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第129話 すごく嫌な予感。
しおりを挟む子供が泣いている。
そんな夢を見て、アルは目を覚ました。
ジルを家の中で探したが、ジルは帰っていないようだ。どうしたものかと、アルは迷ったが、お腹がすいたので、台所に向かう。
そこには先客のアリカがいて、「ご飯。お腹がすいた。お前さっさと作れ」とそういう。
居候のアルは、「おはようございます。分かりました。けれどもおいしいかどうかは期待しないでください」とそういい、残りの食材で適当に、小麦粉のような薄いピンク色の粉に、鳥の卵と塩を加え、肉とか野菜とか包んで焼いてみた。
タレは酸っぱい果物と、塩と蜂蜜をブレンドしてみる。
「うむ。うまい」
とアリカは喜んで、もくもくと食べていた。
アルも自分の手料理を食べてみたが、いまいちのようなきがする。
食べ終えると、アリカは「寝る」と言い終えて、部屋を出ていく。
一人残されたアルは喉が渇いたので、水を飲む。
湧き水から水道を引いているのか、水の味は透き通っていて冷たくて、とても美味しかった。
暗くなる前に洗濯物をしておこうと、アルは台所の裏にある水汲み場に向かう。
外に出て水を入れる桶を忘れるという初歩的なミスを犯してしまった。部屋の中に戻ろうと考えていると、背後からアルは口を手でふさがれ、
「動くな」と男の声とともに、アルの首元にナイフが突きつけられた。
アルの目の前に、槍をこちらに向けるエルフ三人がやってくる。耳の先がとがっているから、エルフだと思う。
「お前はジルのなんだ?」
背後のエルフが、ナイフを突きつけながら、アルに問いかけてくる。
「ジルさんの知り合いでしょうか?どうしてこんなことを?」
冷や汗だらだらで、アルの心臓がバクンバクン波打っている。
もしかして殺されるかもしれない。
「言われたことだけに、答えろ」
男はナイフを持つ手に力を込めた。アルの首筋から血が一筋流れる。
「い、一応、ジルさんの知り合いですけど。ジルさんって、あのジルさんですよね?この家に住んでいる」
「そうだ。お前は我々と一緒にきてもらう。ジルへの人質だ」
「いや、なんで、そんな、ジルさんは悪い人じゃないと思いますよ。(多分)話し合えばいいと思います。いや、話し合いましょうっよ」
「ジルというエルフが、森を独り占めしようとしているからだ。貴重なエルフの森にはえる薬草も、奴は独り占めしようとしてる」
「違いますよ。ジルさんは、家の庭の荒れ地に森の種を植えただけだって言っていましたよ。別にジルさんは独り占めにしようとしたわけではないと思いますが」
「馬鹿な!嘘をつくな」
アルの目の前にいる、槍を持っているエルフが叫ぶ。
アルは声にならない悲鳴を上げる。
「見ろ、こいつの腕に、奴隷の刻印があるぞ。こいつはジルの奴隷だ。嘘をついているのかもしれない」
背の高いエルフの男が言う。
ごくりと誰かが息をのむ音がする。
「こいつを尋問してみよう」
そう一人のエルフが呟いたとたん、アルを取り囲むエルフたちの目の色が変わった。その目の色はアルがよく知る欲情したものの目に似ている。
嫌な予感がする。
なんとか回避せねばと、アルは慌てて恐怖を感じながらも、声を張り上げる。
「は、話し合いましょうよ!そもそもジルさん、私のこと嫌いって言っていますし、人質の価値ないですし、それに、私、薬草なら魔法で出せますし」
アルは白い花を手から出して見せる。
「ご同行願おうか?」
アルの背後にいるエルフが、最後通告を告げた。
最悪だ。
アルは呆然とした。
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