記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。(多分)

松井すき焼き

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第46話 もうすぐ朝

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「やだ!こんな出血いつものことで、死なないって」
陽気に笑うクワイエットはバシバシと、アルの肩を叩く。
「すぐに病院に行きましょう?その傷、結構深いです」
「大丈夫♡アル先生って、心配性なんだから」
「私はクワイエットさんのことが心配です。私は意地でもクワイエットさんを病院に連れていきますから」
目の前でしなれるくらいだったら、意地でも病院に連れていく覚悟だ。
目を覚ました母親に、シズクはほっとしたようで、そのままアルの膝の上で寝てしまっている。

「大丈夫だって」
「大丈夫じゃないです!」
「放っておいて、ここから私は放れるわけにはいかないの!」
意地でもクワイエットはさんは家から離れないらしい。
「何か事情があって家から離れられないんですか?誰にも言いませんから、話してください。私はクワイエットさんの味方です」
そうアルが言うと、クワイエットは泣き出した。
アルはクワイエットの背中に手を置く。クワイエットはアルに抱き着いてきた。

「私、月見草の中毒なの」
「月見草?あの犯罪奴隷がやる中毒症状がある草とか」
ルナルさんを買う時に聞いた、あの麻薬のような草のことか。

「客からもらってやるようになって。だんだんお金もなくなってきて。水商売するようになったんだけど、月見草を吸う回数も多くなってきて、借金するようになって、もうどうしようもないの。売人の男はシズクを売れっていうし、もう私なんかいないほうがシズクのためなの。シズクを売ってしまいそうになる自分が怖いの!!」
「月見草の中毒症状から抜け出す方法とかあるんでしょうか?」
「聞いたことがない。もうこのままシズクを売ったらどうしよう!!私、もうそんなことしたら生きていけない」
泣いている母親に目を覚ましたシズクはクワイエットに抱き着く。
「ごめんなさい。ごめんね、シズク」
そういってクワイエットは泣き出した。

「どうにかなるかもしれません。月見草の中毒症状も。諦めないでください。私たちが付いてますから。とにかくここにいてはいけないと思います。うちに気分を落ち着けるお茶もありますし。うちに来ませんか?
大家さんに出ていくように言われているので、そんなに長くはいられませんが、今夜はうちで寝ましょう。体調が悪くなったら、すぐに病院に行きましょう」
そうアルが言うと、クワイエットは泣き腫らした真っ赤な目で、こっくり頷いた。

「ただいま」
部屋にいるみんなを起こしては悪いと、小声でアルは言う。
「どうぞ、上がって。今お茶入れますから」
アルはクワイエットとシズクを寝室に案内する。

部屋に案内すると、ウノリがぜぇぜぇ苦しそうに呼吸をしている。
「ウノリ君大丈夫!?」
ウノリの背中に手を置くが、ウノリはその手を跳ね除ける。
「うるせぇ。さ、さわんな」
「ウノリ君、薬今持ってくるから」
いつも冷蔵庫に入れてある煙が出る肺の薬を、ウノリの鼻にあてる。

ウノリにはここは空気が悪いのかもしれない。
空気清浄機みたいなものがあればいいんだけれど。空気清浄機とは、空気をきれいにすることだよな?なにかそんな魔法があればいいのに。それか、大自然がある場所に引っ越すのもいいかもしれないなと、アルは考えた。
明日ジルに連絡して聞いてみようと思う。ちょうどソル君やシルカちゃんライ君のことも気になるし。

明日はお茶屋のジュラさんの店に、お茶を習いに行く日だ。その前に、大家さんに話に行かなければいけないしと、アルは頭痛がしてきたのだった。

無意識にアルはお湯を焚き、シズクちゃんの髪や足を拭き、ブラシで整え、ついでにクワイエットさんの髪の毛と足を拭き、ブラシで整えた。
あまりのアルのブラッシングテクニックに、クワイエットは人間の姿を保つことができず、スナネコの姿になって身もだえた。
セクハラをしてしまったと、アルはクワイエットさんに土下座して謝罪した。クワイエットさんは鼻血をだしてしまった。
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