聖女リオノーラの反逆〜千年の恋のためクズ夫を寝取ってください〜

専業プウタ

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17.氷の魔法。

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「カルティス・ベルナール、この拘束を解きなさい」
「嫌だよ。解いたら君は聖女の力を使って、僕の時を止めて逃げるだろ」

魔法と違い、聖女の力は手のひらに力を集め放出。
夫カルティスには私の弱点が当然露見していた。

「子作りするなんて、何を言ってるの? そもそも、貴方は不妊になる毒を飲んだんじゃないの?」
カルティスが、その場限りの出任せを言ったって分かっている。

「不妊になる毒を取り寄せてはいたよ。君が不妊となると、僕は側室を娶ることになる。でも、愛してもいない女との子など欲しくないんだ」
「女好きの浮気者がよく言うわ」

カルティスが毎晩女遊びをするようになったのは、2度目のやり直しの時。セリアを側室にしただけでなく、他4人もの側室を迎えた。それだけではない、毎晩のように高級娼婦を呼び女と酒に溺れた。彼に苦言を呈したフィリップ・カルダン伯爵は宰相職を解かれ隠居を余儀なくされた。

エイブラハム国王に王位を他の王子に継承させるように何度進言しても受け入れられなかった。

私が息苦しい日々を送っていた2度目の結婚生活。
不妊になる毒をカルティスは飲んでいた可能性はある。
5人も側室を娶り、毎晩女遊びに耽ったのに誰も子を成さなかった。

「たった1度の過ちも許してくれないの?」
私が1度目の結婚でカルティスとセリアの関係に気がついたのは、結婚して1年が経った時だ。
カルティスがセリアと関係を持ったのが今回初めてだと言われても、反論する材料がない。

「私を絶対に裏切らない、浮気をしないような男に尽くしたいの」
「リオノーラ! 君には心配を掛けたくなくて話していなかったけれど、セリアは隙を見ては僕に擦り寄って来たんだ。あの日珍しく王宮に来ていた彼女に出会したら、自分をリオノーラと思って抱いてくれて構わないと誘惑された」

セリアの行動は相変わらず謎だが、夜遊びと公式行事の時以外はレシャール侯爵邸からほぼ出ない彼女がなぜ王宮にいたのかは引っ掛かる。

「言い訳なんて聞きたくないわ」
「あの日、君が僕を拒絶しなければ、僕たちはずっと仲が良い夫婦でいられたんだよね」
カルティス・ベルナール名物、呆れる程の他責思考。

「たらればの話は無意味。私はもう貴方とは同じ空気も吸いたくない。貴方も私の気持ちが分かっているから、こんな風に拘束しているんでしょ。高貴な生まれと敬われる王族のする事とは思えないわ。早く拘束を解きなさい」

すると、カルティスは私の右耳にスッと手を伸ばしてきた。
冷んやりとした柔らかい指先の感触に身震いする。

「その右につけているエメラルドのイヤリングって、盗聴して音声が記録できるんだよね。同じ物をアントワーヌ帝国で、ある方が付けていた気がするんだけど⋯⋯」
カルティスはそのまま私のイヤリングを取りあげた。

イヤリングについたエメラルドを撫で、様々な角度で観察し出す彼の次の一手が怖い。

「これって、通信機能のある魔法道具だったりする?」
「⋯⋯」
「シリル皇帝陛下、僕の妻が魅力的なのは分かりますが、間男のような真似はやめてください」
「返して! やめて! カルティス!」

私の反応を冷ややかな目で確認したカルティスは、イヤリングを握り潰した。
彼の右手から血がポタポタ滴る。

「シリル皇帝陛下に心奪われたの? それは一時的な気の迷いだよ。君は僕と愛し合う為に生まれてきた聖女。可哀想なリオノーラ、君も僕と同じように心の隙間に入り込まれたんだね」

カルティスが私の襟元に手を掛ける。

「やめて、穢らわしい! 浮気相手と事に及んだベッドで妻を抱くなんて、どれだけ節操がないの?」
「あの夜の忌々しい記憶を、本物のリオノーラで上書きしたいんだ」
カルティスが私の首元に顔を埋めてきて悪寒が走る。

「ああ、リオノーラの匂いだ。薔薇のように高貴で甘い香り。子供ができれば、また君の気持ちは僕に戻ってくるはずだ」
(もう、嫌! こんな男消えて!)

その瞬間、カルティスが真っ赤な炎に包まれベッド脇に転がった。
黒煙と共にターゲットを燃やし尽くすまで消えない炎。
⋯⋯火の魔力によるモノだわ。

気が付くと雨音がおさまっている。

拘束されたロープが凍っていて、パキッと折れた。
導かれるように深緑色のカーテンを開けると、雨は季節外れの雪に変わっていた。
驚くほどのスピードで雪の勢いが増している。
窓ガラスに映った私の瞳は、シリルのようなルビー色。

突然、窓が結露し始めたかと思うと、燭台の火が消えた。
窓に亀裂が走り、全ての窓が音を立て割れていく。
咄嗟に、室内を見渡して声を失った。

(城が凍ってる!)
ベッドの脇に焼けて真っ黒焦げになった夫。
私は彼に駆け寄り、口元に手をやる。
(か細いけれど、息はしてるわ)

今にも息絶えそうな彼に聖女の力を流すと、重度の火傷が回復し、肌が元の色を取り戻すのが分かった。

カルティスは熱の衝撃で気を失っているが、時期に回復するだろう。

部屋の扉の部分だけ氷が溶け出しているのに気が付き、近寄る。
ゆっくりと開く扉の先にいたのは、疲弊を隠せないコンラッド。

「コンラッド。この氷は貴方の魔法?」

コンラッドはゆっくりと頷く。
大きな魔力を放出したせいで、明らかに体に負担がかかっている

「リオノーラ様、怖い思いをしましたね。遅れて申し訳ございません」

コンラッドの声が掠れていて、明らかに体調が悪そうで心配。
突然、彼が骨が折れそうなくらいの力で私を抱きしめてきた。

コンラッドの体が死人のように冷たい。

「私の方こそ、心配かけてごめんなさい」
彼の背に回した手のひらから聖女の力を流す。
彼の体に温もりが戻っていく。

コンラッドの背中越しに、夜間警備の騎士たちが皆凍っているのが見えた。

「コンラッド、私は大丈夫よ。どうして、私は凍らずに済んでいるの? それに、さっき私の目が赤くなって魔法の炎が発現したの」

コンラッドは「失礼します」と呟き、私の首の斜め後ろに手をやる。
私は突然の事に緊張して縮こまった。

「ここに、刻印があります。皇帝陛下がリオノーラ様に自分の火の魔力を使用権と共に移しています」

必死に首を回して確認しようとするも、自分では見えない箇所。

シリルに抱きしめられ、彼から燃え上がるような熱を感じた時があった。

あの時に、私に魔力を譲渡したということかもしれない。

「シリルは私に魔力譲渡の件を話さなかったわ。火の魔法の使い方も聞いてない」

私の体が凍らないようにシリルの火の魔力が守っているという事は理解した。

しかし、先程、突然燃え上がったのは明らかに魔力の暴発。
(教えてよシリル、昔は何でも話してくれたじゃない)

私からは想像もつかない経験をし、今は大帝国の皇帝でもあるシリル。
今の彼の目には、私は綺麗事ばかりの浅はかな女に映っているのかもしれない。

願わくば、チェルシーだった頃のように彼の頼れる相棒になりたい。

「魔力の使い方を聞いても、使わないと思われたのではないでしょうか?」

まるで、私のネガティブ思考を察して、元気づけるような言葉を掛けてくれるコンラッド。
確かに心で憎しみを感じても、防戦一方で攻撃に滅多に転じないのが私。

「コンラッドは皇帝陛下だけでなく、私の事もよく理解しているのね」

コンラッドは無言で私から体を離すと、切なそうに見つめて来た。
「コンラッド、元気がないように見えますが大丈夫ですか?」
「元気ですよ。身体も貴方の聖女の力で完全回復しました。リオノーラ様、とりあえずこの城を出ましょう。追っ手の来ない所まで避難次第、城を解凍し光の魔力を流します。死者が出ないように細心の注意を払うのでご安心ください」

私は笑顔を作りながら頷いた。
皇族だからかもしれないが、コンラッドはかなりの魔力の持ち主。
心強い味方をシリルは私に付けてくれた。

「リオノーラ様、移動しながらお話させてください。サブリナ王女が暗殺者に狙われました。おそらくエイブラハム国王の手先です」
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