記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。（多分）

お家快適空間再興編の章 第42話 暇なし

「ただいま」

アルとジル達子供たちは、いったんこの家に戻ることにした。

それからシルカやソルやライの荷造りをする。



アルが玄関を開けたとたん、そこには大泣きする黒狐の小さな子供のレオン君の姿があった。



レオン君は泣きながらアルの前までやってくると、アルの服をつかんだ。

「アル先生までいなくなっちゃったかと思った」と、えぐえぐ泣いている。アルはレオン君のふさふさの狐耳をなでた。

シルカちゃんを抱っこしているので、なかなか抱きしめてあげられないが。



「ごめんね。レオン君、ただいま。レオン君のお父さんも帰ってくるから、少し時間がかかるかもしれないけど」

「うん！」

レオンはアルの腹に顔を押し付けた。



「あ、アルさん、お帰り」

目の下に盛大なくまが見えるハウナが、顔をのぞかせる。

ますますげっそりした様子のハウナである。まるで幽霊のように、覇気がない。



「た、ただいま」

「夜ご飯を食べに来た獣人やら、夜にきて子供預かれって一人子供を置いていったよ。全然子供が泣き止まなくてね」

「い、今行きます」

部屋の奥から子供の泣き声が聞こえている。

アルはジルの方を振り向く。

「あの子供たちの荷造りをしますので、少し待っていてください。子供たちの様子を見てきますので」

ジルは不機嫌な様子で、しっしっと、手を振って見せた。

気難しいエルフである。



お母さんお父さんとなく、兎の耳を付けたどこか人とは違う兎の顔をした超絶可愛い女の子供に、アルは優しく「すぐにお父さんとお母さんがくるからね」と言い、頭をなで続けていると、なんとかその子は泣き止んでくれた。

事前にいつ何時に預かるという書類を親御さんたちに書いてもらっているが、突然飛び入りの子供がやってきてしまう。どうしたもんかと、アルは頭を悩ませた。