記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。（多分）

幕間 アルとスノーリーの子育て その２

次の朝、スノーリーは家からいなくなっていた。
アルは赤ん坊を抱えながら、スノーリーの帰りを待った。
スノーリーは夜遅くになって、帰ってきた。

「おかえりなさい。どこにいっていたんですか？」
闇夜に現れたアルに、スノーリーの心臓はびくりと跳ねる。

「び、びっくりさせるなよ。別にお前に関係ねぇだろう」
そういうと、スノーリーは部屋の中へと入っていく。

「待ってください。スノーリーさん」
アルはスノーリーを呼び止める。

「なんなんだ？俺もう眠いから」
不機嫌そうなスノーリーに、アルは赤ん坊を差し出す。
「あなたのお子さんをお忘れですよ」
「……へ」
「どうぞ。私はほかの子の面倒があるので」
「ま、待てよ、お前、子供預かりしているんだろう？俺は子供の面倒なんて無理だ」
「お断りします」
「……は」
「うちは子供を預かるのが仕事であって、親御さんの子育てを全部やるわけにはいきません」
まぁ、心の中では実際の子供と思って預かっているわけだが。

強引にアルは赤ん坊を、スノーリーに手渡すと、「おやすみなさい」と歩き出す。

「ま、待ってくれ！！」
スノーリーの切羽詰まった声に、アルは足を止めて後ろを振り向く。

「子育てのお手伝いはできますが、あなた自身が基本やらなければいけないんですよ」そのままアルは歩き出すが、目の前にスノーリーが立ちふさがる。

「赤ん坊の抱き方が分からない。怖いんだ」
スノーリーに赤ん坊の抱き方を教え、アルはあくびをして歩き出す。

スノーリーに足りないのは、赤ん坊を自分が育てるのだという覚悟だ。あの切羽詰まった様子で、赤ん坊の抱き方が分からないという様子だと、失敗すると赤ん坊は死んでしまうということが分かっているので、いい父親になる可能性は高いと、アルは鬼に徹してスノーリーのまだ続く懇願を無視して、部屋に戻った。