記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。（多分）

第59話 行方不明中

アルが家に帰ってきて待ってたのは、号泣するウノリ君とシズクちゃんだった。

　家の中は荒らされていて、ハウナとクワイエットは家の中を荒らし、家にあったお金を持って逃げたらしかった。

アルは卒倒しそうになったが、なんとか持ちこたえた。
ここで倒れている場合ではない。
ハウナさんはおそらくお金をもって、ギャングの元へ行ってスノーリーさんの身柄を取り返しに行ったのだろう。
クワイエットさんはなんだろう？シズクちゃんを置いて、どこへいったのだろう？考えられることは月見の草を売人に買いに行ったとかだが。

なにも二人一緒に、お金持ちだすことはないだろう。
泣きそうになる。
なんとか連れ帰さなければ、子供たちが待っていると、アルは駆け出そうとしたとき、「ごめんくださいよ」と、低い男の声が聞こえてくる。
見ると、玄関には黒猫獣人のまっちょのサンが立っていた。
サンは頭をぼりぼりかきながら、アンニョイな様子だ。隣には同じ黒猫獣人のスピネル少年がいた。

「アルさん、こいつ連れてきてやったぜ」
サンの後ろからは、気まずそうな顔のスノーリーさんがでてきた。

なぜ、ここに！？
アルは衝撃をうける。何故このタイミングに、どうやって戻ってきたのか？

「アルさんがこの人間を探しているって聞いて、人間のギャングぶっ潰してつれてきてやったんだ。虎獣人どもも協力してくれたけど」
にこにこスピネルは笑う。

「は、はぁ、ありがとうございます」
アルの笑みが引きつってしまった。

「アル、これ」
サンがにやりと笑うと、麻の袋をアルに差し出してきた。
受け取ると、ずっしり重い。
「あのこれは？」
首をかしげるアル。
「俺たちから餞別。ここ引っ越すって聞いたからさ。何かと入用だろう？また俺たちにブラシしてくれよな」
にやにやサンは笑う。心なしか嬉しそうな顔だ。

アルが麻の袋を見ると、そこには金貨が何枚か入っていた。
「こ、こんなにいただけませんよ！」
大金だ。
返そうとするアルに、サンとスピネルは受け取り拒否をした。
「いらねぇ、返すなら、その金、どぶに捨てる」

そこでアルは自分が考えていたことを言った。
「ありがとうございます。このお金は、子供や親御さんが病気の時に、病院に通うお金に使おうと思います」
そうアルは募金を募り、病院に通えない人の医療費に使うことにしようと考えたのだった。

「いいってことよ！アルちゃんにはいつもお世話になっているからな」
サンは高らかに言う。
確かにサンは散々アルにセクハラ言動をしているような気がする。

「あの、ハウナさん、ここで働いている女性のハウナさんを、スノーリーさんのところでみませんでしたか？」
切羽詰まってアルが言うと、スノーリーがアルに突っかかってくる。
「なんだと！ハウナがいないのか！？」
「店のお金を持ち出して、いなくなってしまったんです。多分ハウナさんはスノーリーさんの身柄を返してもらおうと、ギャングの所に行ったんだと思います」

そうアルが言うと、スノーリーは走り出した。すぐさまサンはスノーリーの首根っこをつかんで、引き寄せる。

「放せ！」
バタバタ暴れるスノーリーに、サンは言い放つ。
「お前の奥さんにならあったぜ」
「本当か！！」
スノーリーは動きを止める。

「ああ、アルさんに盗みを働いた自分は、もうアルさんの元に戻るわけにはいかない。旦那と子供をよろしくお願いしますって、俺の仲間に言ってたって」
スピネルが気楽そうにそういうと、その場にスノーリーは崩れ落ちた。