聖女リオノーラの反逆〜千年の恋のためクズ夫を寝取ってください〜

専業プウタ

文字の大きさ
19 / 22

19.聖女の義務

しおりを挟む
「そんな訳にいかないって分かってますよね。私は聖女リオノーラ・ベルナールです。この王国の民を守る義務があります」

7歳のサブリナ王女も母親を失いながら、狂った王家で耐えている。


「分かりません。貴方が本当に理解できません。リオノーラ」
突然呼び捨てにされてドキッとした。
彼とは随分と親密になり助け合ってきた。
今更、名前を呼ぶのに敬称を付けろなどと言いたくはない。

「どういった事が理解できませんか? 立ったままではなく、隣に座ってください。私もコンラッド様を理解したいし、私の事を知って欲しいです」

コンラッド様は一向に私に近づこうとせず、その場に立ち尽くしている。

「理解してますよ。最近では貴方の声ばかり拾ってしまうんです。皇帝陛下と2人っきりになると、蜂蜜のような甘い声で寄りかかるのですね」

「恥ずかしいですわ。あんまり聞かないでください」
私は思わず真っ赤になる顔を手で隠そうとするも、両手首を彼に掴まれてしまう。

「どんな顔で甘えているんですか? 気になって仕方がないんです」

貫かれるような真剣な眼差し。
愛するシリルに似たルビー色の瞳。

思わず私は目を逸らした。

「急いで今後の対策について話しましょう。コンラッド様は、もうアントワーヌ帝国に戻ったらいかがですか? 忙しいでしょうに、お手を煩わせて申し訳ございませんでしたわ。ここからは我が国の問題ですので⋯⋯」
言い終わらない内に口を塞がれてた。
(えっ? なんで?)

私は慌てて彼を押し返した。
「初めて出会った時かから、ずっと触れたかったんです。謝るつもりはありません」
今、コンラッドに不意打ちにキスされた。
シリルを失望させる恐怖に襲われる。

「コンラッド様、アントワーヌ帝国に戻ってください。1年に1度の建国祭の真っ最中ですよね。シリルだけではなく、貴方様もお仕事が山積みなはずです」

私の言葉にコンラッドは諦めたように笑う。

「戻りたくないです。貴方の側に居させてください。リオノーラを好きにならないなんて不可能です」
「私もコンラッド様が好きですよ」
軽い感じに返して、深刻な雰囲気を変えようと試みる。

「僕の好きはカルティス王子殿下と同じ、リオノーラを抱きたいという好きです」
(『抱かれたら蕩けそうな程の色気があったわよね』)
セリアの発言が蘇り、体が熱くなる。
熱っぽい視線で見つめるコンラッドの美貌に当てられそうになった。

私は咄嗟に右耳に触れる。
そこにエメラルドのイヤリングはないけれど、体の中には私の愛する男が宿っている。

「リオノーラの容姿は私が転生した中でも傑出していますからね」
私は笑顔を作りながら、立ち上がった。
動揺しているのを悟られてはいけない。

窓際に近づき、そっと淡い桃色のカーテンを開ける。

「雪、止みましたね」
「雪が止んだから、早くアントワーヌ帝国に帰れと言いたいのですか? そんなに僕の気持ちはリオノーラにとって迷惑ですか?」

心悲しげなコンラッドの表情に心臓の鼓動が速くなる。

「⋯⋯迷惑です。これ以上、シリルを傷つけたくありません」
「何度も転生できるんですよね。ならば、また何処かで2人は出会えます。僕は初めて心惹かれる女性に出会えたんです。僕の人生は1度きりです」

私はこの「生」で終わりにするつもりで生きている。

不安定な「転生術」を掛けられたシリルは来世はどうなるのだろう。
「転生術」は成功率も僅かな奇跡の術。
その伝説のような危なっかしい術を、私のエゴで愛する人に掛けた。

「無理なんです。私が、もうシリルの事しか考えられないくらい彼を欲しているんです」

絞り出すように伝えた言葉。
コンラッドが今にも泣きそうな顔をしながら、私を抱きしめてくる。
ブワッと身体の隅々まで何かが流れたのが分かった。

「僕だって分かってます。リオノーラと皇帝陛下の関係を嫌という程聞かされてきましたから。今、僕の水の魔力を貴方に譲渡しました」

私は首を回して刻印を確認しようとするも、また見えない位置にあるようだ。
コンラッドが私の後ろに周り、首の後ろ辺りを指差してきた。

「魔力の使い方をお教えしますね」
「結果をイメージして発する。違いますか?」
「当たりです。さすが、千年生きた年の功がありますね」
「年寄り扱いしないでください」

むくれた私を見て、コンラッド様が笑ってくれて安堵した。
マイロが私のくるぶしに触れただけで傷を治したのは、「治って欲しい」という願いが引き起こしたもの。私が「消えて欲しい」と恐ろしくも願ったら、夫が火だるまになった。だから、何となく力の使い方は想像できる。

「クローゼットに様々なサイズの服が何着か用意してあるので使ってください」

私は頷きながらクローゼットを開ける。変装出来そうな程、多様な服が並んでいた。不意に私の格好をいつも真似していた双子の妹の姿が脳裏に蘇る。

「⋯⋯セリアは大丈夫なのでしょうか? 彼女もエイブラハム国王の不興を買っています!」

ふわっと後ろから抱きしめられ、温もりを感じる。
その熱に頭が朦朧としてくるのは、今日は色々あって疲れているから。

「そういうとこ⋯⋯もう、これ以上貴方を僕に教えないでください」
「それは一体どういう意味ですか?」

私は突然体を反転させられる。
顔を赤くしたりして初心な男だと思っていたが、箍が外れてしまったようだ。

「セリア嬢は貴方に毒を盛っていたのですよ? そんな風に優しく心配したりしないでください。もう、これ以上、思いやりに溢れた貴方を知りたくない」

私は侯爵家を勘当され貴族ではなくなったセリアを、貴族の令嬢のようにコンラッドが呼んでくれて嬉しく思った。

「セリアは不平等に傷付いてきたんです。私は1番近くにいたのに苦しい彼女の胸の内に気が付けなかった」

嫌がらせをされた事ばかりに目を向けて、彼女を鬱陶しく思ったこともある。

平等を謳う聖女とは聞いて呆れる。

私は自分が特別に扱われる事を当然のように享受し続けた。

私の特権意識の最大の被害者はシリル。
彼を愛し過ぎて、私は自然の摂理に反して彼との別れを拒絶。
彼を苦しめると分かっていたら、「転生術」など掛けなかった。
私の傲慢で身勝手に対する罰を、私ではなく彼に与えた神は残酷。

「今、皇帝陛下の事を考えてますね? 今だけで良いので、僕を見てください。僕にもお慈悲をください、優しい聖女様。これで、最後にします。だから、貴方を求めてやまない哀れな男をお許しください」

コンラッドが聞こえるか分からないような声で呟く。
私を焼き尽くそうとしているような熱い眼差し。
そっと両手の指を絡められ、彼の顔が近付いてきた。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻が通う邸の中に

月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。

寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。 ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。 シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。 言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。 ※設定はゆるいです。 ※溺愛タグ追加しました。

【完】私の初恋の人に屈辱と絶望を与えたのは、大好きなお姉様でした

迦陵 れん
恋愛
「俺は君を愛さない。この結婚は政略結婚という名の契約結婚だ」 結婚式後の初夜のベッドで、私の夫となった彼は、開口一番そう告げた。 彼は元々の婚約者であった私の姉、アンジェラを誰よりも愛していたのに、私の姉はそうではなかった……。 見た目、性格、頭脳、運動神経とすべてが完璧なヘマタイト公爵令息に、グラディスは一目惚れをする。 けれど彼は大好きな姉の婚約者であり、容姿からなにから全て姉に敵わないグラディスは、瞬時に恋心を封印した。 筈だったのに、姉がいなくなったせいで彼の新しい婚約者になってしまい──。 人生イージーモードで生きてきた公爵令息が、初めての挫折を経験し、動く人形のようになってしまう。 彼のことが大好きな主人公は、冷たくされても彼一筋で思い続ける。 たとえ彼に好かれなくてもいい。 私は彼が好きだから! 大好きな人と幸せになるべく、メイドと二人三脚で頑張る健気令嬢のお話です。 ざまあされるような悪人は出ないので、ざまあはないです。 と思ったら、微ざまぁありになりました(汗)

王家の血を引いていないと判明した私は、何故か変わらず愛されています。

木山楽斗
恋愛
第二王女であるスレリアは、自身が王家の血筋ではないことを知った。 それによって彼女は、家族との関係が終わると思っていた。父や母、兄弟の面々に事実をどう受け止められるのか、彼女は不安だったのだ。 しかしそれは、杞憂に終わった。 スレリアの家族は、彼女を家族として愛しており、排斥するつもりなどはなかったのだ。 ただその愛し方は、それぞれであった。 今まで通りの距離を保つ者、溺愛してくる者、さらには求婚してくる者、そんな家族の様々な対応に、スレリアは少々困惑するのだった。

亡き姉を演じ初恋の人の妻となった私は、その日、“私”を捨てた

榛乃
恋愛
伯爵家の令嬢・リシェルは、侯爵家のアルベルトに密かに想いを寄せていた。 けれど彼が選んだのはリシェルではなく、双子の姉・オリヴィアだった。 二人は夫婦となり、誰もが羨むような幸福な日々を過ごしていたが――それは五年ももたず、儚く終わりを迎えてしまう。 オリヴィアが心臓の病でこの世を去ったのだ。 その日を堺にアルベルトの心は壊れ、最愛の妻の幻を追い続けるようになる。 そんな彼を守るために。 そして侯爵家の未来と、両親の願いのために。 リシェルは自分を捨て、“姉のふり”をして生きる道を選ぶ。 けれど、どれほど傍にいても、どれほど尽くしても、彼の瞳に映るのはいつだって“オリヴィア”だった。 その現実が、彼女の心を静かに蝕んでゆく。 遂に限界を越えたリシェルは、自ら命を絶つことに決める。 短剣を手に、過去を振り返るリシェル。 そしていよいよ切っ先を突き刺そうとした、その瞬間――。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

あの素晴らしい愛をもう一度

仏白目
恋愛
伯爵夫人セレス・クリスティアーノは 33歳、愛する夫ジャレッド・クリスティアーノ伯爵との間には、可愛い子供が2人いる。 家同士のつながりで婚約した2人だが 婚約期間にはお互いに惹かれあい 好きだ!  私も大好き〜! 僕はもっと大好きだ! 私だって〜! と人前でいちゃつく姿は有名であった そんな情熱をもち結婚した2人は子宝にもめぐまれ爵位も継承し順風満帆であった はず・・・ このお話は、作者の自分勝手な世界観でのフィクションです。 あしからず!

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

処理中です...