身分を隠して逃亡中の公女ですが、他国で逆ハー築いてます。

専業プウタ

文字の大きさ
18 / 56

18.お前いつから騎士になったんだよ。

しおりを挟む
「エレノア、お前いつから騎士になったんだよ」
私は今、馬車でハンスに邸宅まで送ってもらっている。
跪いて騎士の誓いをした私を見て、明らかにフィリップ王子は動揺していた。

私を立ち上がらせとにかく心配をされた。
ハンスが助け舟とばかりに私を邸宅で休ませると言って私を馬車まで連行してくれて事なきを得たのだ。

「最近、剣術をやっていたからかしら。私はフィリップ王子が仕えるに値する君主だと思って、それを伝えようとしただけなんだけれど⋯⋯」
自分の身を守るために剣術をはじめたが、私にはおそらく素養がない。

ハンスは優しいから、私に剣術の才能がないことを伝えてこないだけだ。
騎士資格をとって自分に武力があることを示したかったが、筆記試験しか通る気がしない。

剣術に取り組んだことで騎士気分になっていたのだろうか、騎士の誓いなどたてて私はきっとフィリップ王子に変な少女と思われただろう。

「普通に伝えろよ。笑いを堪えるのが大変だったぞ。もしかして、フィリップ王子殿下に一目惚れとかしたの?顔真っ赤にして、挙動不審になっていたけれど」
ハンスが笑いながら伝えてきた客観的に見た私の姿に気落ちした。
私はかなり不審な姿で王子殿下と接してしまっていたらしい。

一目惚れしたとしたらそれは2年前の時だ。

「でも、諦めた方が良いよ。エレノアは彼の兄上の婚約者を2年もしているんだ。王太子殿下と婚約解消になっても彼と結ばれることはないから⋯⋯」


考え事をしていたら、向かいにいたはずのハンスが私の隣にきていて私を抱きしめてきた。
彼の言う通りな上に、たとえフィリップ王子と心を通じ合わせるチャンスがあったとしても私は彼を避けるだろう。
彼が魅了の力の掛かりずらそうな知能の高さを持ち合わせていそうなことは分かったけれど、好かれたいと思って接して力により彼を操って好かれるなんて虚しすぎる。

「そんなんじゃないわよ。ただ、仕えるなら彼のような人が良いと思っただけ」
私は目を瞑って表情がハンスに見えないように顔を伏せながら呟いた。

レイモンド王太子殿下への接し方も変えた方が良いだろう。
従順に接して弱みを握り、彼を引き摺りおろすことを考えている場合ではない。

私よりもフィリップ王子殿下の方が先見の明があった。
今は国内でごたついている場合ではなく、力を合わせるべきだ。

「リード公子、私の婚約者をお送り頂きありがとうございました。エレノア、今日は入学式お疲れ様です。」
邸宅に馬車から降りようとしたら、レイモンド王太子殿下が私をエスコートしようと手を差し伸べてきた。

彼の手に自分の手を乗せると、また不快感が襲ってくる。
私はこの不快感の正体に気がつきはじめていた。

「ハンス、今日はありがとう」
私がハンスにお礼を言うと、彼が言葉を発せないくらいレイモンドに対しての怒りにたえているのが分かった。
自分の大切な姉を散々弄んで捨てた相手を目の前にしているのだから当然だ。

「レイモンド・サム王太子殿下にハンス・リードがお目にかかります。アゼンタイン侯爵令嬢のことは大切にして頂ければと思います」

ハンスはやっとの思い出絞り出したような震える声で、レイモンドにそう告げると馬車の扉を閉め去っていった。
隣にいるレイモンドを見ると、ハンスの怒りをしっかりと受け止めていないのが分かった。

「レイモンド、私を大切にする必要などありませんわ。私、あなたへの接し方を変えることにしましたので」
私はレイモンドに添えた手を振り払い、見下すような目で睨みつけた。

「エレノア、何かあったのですか? 私は愛するエレノアを誰よりも大切にしますよ」
これほど薄い「愛する」という言葉が存在するだろうか。
彼が私の変化に少し焦っているのが分かる。
この2年で少しでも私の心を得たと勘違いしていたのだとしたら彼は本当に愚か者だ。

馬車の音が聞こえて、ふとそちらを見た。

「帝国の馬車だわ」
私の呟きにレイモンドも同じようにそちらを見つめる。

アゼンタイン侯爵邸の邸宅の前に止まった馬車に鼓動が高まる。

まさか、私の正体が露見したのだろうか、それとも魅了の力が使えることが知られカルマン公爵家が追っ手を寄越したのだろうか。

震え出した私にレイモンドが気づいたのか、抱き寄せてくる。

本当に彼は私のことがわかっていない。
私は、彼に触れられるのが不快で仕方がないのだ。

「薄紫色の髪に赤紫の瞳、本物のエレノア・カルマンの方が偽物より可愛いですね。ダンテ・スモアと申します。エレナ様のお使いで参りました」
馬車から降りてきた水色の髪に水色の瞳をした爽やかな青年はあっさりと私の正体を暴露した。
彼は隣にいるレイモンドの姿など感知しないように私だけを見つめている。

「アーデン侯爵令嬢のお使い? 帝国で領土拡大を担当していると言われるダンテ補佐官ですね。エレノア・アゼンタインと申します。以後お見知りおきください」
私は自分に寄り添うレイモンドを突き放し、スカートを持ち上げ挨拶をした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒騎士団の娼婦

星森 永羽
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

【完結】第一王子と侍従令嬢の将来の夢

かずえ
恋愛
第一王子は、常に毒を盛られ、すっかり生きることに疲れていた。子爵令嬢は目が悪く、日常生活にも支障が出るほどであったが、育児放棄され、とにかく日々を送ることに必死だった。 12歳で出会った二人は、大人になることを目標に、協力しあう契約を交わす。

せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。 父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。 多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。 オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。 それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。 この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!

お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?

夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。  けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。  思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。  ──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……? ※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

処理中です...