27 / 56
27.エレノアと呼んでも良いですか?(フィリップ視点)
しおりを挟む
「ここに座ってください」
僕はアカデミーで自分に用意された部屋にエレノアを招き、ソファーに座らせた。
エレノアが気まずそうに、顔を真っ赤にしてソファーに座る。
入学式でここで僕に騎士の誓いをたてたことを思い出したのだろう。
「1日早いけれど、お誕生日おめでとうございます。アゼンタイン侯爵令嬢」
僕は紫陽花の花束を彼女に渡した。
リード公子が毎日のように紫陽花の花束をプレゼントしているのを見て、これなら僕が彼女に渡しても許されるのではないかと思ったのだ。
彼に女性に花束をプレゼントすると好意があると思われると注意すると、すでにエレノアに告白済みだと返された。
王太子の婚約者に告白するほど自由な彼が本当に羨ましい。
彼女が驚いたように瞳を輝かせた。
「フィリップ王子殿下、お心遣いありがとうございます。一生大事にします」
生花をどうやって一生大事にするのだろうと思わず花束をまじまじと見た僕にエレノアが気づいたようだった。
「押し花にして栞にするのです。たくさん勉強して、王子殿下の少しでもお役にたてるように頑張ります」
僕をチラチラ覗き見ながら、必死に話してくる彼女が可愛くて仕方がない。
「ヒース・メンデス子爵、アナキン・ウォーカー男爵、昨日、32番通りで悪漢を追っていた際に負傷されましたね⋯⋯」
エレノアが突然、負傷した警備隊の話をしだした。
おそらく彼女は僕が彼女の誕生日を知っていたことで、僕が臣下1人、1人に興味を持って接している人間だと思ったのだろう。
国を守る警備隊の負傷兵の名前を常に心に刻む君主、それがきっと彼女の理想なのだ。
僕はそんな彼女の理想とは違う人間だけれど、彼女がそんな理想の僕を夢見ているならば少しでもその理想に近づきたいと思った。
「アゼンタイン侯爵令嬢、エレノアとこれから呼んでも良いですか?」
僕は彼女が入学して半年以上、いつ切り出そうかと思っていたことを尋ねた。
「はい、お好きなようにお呼びください。私の呼び名は長いのでご迷惑掛けておりましたね」
僕に名前を呼ばれて、彼女がときめいたのが分かった。
声は震えているし、これ以上ないくらい顔を赤くしている。
本当は僕のことも、フィリップと呼んで欲しいけれど無理な頼みであることが分かっていて言えなかった。
「王子殿下、勉強を教えてください」
ノックをしてハンス・リード公子が部屋に入ってきた。
入学式でこの部屋を案内して以来、この部屋は僕にいつでも勉強を教えて貰える部屋だと彼は認識したらしい。
「エレノア、明日、誕生日パーティーだな。顔、真っ赤だぞ。熱あるのか? 明日、ちゃんと踊れるんだろうな」
リード公子が自分の手をエレノアの額に当てた。
なぜ、婚約者のいる貴族令嬢の顔にあっさりと触れられるのだろうか。
エレノアのデビュタントで兄上は2曲続けて彼女と踊った。
僕も彼女と踊りたかったが、疲れているだろうと遠慮をした。
しかし、リード公子は全く遠慮することなく彼女にダンスを申し込んだ。
彼が不躾なところがあるのは仕方がなかった。
リード公爵家は姉のビアンカ・リードを後継者として厳しく教育し育てていた。
だから、年の離れた弟のハンス・リードはかなり自由に育てられている。
彼女が兄上に手を出されたのは、兄上の婚約者指名の直前だ。
公女に手を出したのだから、リード公爵家は当然彼女が婚約者として指名されると思っていた。
兄上も婚約者指名には、ちょうどその時お気に入りだった彼女を指名すると言っていた。
しかし、兄上が指名したのはエレノアだった。
その後ビアンカ・リードは2年半ひきこもった後に帝国に移住したという。
兄上は彼女がアカデミーを好成績で卒業して後継者教育を修了していたことさえ知らないだろう。
どうせ、彼は彼女の胸と尻しか見ていない。
エレノアに手を出さず、高級娼婦でも呼べば良いものを。
「フィリップ王子、何かありましたか? いつでも、相談にのりますよ」
僕が兄上への憎しみを募らせているのが顔に出ていたのだろうか。
リード公子が心配そうに、僕に声を掛けてきた。
彼は貴族とは思えないほど不躾だが自由で、なぜか憎めない男だった。
僕も彼のように生きられたらと何度も思った。
僕はアカデミーで自分に用意された部屋にエレノアを招き、ソファーに座らせた。
エレノアが気まずそうに、顔を真っ赤にしてソファーに座る。
入学式でここで僕に騎士の誓いをたてたことを思い出したのだろう。
「1日早いけれど、お誕生日おめでとうございます。アゼンタイン侯爵令嬢」
僕は紫陽花の花束を彼女に渡した。
リード公子が毎日のように紫陽花の花束をプレゼントしているのを見て、これなら僕が彼女に渡しても許されるのではないかと思ったのだ。
彼に女性に花束をプレゼントすると好意があると思われると注意すると、すでにエレノアに告白済みだと返された。
王太子の婚約者に告白するほど自由な彼が本当に羨ましい。
彼女が驚いたように瞳を輝かせた。
「フィリップ王子殿下、お心遣いありがとうございます。一生大事にします」
生花をどうやって一生大事にするのだろうと思わず花束をまじまじと見た僕にエレノアが気づいたようだった。
「押し花にして栞にするのです。たくさん勉強して、王子殿下の少しでもお役にたてるように頑張ります」
僕をチラチラ覗き見ながら、必死に話してくる彼女が可愛くて仕方がない。
「ヒース・メンデス子爵、アナキン・ウォーカー男爵、昨日、32番通りで悪漢を追っていた際に負傷されましたね⋯⋯」
エレノアが突然、負傷した警備隊の話をしだした。
おそらく彼女は僕が彼女の誕生日を知っていたことで、僕が臣下1人、1人に興味を持って接している人間だと思ったのだろう。
国を守る警備隊の負傷兵の名前を常に心に刻む君主、それがきっと彼女の理想なのだ。
僕はそんな彼女の理想とは違う人間だけれど、彼女がそんな理想の僕を夢見ているならば少しでもその理想に近づきたいと思った。
「アゼンタイン侯爵令嬢、エレノアとこれから呼んでも良いですか?」
僕は彼女が入学して半年以上、いつ切り出そうかと思っていたことを尋ねた。
「はい、お好きなようにお呼びください。私の呼び名は長いのでご迷惑掛けておりましたね」
僕に名前を呼ばれて、彼女がときめいたのが分かった。
声は震えているし、これ以上ないくらい顔を赤くしている。
本当は僕のことも、フィリップと呼んで欲しいけれど無理な頼みであることが分かっていて言えなかった。
「王子殿下、勉強を教えてください」
ノックをしてハンス・リード公子が部屋に入ってきた。
入学式でこの部屋を案内して以来、この部屋は僕にいつでも勉強を教えて貰える部屋だと彼は認識したらしい。
「エレノア、明日、誕生日パーティーだな。顔、真っ赤だぞ。熱あるのか? 明日、ちゃんと踊れるんだろうな」
リード公子が自分の手をエレノアの額に当てた。
なぜ、婚約者のいる貴族令嬢の顔にあっさりと触れられるのだろうか。
エレノアのデビュタントで兄上は2曲続けて彼女と踊った。
僕も彼女と踊りたかったが、疲れているだろうと遠慮をした。
しかし、リード公子は全く遠慮することなく彼女にダンスを申し込んだ。
彼が不躾なところがあるのは仕方がなかった。
リード公爵家は姉のビアンカ・リードを後継者として厳しく教育し育てていた。
だから、年の離れた弟のハンス・リードはかなり自由に育てられている。
彼女が兄上に手を出されたのは、兄上の婚約者指名の直前だ。
公女に手を出したのだから、リード公爵家は当然彼女が婚約者として指名されると思っていた。
兄上も婚約者指名には、ちょうどその時お気に入りだった彼女を指名すると言っていた。
しかし、兄上が指名したのはエレノアだった。
その後ビアンカ・リードは2年半ひきこもった後に帝国に移住したという。
兄上は彼女がアカデミーを好成績で卒業して後継者教育を修了していたことさえ知らないだろう。
どうせ、彼は彼女の胸と尻しか見ていない。
エレノアに手を出さず、高級娼婦でも呼べば良いものを。
「フィリップ王子、何かありましたか? いつでも、相談にのりますよ」
僕が兄上への憎しみを募らせているのが顔に出ていたのだろうか。
リード公子が心配そうに、僕に声を掛けてきた。
彼は貴族とは思えないほど不躾だが自由で、なぜか憎めない男だった。
僕も彼のように生きられたらと何度も思った。
11
あなたにおすすめの小説
黒騎士団の娼婦
星森 永羽
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
【完結】第一王子と侍従令嬢の将来の夢
かずえ
恋愛
第一王子は、常に毒を盛られ、すっかり生きることに疲れていた。子爵令嬢は目が悪く、日常生活にも支障が出るほどであったが、育児放棄され、とにかく日々を送ることに必死だった。
12歳で出会った二人は、大人になることを目標に、協力しあう契約を交わす。
せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?
志波 連
恋愛
病弱な父親とまだ学生の弟を抱えた没落寸前のオースティン伯爵家令嬢であるルシアに縁談が来た。相手は学生時代、一方的に憧れていた上級生であるエルランド伯爵家の嫡男ルイス。
父の看病と伯爵家業務で忙しく、結婚は諦めていたルシアだったが、結婚すれば多額の資金援助を受けられるという条件に、嫁ぐ決意を固める。
多忙を理由に顔合わせにも婚約式にも出てこないルイス。不信感を抱くが、弟のためには絶対に援助が必要だと考えるルシアは、黙って全てを受け入れた。
オースティン伯爵の健康状態を考慮して半年後に結婚式をあげることになり、ルイスが住んでいるエルランド伯爵家のタウンハウスに同居するためにやってきたルシア。
それでも帰ってこない夫に泣くことも怒ることも縋ることもせず、非道な夫を庇い続けるルシアの姿に深く同情した使用人たちは遂に立ち上がる。
この作品は小説家になろう及びpixivでも掲載しています
ホットランキング1位!ありがとうございます!皆様のおかげです!感謝します!
お兄ちゃんは、ヒロイン様のモノ!!……だよね?
夕立悠理
恋愛
もうすぐ高校一年生になる朱里には、大好きな人がいる。義兄の小鳥遊優(たかなしゆう)だ。優くん、優くん、と呼んで、いつも後ろをついて回っていた。
けれど、楽しみにしていた高校に入学する日、思い出す。ここは、前世ではまっていた少女漫画の世界だと。ヒーローは、もちろん、かっこよくて、スポーツ万能な優。ヒロインは、朱里と同じく新入生だ。朱里は、二人の仲を邪魔する悪役だった。
思い出したのをきっかけに、朱里は優を好きでいるのをやめた。優くん呼びは、封印し、お兄ちゃんに。中学では一緒だった登下校も別々だ。だって、だって、愛しの「お兄ちゃん」は、ヒロイン様のものだから。
──それなのに。お兄ちゃん、ちょっと、距離近くない……?
※お兄ちゃんは、彼氏様!!……だよね? は二人がいちゃついてるだけです。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~
小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。
そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。
幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。
そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――?
「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」
鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。
精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる