身分を隠して逃亡中の公女ですが、他国で逆ハー築いてます。

専業プウタ

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14.彼を利用したくない。

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「はぁ、はぁ、まだまだあ⋯⋯」
私は今、ハンスと剣術の稽古をしている。

彼はとても強い、でも武器というのは剣以外にも存在する。

私は彼に対して微笑んだ。
彼は私の突然の微笑みに驚いて、一瞬隙が生まれる。

私は彼の剣を思いっきり叩き、振り落とした。

「なんか、今のずるくないですか? エレノア侯爵令嬢」
ハンスが呆然しながら尋ねてくる。

確かに彼が私の惚れていると知った上で繰り出した技だ。

「不測の事態に対処してこその剣術。ハンスは剣術の演舞でもしていたら。あなたの剣術は確かに美しいわ」
私が言うとハンスは膨れっ面をした。
こんな表情を次期公爵になる彼がしたら、帝国では問題になる。

帝国の貴族は表情を管理し常に無表情で感情を読まれないことを大事にする。
それに比べてサム国の貴族は爵位こそあり権威は持っているけれど平民と変わらない自由を持っているように私には見えた。

「私、サム国が好き。守りたいわ。協力してくれるわよね、ハンス」
自分が発した甘い声色に思わずぞっとした。

4歳までにカルマン公爵邸で身につけさせられた、男を誑かすような声色を私は自然に使ってしまっている。
目的の為なら何でもしそうな自分が卑しく気持ち悪く感じて吐き気がした。

「エレノア、次の騎士試験一緒に受けような。アカデミーも楽しみだな。俺、勉強はあまり得意じゃないからお前が助けろよ」

ハンスがいつもよりも強めに私の髪の毛をガシガシとしてくる。
少し痛くて思わず屈んでしまい、彼の表情は見えなかった。

12歳になり、私とハンスはアカデミーに入学した。
入学式に私たちがお言葉を承るのは最高学年の主席ではなくフィリップ王子だった。

当然のことだろう、王族はいつだって中心にいなければならない存在だ。

壇上に上がった美しいプラチナブロンドの王子に釘付けになりそうになるのを私はハンスに話しかけることで防いだ。
「フィリップ王子は取り込んだ方が良いわ。あなたの立場なら大丈夫よ」
私は自分がささやいた言葉と甘い声に寒気がした。

どうして私は一途に自分を想ってくれる相手さえ、目的のために利用しようとするようなことをしてしまうのだろう。
無意識に使ってしまう砂糖菓子のような甘い声が大嫌いだ。

ハンスの好意を利用しようとしているのだとしたら、私は最低だ。

「エレノア、具合が悪いのか? 会場を出ようか?」

ハンスが私に小声で言ってくる言葉に私は静かに頷いた。
会場に響くフィリップ王子の声が耳に残った。
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