記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。（多分）

第97話 空から花

それからアルは街に戻り、花を出し続けた。

誰かが魔法は想いの力だといった。
もうこれ以上誰も傷つかないように。
この想いが、アルの大切な人に伝わりますように、祈る。

凄まじい勢いで放出された花は、風に巻き上げられて、飛んでいく。そしてまるで花は空から雨のように降りだした。

争っていた人々はその花によって、花の花粉が舞い散り、傷が少しだけ治っていくことに気づく。
悲しみに故に失ってしまった憎しみを、獣人に向けていた人は不思議な花に気持ちが和んでいく。
獣人に恐怖を覚えていた人は、花を抱えて泣いている獣人に気づき、立ち止まる。

しかしどんなに花を降らそうにも、失った人の命は戻らないだろう。
アルの花は空からどこからか、振り続けた。
その花や人々の尽力によって、スラムを焼いていた火は消えて、人や獣人は皆歓喜の声をあげた。

獣人の浮浪者や人間の浮浪者を襲っていた人間と交戦していたジルとカタルは、国の治安部隊の役目でもあるシルベリアの騎士が、ジルとカタリに剣を向ける。

部屋にこの国の法であるシルベリアの騎士と交戦すると、ジルとカタルは捕まって処刑されると忌々しく緊張していると、空からたくさんの花が降ってくる。
その花に視界を奪われた人々は同様の声をあげる。

「な、なんだこれは！？」
人間やシルベリアの騎士が動揺している隙に、ジルとカタルたちはスラムの迷路のような裏路地に逃げ出した。

一方アルは無制限に花を出し続けて、なんだか眠たくなって目を閉じた。


夢の中で女の人の声を上げた。

『ありがとう。あなたのおかげで、必要以上の争いを避けられた。誰も私の声を聴かなくなってしまった。私は正義と裁定の女神、シルベリア。あなたに力を授けましょう。きっと人々の罪は贖うことができるよう、私は剣をふるいましょう』

そんな声が聞こえた。

アルは誰ですか？姉さんに会いたいなと思いながら、何もわからなくなった。