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□海篇 The Pirates and Secret Treasure.
2.06.3 裏切り者!
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深夜未明。アジト南東、港にて。
生憎の曇天だが、アズーロ号とヘルブラウ号は最後の支度に取りかかっていた。
「さっさと勝ってちゃんと戻って来い」
「ああ!任せとけ」
桟橋で荷揚げの傍らリンとフランツが言葉を交わす。リンが拳を突き出すが、
「…あのこと、わかってんだろうな?」
「…わかってる。大丈夫だ」
フランツの声が低くなり、思わず眉を顰めるが頷き返す。甲板からオーウェンに呼ばれ、返事をしてる間にフランツは立ち去ってしまい、リンは彼の背中を見つめながら言われた言葉を反芻した…勝って戻る、此処へ。それだけだ。
心も頭もまた靄が出てきて、まるで今夜の空のように纏わり付くような、嫌な感じだった。
ヘルブラウ号、甲板。
連れて来た'魔法の鳥'を籠ごと船長室に入れ、キースは桟橋のほうを振り返り見た。手伝ってくれた留守番組が数人いたが、ビアンカの姿は無く。彼女とは結局洞穴で別れて以来会っていない。
「昼間に会って話したんだが…マジで残る気みてぇ。見送りも来ねぇってよ」
荷運びをしていたスタンが近寄ってきて、かけられた言葉に思わず視線を逸らす。探していたわけではないが赤い石も自身が持ったままで、少しくらい話をしたかったのだが…
「寂しい?」
「…何も言ってねぇだろ」
「顔に出てんぞぉ」
「出てねぇ、うっぜぇな」
ニヤニヤ顔でしつこいスタンを睨み返す。
寂しくはない、別に。それでも挨拶の一つもせずだった。作戦が上手くいけば(どう転がろうとも、だが)此処には戻って来ない。予想通り彼女が此処を出て行っても、もう会うことは無いだろう。
「それよりこれ…持っとけ」
「えぇー?いらねぇよ、使えねぇし」
「いいから…」
周囲の目を気にしつつ、ある物を取り出し押し付ける。スタンは嫌々ながらも受け取り隠すようにポケットへしまう。
「なぁ、テオディアのすげぇってやつ。使う時は合図してくれ」
「?使えるかわかんねぇぞ」
「急には止めろって話。いい案がある♪」
そう言ってまたニヤりと笑うスタン。キースは碌なことではないと察知し、うんざりして引き攣る顳顬を押さえた。
ヘルブラウ号、船尾。
先に出航したアズーロに続きヘルブラウも港を出て、岩壁の穴に入り一層増した暗闇に包まれていく。
「…ちょっと、船倉行ってくる」
舵を握るオーウェンにリンが話しかける。ランプの光だけで互いの顔はよく見えず、それでもオーウェンは元気が無いと察し、
「ん。そのまま眠っちまうなよ」
「寝ねぇしっ…日の出で交代な」
「わかった、ありがとう」
冗談を言えばいつもの調子で返ってきて、苦笑いし見送った。
リンは一人下へ降りると自身の荷物を探しに行った。
同刻、岩壁にて。
ゼスは見張り番ではなかったが、嫌な予感がし様子を見に来ていた。島の外側の窓を覗き、そして驚く。一味の二隻はまだ穴を通っているはずで、沖合に見えているのは、
「ッぐ…!ぅ…」
気配に振り返ったのと同時に頭に衝撃が走り、続いて背中や脚を打たれる。膝を付いたゼスは羽交い締めにされ、口に布を突っ込まれ、異変を伝えることも適わず引っ張られて行った。
同刻、居住区にて。
「ビアンカ!なぁ!…おい入るぞ!」
今後の当番のことで話がしたく、女子部屋を訪ねるフランツ。松明は灯っているのに返事は無く、意を決して中に入ってみるが姿も無く、思わず眉を寄せる。
「あいつ、またか?何処に……」
ぼやきながら外に出ると違和感を感じ、辺りを見回す…ビアンカではない別の気配。何やら不穏な空気に身構えると、目の前の茂みから影が飛び出してきて、
「?!…あ"ぁ!て、メェら…ッ」
さらに四方からも影が現れ、応戦する間もなく頭や身体を滅多打ちにされる。捕まえようとした一人に縋り付く形になり、そのまま意識が飛んでしまう。
襲撃したのは島外から入り込んだ者…ではなく、留守番組の仲間達だった。
「爺さんは?」
「壁で捕まえたって」
「残りも今運んでる」
「あとはガキか……何処行った?」
「さっさと見つけろ。ちゃんとやらねぇと、俺らが危ねぇ」
言葉を交わしフランツの両腕を捕まえ、乱雑に引っ張っていく。
彼らが探す最後の一人ヴァンは、隣の家の影から一部始終を見聞きしていた。少年は早鐘のような心臓の音が聞こえてしまわぬか必死で息を殺していたが、幸い彼らは気づかずに去って行った。
(…な、に?なんで?ゼス…捕まってる…?!?た、助け…助けなきゃ!)
何が起きているのか理解が追いつかない。けれどとてもマズい状況なのはわかる。下手をすれば殺されるのだということも…
ヴァンは震える膝を押さえながら頭を巡らせ、勇気を出して闇へと駆け出した。
アズーロ号、船倉。
大量の荷物が積まれたそこは、船の軋みや底で揺れ動く波の音だけが響いていた。が、一人でに動く謎の木箱が一つ。それはアズーロが錨を上げ出航した途端、さらに動き出して、遂には内側から蓋を壊し半壊になってしまった。
「ジュリー、いる?…やっぱ上かな」
謎の木箱の中身はビアンカだった。
彼女はジュリーの発案と手引きで、夕刻からアズーロに密航していたのだ。結局はラッカムにバレて大目玉を食うのだろうが、今回ばかりは引き下がるつもりはない。乗ったもん勝ちだ。
船倉を進み一つ上の甲板に上がる。皆はまだ上甲板にいるのだろう、誰もいない、
「!……ジュリー??誰??」
そう思った矢先、何やら気配がして振り返る。暗い船内には誰もおらず、少し不気味さを感じ思わず眉を寄せる。
…直後、前へ向き直った彼女に影が重なった。
ヘルブラウ号、メイントップ。
さらに上の見張り台へ銃を運ぶべく、ネロは穴を潜り終えるまでの間腰を落ち着け、前を行くアズーロを眺めていた。しかし妙なことに気がつき立ち上がり、目を細める。
「…なんだあれ…!?」
穴から出たアズーロの先。海峡に停まる大型船が一隻。さらに後方、岩礁地帯の手前にも複数の船影。見間違いでなければ、旗や船の模様はバルハラ軍の紋章。
「!」
掴んでいたロープが張り空気が揺れる音がし、咄嗟に避ける。今まで自身がいた所に人が降ってきて、それは上の見張り台で番をしていたはずの仲間で…彼はネロが逃げ出すと舌打ちをもらし、追いかけた。
「わざわざ連れて来やがったか…暇だな、お前らも」
アズーロ号、上甲板。
船長のはずのラッカムは舵も握らず、出航して間もなく異変を感じ取ると船首へ移動し、海峡で待ち受ける艦船隊の旗艦をじっと眺めていた。
背後が騒がしい。普通の仲間がそうでない仲間に襲われ、次々に捕まっていた。ラッカムも彼らに取り囲まれるが、大海賊は不敵な笑みを浮かべ振り返る。銃を抜いたラッカムの威圧感に思わず怯んでしまうが、
「やめてよッ、ねぇ!」「!!」
ラッカムから笑みが消え、鋭い眼差しが一層濃いものになる。なんで乗ってんだ大馬鹿娘が、また反抗しやがって…
「大人しくして。暴れてもいいけど、痛い目見るのはこいつだよ」
ジュリーがしたり顔で前に出、彼女が指差した先には捕まったビアンカの姿があった。
「マジで…何人いんだ!?」
「…チ、クショウッ、なぁ!止めろって!」
ヘルブラウ号、上甲板。
襲いかかってくる仲間に拳を振り、銃を放ち、それでも取り囲まれてしまい、スタンとネロは観念し捕まってしまう。二人はこういった事態を予期していたのだが…多過ぎる。ヘルブラウの乗組員、その半数近くが裏切り者だった。
キースはしぶとく逃げ回りナイフを振っていた。裏切り者達は賞金でも目当てにしているのか生け捕るつもりらしく、そこに付け込み抵抗を続ける。船はいつの間にか錨が下され、少し先にいるアズーロ号へ軍の旗艦が近づいていた。視界の隅に岩壁が映り、穴から顔を覗かせる影へ怒鳴る。
「おいッ…見えてんだろ?!助けろよ!!」
返事は無いし援護も…守備の為に砲弾や銃を運んだはずだ。なんで…なんでこんなに、
「!ッが…ハ、」「キース!?」
隙だらけになり、思い切り背中を蹴られ吹っ飛ぶ。船縁にぶつかり蹲ってしまったキースに、ネロは裏切り者達を振り払い腕を伸ばすが、キース同様に蹴っ飛ばされ甲板を転がってしまう。
「ムダだ、今あそこにいんのは俺の仲間だからな」
蹴った本人が律儀に答え、清々しい笑顔をみせる。取り押さえられた者達は彼を睨み罵声を浴びせるが、笑みは深まるばかり──
(…あれ?なんで錨を…銃声??)
リンはただ一人、ヘルブラウの船底にいた。錨が下りる振動や銃声が聞こえ顔を顰める。何故か奥に入れられてしまった荷物を漸く見つけ、念のため銃を腰に差し、様子がおかしい上へと戻るべく急ぐ。
砲列甲板の梯子を上り上甲板へ顔を出した時、目の前をネロの身体が横切り痛々しく転がった。何が起きているのかわからず呆然としてしまう。
「はっは!いいねぇ大歓声だ、ありがと諸君」
聞き慣れた声が笑い、また笑う。全身に悪寒が走り頭で警鐘が鳴る……フランツ、これがお前の言ってたことか?
「おい…?なに、してんだ?」
他にも笑い声が聞こえ、気づけば周りを取り囲まれ肩や腕を押さえ付けられる。掴む奴らの顔はいつもの仲間のはずなのに、まったくの別人に見えた。
「おかえり、リン」
歩み寄ってきた彼を見上げれば──彼だけは変わらずの優しい笑顔で、
「…何してんだよ、兄貴…?」
震えるリンの声を聞くと、オーウェンは顔を歪ませ嘲笑し、乱暴に胸倉を引っ張った。
生憎の曇天だが、アズーロ号とヘルブラウ号は最後の支度に取りかかっていた。
「さっさと勝ってちゃんと戻って来い」
「ああ!任せとけ」
桟橋で荷揚げの傍らリンとフランツが言葉を交わす。リンが拳を突き出すが、
「…あのこと、わかってんだろうな?」
「…わかってる。大丈夫だ」
フランツの声が低くなり、思わず眉を顰めるが頷き返す。甲板からオーウェンに呼ばれ、返事をしてる間にフランツは立ち去ってしまい、リンは彼の背中を見つめながら言われた言葉を反芻した…勝って戻る、此処へ。それだけだ。
心も頭もまた靄が出てきて、まるで今夜の空のように纏わり付くような、嫌な感じだった。
ヘルブラウ号、甲板。
連れて来た'魔法の鳥'を籠ごと船長室に入れ、キースは桟橋のほうを振り返り見た。手伝ってくれた留守番組が数人いたが、ビアンカの姿は無く。彼女とは結局洞穴で別れて以来会っていない。
「昼間に会って話したんだが…マジで残る気みてぇ。見送りも来ねぇってよ」
荷運びをしていたスタンが近寄ってきて、かけられた言葉に思わず視線を逸らす。探していたわけではないが赤い石も自身が持ったままで、少しくらい話をしたかったのだが…
「寂しい?」
「…何も言ってねぇだろ」
「顔に出てんぞぉ」
「出てねぇ、うっぜぇな」
ニヤニヤ顔でしつこいスタンを睨み返す。
寂しくはない、別に。それでも挨拶の一つもせずだった。作戦が上手くいけば(どう転がろうとも、だが)此処には戻って来ない。予想通り彼女が此処を出て行っても、もう会うことは無いだろう。
「それよりこれ…持っとけ」
「えぇー?いらねぇよ、使えねぇし」
「いいから…」
周囲の目を気にしつつ、ある物を取り出し押し付ける。スタンは嫌々ながらも受け取り隠すようにポケットへしまう。
「なぁ、テオディアのすげぇってやつ。使う時は合図してくれ」
「?使えるかわかんねぇぞ」
「急には止めろって話。いい案がある♪」
そう言ってまたニヤりと笑うスタン。キースは碌なことではないと察知し、うんざりして引き攣る顳顬を押さえた。
ヘルブラウ号、船尾。
先に出航したアズーロに続きヘルブラウも港を出て、岩壁の穴に入り一層増した暗闇に包まれていく。
「…ちょっと、船倉行ってくる」
舵を握るオーウェンにリンが話しかける。ランプの光だけで互いの顔はよく見えず、それでもオーウェンは元気が無いと察し、
「ん。そのまま眠っちまうなよ」
「寝ねぇしっ…日の出で交代な」
「わかった、ありがとう」
冗談を言えばいつもの調子で返ってきて、苦笑いし見送った。
リンは一人下へ降りると自身の荷物を探しに行った。
同刻、岩壁にて。
ゼスは見張り番ではなかったが、嫌な予感がし様子を見に来ていた。島の外側の窓を覗き、そして驚く。一味の二隻はまだ穴を通っているはずで、沖合に見えているのは、
「ッぐ…!ぅ…」
気配に振り返ったのと同時に頭に衝撃が走り、続いて背中や脚を打たれる。膝を付いたゼスは羽交い締めにされ、口に布を突っ込まれ、異変を伝えることも適わず引っ張られて行った。
同刻、居住区にて。
「ビアンカ!なぁ!…おい入るぞ!」
今後の当番のことで話がしたく、女子部屋を訪ねるフランツ。松明は灯っているのに返事は無く、意を決して中に入ってみるが姿も無く、思わず眉を寄せる。
「あいつ、またか?何処に……」
ぼやきながら外に出ると違和感を感じ、辺りを見回す…ビアンカではない別の気配。何やら不穏な空気に身構えると、目の前の茂みから影が飛び出してきて、
「?!…あ"ぁ!て、メェら…ッ」
さらに四方からも影が現れ、応戦する間もなく頭や身体を滅多打ちにされる。捕まえようとした一人に縋り付く形になり、そのまま意識が飛んでしまう。
襲撃したのは島外から入り込んだ者…ではなく、留守番組の仲間達だった。
「爺さんは?」
「壁で捕まえたって」
「残りも今運んでる」
「あとはガキか……何処行った?」
「さっさと見つけろ。ちゃんとやらねぇと、俺らが危ねぇ」
言葉を交わしフランツの両腕を捕まえ、乱雑に引っ張っていく。
彼らが探す最後の一人ヴァンは、隣の家の影から一部始終を見聞きしていた。少年は早鐘のような心臓の音が聞こえてしまわぬか必死で息を殺していたが、幸い彼らは気づかずに去って行った。
(…な、に?なんで?ゼス…捕まってる…?!?た、助け…助けなきゃ!)
何が起きているのか理解が追いつかない。けれどとてもマズい状況なのはわかる。下手をすれば殺されるのだということも…
ヴァンは震える膝を押さえながら頭を巡らせ、勇気を出して闇へと駆け出した。
アズーロ号、船倉。
大量の荷物が積まれたそこは、船の軋みや底で揺れ動く波の音だけが響いていた。が、一人でに動く謎の木箱が一つ。それはアズーロが錨を上げ出航した途端、さらに動き出して、遂には内側から蓋を壊し半壊になってしまった。
「ジュリー、いる?…やっぱ上かな」
謎の木箱の中身はビアンカだった。
彼女はジュリーの発案と手引きで、夕刻からアズーロに密航していたのだ。結局はラッカムにバレて大目玉を食うのだろうが、今回ばかりは引き下がるつもりはない。乗ったもん勝ちだ。
船倉を進み一つ上の甲板に上がる。皆はまだ上甲板にいるのだろう、誰もいない、
「!……ジュリー??誰??」
そう思った矢先、何やら気配がして振り返る。暗い船内には誰もおらず、少し不気味さを感じ思わず眉を寄せる。
…直後、前へ向き直った彼女に影が重なった。
ヘルブラウ号、メイントップ。
さらに上の見張り台へ銃を運ぶべく、ネロは穴を潜り終えるまでの間腰を落ち着け、前を行くアズーロを眺めていた。しかし妙なことに気がつき立ち上がり、目を細める。
「…なんだあれ…!?」
穴から出たアズーロの先。海峡に停まる大型船が一隻。さらに後方、岩礁地帯の手前にも複数の船影。見間違いでなければ、旗や船の模様はバルハラ軍の紋章。
「!」
掴んでいたロープが張り空気が揺れる音がし、咄嗟に避ける。今まで自身がいた所に人が降ってきて、それは上の見張り台で番をしていたはずの仲間で…彼はネロが逃げ出すと舌打ちをもらし、追いかけた。
「わざわざ連れて来やがったか…暇だな、お前らも」
アズーロ号、上甲板。
船長のはずのラッカムは舵も握らず、出航して間もなく異変を感じ取ると船首へ移動し、海峡で待ち受ける艦船隊の旗艦をじっと眺めていた。
背後が騒がしい。普通の仲間がそうでない仲間に襲われ、次々に捕まっていた。ラッカムも彼らに取り囲まれるが、大海賊は不敵な笑みを浮かべ振り返る。銃を抜いたラッカムの威圧感に思わず怯んでしまうが、
「やめてよッ、ねぇ!」「!!」
ラッカムから笑みが消え、鋭い眼差しが一層濃いものになる。なんで乗ってんだ大馬鹿娘が、また反抗しやがって…
「大人しくして。暴れてもいいけど、痛い目見るのはこいつだよ」
ジュリーがしたり顔で前に出、彼女が指差した先には捕まったビアンカの姿があった。
「マジで…何人いんだ!?」
「…チ、クショウッ、なぁ!止めろって!」
ヘルブラウ号、上甲板。
襲いかかってくる仲間に拳を振り、銃を放ち、それでも取り囲まれてしまい、スタンとネロは観念し捕まってしまう。二人はこういった事態を予期していたのだが…多過ぎる。ヘルブラウの乗組員、その半数近くが裏切り者だった。
キースはしぶとく逃げ回りナイフを振っていた。裏切り者達は賞金でも目当てにしているのか生け捕るつもりらしく、そこに付け込み抵抗を続ける。船はいつの間にか錨が下され、少し先にいるアズーロ号へ軍の旗艦が近づいていた。視界の隅に岩壁が映り、穴から顔を覗かせる影へ怒鳴る。
「おいッ…見えてんだろ?!助けろよ!!」
返事は無いし援護も…守備の為に砲弾や銃を運んだはずだ。なんで…なんでこんなに、
「!ッが…ハ、」「キース!?」
隙だらけになり、思い切り背中を蹴られ吹っ飛ぶ。船縁にぶつかり蹲ってしまったキースに、ネロは裏切り者達を振り払い腕を伸ばすが、キース同様に蹴っ飛ばされ甲板を転がってしまう。
「ムダだ、今あそこにいんのは俺の仲間だからな」
蹴った本人が律儀に答え、清々しい笑顔をみせる。取り押さえられた者達は彼を睨み罵声を浴びせるが、笑みは深まるばかり──
(…あれ?なんで錨を…銃声??)
リンはただ一人、ヘルブラウの船底にいた。錨が下りる振動や銃声が聞こえ顔を顰める。何故か奥に入れられてしまった荷物を漸く見つけ、念のため銃を腰に差し、様子がおかしい上へと戻るべく急ぐ。
砲列甲板の梯子を上り上甲板へ顔を出した時、目の前をネロの身体が横切り痛々しく転がった。何が起きているのかわからず呆然としてしまう。
「はっは!いいねぇ大歓声だ、ありがと諸君」
聞き慣れた声が笑い、また笑う。全身に悪寒が走り頭で警鐘が鳴る……フランツ、これがお前の言ってたことか?
「おい…?なに、してんだ?」
他にも笑い声が聞こえ、気づけば周りを取り囲まれ肩や腕を押さえ付けられる。掴む奴らの顔はいつもの仲間のはずなのに、まったくの別人に見えた。
「おかえり、リン」
歩み寄ってきた彼を見上げれば──彼だけは変わらずの優しい笑顔で、
「…何してんだよ、兄貴…?」
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