聖女リオノーラの反逆〜千年の恋のためクズ夫を寝取ってください〜

専業プウタ

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12.不遜な夫。

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魔法力があるのは主に貴族で、貴族は皇宮を中心とした首都に居住。
皇族は複数の種類の魔法が使え、強い魔力を保持。
マイロに擦り傷を治せる程度の光の魔力が発現。

それらの情報を繋ぎ導き出される答え。

「コンラッド様。貴方が近くにいた事で、マイロが光魔法を微力ながら使えるようになっている可能性があります」
「確かに、先程、ブラウン卿から光の魔力を感じました」
私とコンラッドのやりとりに、マイロ・ブラウンは動揺しているようだ。

皇宮からシリルの近くに控えていた緑髪の補佐官が走ってくるのが見える。

そういえば、毎日のようにイヤリングの通信機を通してシリルが話し掛けて来たのに今日は音沙汰がない。

「はぁ、はぁ、リオノーラ様、実は皇帝陛下は今朝早くよりベルナール王国よりいらしたカルティス王子殿下と会談なさっています」

「何ですって? ねえ、コンラッド様、この通信機から今日はシリルの声が聞こえないのだけど、どういう事なのですか?」
コンラッドは私の右耳のイヤリングに手を伸ばしてきた。

「皇帝陛下がイヤリングの通信機能を遮断しています。しかし、皇帝陛下の近くにイヤリングがあれば音声の記録は録れているはずです」
コンラッドは私に丁寧にイヤリングの使い方を教えてくれた。

「カルティスが来るなんて予想外だった」
私は頭を抑えた。

カルティスは殆ど王宮から出たことがない。
他国の行事の招待は第2王子に丸投げした。
面倒臭がりで内弁慶。
それが私の知るカルティス・ベルナール。

「リオノーラ様がアントワーヌ帝国に滞在していることは、当然漏れていると思います」
マイロが眉を下げながら、私を気遣ってくる。

正直、カルティスがシリルに何を話しているのか考えるだけで気が気じゃない。
それ以上に、シリルの胸に秘めた怒りを、愚かな夫が刺激して爆発させてしまう可能性がある。
私は2度目のやり直しで、シリルが真っ先にカルティスを魔法の矢で殺害した事を思い出し身震いした。

「会談はどこでしてるの? 私も参加するわ」
「⋯⋯はい、ご案内します」
補佐官は少し迷った顔をしつつも、シリルとカルティスがいる会議室に案内してくれた。

重い朱色の扉をノックし開けると、濃紺の礼服に身を包んだシリルと白い礼服のカルティスが広い議場に2人きりで向かいあっていた。

歴代皇帝の肖像画が飾ってあるこの場所は、恐らく貴族会議などで使用される。
忙しいシリルを無作法にも約束もなしにカルティスが訪ねてきたのだろう。

自国で傍若無人に振る舞うカルティスが、自分の不敬に気がついているかは疑問。
相変わらず私を失望させ続ける夫カルティス・ベルナール。
(カルティスは使者も連れて来ないで1人で来たの!?)

「リオノーラ! 会いたかった。毎朝、起きると当たり前にいる君が隣にいないだけで、絶望していたんだよ」

カルティスが私に抱きついてこようとするので、私はするりと彼をかわした。
「カルティス、離婚届を持って来てくれたのなら、貴方と会話しても良いわよ」
冷ややかに言い放つと、カルティスは目を丸くした。

「もしかして、セリアと寝た事をまだ怒っているの? もう、1ヶ月近く前の事じゃないか」
私はシリルの顔を覗き見た。
無表情を決め込んでいるが、怒りと悲しみを必死に抑え込んでいるようにも見える。

「皇帝陛下、我が国の王子が急な訪問でご迷惑お掛け致しました。少し2人で話をしたいので、席を外して頂けますでしょうか」
「⋯⋯分かった」
シリルの憂いを帯びた後ろ姿を見て、胸が痛んだ。
重い扉が閉まる音がする。

これ以上、シリルを失望させたくない。

「カルティス・ベルナール! いい加減にして! 私は貴方ともう話すつもりはないわ」

カルティスは私の言葉を聞くなり、急に私の前に跪いて左手に頬擦りしてきた。
私は自分がまだ結婚指輪をしていたことに気が付き、彼を振り払い指輪を外し床に投げつける。指輪が床に転がるのを、彼は不思議そうに傍観。

「僕は本当にリオノーラを傷つけたんだね。君がそんなに深く僕を想ってくれていたなんて嬉しいよ。あの日、君に寝室に来るなって言われて、僕は不安になっていたんだ」

自分を不安にさせた私が悪い。
それが、カルティスの思考回路の導き出す結果。
驚愕すべき他責思考。

「カルティス、私たちは政略結婚だったけれど、夫婦になる以上、私は貴方の良いところを探して好きになろうとしたわ。でも、もう無理よ」

「何それ?! 僕は出会った瞬間からリオノーラ一筋だったのに酷いよ。君は僕の事を好きなフリをしていたの? 僕を夢中にさせといて捨てるなんて、恐ろしい聖女様だ」

私は婚約期間もいれると10年もの間、彼と多くの時を過ごした。
よく、こんなクズ男を愛そうと無駄な努力をしたものだ

「セリアと浮気したでしょ。よりによって、私の双子の妹。本当に節操がないのね。ベルナール王国も貴方が王位を継いだら終わりよ」

「大丈夫だよ。僕のことは聡明な聖女リオノーラが支えてくれるじゃないか。アントワーヌ帝国と友好条約まで結ぶなんて君は相変わらず凄い女性だ」

シリルは私の願った通り、国家間の条約を締結。
一方、私の夫は私を頼りにし、楽をする事しか考えない。

カルティスが私が投げた指輪を拾い、私の左手の薬指に嵌めようとしてくる。
私は再びその指輪を取り上げ、放り投げて彼を睨みつけた。

「カルティス、支える価値のない男に尽くす程、私は慈悲深くもないの。私を裏切ってまで、セリアが欲しかったんじゃないの?」
カルティスは転がった指輪を見ながら、静かに語り始めた。

「床に転がった指輪なんて嫌だよね。新しいものを用意するよ。リオノーラ、セリアは床に落ちている埃と同じ。君が気にする必要はないんだ」

「ど、どういうこと?」

「セリアは聖女でもなければ、血筋正しき大貴族の令嬢でもない。どこの種とも分からないまま娼婦が産んだゴミ。彼女の価値はパン一個と同じだって、エイブラハム国王陛下もおっしゃっていた。愛しいリオノーラ、これで、気が楽になったでしょ」

カルティスが得意げに微笑み伝えて来た言葉。
(聞くに耐えないわ!)

私が2度目のやり直しで知ったセリアの出生は、王家では暗黙で知られた事実。
私は慌てて自分の左耳のイヤリングの通信機能を遮断した。
シリルにクズ夫の身勝手で卑劣な言葉の数々をこれ以上聞かせたくない。
こんな男に身を捧げた自分が恥ずかしい。

「僕はあの日君に空けられた穴をパンで埋めようと愚かな真似をした。でも、貧民街のパンが高貴な僕の口に合うわけがない。リオノーラ、僕には君じゃなっきゃダメなんだ。拗ねてないで僕と一緒にベルナール王国に戻ろう」

「カルティス、私は貴方の元に戻るつもりはないの。私は噂レベルではなく、本当に不妊なの。不妊になる毒を飲んでるわ」

「不妊になる毒? なんで、そんな⋯⋯。ああ、君に対抗意識を燃やしてるあのパン女が毒を盛ったのか。可哀想なリオノーラ。別に子供なんかいらないよ、君さえいれば」

私を抱きしめようとするカルティスを押し返す。

王位を継ぐ人間とは思えない無責任な発言。
カルティスはその場しのぎで調子の良いことばかり口にする。
(もう、うんざりよ)

瞬間、彼の足元に大きな黒い穴が出現。
カルティス・ベルナールは私の前から姿を消した。
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