破滅確定の悪役令嬢ですが、魅惑の女王になりました。

専業プウタ

文字の大きさ
7 / 35

7.ファイヤーブリザードアタック!

しおりを挟む
「ルシア様、本当に大丈夫ですか?」
 部屋に戻るなり心配してくるアリスは本当に優しい子だ。

「大丈夫よ。私はこれからトップを取り続けて周囲を納得させていくつもりよ。言っとくけど首席卒業の座も譲る気はないからね」

 中学までの私は周りの子が何を考えているのか気にばっかりしていた。
 しかし、海外生活を送ったことで実は陰口を気にしなくなった。

 人それぞれ価値観自体が違うし、育った環境も違うのだから誰が何を考えているかなんて気にするだけ時間の無駄なのだ。
(私が克服しなきゃいけないのは、柊隼人⋯⋯男性不信だけだわ) 

 明日は実技試験だ。

 実技試験は2人1組でモンスターを倒す。
 モンスターは魔法により生成された人工モンスターで難易度を設定できる。
 より強いモンスターを倒した方が点数も高くなる。
 
「ねえ、アリス⋯⋯明日の実技試験は私と組まない?」
「良いんですか? 私は攻撃系魔法を使えないので、あまり役に立てないと思いますが⋯⋯」
「治癒魔法なんて1番大事よ! 戦闘で疲れ果てた私を癒してね。最高難度のモンスターを指名するから!」

「ほ、本気ですか?」

 アリスが目をまん丸にして驚いた表情をしている。
 貴族たちは表情管理をしていて、あまり表情が変わらない。
 それに比べて、彼女はクルクル表情が変わるので見てて飽きない。

「もちろん、本気よ。アリスの驚き顔が明日も見られると思うと楽しみ」
「私はルシア様が怪我するのではないかと不安です⋯⋯全力で治癒します」
「モンスターには、アリスに指一本触れさせないから安心してね」
 
 ルシアは氷の魔力を持っていることで知られているが、実は火の魔力も持っている。
 断罪後、その隠していた火の魔力で、ルシアは寮に火をつけた。

 その火は兄オスカーが氷の魔力を使って消火する。
 最後まで、妹ルシアを想っていたオスカーが彼女を切り捨てる決断をするエピソードだ。
 
「今日は、早めに寝ようか。明日は体力勝負だし、お休み!」
「お休みなさい⋯⋯」
 電気を消して寝られるなんて、本当にアリスは良いルームメイトだ。

 宗教の関係で電気をつけて寝なければいけない子と同室になった時はキツかった。
 電気をつけたまま寝たい派と消したい派で争うことさえも許されない。

(みんな違う環境で育った人なんだから、完全に分かりあうのは困難ね⋯⋯)

 それでも、昔の自分のようなアリスを見ていると、彼女とは本当に分かり合えそうだと期待してしまった。

♢♢♢

「SSSランクのモンスターをお願いします」
 実技試験の会場である闘技場の受付で私が言った言葉に驚愕される。
 確かにアリスが治癒魔法が使えることは有名で、それは攻撃には役に立たない。
 だから、微々たる氷の魔力しかない私だけでどう戦うつもりかと思われているのだろう。

 この闘技場はイタリアのコロッセオのような円形状になっていて、他の生徒は観客のように戦いを観察することができる。

(私の力を皆に見せつけるチャンスだわ⋯⋯)

 トップバッターで試験を受けていたのはミカエルとアルベルト王子だった。
 ミカエルは火の魔力を持っていて、アルベルト王子は稲妻の魔力を持っている。

 Sランクのモンスターは熊くらいの大きさのレインボー色をしたトカゲだ。
 アルベルト王子が稲妻でモンスターを失神させて、ミカエルがモンスターを燃やし尽くした。

 黄色い大歓声があがる。

 2人とも女性人気が高い。
 そして、この2人が組むことは2カ国の友好的な関係を示すことにも助かる。

「そろそろ、行きましょうか、アリス」

 私はやる気満々で階段を降り、闘技場の中央にアリスと共に出た。
 皆、ルシアがほどほどの氷の魔力を持っていることを知っている。
 実際のルシアの魔力は本当は膨大で、その真価が見せられるのは火の魔力を見せてこそだ。

 今まで誰も指名したことのないSSSランクのモンスターが目の前に現れると響めきが起こった。
 一戸建てくらいの大きさのレインボー色したトカゲだ。

 雄叫びをあげて、私とアリスを威嚇している。
 私は両掌に魔力を集めた、私は一発でこのトカゲを仕留めるつもりだ。

 左手に火の魔力の力を、右手に氷の魔力の力を集中させる。

「ファイヤーブリザードアタック!」

 私は両掌をモンスターに向けて、魔力をぶつけた。
 炎が吹雪に巻かれながら、モンスターに直撃する。
 極度の熱さと極度の冷たさにモンスターは跡形もなく姿を消した。

 一瞬、当たりが静まり返る。
(しまった、変な技名を叫んでしまった!)

 隠れオタクの姉は、私に様々なゲームを貸してくれた。
 バトルもののゲームもなかなか面白くて私はハマった。

「火の魔法って王族しか使えないんじゃ⋯⋯」
 誰かのつぶやきが耳に入ったと同時に、周りが騒ぎ出した。

 明らかに私がSSS級のモンスターを一撃で倒したことより、私が火の魔力を発動したことに動揺している声がする。

「ルシア様、治癒魔法を使いますね⋯⋯お心を休められる効果があればと⋯⋯」
 私に寄り添うようにアリスが触れてくると、光に包まれ体が温かくなった。
 アリスの声も手も微かに震えている。

「ルシア! すぐ家に帰ろう」

 私は闘技場の中央に息を切らせて現れた兄オスカーに、強引に連れられ馬車に乗せられた。

 私たちが乗った途端、馬車は走り出した。
 遠くに闘技場の観客のざわめく声が聞こえた。

 私は実技試験の結果がどのように扱われるかを考えていた。
 向かいに座るオスカーは、そんな私の考えを断ち切るように興奮していた。

「何で⋯⋯納得したって言ってたじゃないか、母上の名誉の為にもその力は隠すって⋯⋯」
 私はオスカーの言葉に全てを察した。

「お母様は国王陛下との不貞行為の末に私を産んだのですね」
 私が導き出した結論に対して、オスカーは強めの力で私の肩を掴んだ。

「不貞行為って⋯⋯国王陛下から求められたら母上に拒否権はないだろ」
 オスカーが不倫した母を庇うのに寒気がするのは、私が現代の感覚を持っているからだ。
 きっと、本物のルシアが飲み込んできた事実を私は飲み込めない。

「母親の不貞の罪を娘の私が被るんですか? 私、弟と結婚するところだったんですよ」

 冗談じゃない。

 ルシアが国王の隠し子ならば、私とミカエルは姉弟だ。
 オスカーのまるでルシアは真実を受け入れるべきのような物言いに腹がたつ。

 ルシアが最後隠された火の魔力を使って、寮を燃やそうとした気持ちが少し分かる気がした。


 

 
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~

浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。 「これってゲームの強制力?!」 周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。 ※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

姉に代わって立派に息子を育てます! 前日譚

mio
恋愛
ウェルカ・ティー・バーセリクは侯爵家の二女であるが、母亡き後に侯爵家に嫁いできた義母、転がり込んできた義妹に姉と共に邪魔者扱いされていた。 王家へと嫁ぐ姉について王都に移住したウェルカは侯爵家から離れて、実母の実家へと身を寄せることになった。姉が嫁ぐ中、学園に通いながらウェルカは自分の才能を伸ばしていく。 数年後、多少の問題を抱えつつ姉は懐妊。しかし、出産と同時にその命は尽きてしまう。そして残された息子をウェルカは姉に代わって育てる決意をした。そのためにはなんとしても王宮での地位を確立しなければ! 自分でも考えていたよりだいぶ話数が伸びてしまったため、こちらを姉が子を産むまでの前日譚として本編は別に作っていきたいと思います。申し訳ございません。

【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

魔法使いとして頑張りますわ!

まるねこ
恋愛
母が亡くなってすぐに伯爵家へと来た愛人とその娘。 そこからは家族ごっこの毎日。 私が継ぐはずだった伯爵家。 花畑の住人の義妹が私の婚約者と仲良くなってしまったし、もういいよね? これからは母方の方で養女となり、魔法使いとなるよう頑張っていきますわ。 2025年に改編しました。 いつも通り、ふんわり設定です。 ブックマークに入れて頂けると私のテンションが成層圏を超えて月まで行ける気がします。m(._.)m Copyright©︎2020-まるねこ

処理中です...