記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。(多分)

松井すき焼き

文字の大きさ
66 / 172

第58話 ハウナとルナル

しおりを挟む
 ハウナは子供の教育はとにかく怒鳴っておけばいいと思っている。子供は言葉なんかそもそも理解してないし、話し合って言い聞かせるのは無駄だからだ。
ハウナの雇い主のアルは、とにかく子供と話し合っているので、正直ハウナは見ていていらいらしている。
そりゃ、自分がちょっと短気だということは理解しているが、言葉で言い聞かせていたら、子供はいつまでたってもやってはいけないことを理解しないような気がする。

 その日もアルは用事で出かけていく。アルがいないとハウナは一人になる。

獣人どもは人の予定も聞かずに、どんどん子供を預けていく。ハウナには自分の赤ん坊も見ていなければならない。
へんな黒猫獣人どもは、ブラシをしてほしいとか訳わからんことを言ってくる。
ハウナにはもう一人では仕事は無理だ。
けれどもほかに言い働き口なんてない。給料もいい方だし。
ハウナがため息をついた横で、ルナルとかいう犯罪奴隷は、ぶつぶつお気楽に呟いている。

仕事を手伝えっていうんだい!
イライラが頂点に達して、ハウナはルナルの襟首をつかんで揺さぶった。

「あんたね!あんたさっさと目覚めな!ぶつぶつみょうちくりんに呟いている場合じゃないよ!!」

そのままハウナはルナルの体を突き飛ばす。

ハウナはやっちまったと、後悔する。
「す、すまない。ついイライラしてしまって」
恐る恐るハウナはルナルの顔を見る。

ルナルはきょとんとした顔で、ハウナのことを見ていた。
「あの、あなたはどなたですか?」
「あ、あんた、正気に戻ったの!?」
心底ハウナは驚愕して、ルナルのことを見た。

「そう。私は気が狂っていたのか。苦労を掛けてしまったようだね。申し訳ない」
「い、いや。私も悪かった。つい乱暴してしまって」
「いや。私はルナル。月の神獣だ。ここから遠い東の方で、森を守って暮らしていた」
「神獣?聞いたことないけど」
「まぁ、遠い昔の話だよ。今はスリを手合いとしている」
「あんた、うちの旦那と一緒かい!!」
「ああ。そうか、そうなのか。悪いが、私は正気には戻れないようだ。すまないが、よろしく頼む」
そういってにこりとルナルは微笑んだ。
そうしてルナルは涙を流しながら、またぶつぶつ呟き始めた。

少し反省したハウナは、ルナルの涙をぬぐってやった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない

仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。 トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。 しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。 先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。

【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり
恋愛
私の感覚は間違っていなかった。貴方の格好良さは私にしか分からない。 過去の作品の加筆修正版です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...