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第23話 犯罪奴隷ならOK
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黒の日は休み
火神の日は仕事始め
赤の日は仕事
木漏れ日の日は半日休みの日
灰色のも仕事の日。
家の日は仕事をゆっくりする。
そうこの世界では決まっているらしい。
黒の日は皆仕事をしたら天罰が下るので、ほとんどの人は仕事を休むらしいと、アルはソニアに聞く。
今日は黒の日なので、アルの少人数子供預りはお休みだ。
朝ご飯は具沢さんのスープと、ソニアさんが買ってきてくれた近所のパン屋さんのナンみたいな平たいパンと、肉とか野菜とかをレモンみたいな酸っぱい果物の汁と塩と辛い発酵調味料を簡単にあえたものだ。
味は普通。
普通だが皆がつがつ食べてくれた。ほっとした。
「アル、今日は奴隷を買いに行こう」
食後のソニアの言葉に、アルは片付けようと持っていたスプーンを落とした。
「奴隷を?」
「そうだ」
ソニアさんは平然としている。アルには奴隷という言葉はすごくびっくりする単語なのだが。
「奴隷ってあの奴隷ですか?人を勝手に捕まえてきて、人に売るとか、借金のかたにとか」
「まぁ、そうだな」
「そんなひどいのは嫌です。普通に従業員募集しましょうよ」
「で、奴隷を雇わないかわりに、人を安月給で住む家を与えずに働かせるわけですか?奴隷には主人が住み家を与える義務が一応あるんですが、ね。まぁ、奴隷が逃げないようにですが」
くすくすジルは笑う。
ジルは今日も朝ご飯を食べに来ていた。
「奴隷というシステムで儲かるのは奴隷を売っている店の人間でしょう?苦しむ人が増えるし、嫌です」
そう儲かるのは奴隷を売る奴らだ。そこから奴隷を買っていてはずっとかわらない。
「それは国が奴隷や劣悪環境を禁止するように決めたらそうでしょうが、奴隷も低い待遇で働いている人間とそうは変わらないような気がしますね」
「いや、全然違いますよ!攫ってきて奴隷にするなんて、人に全く自由がないじゃないですか!犯罪です!」
「ああ、それもそうですが。あなた一人が奴隷を買わなかったぐらいで、なんにも変わりませんよ。哀れな奴隷が閉じ込められたままだと思います。あ、アルさん、豆茶のおかわりお願いします」
もしゃもしゃ食べながらジルは言う。
「それもそうですが、やはり奴隷は」
いらっとしながらアルはジルにお茶を入れる。
アルの一人くらいの力じゃ、どうにもできないことはわかっているのだが。
「じゃぁ、犯罪奴隷ならどうだ?」
ソニアがぽつりとつぶやく。
「犯罪奴隷?」
「そうだ。人を殺したとかした奴が、お前にジルが施したみたいな紋を刻んで血の契約をする」
ソニアはアルに刻まれた不思議な赤い文様を見る。
「私、奴隷じゃないんですけど」
思わずアルは、ジルを睨む。
ジルは鼻を鳴らしてせせら笑う。悪意を感じる笑いである。
「あなたは不審人物でしょうが」
「違います」
「アルは不審人物じゃない」
「ふん!」
「とにかく犯罪奴隷なら、いいだろう。犯罪奴隷は奴隷商人からではなく、この国で犯罪を起こしたものだと認定されたものが、国直属の商人から売られる。奴隷商人には金はいかないだろう」
そりゃ人を殺した人間を自由にしたらヤバイだろうし、犯罪者は犯罪者なりに罪の償い方が色々あるだろう。
「そうですね」と、アルはうなずく。
こうしてアルたちは犯罪奴隷などを探しに行くことにした。
子供たちに、アルがソニアと出かけるので留守にするというと、皆無言でアルに抱き着いて「やだ。」と言い放つ。
アルは子供一人ずつに頭をなでておいた。
アルも子供のころ、親からこうされていたような気がする。そんな記憶が思い浮かんでくる。
アルは愛されていたのだと、そう思いたい。そうでもなくても。
「みんな今日はジルさんが家にいてくれるから、安心だよ!
ジルさん、今日お預かりの子が一人いるので、その子もお願いします。
冷蔵庫にお昼ご飯作ってあるので、皆で食べてください。あと子供が危険な場所に行かないようによく見てあげてください。トイレとかとくに。あと昼寝とかしているときに、よく息が詰まる場合もあるので、あおむけで顔を横にしてあげてください。よろしくお願いします」
今日は本当はお休みだが、急遽子供を預けていかなければならない獣人の男性に、頼み込まれて、レオンという狐の男の子を一人だけその日に預かっていた。アルは断ったのだが、漆黒の狐耳のお父さんは強引に子どもをアルに預けて去って行ってしまった。
げっそりした。
「私を誰だと思っているんです?あなたより長くシルカとソルを預かっているんですよ。大丈夫に決まっているでしょ、さっさとお行きなさい」
しっしと、ジルはアルを追い出すようなしぐさをする。
相変わらずアルはジルに嫌われているようだ。
アルはジルのことは嫌いではないのだが。
「いってきます。ジルさん、みんなのことお願いします」
アルは深々と、ジルに向かって頭を下げた。
「そうだ」
アルはジルに近づき、ジルの頭をなでた。
「何するんですか!!」
ジルに頭を叩かれた。
「あいた!!行ってきます!」
「ふざけるな!!」
ジルは激怒し、アルは慌てて部屋から出た。
ジルがアルの口元と手ばかり見るのを、気づいていた。ジルも寂しいのかもしれないと、思う。
火神の日は仕事始め
赤の日は仕事
木漏れ日の日は半日休みの日
灰色のも仕事の日。
家の日は仕事をゆっくりする。
そうこの世界では決まっているらしい。
黒の日は皆仕事をしたら天罰が下るので、ほとんどの人は仕事を休むらしいと、アルはソニアに聞く。
今日は黒の日なので、アルの少人数子供預りはお休みだ。
朝ご飯は具沢さんのスープと、ソニアさんが買ってきてくれた近所のパン屋さんのナンみたいな平たいパンと、肉とか野菜とかをレモンみたいな酸っぱい果物の汁と塩と辛い発酵調味料を簡単にあえたものだ。
味は普通。
普通だが皆がつがつ食べてくれた。ほっとした。
「アル、今日は奴隷を買いに行こう」
食後のソニアの言葉に、アルは片付けようと持っていたスプーンを落とした。
「奴隷を?」
「そうだ」
ソニアさんは平然としている。アルには奴隷という言葉はすごくびっくりする単語なのだが。
「奴隷ってあの奴隷ですか?人を勝手に捕まえてきて、人に売るとか、借金のかたにとか」
「まぁ、そうだな」
「そんなひどいのは嫌です。普通に従業員募集しましょうよ」
「で、奴隷を雇わないかわりに、人を安月給で住む家を与えずに働かせるわけですか?奴隷には主人が住み家を与える義務が一応あるんですが、ね。まぁ、奴隷が逃げないようにですが」
くすくすジルは笑う。
ジルは今日も朝ご飯を食べに来ていた。
「奴隷というシステムで儲かるのは奴隷を売っている店の人間でしょう?苦しむ人が増えるし、嫌です」
そう儲かるのは奴隷を売る奴らだ。そこから奴隷を買っていてはずっとかわらない。
「それは国が奴隷や劣悪環境を禁止するように決めたらそうでしょうが、奴隷も低い待遇で働いている人間とそうは変わらないような気がしますね」
「いや、全然違いますよ!攫ってきて奴隷にするなんて、人に全く自由がないじゃないですか!犯罪です!」
「ああ、それもそうですが。あなた一人が奴隷を買わなかったぐらいで、なんにも変わりませんよ。哀れな奴隷が閉じ込められたままだと思います。あ、アルさん、豆茶のおかわりお願いします」
もしゃもしゃ食べながらジルは言う。
「それもそうですが、やはり奴隷は」
いらっとしながらアルはジルにお茶を入れる。
アルの一人くらいの力じゃ、どうにもできないことはわかっているのだが。
「じゃぁ、犯罪奴隷ならどうだ?」
ソニアがぽつりとつぶやく。
「犯罪奴隷?」
「そうだ。人を殺したとかした奴が、お前にジルが施したみたいな紋を刻んで血の契約をする」
ソニアはアルに刻まれた不思議な赤い文様を見る。
「私、奴隷じゃないんですけど」
思わずアルは、ジルを睨む。
ジルは鼻を鳴らしてせせら笑う。悪意を感じる笑いである。
「あなたは不審人物でしょうが」
「違います」
「アルは不審人物じゃない」
「ふん!」
「とにかく犯罪奴隷なら、いいだろう。犯罪奴隷は奴隷商人からではなく、この国で犯罪を起こしたものだと認定されたものが、国直属の商人から売られる。奴隷商人には金はいかないだろう」
そりゃ人を殺した人間を自由にしたらヤバイだろうし、犯罪者は犯罪者なりに罪の償い方が色々あるだろう。
「そうですね」と、アルはうなずく。
こうしてアルたちは犯罪奴隷などを探しに行くことにした。
子供たちに、アルがソニアと出かけるので留守にするというと、皆無言でアルに抱き着いて「やだ。」と言い放つ。
アルは子供一人ずつに頭をなでておいた。
アルも子供のころ、親からこうされていたような気がする。そんな記憶が思い浮かんでくる。
アルは愛されていたのだと、そう思いたい。そうでもなくても。
「みんな今日はジルさんが家にいてくれるから、安心だよ!
ジルさん、今日お預かりの子が一人いるので、その子もお願いします。
冷蔵庫にお昼ご飯作ってあるので、皆で食べてください。あと子供が危険な場所に行かないようによく見てあげてください。トイレとかとくに。あと昼寝とかしているときに、よく息が詰まる場合もあるので、あおむけで顔を横にしてあげてください。よろしくお願いします」
今日は本当はお休みだが、急遽子供を預けていかなければならない獣人の男性に、頼み込まれて、レオンという狐の男の子を一人だけその日に預かっていた。アルは断ったのだが、漆黒の狐耳のお父さんは強引に子どもをアルに預けて去って行ってしまった。
げっそりした。
「私を誰だと思っているんです?あなたより長くシルカとソルを預かっているんですよ。大丈夫に決まっているでしょ、さっさとお行きなさい」
しっしと、ジルはアルを追い出すようなしぐさをする。
相変わらずアルはジルに嫌われているようだ。
アルはジルのことは嫌いではないのだが。
「いってきます。ジルさん、みんなのことお願いします」
アルは深々と、ジルに向かって頭を下げた。
「そうだ」
アルはジルに近づき、ジルの頭をなでた。
「何するんですか!!」
ジルに頭を叩かれた。
「あいた!!行ってきます!」
「ふざけるな!!」
ジルは激怒し、アルは慌てて部屋から出た。
ジルがアルの口元と手ばかり見るのを、気づいていた。ジルも寂しいのかもしれないと、思う。
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