聖女リオノーラの反逆〜千年の恋のためクズ夫を寝取ってください〜

専業プウタ

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20.浮気疑惑

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「私は全然優しくないです。ごめんなさい」
俯いてコンラッドの口付けを避け、絡められた指を解く。

「セリア嬢は無事ですよ。貴方が心配する事は予想できたので、既に監視兼護衛をつけています。彼女は今、平民街に拵えた男の家に転がり込んでますよ」
私はセリアの近況を聞いてホッとした。

「はぁ、あんな貞操観念もなく我儘な女なんて踏みつけたって、自分勝手に生きていきますよ」
「セリアは素晴らしい仕事をしてくれた功労者ですよ。クズ夫を寝取ってくれたのですから」
コンラッドが私の言葉を聞き吹き出す。

「では、そのクズ夫との離婚計画を国家規模で立てるとしますか」
「お知恵を拝借します。大帝国の宰相様」

結婚は何度もしてきたが、離婚は初めてだ。
私とカルティスの結婚は国婚であり、離婚は容易ではない。

カルティスの署名。
エイブラハム国王とクリスティナ王妃の了承。
加えて、大神官ブレンダン様の許可が必要となる。

教会には聖女である私が誕生してから、世界各国から多額の寄付が集まっていた。
これは、寄付をすれば聖女が次に生まれて来る国として選ばれるという流言飛語が原因。

日が昇りそうな時間まで、私はコンラッドと綿密な離婚計画を練った。

コンラッドは一連の出来事で、私の聖女の力が弱まっていないかを心配していた。
私はアントワーヌ帝国に行って以来、聖女の力が底なしに使えるような感覚がある事を相談。
コンラッド曰く、アントワーヌ帝国に聖女がいた事は歴史上ない為、原因は不明。類似する光の魔力との関係性があると予想される為、帝国に戻ったら調査してくれるとの事だった。

♢♢♢

目が覚めて、カーテンを勢いよく開けた。
太陽は高く昇り、今がお昼過ぎだという事を伝えている。
私は夜着からシンプルな淡いクリーム色のワンピースに着替え、慌てて部屋を出た。

階下から、美味しそうな匂いがする。

ダイニングルームに到着すると、テーブルの上には豪勢な食事が並んでいた。
「リオノーラ様、おはようございます!」
「ご機嫌よう、サブリナ王女。よく眠れましたか?」
「はい。正直、王宮で眠るよりも安心してぐっすり寝れました。お洋服が、リオノーラ様とお揃いのようで光栄です」

淡いクリーム色のフリルのワンピースを着るサブリナ王女。
幼く天使のようだが、普通なら子供が経験しなくて良い政権闘争に巻き込まれ恐怖の中暮らしている。

私は必死に戦ってきた幼い王女を守りたいと強く思った。

「美味しそうなジャガイモのスープ。野菜のゼリー寄せも綺麗ですね。サブリナ王女は好き嫌いはないのですか?」

目の前に並ぶ食事は一流シェフが作ったように美しい。
ジャガイモのスープは滑らかで、丁寧に何度も漉したのが分かる。
野菜のゼリー寄せは彩りも鮮やかで、視覚的にも楽しませてくれる。

「ここだけの話、私は偏食家です。特に緑の野菜が苦手なんでが、皇帝陛下のお作りしてくれた食事がどれも美味しくてどんどん食べてしまいます」

「そう、皇帝陛下は凄腕の料理人なのね」
「ここにいる間に太って、ドレスが着られなくなっちゃいそうです」
クスクスと手を口に当てて笑うサブリナ王女が可愛らしい。

(んっ? 皇帝陛下?)
この世界に帝国は1つしかない。
そして皇帝はただ1人しかいない。

シリル・アントワーヌ。私が呆れる程長い間待ち侘びた人だ。

「シリル?」
私は慌ててキッチンに向かった。
肩まで届く艶やかな黒髪。
後ろ姿で分かる、間違いなく私のシリル。

私は勢いよく彼に後ろから抱きついた。
「シリル⋯⋯会いたかった。幻でも良い、本当に会いたかったの」

アントワーヌ帝国の建国祭は1週間続く。
毎日のように皇帝が登場する行事予定は確認済み。
願望が見せた幻だとしても、彼に会えるだけで私の心は千年分の「好き」で溢れ出す。

ゆっくりと振り向いたシリルが、お玉に掬ったジャガイモのスープを私の口元に当ててきた。
私は溢れないように必死に啜る。

「ふふっ美味しいか?」
「美味しい。シリル、料理の腕が上がったのね」

クレイグは器用な男で料理も嗜んだ。
ペルケノン王国を建国し国王に即位してからも、偶に厨房にたって手料理を振る舞ってくれた。千年位前の事なのに、シリルを前にすると昨日の事のように思いだせる。

シリルがゆっくりとお玉を調理台に置いて、私に顔を近づけてくる。
私はそっと瞼を閉じた。
(ジャガイモのスープの味)

「シリルのキス美味しい。隠し味は何?」
「愛と白ワイン」
「お昼なのに白ワインを入れちゃダメでしょ。7歳の子も飲むのよ」

「熱でアルコールは飛ばしてるよ。風味付けだ」
シリルはそう呟くと、私にもう一度溺れるような甘いキスをくれた。

「建国祭の真っ最中にアントワーヌ帝国の皇帝がここにいて良いの?」
「仕事は代理でコンラッドに任せた」
「そう⋯⋯」

昨晩の遣り取りで、コンラッドとは一旦お別れになる予感はあった。

「通信が切れた後、間男に何かされなかっただろうな?」
シリルが食い入るように私の目を見て来る。
一瞬脳裏にコンラッドにキスされた昨晩の記憶が蘇った。

「な、何もされてないわ」
「あんな挑発の方されたら、流石に来ない訳に行かないだろう」
シリルの握り締めた拳から黒い闇が出ている、
(間男ってカルティスのことか)

その時、キッチンにお皿を持ったサブリナが現れた。

「ご馳走様でした。皇帝陛下」
「マリアンヌ、自分で食器を下げられるなんて偉いじゃないか」
サブリナ王女が、不思議そうに目を瞬かせる。

「サブリナ王女、後の食器ははテーブルに置いておいてください。何か足りないものはありますか?」
「いいえ、読んだ事ないアントワーヌ帝国の本が沢山あるので時間が足りないくらいです。お心遣いありがとうございます」

ドレスを着ている時のように優雅にお辞儀すると、サブリナ王女は部屋に戻って行った。

「⋯⋯シリル、マリアンヌは私たちの娘よ」
「すまん。なんだか、あの王女は末っ子のマリアンヌに雰囲気が似てるよな」
マリアンヌは末っ子だが、聡明でペルケノン王国の王位を継いだ。はるか昔の話だ。

「お揃いっぽいワンピースを着ていたから、親子に見えたかしら」
私は両手を広げ、その場で一回転して見せた。

すると急にシリルの顔が険しくなる。

「何?」

私は体を反転させられ、長い髪を左肩に乗せられる。首筋に当たるシリルの指に緊張していると、首の後ろを甘噛みされた。

「ちょっとシリル! ここ、キッチンよ」
先程、つい流されてキスしてしまった。離婚が成立していない以上、これより先には進めない。
(早く、また彼の妻になりたい)

「水の魔力の刻印⋯⋯リオノーラ、間男には本当に何もされなかった?」
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