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□海篇 The Pirates and Secret Treasure.
2.02.1 黒の海賊
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揺れる船を駆け甲板に上がる。続けてキースも飛び出し来て、急ぎ帆を張りにいく。
「スタンそのまま舵!面舵いっぱい!」
「あいよ!」
「一隻だけ!?」
「そうだと思いてぇッ」
帆が風を孕み、船が右舷へと曲がっていく。
ビアンカは左舷側に迫り来る海賊船を睨みつけた。この船の二倍くらい大きなガレオン船、一隻。月明かりに照らされ見えた旗は黒色に髑髏…'黒'だ。今まで一度も出会さなかったほうが奇跡なのだが、この辺りに'黒の海賊'がいることに疑念を抱いた。
だが今はそれどころじゃなく、唯一の救いはまた風が吹き始めたことだ。
「他にやることは!?」
「距離を取るしかない、向こうのが速いだろうけど、これなら……?!」
帆を張り終えたキースが声を上げる。ビアンカは縦列状態での追いかけっこを予想したが、後方からまた飛来する音に目を見張った。直後船尾近くで水柱が起こり揺れる。
「船首砲!ヤバっ…」
海賊船は船首にも砲があるようで、問答無用で撃ってきた。それも立て続けに。二発目が船尾を掠め大きな揺れと振動が三人を襲う。スタンは水飛沫に遭いながも舵を押さえた。
「キャプテンッ、ヤベぇぞこれ!」
「わかってる…このまま…違う、南西!右舷に逸れながら!!狙わせないで!!」
「狙わせんなって…おい…!?」
ビアンカは迷ってしまうが、何か思い出したようで船室に駆け戻った。また砲弾が飛来し間近で水柱が上がる。スタンが必死に舵を切り、キースも縦帆のロープを緩め風を受け止めようと向きを変えた。
船は海賊船から逃れるように右へ右へと進むがやはり速度で負け、あっという間に船尾近くまで追いつかれてしまった。そこへビアンカが戻り、抱え持ってきたのは大筒だった。包んでいた布が剥がされ二本の大筒と弾が転がり出る。肩越しで見ていたスタンが思わず笑い声を上げた。
「んなもんあったのか!」
「ジンさんが、っ…あれ…??」
大砲が無い代わりにと持たせてくれた大筒。しかし弾を入れようとしても上手く入らず、まごつくビアンカを他所にまた砲弾が飛んでくる。今度は船首の手前に落ち、また大きな揺れに晒される。キースはヤードにしがみ付き堪えていたが、ビアンカの様子に気がつき、
「バカ!それ後装式!」
「え!?」
「後ろ…開けられるとこあんだろ!そっから入れんだ!!」
はっとし言われるまま砲尾を弄れば蓋が滑り開き、すんなりと弾が入る。キースが駆けつけビアンカの手ごと大筒を弄り、
「弾込めしたら閉める、火蓋開けとけ!引き鉄引いたらすぐだッしっかり支えろ!」
「…アイ!!」
思わず返事をする。キースは矢継ぎ早に指示を出しながら素早い手付きで支度し、船尾でカタカタ揺れるランプを掴み取った。
ビアンカが立ち上がり両腕で抱え、火縄に点けてもらう。引き鉄を引いた途端もの凄い音とともに弾が放たれた。
「やった!」
弾は見事に海賊船に当たり爆ぜ、思わず歓声を上げた。傍らではキースがもう一本の大筒を掴み瞬く間に発射させ、弾は船首の砲門の中に入り込み、爆ぜた途端誘発までしたようだった。得物が変わっても相変わらず狙い通りだ。
だがここで誤算が生じる。双方の位置。三人の船に対し海賊船は側面を向き…否、三人の船が面舵を切ったとわかり、海賊船は敢えて舵を切らずこの時を狙っていたのだ。
「…まずい…!」
舵を取ろうとするがもう遅い。
海賊船の右舷側砲門が全て開き、火を吹いた。
「「「!!!」」」
一斉砲撃が船を襲い、三人は咄嗟に身を屈めた。海ごと船が狙い撃ちされ爆ぜる。敢えて外しているのか船縁ばかり掠り、だが揺れや振動とともに舷が壊れていく。
一弾が縦帆に当たり嫌な音を立てながらゆっくりと海に倒れ、漸く砲撃が止まった。
「………死んだか?」
「生きてる…おい…ビアンカ?」
「キャプテン、平気か…??」
二人は木片を払い除け立ち上がり、蹲ったままのビアンカを覗き込んだ。彼女も無事なようだったが床板を睨み黙ったままで、そこへ今度は下卑た笑い声が聞こえ振り返る。まだ煙が充満する空から人影が飛来した。
「おーい生きてっかぁ?」
「金目のもん寄越せや!」
ロープを使い船に飛び移ってくる海賊達。皆それぞれ剣や斧を持っていて、声と同じく下品な笑みを浮かべる彼らは、まさしく海賊だった。
キースが舌打ちしスタンもにじり寄る海賊達を睨みつける。と、脇からビアンカがすり抜け…何やらブツブツと声が聞こえ、キースは思わず眉を寄せた。
「!ぶわッ…!」
「な、…ギャぁあ!!」
ビアンカは海賊の一人に飛びかかり伸して、さらに近くにいた海賊へ大筒を放った。間近で爆ぜ勢いよく吹っ飛ぶ者と、不意打ちに思わず怯む海賊達。
ビアンカも反動でひっくり返りそうになったが、踏み止まり大筒を放ると伸した海賊から剣を奪い勢いよく振り上げた。
「はあぁ!!」
「…んだテメェ?!」「こいつ…女だッ」
瞬く間にはじまった白兵戦。果敢に挑んでくる彼女に海賊達も剣を抜き応戦する。呆然とするキースだったがスタンも加勢して、
「相棒ッ、取ってこい!」
何のことかわかり、キースは梯子口から飛び降り船室へ向かった。追おうとする海賊をスタンが捕まえ思い切り放り投げる。
「大人しくしろぉ!」
海賊達が怒鳴り剣を振るが、ビアンカのほうが速く、刃を弾き返し腕や胴を斬りつけた。
しかし足元に何かが飛んできて思わず後ろへ飛び避ける。飛来物は弓のような銛で、さらに何本も放たれ甲板を突き破り刺さった。柄の部分にはそれぞれロープが付けられていて、海賊船側から引っ張り船を引き寄せようとしていた。
「……」
キャプテン・ビアンカ、無言の怒り。
ジンさんが貸してくれた船なのに、好き勝手掠奪ばかりするこいつらはずっと前から大嫌いだ。海賊船を見上げ睨みつけるが、背後で海賊が剣を振り上げ、
「!ぐぁ…」「余所見すんな!」
気づいたのと同時、銃声が響き海賊が倒れた。キースが戻ってきたようで、彼は煙を吐き出す回転式銃をこちらへ向けていた…ふと思いつく。
「キース!あれ貸して!」
「あ!?」
「あれ!飛ぶやつ!!」
「!はぁッ?こんな時に、」
「だから使うんだ!早くッ」
二人共剣とナイフで戦いながら怒鳴り合い、キースは舌打ちしながらも背中に挟んでいた飛び道具を掴みビアンカへ放り投げた。
ビアンカはまた海賊を斬り伏せ飛び道具を捕まえる。厄介な彼女を潰そうと数人が飛びかかるが、装着もせず金具を発射させた彼女の身体が宙を舞い、海賊船へと飛んでいった。
頭上に消えたビアンカに海賊達は驚き、その隙を狙いキースがナイフを振るう。
「おいおい…一人じゃヤバくねぇ!?」
「そうだけど…!」
二人はキャプテンを心配するのだが、また数人こちらへ降りてきて正直それどころじゃない。不慣れな海上戦。海賊達はタフでしつこく、しっかりトドメを刺さねばマズいと、キースは苦虫を噛んだ。
「梃子摺りやがって……ぬ"ッ!?!」
一方の海賊船。
上甲板では船長である大男クロヒゲが忌々しげに小型船を睨んでいた。が、突如大きな影が眼下から現れ、見上げたのと同時、それが頭上に降ってきた。
思いも寄らぬ飛来物によって船長が伸びてしまい、残っていた海賊達が一瞬怯む。ビアンカはクロヒゲをクッション代わりによろけながらも甲板に立ち、苛立った様子で飛び道具を腰帯に挟んだ。
「…お前ら、覚悟出来てんだろうな…」
女の容姿で男の声。怒りのままに海賊達を睨みつけるキャプテン・ビアンカ。彼女(男なのか?と困惑する者もあった)が放つ圧に皆静まり返ったが、一人が怒声とともに剣を振るいかかったことで一転、一対数十の白兵戦がはじまった。
四方から振るわれる剣。ビアンカは避けたり跳んだりしながら応戦する。勇猛果敢な彼女に海賊達も本気になり、仕留めるべく急所を狙う。銃を使う者が現れ、ビアンカは甲板を駆け銃ごと腕を切り落としてやった。絶叫が響きさらに数人が銃を向けようとするが、
「!ッぁ"…」
「また暴走かよ、アホキャプテン!」
「…ありがと!アホは余計!」
いつの間にか船縁に立っていたキースが再び銃を放ち、見事に海賊の眉間を捉え仕留める。かつて彼に言われた言葉を思い出すが、此処は海…女海賊は自身の生き方も思い出し、心を決めた。
二人になった獲物を狙い海賊達も走り回る。だが不意に甲板の天蓋が勢いよく吹っ飛び、一人か二人巻き込まれてしまう。そこから出てきたのはスタンだった。
「お前ら生き急ぎ過ぎッ、危なっかしいっての!」
「あんたも来てんじゃねぇか!」
「お喋りして、ないでッ…戦え!!」
さらに増え、三人。
何やら怒鳴り合いながら戦う三人に、海賊達は苛立ちを募らせた。交易船かと思い襲ったがそうではなさそうで、彼女らは手強く抵抗を続けている。厄介な船を襲ったのだと察知した時には遅く、ビアンカの剣に押され、キースの銃に撃たれ、スタンに殴られる。たまったもんじゃない。
キースは戦いながら度々視界に入るビアンカの姿を追った。これまでも戦う彼女は見てきたが、今見るそれは違い、
(…イキイキしてやがんの…)
存分に剣を振るい、船上で跳躍し、男のように声を上げ。今見る彼女はまさしく海賊だった。パールで見たロムのように勇ましい。剣の腕は自身よりも上ではと思う。航海の間に伸びた金の髪は動きに合わせ乱れ、綺麗な鬣や尾のようで…海賊だから水を得た魚とでも言えば良いか…
「どこ見てんだ相棒!」「!」
一瞬上の空だったキースをスタンが援護する。彼は海賊を一人打ちのめすと揶揄うように笑い、追い越していった。
キースは言い返すことも出来ず気恥ずかしくなるのだが、別のものに意識が逸れる。
二人を別つように現れた大きな影、それが剣を抜いた。狙われているのはスタンのほうで、影が左側にいるせいで気づいておらず…ホルスターに戻してしまった銃を取る猶予はなかった。
「あ"ぁッ」「?!…キース!」
背中を押されたスタンが振り返ると庇い斬られたキースが倒れ込んできて、一緒に甲板に転がってしまう。キースのナイフも転がり落ち、影の主であるクロヒゲがダン!と踏みつけ止めた。
二人の窮地に気がついたビアンカが動きを止めると、海賊達の剣と銃が彼女へ向けられた。
「スタンそのまま舵!面舵いっぱい!」
「あいよ!」
「一隻だけ!?」
「そうだと思いてぇッ」
帆が風を孕み、船が右舷へと曲がっていく。
ビアンカは左舷側に迫り来る海賊船を睨みつけた。この船の二倍くらい大きなガレオン船、一隻。月明かりに照らされ見えた旗は黒色に髑髏…'黒'だ。今まで一度も出会さなかったほうが奇跡なのだが、この辺りに'黒の海賊'がいることに疑念を抱いた。
だが今はそれどころじゃなく、唯一の救いはまた風が吹き始めたことだ。
「他にやることは!?」
「距離を取るしかない、向こうのが速いだろうけど、これなら……?!」
帆を張り終えたキースが声を上げる。ビアンカは縦列状態での追いかけっこを予想したが、後方からまた飛来する音に目を見張った。直後船尾近くで水柱が起こり揺れる。
「船首砲!ヤバっ…」
海賊船は船首にも砲があるようで、問答無用で撃ってきた。それも立て続けに。二発目が船尾を掠め大きな揺れと振動が三人を襲う。スタンは水飛沫に遭いながも舵を押さえた。
「キャプテンッ、ヤベぇぞこれ!」
「わかってる…このまま…違う、南西!右舷に逸れながら!!狙わせないで!!」
「狙わせんなって…おい…!?」
ビアンカは迷ってしまうが、何か思い出したようで船室に駆け戻った。また砲弾が飛来し間近で水柱が上がる。スタンが必死に舵を切り、キースも縦帆のロープを緩め風を受け止めようと向きを変えた。
船は海賊船から逃れるように右へ右へと進むがやはり速度で負け、あっという間に船尾近くまで追いつかれてしまった。そこへビアンカが戻り、抱え持ってきたのは大筒だった。包んでいた布が剥がされ二本の大筒と弾が転がり出る。肩越しで見ていたスタンが思わず笑い声を上げた。
「んなもんあったのか!」
「ジンさんが、っ…あれ…??」
大砲が無い代わりにと持たせてくれた大筒。しかし弾を入れようとしても上手く入らず、まごつくビアンカを他所にまた砲弾が飛んでくる。今度は船首の手前に落ち、また大きな揺れに晒される。キースはヤードにしがみ付き堪えていたが、ビアンカの様子に気がつき、
「バカ!それ後装式!」
「え!?」
「後ろ…開けられるとこあんだろ!そっから入れんだ!!」
はっとし言われるまま砲尾を弄れば蓋が滑り開き、すんなりと弾が入る。キースが駆けつけビアンカの手ごと大筒を弄り、
「弾込めしたら閉める、火蓋開けとけ!引き鉄引いたらすぐだッしっかり支えろ!」
「…アイ!!」
思わず返事をする。キースは矢継ぎ早に指示を出しながら素早い手付きで支度し、船尾でカタカタ揺れるランプを掴み取った。
ビアンカが立ち上がり両腕で抱え、火縄に点けてもらう。引き鉄を引いた途端もの凄い音とともに弾が放たれた。
「やった!」
弾は見事に海賊船に当たり爆ぜ、思わず歓声を上げた。傍らではキースがもう一本の大筒を掴み瞬く間に発射させ、弾は船首の砲門の中に入り込み、爆ぜた途端誘発までしたようだった。得物が変わっても相変わらず狙い通りだ。
だがここで誤算が生じる。双方の位置。三人の船に対し海賊船は側面を向き…否、三人の船が面舵を切ったとわかり、海賊船は敢えて舵を切らずこの時を狙っていたのだ。
「…まずい…!」
舵を取ろうとするがもう遅い。
海賊船の右舷側砲門が全て開き、火を吹いた。
「「「!!!」」」
一斉砲撃が船を襲い、三人は咄嗟に身を屈めた。海ごと船が狙い撃ちされ爆ぜる。敢えて外しているのか船縁ばかり掠り、だが揺れや振動とともに舷が壊れていく。
一弾が縦帆に当たり嫌な音を立てながらゆっくりと海に倒れ、漸く砲撃が止まった。
「………死んだか?」
「生きてる…おい…ビアンカ?」
「キャプテン、平気か…??」
二人は木片を払い除け立ち上がり、蹲ったままのビアンカを覗き込んだ。彼女も無事なようだったが床板を睨み黙ったままで、そこへ今度は下卑た笑い声が聞こえ振り返る。まだ煙が充満する空から人影が飛来した。
「おーい生きてっかぁ?」
「金目のもん寄越せや!」
ロープを使い船に飛び移ってくる海賊達。皆それぞれ剣や斧を持っていて、声と同じく下品な笑みを浮かべる彼らは、まさしく海賊だった。
キースが舌打ちしスタンもにじり寄る海賊達を睨みつける。と、脇からビアンカがすり抜け…何やらブツブツと声が聞こえ、キースは思わず眉を寄せた。
「!ぶわッ…!」
「な、…ギャぁあ!!」
ビアンカは海賊の一人に飛びかかり伸して、さらに近くにいた海賊へ大筒を放った。間近で爆ぜ勢いよく吹っ飛ぶ者と、不意打ちに思わず怯む海賊達。
ビアンカも反動でひっくり返りそうになったが、踏み止まり大筒を放ると伸した海賊から剣を奪い勢いよく振り上げた。
「はあぁ!!」
「…んだテメェ?!」「こいつ…女だッ」
瞬く間にはじまった白兵戦。果敢に挑んでくる彼女に海賊達も剣を抜き応戦する。呆然とするキースだったがスタンも加勢して、
「相棒ッ、取ってこい!」
何のことかわかり、キースは梯子口から飛び降り船室へ向かった。追おうとする海賊をスタンが捕まえ思い切り放り投げる。
「大人しくしろぉ!」
海賊達が怒鳴り剣を振るが、ビアンカのほうが速く、刃を弾き返し腕や胴を斬りつけた。
しかし足元に何かが飛んできて思わず後ろへ飛び避ける。飛来物は弓のような銛で、さらに何本も放たれ甲板を突き破り刺さった。柄の部分にはそれぞれロープが付けられていて、海賊船側から引っ張り船を引き寄せようとしていた。
「……」
キャプテン・ビアンカ、無言の怒り。
ジンさんが貸してくれた船なのに、好き勝手掠奪ばかりするこいつらはずっと前から大嫌いだ。海賊船を見上げ睨みつけるが、背後で海賊が剣を振り上げ、
「!ぐぁ…」「余所見すんな!」
気づいたのと同時、銃声が響き海賊が倒れた。キースが戻ってきたようで、彼は煙を吐き出す回転式銃をこちらへ向けていた…ふと思いつく。
「キース!あれ貸して!」
「あ!?」
「あれ!飛ぶやつ!!」
「!はぁッ?こんな時に、」
「だから使うんだ!早くッ」
二人共剣とナイフで戦いながら怒鳴り合い、キースは舌打ちしながらも背中に挟んでいた飛び道具を掴みビアンカへ放り投げた。
ビアンカはまた海賊を斬り伏せ飛び道具を捕まえる。厄介な彼女を潰そうと数人が飛びかかるが、装着もせず金具を発射させた彼女の身体が宙を舞い、海賊船へと飛んでいった。
頭上に消えたビアンカに海賊達は驚き、その隙を狙いキースがナイフを振るう。
「おいおい…一人じゃヤバくねぇ!?」
「そうだけど…!」
二人はキャプテンを心配するのだが、また数人こちらへ降りてきて正直それどころじゃない。不慣れな海上戦。海賊達はタフでしつこく、しっかりトドメを刺さねばマズいと、キースは苦虫を噛んだ。
「梃子摺りやがって……ぬ"ッ!?!」
一方の海賊船。
上甲板では船長である大男クロヒゲが忌々しげに小型船を睨んでいた。が、突如大きな影が眼下から現れ、見上げたのと同時、それが頭上に降ってきた。
思いも寄らぬ飛来物によって船長が伸びてしまい、残っていた海賊達が一瞬怯む。ビアンカはクロヒゲをクッション代わりによろけながらも甲板に立ち、苛立った様子で飛び道具を腰帯に挟んだ。
「…お前ら、覚悟出来てんだろうな…」
女の容姿で男の声。怒りのままに海賊達を睨みつけるキャプテン・ビアンカ。彼女(男なのか?と困惑する者もあった)が放つ圧に皆静まり返ったが、一人が怒声とともに剣を振るいかかったことで一転、一対数十の白兵戦がはじまった。
四方から振るわれる剣。ビアンカは避けたり跳んだりしながら応戦する。勇猛果敢な彼女に海賊達も本気になり、仕留めるべく急所を狙う。銃を使う者が現れ、ビアンカは甲板を駆け銃ごと腕を切り落としてやった。絶叫が響きさらに数人が銃を向けようとするが、
「!ッぁ"…」
「また暴走かよ、アホキャプテン!」
「…ありがと!アホは余計!」
いつの間にか船縁に立っていたキースが再び銃を放ち、見事に海賊の眉間を捉え仕留める。かつて彼に言われた言葉を思い出すが、此処は海…女海賊は自身の生き方も思い出し、心を決めた。
二人になった獲物を狙い海賊達も走り回る。だが不意に甲板の天蓋が勢いよく吹っ飛び、一人か二人巻き込まれてしまう。そこから出てきたのはスタンだった。
「お前ら生き急ぎ過ぎッ、危なっかしいっての!」
「あんたも来てんじゃねぇか!」
「お喋りして、ないでッ…戦え!!」
さらに増え、三人。
何やら怒鳴り合いながら戦う三人に、海賊達は苛立ちを募らせた。交易船かと思い襲ったがそうではなさそうで、彼女らは手強く抵抗を続けている。厄介な船を襲ったのだと察知した時には遅く、ビアンカの剣に押され、キースの銃に撃たれ、スタンに殴られる。たまったもんじゃない。
キースは戦いながら度々視界に入るビアンカの姿を追った。これまでも戦う彼女は見てきたが、今見るそれは違い、
(…イキイキしてやがんの…)
存分に剣を振るい、船上で跳躍し、男のように声を上げ。今見る彼女はまさしく海賊だった。パールで見たロムのように勇ましい。剣の腕は自身よりも上ではと思う。航海の間に伸びた金の髪は動きに合わせ乱れ、綺麗な鬣や尾のようで…海賊だから水を得た魚とでも言えば良いか…
「どこ見てんだ相棒!」「!」
一瞬上の空だったキースをスタンが援護する。彼は海賊を一人打ちのめすと揶揄うように笑い、追い越していった。
キースは言い返すことも出来ず気恥ずかしくなるのだが、別のものに意識が逸れる。
二人を別つように現れた大きな影、それが剣を抜いた。狙われているのはスタンのほうで、影が左側にいるせいで気づいておらず…ホルスターに戻してしまった銃を取る猶予はなかった。
「あ"ぁッ」「?!…キース!」
背中を押されたスタンが振り返ると庇い斬られたキースが倒れ込んできて、一緒に甲板に転がってしまう。キースのナイフも転がり落ち、影の主であるクロヒゲがダン!と踏みつけ止めた。
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