記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。(多分)

松井すき焼き

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第121話 法庁炎上 上    (短い)

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『アル』

名前を呼ばれてアルは目を開けると、辺りは真っ暗闇の中で、そこにはソニアがいた。
現実世界とは思えない真っ暗闇の世界だ。夢の中だろうか?
ソニアは相変わらず美しい白銀の青年の姿だ。そしてふさふさの狼の耳と尻尾。
そのソニアの姿に、アルはなんだか泣きそうになる。
「ソニアさん!ソニアさんですよね?あいたかった」
アルはソニアに飛びつく。

「アル。助けてやれずに、すまない」
ソニアの手が、アルの頬に触れる。

「いいんです。ソニアさんが無事なら」
無理に笑おうとするアルの目に滲む涙を、ソニアは手で拭う。そしてアルの頭をなでる。

「アル、俺はいつだって、アルとともにある」
ソニアのアイスブルーの酷薄な狼特有の瞳が、アルの瞳を覗き込む。
「ソニアさん」
「アルは大切な群れの家族だ。どこにいてもアルを守る」
「私もソニアさんを守りますから。心配しないでください」
「アル、愛している」
そういってソニアは、アルを引き寄せ抱きしめた。

そのソニアがなんだか悲しそうで、アルはソニアのそんな物悲しそうな姿を見るのがなんだか嫌で、アルはそっとソニアの頬に口づけた。

ソニアは目を開いて、驚愕の表情をする。

「……え……」
予想外のそのソニアの強い反応に、アルは「あ、あれ?」とやっておいてなんだが、呆気にとられた。
謝った方がいいのかなと、思う。セクハラトカ?いやソニアさんも接触したしな。過去ソニアに、アルは噛みつかれているし、これくらいならオス同士で、当たり前のスキンシップだと思っている。多分。

ソニアは呆然としたような、弟のソルと少し似ているような、少し幼い表情で顔を真っ赤にすると、そのまま風で舞い上がる木の葉と一緒に消えてしまった。

「ソニアさん!」
アルは目を開けて慌てて起き上がると、そこには両目を布で覆い隠している王女のロゼットがそこにいた。

ロゼットは物悲しげな顔で、アルの両手を握っていう。
「ごめんなさい。あなたを苦しめてしまいました。どうか、この国をお救いください。アル様」
そういってロゼットは涙を流した。
ロゼットは過去の出来事を話し始めた。
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