聖女リオノーラの反逆〜千年の恋のためクズ夫を寝取ってください〜

専業プウタ

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13.嫉妬。

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私は突然の出来事にしゃがみ込み、カルティスの消えた真っ暗な穴に触れようとする。
すると眼前の穴は一瞬にして消えた。
(闇魔法?)

背後から温もりを感じる。

「シリル? 貴方がやったの? カルティスは今どこに?」
シリルの体から震えを感じて、私は振り向いて彼を強く抱きしめ返した。

「闇魔法で飛ばした。あの男の頭に強く残っている場所に飛ぶだろう」
「じゃあ、きっとベルナール王宮に戻ってるわ。だから、そんなに怖がらないで」
私はシリルのサラサラの黒髪に指を通す。
「怖がってなどいない。アイツには消えて欲しい」

彼の目を真っ直ぐに見る。
ルビーのような瞳に閉じ込められた憤怒。

私は思わずシリルの頬を包み込み、彼の怒りで震える唇を塞ぐ。
本来優しい彼に、酷い事を言わせてしまっているのは私。

ゆっくりと唇を離すと、シリルが熱の籠った瞳で見つめてくる。
彼がゆっくりと私の唇を親指でなぞり、顔を近づけてきた。
私は咄嗟に顔を横にして、彼のキスを避ける。

「ダメ! それは離婚が成立してからよ」
「君から仕掛けたのに理不尽だな」
シリルは不満そうに呟くと、私の頬、首筋に順にキスを落としてきた。

「ダメだって言ってるでしょ。それ以上されたら、私も止まらなくなってしまうわ」
「理性を失って、俺を只管に求めてくる君が見たいんだ」
心臓の鼓動が速くなる。

その時、ノックの音がして扉がゆっくりと開いた。
私は驚いて開いた扉の方を見ると、気まずそうな顔をしたコンラッドがいた。

「申し訳ございません。皇帝陛下、聖女様。続きは寝室などに移動して行って頂けますか? この大会議場で、1時間後、建国祭準備の為の臨時貴族会議が開催されます」

顔が驚くほど熱くなり、逆に頭が冷えて来た。
浮遊感に、シリルが私を横抱きにして立ち上がったのが分かる。

「シリル! 私は冷静になったわ。お願いだから降ろして! 私もベルナール王国の解放日に戻る準備をしないといけないの」
「続きはしないのか?」

シリルが子犬のように、縋るような目つきで見つめてくる。しっかり者の彼が急に甘えてくるのに昔から弱い。

「そんな目で見ないで。本当に、私を怖がらせたり、ときめかせたり、罪な人。カルティスとの離婚を成立させないと、続きはできないわ」
「知ってる。君はそういう女だ」
彼が諦めたように、私を床に優しく降ろしてくれる。

「それにしても、この扉はとても分厚く見えるのに、外には声が漏れているのですか?」
「実は僕は耳が人よりずっと良いんです」
コンラッドが得意げに答えてくれた。

「素敵! 隠密行動もできますね」
私とコンラッドが笑い合っていると、シリルが寂しそうな目で見つめてくるのが分かった。

「シリル、少し今後について私の部屋で話さない?」
シリルの瞳が期待で輝くのが分かったが、これから話す事は彼の心を曇らすかもしれない。

部屋に移動してベッドに座ると、彼も隣に座って来た。
「シリル、私は不妊なの。だから、結婚できても跡継ぎは産めない。でも、貴方には私以外の女を抱かないで欲しい」

アントワーヌ帝国はベルナール王国と同様、一夫多妻制。
私は彼に跡継ぎを作る為には、皇妃を娶るように伝えるつもりだった。それなのに口から出たのは身勝手な私の本音。
皇帝という彼の立場を理解しているとは到底思えない、無責任な発言。

シリルは無言で私を抱きしめる。体の中に熱いものが流れ込む感覚。身体から熱が溢れてどうにかなりそうだ。
「はぁ、はぁ、何これ」
「俺の魔力を流した。不妊問題は解決したと思うぞ」

私は思わず、目をパチクリさせた。

そんな私の眦に少し溜まった涙に彼が口付けてくる。
「深刻な顔で何をいうかと思えば、俺が君以外の女を抱かないなんて当たり前じゃないか」
シリルの言葉に涙と「好き」という気持ちが溢れ出す。
(早く、また彼の女になりたい)

「じゃあ、不妊が治ったか今から試してみるか?」
彼にゆっくりとベッドに押し倒されて、私は驚いてしまった。

「私の気持ち読んだ?」
「うん、読んだ」
シリルが笑いながら私の額に口付ける。

「ここでストップ! ここからは、私がシリルの妻になったらね」
「千年近く待ったんだ。幾らでも待てるよ」
彼が私を抱き起こして、背中を撫でてくれる。
一緒にいるだけで「好き」が溢れる感覚に溺れていたくなる。

「シリル、私、ベルナール王国には1人で決着をつけてくるわ。マイロに帝国で魔法の使い方を学ばせてくれる? 彼、光の魔力が発現したみたいなの。今、ベルナール王国に彼が戻るのは勿体ない気がするわ」

「マイロの件は了承した。しかし、君が1人でベルナール王国に戻るのは受け入れられない。コンラッドを同行させる。光の魔力の治療師も5名用意したから連れて行くと良い」

私を預けるなんて、シリルはコンラッドを信頼しているようだ。

シリルがベルナール王国に赴かない事に安堵する自分。

2度目のやり直し、彼がベルナール王宮を血の海にした。
穏やかに振る舞っていても、彼が今にも暴発しそうな怒りを秘めているのを感じる。

「分かったわ。また、ドラゴンを貸してね。闇魔法の転移だと、私は貴方の腕の中に戻って来ちゃいそう」
私の言葉にシリルが顔を真っ赤にして俯いた。
(揶揄い過ぎた?)

「シリル?」
「本当は片時も離れず君といたい。アイツの所に行って欲しくない。でも、待つよ。俺の心はいつも君の側にある事を忘れないで」
彼はイヤリングのついた私の耳を、人差し指で柔らかく触りながら甘く囁いた。

♢♢♢

2日後、私はコンラッドと5人の治療師と共にベルナール王国へ旅立った。
私はまだ1人でドラゴンに乗れないので、コンラッドと2人乗り。
5人の治療師は手慣れた動作でドラゴンに跨っていた。

解放日に人々が集まるベルナール王宮の大聖堂の前。
人々の真ん中に見慣れないモノが置いてある。

(断頭台?)

平和を象徴する解放日には似つかわしくない、人が人を処刑する為に作った処刑道具。
垂直の木材の上にセットされた鈍い色をした斧から、罪人の絶命の叫びが聞こえてくるようだ。
「罪人を裁く」という行為は、人々に神になったような高揚感を与える。

「コンラッド様、直ぐに降下してください」
「分かりました。何やら物騒ですね」

ドラゴンから降りた私に人々が気が付く。
「リオノーラ様! 皆、我々の聖女様がお帰りだ」
不気味な程の異常な熱気に包まれる。

人々が急に道を開けたと思ったら、エイブラハム国王とカルティスが現れた。
「リオノーラ、国王陛下が君は解放日には戻ってくるとおっしゃっていたけれど、本当に来てくれた」

私を見つけるなりカルティスが駆け寄ってくる。
「これはどういうこと? 今日は解放日よ。罪人の刑を執行する日ではないはずだわ」
「君に不妊になる毒を盛った罪で、パン女を処刑する事になったんだ」

弾むような声で目を輝かせて私に語るカルティス。
1ヶ月前に情を交わした女を楽しそうに処刑するクズ夫。

その時、騎士たちに囲まれ断頭台に近付く深海のような瞳をした女性と目が合った。後ろ手を縛られ見窄らしい服を着させられて、腰までの銀髪を耳下までバッサリ切られている。

「セリア!」
私が声を掛けると、セリアは静かに目を逸らした。

「死ね! リオノーラ様に嫉妬した卑しい女め!」
「何が聖女だ! この嘘吐きが!」
「殺せ! 殺せ! 殺せ!」
私が愛した人々が、見たこともない醜い形相をしていた。

断頭台の前に連れてかれたセリアは、一呼吸すると口を開いた。

「私、カルティス・ベルナール王子殿下の子を妊娠してます」
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