聖女リオノーラの反逆〜千年の恋のためクズ夫を寝取ってください〜

専業プウタ

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19.聖女の義務

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「そんな訳にいかないって分かってますよね。私は聖女リオノーラ・ベルナールです。この王国の民を守る義務があります」

7歳のサブリナ王女も母親を失いながら、狂った王家で耐えている。


「分かりません。貴方が本当に理解できません。リオノーラ」
突然呼び捨てにされてドキッとした。
彼とは随分と親密になり助け合ってきた。
今更、名前を呼ぶのに敬称を付けろなどと言いたくはない。

「どういった事が理解できませんか? 立ったままではなく、隣に座ってください。私もコンラッド様を理解したいし、私の事を知って欲しいです」

コンラッド様は一向に私に近づこうとせず、その場に立ち尽くしている。

「理解してますよ。最近では貴方の声ばかり拾ってしまうんです。皇帝陛下と2人っきりになると、蜂蜜のような甘い声で寄りかかるのですね」

「恥ずかしいですわ。あんまり聞かないでください」
私は思わず真っ赤になる顔を手で隠そうとするも、両手首を彼に掴まれてしまう。

「どんな顔で甘えているんですか? 気になって仕方がないんです」

貫かれるような真剣な眼差し。
愛するシリルに似たルビー色の瞳。

思わず私は目を逸らした。

「急いで今後の対策について話しましょう。コンラッド様は、もうアントワーヌ帝国に戻ったらいかがですか? 忙しいでしょうに、お手を煩わせて申し訳ございませんでしたわ。ここからは我が国の問題ですので⋯⋯」
言い終わらない内に口を塞がれてた。
(えっ? なんで?)

私は慌てて彼を押し返した。
「初めて出会った時かから、ずっと触れたかったんです。謝るつもりはありません」
今、コンラッドに不意打ちにキスされた。
シリルを失望させる恐怖に襲われる。

「コンラッド様、アントワーヌ帝国に戻ってください。1年に1度の建国祭の真っ最中ですよね。シリルだけではなく、貴方様もお仕事が山積みなはずです」

私の言葉にコンラッドは諦めたように笑う。

「戻りたくないです。貴方の側に居させてください。リオノーラを好きにならないなんて不可能です」
「私もコンラッド様が好きですよ」
軽い感じに返して、深刻な雰囲気を変えようと試みる。

「僕の好きはカルティス王子殿下と同じ、リオノーラを抱きたいという好きです」
(『抱かれたら蕩けそうな程の色気があったわよね』)
セリアの発言が蘇り、体が熱くなる。
熱っぽい視線で見つめるコンラッドの美貌に当てられそうになった。

私は咄嗟に右耳に触れる。
そこにエメラルドのイヤリングはないけれど、体の中には私の愛する男が宿っている。

「リオノーラの容姿は私が転生した中でも傑出していますからね」
私は笑顔を作りながら、立ち上がった。
動揺しているのを悟られてはいけない。

窓際に近づき、そっと淡い桃色のカーテンを開ける。

「雪、止みましたね」
「雪が止んだから、早くアントワーヌ帝国に帰れと言いたいのですか? そんなに僕の気持ちはリオノーラにとって迷惑ですか?」

心悲しげなコンラッドの表情に心臓の鼓動が速くなる。

「⋯⋯迷惑です。これ以上、シリルを傷つけたくありません」
「何度も転生できるんですよね。ならば、また何処かで2人は出会えます。僕は初めて心惹かれる女性に出会えたんです。僕の人生は1度きりです」

私はこの「生」で終わりにするつもりで生きている。

不安定な「転生術」を掛けられたシリルは来世はどうなるのだろう。
「転生術」は成功率も僅かな奇跡の術。
その伝説のような危なっかしい術を、私のエゴで愛する人に掛けた。

「無理なんです。私が、もうシリルの事しか考えられないくらい彼を欲しているんです」

絞り出すように伝えた言葉。
コンラッドが今にも泣きそうな顔をしながら、私を抱きしめてくる。
ブワッと身体の隅々まで何かが流れたのが分かった。

「僕だって分かってます。リオノーラと皇帝陛下の関係を嫌という程聞かされてきましたから。今、僕の水の魔力を貴方に譲渡しました」

私は首を回して刻印を確認しようとするも、また見えない位置にあるようだ。
コンラッドが私の後ろに周り、首の後ろ辺りを指差してきた。

「魔力の使い方をお教えしますね」
「結果をイメージして発する。違いますか?」
「当たりです。さすが、千年生きた年の功がありますね」
「年寄り扱いしないでください」

むくれた私を見て、コンラッド様が笑ってくれて安堵した。
マイロが私のくるぶしに触れただけで傷を治したのは、「治って欲しい」という願いが引き起こしたもの。私が「消えて欲しい」と恐ろしくも願ったら、夫が火だるまになった。だから、何となく力の使い方は想像できる。

「クローゼットに様々なサイズの服が何着か用意してあるので使ってください」

私は頷きながらクローゼットを開ける。変装出来そうな程、多様な服が並んでいた。不意に私の格好をいつも真似していた双子の妹の姿が脳裏に蘇る。

「⋯⋯セリアは大丈夫なのでしょうか? 彼女もエイブラハム国王の不興を買っています!」

ふわっと後ろから抱きしめられ、温もりを感じる。
その熱に頭が朦朧としてくるのは、今日は色々あって疲れているから。

「そういうとこ⋯⋯もう、これ以上貴方を僕に教えないでください」
「それは一体どういう意味ですか?」

私は突然体を反転させられる。
顔を赤くしたりして初心な男だと思っていたが、箍が外れてしまったようだ。

「セリア嬢は貴方に毒を盛っていたのですよ? そんな風に優しく心配したりしないでください。もう、これ以上、思いやりに溢れた貴方を知りたくない」

私は侯爵家を勘当され貴族ではなくなったセリアを、貴族の令嬢のようにコンラッドが呼んでくれて嬉しく思った。

「セリアは不平等に傷付いてきたんです。私は1番近くにいたのに苦しい彼女の胸の内に気が付けなかった」

嫌がらせをされた事ばかりに目を向けて、彼女を鬱陶しく思ったこともある。

平等を謳う聖女とは聞いて呆れる。

私は自分が特別に扱われる事を当然のように享受し続けた。

私の特権意識の最大の被害者はシリル。
彼を愛し過ぎて、私は自然の摂理に反して彼との別れを拒絶。
彼を苦しめると分かっていたら、「転生術」など掛けなかった。
私の傲慢で身勝手に対する罰を、私ではなく彼に与えた神は残酷。

「今、皇帝陛下の事を考えてますね? 今だけで良いので、僕を見てください。僕にもお慈悲をください、優しい聖女様。これで、最後にします。だから、貴方を求めてやまない哀れな男をお許しください」

コンラッドが聞こえるか分からないような声で呟く。
私を焼き尽くそうとしているような熱い眼差し。
そっと両手の指を絡められ、彼の顔が近付いてきた。






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