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第26話 薬、だめ、絶対。
しおりを挟むそうして犯罪奴隷を見に、町で一番の奴隷商にやってきたのだが。やはり何か間違っているような気がすると、アルは悩む。
「いらっしゃいませ!どんな奴隷をお探しですか?」
小柄な可愛らしい女の人が受付にいて、私たちの元へとやってくる。
「犯罪奴隷が一人欲しい」
ソニアさんがいう。
どぎまぎしながらアルはその様子を見ていた。
「畏まりました。こちらへどうぞ」
女の人に案内されて、部屋の奥へと入っていく。部屋の奥は檻がたくさん連なり、牢の床にはわらが敷かれた上に人がいた。
アルが檻の中に目を向けると、ぶつぶつなにかずっと独り言を言っている白い耳をしている獣人の男の人がいた。
耳の形は狼っぽいが、少し違うようだ。
その男の人は宙を見ながらぶつぶつずっと呟いている。とても病んでいるようで、心配でアルはその人を見ていた。
「こちらの部屋が犯罪奴隷になります。過去の罪の重さによって、値段が違ってきます。罪が重ければ重いほど、値段がやすくなっていきます。
ご自由に見て言ってください。商品が決まったら、お呼びください」
「わ、わかりました」
そう返事をして、アルとソニアが檻の中を見ることになったのだが。
「お前、ソニアか?」
低い獣の唸り声とともに男の声が、檻の中から聞こえてきた。
檻の中からこちらをみている獣人の男がいた。
「お前、シュヴァルか?」
「そうだ。久しいなぁ。こんなところでお前に会うなんて。隣の人間はなんだ?お前の奴隷か?」
「お前には関係がない。随分とお前低い値段がついているようだが、いったい何をした?」
そう檻の前には鉄のプレートに値段が切り刻まれている。
シュヴァルはにやにや笑う。
「知りたいか?」
「いや、どうでもいいな」
ソニアが檻の中の狼獣人に、警戒しているのが見て取れる。戸惑いながらも気になって、アルは恐る恐るソニアの間に割って入る。
「あの、ソニアさんの知り合いの方ですか?」
「こんなやつ知り合いでも何でもない。ただの屑だ」
「ひでぇなぁ、ソニアちゃんよお。その横にいる人間はお前の奴隷か?」
けらけらシュヴァルは笑っている。
「あの」
「行くぞ、アル。こいつはだめだ。こいつ以外を買う」
「そ、そうですか?」
戸惑いながらアルはその檻の前を通り過ぎる。シュヴァルはにやにや笑いながら執拗にアルの方を見ていることにぞっとした。
狼獣人といえば、ソニアたちだったので、随分雰囲気の違う人もいるのだなと思う。
「あの、ソニアさん、犯罪奴隷のほしい人なんですけど」
立ち止まって、ソニアさんの方を見た。
「なんだ?」
「あのずっと一人でぶつぶつ言っている人が欲しいんですけど」
アルが指さした方には、あのずっと独り言をつぶやいている男がいる。
「あいつどう見ても、病んでいる。仕事できそうもないぞ」
「なんか心配で」
私がそういうと、ソニアはため息をついた。
「好きにしろ」
人を呼んで檻が乱立する部屋を出るとき、声が聞こえてきた。
……お前だけが……幸せになると思うなよ………
低い低い声。
「ん?」
アルは不思議そうに後ろを振り返る。
「行くぞ」
ソニアはアルの腕をつかんで、部屋を出た。
「畏まりました。58番の犯罪奴隷のお買い上げですね?」
受付の眼鏡の女性がいう。
「はい」
「ではこちらの書類に記入をお願いします。オプションの月見草を使うと、値段が割増しになりますが、いかがなされますか?」
「月見草?」
月見草ってなんだろうと、首をかしげる。ソニアがこちらをどうしたもんかと眉を寄せて、悩んでいる様子でアルを見ている。
「月見草は中毒性がある快楽草でして、その月見草を定期的に店で買って、奴隷に与えると、奴隷は月見草ほしさに、絶対裏切りません。もちろん血の契約だけでも安全ですが、月見草を使えば、より奴隷を意のままに動かすこともできますが、どうしましょうか」
ようは麻薬を使って、奴隷を操るということだ。正直ドンびいた。
「いえ、結構です」
流石に月見草はないよなと、アルは断った。
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