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「今日からよろしくお願いします!五十嵐先輩!」
キラキラした笑顔で僕の家の玄関先に立っていた。


室長と次長に呼ばれたのが昨日。
その後は特に呼び出しも無く僕の頭痛と現実逃避が酷くなったが、平和な一日で業務終了した。


夜はなかなか眠れず隣のテディの部屋から僕の趣味じゃないクラシックな音楽が聞こえていたので、それにもイライラして余計眠れずにやっと眠れたと思ったらコレだ。

「………朝の5時半ですけど…?」
まだ空は薄暗くこれから徐々に明るくなる気配がしている。
「はい!五十嵐先輩とバディになれると聞いて眠れませんでした!」
耳がキーンとするほど声がでかい。うざい。怖い。
「朝の5時半ですが???」
「はい!興奮して眠れませんでした!」
最悪だ。
こいつも頭おかしい系か?
話が通じない。
最悪だ(2回目)…センチネル室長の息子じゃなかったら蹴ってる!確実に蹴ってる!玄関もとっくに閉めて無視してる!
キラキラな笑顔が無性に腹立たしいが...いや、ハラワタ煮えくりかえってるが我慢だ…。
「えーと…ビショップ君は…どうしてここに?」
頭の中でゆっくり5秒数えて質問した。
「朝食をつくりに来ました!」
「は?」
想定外の答えにリアクションも返答もできない!!!!
「五十嵐先輩は洋風とか和風とかだったら何が好きですか?」
「は?」
「とりあえず材料冷蔵庫に入れたいので上がります!」
「は?」
勝手に僕の横からズカズカと靴も脱がずに室内へ入っていく不法侵入者にあっけにとられて、何をどう注意したら良いかもわからず混乱した。

寝不足だし寝起きだし意味が分からないし靴も脱いでくれないし勝手にキッチン漁り出すしで玄関で立ちすくんでしまった。
僕はこの半年以内で気苦労が元で過労死決定だと確信した。
イメージができる…いや、できてしまった…僕はもう苦労しかない人生を歩き始めていた。
そんな脳内妄想が暴走しだした頃だった。

勝手に玄関のドアが壊れそうな勢いで開いた。



ほんの数分しか経ってないと思う。
テディがビショップ君の胸ぐらを掴みながら何か話した直後にビショップ君が抵抗したのだろう、2人は少しだけ離れてにらみ合いながら滅茶苦茶威嚇し、威嚇だけでも周りの壁や床がヒビが入ったりものが倒れたり割れたりして…………
あぁ…僕の部屋が……どんどん壊れていた…

もうどこから注意したら良いかわからないし現実を受け入れたくないのでセンチネルが暴走しそうな時の緊急連絡先に連絡した。
実際は暴走なんてしてないが一般人と同じ力しかないガイドなのでセンチネル2人の喧嘩(とりあえずまだにらみ合い)を止められる術は無いのだ。

数分もしないうちに完全武装したセンチネル部隊がやってきた。
同じ建物に住んでいる人も数人何事かとやって来た。
そら来るわな…実際すげー小刻みに建物揺れたりたまに何かが壊れるすげー音してるもんな…
僕の部屋から!!!!

「とりあえず…あの2人をどうにかしてもらえませんか?僕の部屋が滅茶苦茶なんですけど…」

センチネル部隊は僕の言葉を聞いた後に室内を確認し呆れていた。

「何かの修羅場ですか?」
「は?」
はぁ???修羅場ってなんだよ!修羅場って!!!
まぁ僕の部屋で男2人が威嚇し合ってるもんな!
状況良くわからないよね!
僕もわからないから!
わかるよ!その呆れる気持ち!
でもお願い!僕の部屋をこれ以上壊させないで!!!


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