繰り返しても、心は恋する乙女なんです。コンラッド様は想い人はいないのですか?」
私は陽の光を集めキラキラと輝く銀髪を自分の口元に持っていってキスをしながら、呆れるコンラッドに尋ねた。
「いませんね。皇位継承権争いに躍起でしたから。政略的に婚約をした方はいましたが、僕が皇位を継がないと分かると離れて行きました」
「そう。それは幸運でしたね。辛い時に一緒いてくれない方と結ばれずに済んだのですから」
縁は結ぶよりも切るほうが難しい。そして、人の本質を見抜くのも至難の業。
私はセリアが表向きは可愛い妹だったので、彼女の本質が見えてきても目を背けようとした。次期国王であるカルティスを愛し寄り添うのは天命だと思い、必死に彼の身勝手な本質からは目を逸らした。
「リオノーラ様は本当に人の心を掴む天才ですね。皇帝陛下が貴方様を人心掌握の天才だとおっしゃってました。人は皆、リオノーラ様を気が付けば愛してしまうと⋯⋯」
「そんなことはありませんわ。私は、どうして妹が私を嫌っているのかさえ分かりません」
確かに私自身も大衆の心を捉えるのは得意だと自負している。
人が塊になった時の同調圧力と熱気を利用した誘導。
でも、一対一になった時、分かり合うのは何度「生」を繰り返しても難しい。
大地に辿り着き、コンラッドに抱えられながらドラゴンの背から降りる。
「妹君は嫉妬しているのではないですか? 距離が近いと嫉妬が生まれやすいです。自分とは全く違う人間なのに、常に比べてしまいます。僕も全ての魔力を持つ皇帝陛下の能力に嫉妬して苦しい思いをしました」
「コンラッド様の使える魔法は?」
「僕は光と水の魔法を使えます。正直、あまり役には立ちません」
「ご謙遜なさらないでください。一番素敵な魔法です。その2つがあれば人を助けられますわ」
私が微笑みながら言った言葉に、コンラッドが照れたように目を逸らす。
女慣れしてそうな振る舞いをする癖に、実はかなり純粋な方だ。
しばらくすると、後ろから追ってきたマイロも到着した。
シェリルが私を見つけるなり、ピンクの瞳を輝かせながら駆け寄ってくる。
「リオノーラ様、本当に来てくれたの? こっちよ」
小さな可愛い手が私の手を引く。
「待ちなさい、シェリル! 聖女様に失礼はやめて!」
集まってくる村の女性の1人が発する言葉に周りが同調。
「失礼ではないわ。シェリルがこの村に私を連れて来てくれたのよ。皆様、聖女リオノーラです。以後、よろしくお願いします」
私はそれからシェリルの母ミランダを治療し、2週間もの間アントワーヌ帝国を回った。
「2週間、長いようで短かったですね。リオノーラ様は本当に下々の者まで平等に接するのですね。ひょっとして、この旅は皇帝陛下への提言の意味も兼ねてます?」
コンラッドとはかなり仲良くなった。
彼は人が何を考えているのか常に察して行動する。
バディーを組む側としてはありがたい相手。
「提言? そんな烏滸がましい事はしませんわ」
ドラゴンを降り、皇宮に向かいながらコンラッドの鋭い指摘に笑ってしまった。
「リオノーラ様、お疲れですよね。際限なく聖女の力を使っていましたしお身体が心配です」
マイロのが心配してくれているが、この2週間驚く程自分の聖女の力が強まっているのを感じていた。
底なしに沸き起こってくる体内の聖女の力と、アントワーヌ帝国に漂う光の粒子が結合するような感覚。
「マイロこそ、疲れていない? 移動中はボンヤリしている私と違い、貴方はドラゴンも操っているのだもの」
「私は体力だけは自信があります。リオノーラ様、右足首から血が出ております」
私は思わず溜息を吐いた。
足場にあった枯れ枝で擦ったのだろう。
自分の傷は病は治せないというのは聖女の力の弱点。
咄嗟に跪いたマイロが私の負傷した足首に触れてくる。
触れられた箇所に温かな熱を感じた。
「えっ?」
「失礼致しました。無遠慮にリオノーラ様のお身体に触れてしまいました事をお詫びさせてください」
「そんな事は良いのよ。見て!」
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