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16.子供を作ろう。
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「それでは、今から、血縁検査を行います」
コンラッドが血縁検査について説明する。やり方は非常に簡単。
2人の人間が魔水晶に触れ、赤く光れば血の繋がりがあるという事が証明される。
台の上にターコイズブルーのベルベットの布がひかれ、無色透明の魔水晶が置かれた。
「懐かしいな。ここで僕とリオノーラは『永遠の愛』を誓ったよね」
「カルティス、黙って。まずは、貴方の番よ」
カルティスが肩をすくめながら、魔水晶の前に来る。
「エイブラハム国王陛下、いや、父上。今更ですね」
「ああ、そうだな」
並ぶと疑うことの無い程に似ている親子。
魔水晶に2人が触れると、当然のように赤く光った。
エイブラハム国王を残し、意味深な笑いをしながらカルティスが私の隣に来る。
「国王陛下が第2王子と第3王子の血縁を疑っていると思ったから、この検査を提案したの? そんなに僕に王位を継がせたくない?」
「カルティス、静かにして。この検査は王家の行く末を左右するの。人の人生に関わるのだから、神聖に行われなければいけないわ」
第2王子レアードの母親であるクリスティナ王妃に目を向けると、彼女は震えながら俯いていた。
私は自分の想定とは逆の結果が出るのではないかと不安になる。
「エイブラハム国王陛下とカルティス王子殿下の血縁が確認されましたわ。では、次にレアード王子殿下お願いします」
私の言葉にレアード王子が魔水晶の前まで来る。
エイブラハム国王は先程とは違い、凍てつくような冷たい目をしていた。
赤髪に薄茶色の瞳をしたレアード王子は、クリスティナ王妃によく似ている。
エイブラハム国王とレアード王子が同時に魔水晶に触れる。
魔水晶は無色透明のまま、全く反応しなかった。
「クリスティナ・ベルナール! やはり、僕は国王陛下の実子では無いのですね!」
激昂するレアード王子。
崩れ落ちるように座り込み涙を流しながら、只管に謝るクリスティナ王妃。
(王妃が托卵? 嘘でしょ?)
私はとんでもないパンドラの箱を開けてしまった衝撃に言葉を失う。
そんな私を気遣いコンラッドが、代わりに進行を進めてくれた。
続いて、オスカー王子がエイブラハム国王と共に魔水晶に触れる。
魔水晶は全く反応せず無色透明のまま。
「私は自分の血筋については知ってました。リオノーラ様、あまり気に病まないでください」
私を気遣うような言葉を残し、オスカー王子は母親を連れて大聖堂を出て行った。
カルティスが私の手を握ろうとしてきて、私はそれを振り払う。
「僕を避けないで。繊細な君の心が傷ついているのを放って置けないんだ。僕はあの2人を弟と思った事はないから安心して」
憎むべきは私の浅はかさ。
知らなくて良い真実が、私のせいで明るみになり人を傷つけてしまった。
「次は、私?」
7歳の王女サブリナに声を掛けられ我に返る。
金髪に黄金の瞳をした王女サブリナは、エイブラハム国王にそっくりだ。彼女の母親は1年前に感染症で亡くなっている。
(ここで、もしエイブラハム国王と血縁関係は無いという結果が出てしまったら⋯⋯)
「リオノーラ、問題ない。サブリナは私の子だ」
エイブラハム国王が魔水晶に手を触れたのに合わせてサブリナ王女も触れる。
魔水晶は赤く光り、サブリナが王家の血統だと証明された。
私はコンラッドにアイコンタクトを送り、サブリナ王女を大聖堂の外に連れ出してもらう。
「エイブラハム国王陛下がカルティスになぜ王位を継承させたいのか分かりました」
私は自分が余計な事をしてしまったのを悔いていた。
「余の心を案じる必要はない。余は既に知っていた事だ」
「知っていた事?」
平然と妻が托卵していたという事を受け入れている男。
クリスティナ王妃はサルボレ王国の出身。第3王子オスカーのお母上はベルナール王国で最も歴史が深い公爵家の出身。
政治的な思惑が見え隠れする。
「余が愛しているのは、カルティスの母親フローラだけだ。カルティスの命と引き換えに亡くなったフローラを想い他の女は抱いていない」
エイブラハム国王の矛盾。
やはり彼は間違いなくカルティスの父親。
「サブリナの母親は下女。フローラを懐かしんで、手をつけただけのこと。サブリナには何の感情も湧かぬ。やはり、余の子は愛するフローラが産んだカルティスだけだ」
王位継承権を持つ人間のうち2人は王族ではない。
狂った王家。
「リオノーラ、大丈夫? 顔が真っ青だ」
カルティスが私に近づいて手を伸ばして来る。
「やめて! 触らないで」
思わず彼の手を叩いた。
「リオノーラ、いい加減にしないか。君は聖女である前に、カルティスの妻で、この国の次期王妃。腹を決めなさい」
エイブラハム国王の姿が傾いて見える。
シリルと一緒になりたいというのが我儘だとしても、再び彼の妻になりたい。
転生できず無に返っても構わない。
聖女の力を喪失することも怖くない。
最期は愛する人と一緒がいい。
視界がぼんやりして来て、私の世界はそのまま反転した。
目を開けると、私を見下ろすカルティスの顔があった。閉められた深緑色のカーテンに、カルティスの肖像画の飾ってある部屋。
見覚えのあるカルティスとセリアの浮気現場。
耳を澄ますとカーテン越しに微かに聞こえる雨音。
「ここは、カルティスの寝室?」
「そうだよ」
背に柔らかさを感じ、手首には圧迫感。
私はベッドの上に寝かされ手首を縛られていた。
「リオノーラ、君、不妊じゃなかったんだね。本当に良かった。今から僕たちの子供を作ろう」
コンラッドが血縁検査について説明する。やり方は非常に簡単。
2人の人間が魔水晶に触れ、赤く光れば血の繋がりがあるという事が証明される。
台の上にターコイズブルーのベルベットの布がひかれ、無色透明の魔水晶が置かれた。
「懐かしいな。ここで僕とリオノーラは『永遠の愛』を誓ったよね」
「カルティス、黙って。まずは、貴方の番よ」
カルティスが肩をすくめながら、魔水晶の前に来る。
「エイブラハム国王陛下、いや、父上。今更ですね」
「ああ、そうだな」
並ぶと疑うことの無い程に似ている親子。
魔水晶に2人が触れると、当然のように赤く光った。
エイブラハム国王を残し、意味深な笑いをしながらカルティスが私の隣に来る。
「国王陛下が第2王子と第3王子の血縁を疑っていると思ったから、この検査を提案したの? そんなに僕に王位を継がせたくない?」
「カルティス、静かにして。この検査は王家の行く末を左右するの。人の人生に関わるのだから、神聖に行われなければいけないわ」
第2王子レアードの母親であるクリスティナ王妃に目を向けると、彼女は震えながら俯いていた。
私は自分の想定とは逆の結果が出るのではないかと不安になる。
「エイブラハム国王陛下とカルティス王子殿下の血縁が確認されましたわ。では、次にレアード王子殿下お願いします」
私の言葉にレアード王子が魔水晶の前まで来る。
エイブラハム国王は先程とは違い、凍てつくような冷たい目をしていた。
赤髪に薄茶色の瞳をしたレアード王子は、クリスティナ王妃によく似ている。
エイブラハム国王とレアード王子が同時に魔水晶に触れる。
魔水晶は無色透明のまま、全く反応しなかった。
「クリスティナ・ベルナール! やはり、僕は国王陛下の実子では無いのですね!」
激昂するレアード王子。
崩れ落ちるように座り込み涙を流しながら、只管に謝るクリスティナ王妃。
(王妃が托卵? 嘘でしょ?)
私はとんでもないパンドラの箱を開けてしまった衝撃に言葉を失う。
そんな私を気遣いコンラッドが、代わりに進行を進めてくれた。
続いて、オスカー王子がエイブラハム国王と共に魔水晶に触れる。
魔水晶は全く反応せず無色透明のまま。
「私は自分の血筋については知ってました。リオノーラ様、あまり気に病まないでください」
私を気遣うような言葉を残し、オスカー王子は母親を連れて大聖堂を出て行った。
カルティスが私の手を握ろうとしてきて、私はそれを振り払う。
「僕を避けないで。繊細な君の心が傷ついているのを放って置けないんだ。僕はあの2人を弟と思った事はないから安心して」
憎むべきは私の浅はかさ。
知らなくて良い真実が、私のせいで明るみになり人を傷つけてしまった。
「次は、私?」
7歳の王女サブリナに声を掛けられ我に返る。
金髪に黄金の瞳をした王女サブリナは、エイブラハム国王にそっくりだ。彼女の母親は1年前に感染症で亡くなっている。
(ここで、もしエイブラハム国王と血縁関係は無いという結果が出てしまったら⋯⋯)
「リオノーラ、問題ない。サブリナは私の子だ」
エイブラハム国王が魔水晶に手を触れたのに合わせてサブリナ王女も触れる。
魔水晶は赤く光り、サブリナが王家の血統だと証明された。
私はコンラッドにアイコンタクトを送り、サブリナ王女を大聖堂の外に連れ出してもらう。
「エイブラハム国王陛下がカルティスになぜ王位を継承させたいのか分かりました」
私は自分が余計な事をしてしまったのを悔いていた。
「余の心を案じる必要はない。余は既に知っていた事だ」
「知っていた事?」
平然と妻が托卵していたという事を受け入れている男。
クリスティナ王妃はサルボレ王国の出身。第3王子オスカーのお母上はベルナール王国で最も歴史が深い公爵家の出身。
政治的な思惑が見え隠れする。
「余が愛しているのは、カルティスの母親フローラだけだ。カルティスの命と引き換えに亡くなったフローラを想い他の女は抱いていない」
エイブラハム国王の矛盾。
やはり彼は間違いなくカルティスの父親。
「サブリナの母親は下女。フローラを懐かしんで、手をつけただけのこと。サブリナには何の感情も湧かぬ。やはり、余の子は愛するフローラが産んだカルティスだけだ」
王位継承権を持つ人間のうち2人は王族ではない。
狂った王家。
「リオノーラ、大丈夫? 顔が真っ青だ」
カルティスが私に近づいて手を伸ばして来る。
「やめて! 触らないで」
思わず彼の手を叩いた。
「リオノーラ、いい加減にしないか。君は聖女である前に、カルティスの妻で、この国の次期王妃。腹を決めなさい」
エイブラハム国王の姿が傾いて見える。
シリルと一緒になりたいというのが我儘だとしても、再び彼の妻になりたい。
転生できず無に返っても構わない。
聖女の力を喪失することも怖くない。
最期は愛する人と一緒がいい。
視界がぼんやりして来て、私の世界はそのまま反転した。
目を開けると、私を見下ろすカルティスの顔があった。閉められた深緑色のカーテンに、カルティスの肖像画の飾ってある部屋。
見覚えのあるカルティスとセリアの浮気現場。
耳を澄ますとカーテン越しに微かに聞こえる雨音。
「ここは、カルティスの寝室?」
「そうだよ」
背に柔らかさを感じ、手首には圧迫感。
私はベッドの上に寝かされ手首を縛られていた。
「リオノーラ、君、不妊じゃなかったんだね。本当に良かった。今から僕たちの子供を作ろう」
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