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□海篇 The Pirates and Secret Treasure.
2.08.2 盗賊と大海賊と、
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??日目…
オーウェンの酷い拷問を受けてからキースは眠り続けていたのだが、重たい瞼が漸く開き徐々に意識が戻ってくる。一瞬何処かわからなかったが、暗闇のそこはいつもの檻の中で、
「生きてるか?」
声が聞こえ首を動かすと、ラッカムと目が合った。
「……しにそ」
「しぶとい奴だ」
「ぉれ、っ…なん日、ね"てた?」
「…三日ってとこだろう。毎日仲良しの奴の連れが、面倒見てくれてる」
「…ッ、ゴほ…!」
声が掠れ上手く発音できず、思わず咳き込みながら身体を動かす。背中は相変わらず痛み、だが包帯は綺麗になり血も止まったようで、ズボンも見知らぬものに変わっていた。
頭がグラグラする。ちょっと熱っぽい。手枷は拷問の時と同じで手首を締めつけ、縁で付いた傷や痣は瘡蓋になり触れる度擽ったく痒い。
「随分やられたみてぇだな」
「あんたの、息子だよ」
「…辛ぇか」
「あ…?」
「話せば終わる、もう痛い思いもせずに済む」
まさかの発言に顔を顰める。ラッカムは無表情のまま見つめてきて感情が読めず、苛立ちが増す。
「…バラしてほしいのかよ?秘密主義の、大海賊さんよぉ」
「お前の好きにすりゃあいい…ここまで保つとは思わんかった」
またイライラする。予想外の言葉(心配されたいわけでもないが)な上に、馬鹿にもされてる…キースはあからさまに舌打ちし睨み返した。
「ざけんな…あんたの為だとか思ってんのか?」
「いいや、あいつの為だろ」
怒りを込めて返してもラッカムは見透かしているようで、あいつと言われビアンカの顔が思い浮かぶ。キースは一瞬黙り込んでしまうが、ゆっくり息を吐きダメ元で日課を再開した。
「…地図と、赤い石。あと、あいつのペンダント…一体何なんだ?」
「……」
「こっちは命懸ける羽目になってんだ…我慢、続けてやる。だから…いい加減教えてくれ」
ラッカムの眼に殺気が混ざっていく。だがキースはもう恐れたりせず、睨み返したりもせず受け止め、大海賊を見つめた。
暗くてもわかるキースの眸の強さに、老いた海賊は同じように真っ直ぐな瞳を思い出す…あの状況でビアンカを逃せたのは良かった。目の前の盗人に正直感謝している。しつこく聴いてくるのは、他にも訳があるのだろうが…
ラッカムの口元が上がり、表情が柔らかくなった。
「地図と石は、もう勘づいてんだろう…お前の思ってる通り、あれは<王族の時計>の在り処を示してる」
「!」
「だが地図だけじゃ何も解らん。石まで手に入れたのはお前の運だ…相当、悪運が強いらしい」
キースの目が大きく見開かれる。
まるで子供のように輝き出し、無意識に身体が動き鎖で引っ張られても隣の檻へ近づこうとする。
「…マジで、マジか?ホントにあれが…赤い石に光を当てて、地図に翳したら道みてぇのが、」
「そうだ。解き方も合ってる。光の角度が問題だ、ズレれば見えねぇ…苦労するぞ」
「!っ…は……ッ」
詳細なことまで言われ、キースは床に座り込み俯いてしまう。軋音に紛れてくつくつと息遣いが聞こえ、彼が笑っているのだとわかった。
「お前も聴かせろ、お伽話の宝を探す理由…盗人の名でも上げてぇか?」
「……違ぇ、復讐だ」
「?」
「話、逸らすなよ…ペンダントは?石を、なんであいつが…なんもわかってねぇようなあいつが、何で持ってんだ?」
復讐という言葉にラッカムは一瞬眉を寄せるが、顔を上げたキースの問いに鼻を鳴らし笑って、
「…お前が訳を言ったら、教えてやらんでもない」
「あんたには、関係ねぇよ…」
キースも笑い返し、話は結局そこまでとなる……と、思われたが。
「枷抜けみてぇに上手いこと逃げろ。で、もう一度解いてみろ。雲一つ無い、陽差しが一番強い時間がいい」
「…は?」
「あの石は元々<竜の首飾り>だった。熱い色の柘榴石。それを俺が細工して…そういやお前、<首飾り>も手に入れたらしいな?」
「な…なんで、」
「だが地図と石だけじゃ、結局解らん…<羅針盤>。<ジュアンの羅針盤>だ、わかるな?あれが必要だ……それで辿り着けたとしても全部解けるか、見ものだな」
さらに詳しく語るラッカムにキースは困惑した。
──今ラッカムが語った内容は噂や眉唾話ではなく、何人も知り得ぬ秘密のはずで、それをベラベラと。断片ばかりだが三つともどうやってか調べていたあの手帖にも脱帽だ。しかし…逃げろという台詞が引っ掛かり、嫌な考えが浮かぶ。
「…なんで話した?あんたも、逃げる気あんだろ?このまま終わるつもりか?」
「…お前にゃ関係ねぇ」
「なぁ、おい…オーウェンは、<時計>が目当てであんたを?」
「あいつは違う」
「じゃあ、なんで?仲間で…親子だろ…?」
「……」
これまで抱いていた疑問を投げかければ、大海賊はまた口を閉ざし背を向けてしまった。この間も言われた台詞が蘇る。親子の問題…アジトにいた頃、二人の関係は悪そうに見えなかったし、ビアンカや皆から聞いたこともない。実の父子の間に何があったのか、キースは解らず悩みはじめるが…
梯子口が開き光が射し込む。降りて来たのはジェラルドとハリソンで、二人はそれぞれ檻を開け中に入り、
「来い…尋問だ」
ジェラルドが口を開き鎖を引っ張る。
告げられたのはラッカムで、老人は引かれるまま立ち上がり檻を出た。
「待て…っ、俺は、」
「お前はまだ安静にしてろ。それとも…好きなのか?鞭打ち」
咄嗟に止めようとしたキースをハリソンが遮り、聞き捨てならない台詞に思わず眉を寄せ睨みつける。ラッカムが笑いをもらし立ち止まり、
「お前の言う通り、俺は地獄行きだ。悪運に見放されねぇよう大人しくしてろ」
「ちょ…待てッ、待てよ!」
「…守ってくれ」
「「!」」
チラりと視線を送られ黙り込む。すげぇらしくねぇ言い方。傍らのジェラルドも驚いた様子で、一瞬目が合うが逸らされてしまい、ラッカムはそれ以上何も言わず甲板に連れて行かれた。
「今のはどういう意味だ?」
「……」
「…薬を持ってきた。包帯も替える」
「…触んじゃねぇ」
「…寝てる時のが大人しくて、助かったんだが」
「…いっそ死んでやりゃ、良かったなッ」
ハリソンはランプを檻に吊るしキースに近づこうするが、彼は警戒心たっぷりで触ろうとすると引っ掻きでもしそうな様子だった。
「お前が死んだら…彼はどうなる?」
「あ"?」
「ジェラルドだ。将軍に頭下げて、お前の尋問を休みにした」
ハリソンは困り顔で、それでも無理矢理鎖を引きキースを捕まえ、身体の包帯を外していく。
「なにが頭下げただ、頼んでねぇッ、恩着せがましいんだよ!」
「止めろ、お前の為だ」
「死ねクソ軍兵!」
「……お前だって元は軍人だろ」
「ッ」
「ジェラルドから聞いた、俺が探ったからだけど。お前のこと、聞かせてくれた」
「……」
「それに本当の目的も、彼は、っ!?」
話しながら肩に手を置いた瞬間、痛みが走り思わず引っ込める。指が噛まれたのだとわかり見返せば、盗人はかつて見た鋭い眼をしていて、
「お喋り、ヤロぉ…知った口利きやがってッ!あいつが、何言ったか知らねぇがなぁ!好き勝手語んじゃねぇ!!」
怒鳴り声が船底に響く。殺気に満ちた眼。徒ならぬ憎悪のようなものも感じ、目を逸らしてしまう…やはりジェラルドに居てもらえばよかったと後悔する。
噛まれた指先は少し血が滲んでいて、じんと痛んだ。
旗艦、船首にて。
本来はソロウや航海士のための席に今はラッカムが座っていて、向かいには尋問の担当であるジェラルド…ではなく、オーウェンがいた。
「いつまで黙ってんだ?」
「……」
「……我が父親ながら強情だよな、ホント。見習ったほうがいい?」
睨み合いながら笑いをもらし、見張りのジェラルドへ視線を向ける。ジェラルドはラッカムではなく自身を睨んでいて、その目の意味が何となくわかり、オーウェンは笑みを深めた。
「あんたのせいで、また一人死ぬぞ。次やったらマジで死ぬ…手加減する気もねぇしな」
ジェラルドの眼差しが強くなる…面白ぇの。見かけによらず友達思いなんだ?
「まぁ、あんたにとっちゃ、あんな盗人どうでもいいか。家族とか呼んでた仲間も本当はどうでもいいんだしなぁ」
机の上で指を動かす。爪の先で転がる木の物体。それはキースも見たことがある謎の木箱だった。
「あんたの部屋から持ってきた。ガキの頃触ったら、すげぇ怒ったやつ」
「……」
「これも秘密の一つだろ?中身は…入ってねぇ気がするけど。中よりこれに意味がありそうだな?」
転がしながらチラ見するがラッカムは無反応で、だがオーウェンは含み笑いし木箱を掴み、きめ細やかな格子模様を手当たり次第に触りはじめた。
この木の塊の正体は、西世界の細工箱──模様のような格子は全て仕掛けで、動かせたり押せたり出来る。法則を見つければ解くことが出来るが、解らなければ永遠に木の塊…それだけはわかっていて、解き方も何もかも、全ては目の前のクソ野郎が握ってる。
「ずっと黙ってるつもりなら、これ、ぶっ壊してやろうか?」
「……好きにしろ。クソガキ」
今度はラッカムの睨みが強くなり、オーウェンも負けじと見返す。嫌いな眼。この眼に似てしまったことをずっと恨んでいる。いつもいつも、達観したように何処か遠くを見ていて。
予定外なことが続きソロウとの友好関係は少し変わった。相変わらず沈黙しているからと自身まで呼ばれたこの尋問、名ばかりな閣下は成果を見せろと…このまま行けば目的は果たせるが、付いて来た仲間を従わせるためにも、働きを見せる必要があった。
「話題、変えてやる…いつから気づいてた?」
「……」
「俺が仕組んだって、気づいてたんだろ?なのにあんたは素知らぬフリ。お陰でこっちは上手く立ち回れた。陸の野良猫に砂かけられはしたが…舐め腐りやがって」
木箱を置き頬杖を付き、顔を近づける。ラッカムは暫く黙り込んでいたが、
「一年前、お前が俺の部屋を荒らした時」
「荒らしてねぇし。ちゃんと片した」
「バレねぇとでも思ったか?詰めが甘ぇんだよ」
「あっそう。けど…去年ね」
クスりと笑えば殺気が向けられ、愉しくなる。
「もっと前にも入った。アルマスって奴との手紙、あと…あんたの日誌を読んだ」
「……」
「大分前から文通してたんだろ?けど10年前から昔が無かった。日誌も。破いて燃やしでもしたか?」
「……お前にゃ関けい、」
「関係あんだよ」
語気を強め遮る。
さらに身を乗り出し近づくオーウェンに、ラッカムは不愉快そうに顔を顰めた。
「抜けてたって解る。テメェは、25年かそれ以上、ずっと連絡を取ってた。アルマスの前はアルムガルドの王様で、ずっとずっと、連絡だけじゃなくて…行ったんだろ」
「…ッ…」
「何年も何回も、宝隠すのにそんなかかったのか?テメェ、何してやがった?海賊のくせに助けてに応えて、見返りはなんだよ?女やガキでも作ってたか、なぁ?」
段々と声が荒くなり表情も険しくなる。ラッカムは何か言おうとするが口を噤み、目を伏せるが、
「逃げんじゃねぇッ」
「ッ」「…止めろ」
即座に手が伸び胸倉を捕まえる。机が傾き二人の椅子が倒れ、木箱が転がっていく。ジェラルドが止めに入るがオーウェンは止まらず、
「なにしてたか言えよッ、本物の家族は放ったらかしで!テメェが陸行ってる間に島は病気が流行ってヤベぇことになったッ!」
「…違う、」
「違わねぇッ、事実テメェが!母さんも皆も殺して、焼いたんだろうが!!テメェの口でハッキリ認めろよ!!」
襟ごと首を絞めつけるオーウェン。ジェラルドはつい手を放してしまう。怒鳴り声に驚いた軍兵達が覗き見てくるが、オーウェンは構わずに怒りをぶつけ続けた。
「見透かしたような面しやがって!だったらなんで守ってくれなかった!?なぁ!!助けもしねぇでッ焼いて殺して!!答えろエドワード・ラッカムッ!!」
殴ろうとした腕は結局ジェラルドに捕まり、それでも首を絞める手は筋立ち、憎悪が籠もっていて…ラッカムは遂に目を逸らし首を振った。
「…俺だけが目的なら、なんで巻き込んだ?」
「…ッ…」
「俺を突き出しゃ済んだ話だろ…オーウェン」
名前を呼ばれオーウェンは漸く手を放し、ジェラルドも振り払い舌打ちをもらして、
「それもわかってんだろうが…なにが'青色'だ、ごっこ野郎。皆飽き飽きしてんだ…テメェは海賊でも、家族でもねぇッ」
そう言うと先日のキースのように唾を吐き、父親の身体を汚した。息子であるはずの彼はジェラルドに目配せすると、そのまま去って行ってしまった。
「……続けるぞ、座れ」
ジェラルドが溜息をもらし鎖を捕まえ、大人しいままのラッカムを座らせる。大海賊は…もう元と呼ぶべきなのか、目の前の老人は俯き、笑っているようだった。
「みっともねぇ…随分と堕ちたもんだ」
「…今のが裏切りの理由か?」
「そうだろうよ…」
眉を顰めるジェラルドにラッカムは話し続ける。
「流行り病で、戻った時には手に負えなかった。苦しませねぇように殺って…島ごと焼いた」
「……」
「一味の誰かが話したんだろう。あのことだけは、書いてねぇ…それでもあいつは俺の子だ。俺達は親子だ。ずっと…」
語られた真相。だが何かが引っ掛かりラッカムを睨みつける。
ジェラルドは目を逸らさず手を伸ばし、転がったままの木箱を拾い上げ、また息を吐いた。
「今のように、秘密も話せ…あんたらのことなんてどうでもいいが…せめて死に方くらい選ばせてやる」
近くにいた軍兵達を呼ぶ。一人に鎖を持たせ、残りは立ち合いに。唐突に知った真相に胸は騒めいたままだったが、尋問は続けなくてはならない。
「時間の無駄だ…」
睨みを強くするとラッカムは笑みを深め……この後はまた黙りが続き、老人の尋問は失敗に終わった。
「おかえり、どうだった?」
「…途中でパスしたから、わかんねぇや」
夕暮れ。艦船隊の一隻、現在は<昇り竜>とその一味に使用が許された船の甲板にて。
旗艦から向かって来る小舟にはオーウェンが乗っていて、ジュリーは声をかけロープを下ろしてやった。彼はいつもの笑みを浮かべていたが、様子がおかしいとわかり少し不安になる。
「手強いね…それに、何かあった?」
「…いいや、何も」
船縁を乗り越え首を振っても、彼女には誤魔化し切れないようで…先ほどの怒りが蘇り目を逸らす。心配するフリして詮索するこいつが嫌いだ。どうせまた皆にお喋りするんだろ。
「オーウェン、ちょっといいか?」
「…どうした?」
「おお…っラッカム、と一緒に捕まえた盗人だ。あいつ、元軍兵なんだって?」
船室へ戻ろうとしたオーウェンをセディが呼び止める。彼の物言いに思わず眉を寄せるが、さらに数人仲間が近づいてきて、
「閣下に話してねぇよな?なんで?バラしちまえばいいのに」
「あのデュレーって奴と知り合いなんだろ。ちょっと面白ぇことになるんじゃね?」
「ラッカムが口割らねぇんだから、この間みたくあいつを甚振りゃいい」
「……」
セディがなんでと言った途端、四方から思い思いの言葉が投げかけられ、うんざりする。こいつらの根底は'黒'と同じ、身勝手な外道と一緒。'青色'は好きじゃない、だがこいつらも気に食わねぇ…好き勝手話を膨らませて私掠船だの何だの、足引っ張るだけのクズ共が──
「なぁ、オーウェ…ッえ"ぇ?!」
セディがオーウェンの肩を掴もうとするが、逆に捕まり思い切り捻り上げられ、野太い悲鳴が上がる。周りにいた仲間達がビクりとし後退る。
「おッ、オーウェン!痛ぇよ!」
「セディお前、人に物言える立場か?」
「わ、わわわ悪かったッ、大頭!」
「そうじゃねぇ…オフィーリアでのこと、有耶無耶にできると思ったか?」
腕を捻りながら耳元で囁けばセディの顔が一気に青褪め、オーウェンは頬を持ち上げた。ジュリーはこの後のことが読め、止めようと声を上げるが、
「ビアンカは生け捕れって、伝えたろ。鳩ちゃんと届いてたんだろ、なぁ」
「!と、届いてた届いてました!すまんッ!バレそうでつい、」
「中途半端にしくじって船ダメにしてよぉ…俺の船をッ」
「や"…ぁ"ああ!やめ、ごめんなざい"ッオーウェンッ!大頭ぁ!!」
太っちょなセディ相手でもオーウェンは引っ張り舷に叩きつけ、今度は肩や頭を船縁に乗り出させ海へ落とそうとする。セディは半泣き状態で何度も謝り、ジュリーや仲間も慄き助けに入れず、このまま落とされるかと恐怖するが…
「……うっせぇな、アホ」
「…へ…?」
いつもの優しい笑い声が聞こえ、思わず身体の力が抜ける。怒らせてしまったのだろうが、新しい大頭はいつもの笑みを浮かべているようで、ほっと安堵する。
セディはちゃんと詫びなければと思い、振り返った。
「!っ!」「!オーウェンッ」
セディの眉間にピッタリと銃口が当たった瞬間オーウェンが引き鉄を引き、銃声とジュリーの叫びが重なる。
頭から血を噴き出すセディはビクビクと痙攣し、海へ真っ逆さまに落ちていった。見ていた仲間達が響めき、海を覗いたりオーウェンから視線を逸らし……そして沈黙した。
当の本人はやっと静かになった程度にしか思っておらず、短く息を吐き、
「お前ら俺に付いて来たんだろ?なら俺のやり方に従えよ…まだ文句あんなら前に出ろッ!」
小銃を腰に戻し告げる。頼りない声で数人アイと答え、反論無し。これでいい。
「疲れてんだ。静かにしてくれ…」
そう言って船室に向かって行ったオーウェンは、いつもの優しい笑顔に戻っていた。
ジュリーは彼の背を見つめながら震える手を握り、抑えようとしていた。アジト奇襲がしぐじってから彼は変わってしまった。今まで自身で堪えていた感情が顕になってきていて…
大海賊の息子は、怒りと憎しみと殺意を糧に生きているようだった──
オーウェンの酷い拷問を受けてからキースは眠り続けていたのだが、重たい瞼が漸く開き徐々に意識が戻ってくる。一瞬何処かわからなかったが、暗闇のそこはいつもの檻の中で、
「生きてるか?」
声が聞こえ首を動かすと、ラッカムと目が合った。
「……しにそ」
「しぶとい奴だ」
「ぉれ、っ…なん日、ね"てた?」
「…三日ってとこだろう。毎日仲良しの奴の連れが、面倒見てくれてる」
「…ッ、ゴほ…!」
声が掠れ上手く発音できず、思わず咳き込みながら身体を動かす。背中は相変わらず痛み、だが包帯は綺麗になり血も止まったようで、ズボンも見知らぬものに変わっていた。
頭がグラグラする。ちょっと熱っぽい。手枷は拷問の時と同じで手首を締めつけ、縁で付いた傷や痣は瘡蓋になり触れる度擽ったく痒い。
「随分やられたみてぇだな」
「あんたの、息子だよ」
「…辛ぇか」
「あ…?」
「話せば終わる、もう痛い思いもせずに済む」
まさかの発言に顔を顰める。ラッカムは無表情のまま見つめてきて感情が読めず、苛立ちが増す。
「…バラしてほしいのかよ?秘密主義の、大海賊さんよぉ」
「お前の好きにすりゃあいい…ここまで保つとは思わんかった」
またイライラする。予想外の言葉(心配されたいわけでもないが)な上に、馬鹿にもされてる…キースはあからさまに舌打ちし睨み返した。
「ざけんな…あんたの為だとか思ってんのか?」
「いいや、あいつの為だろ」
怒りを込めて返してもラッカムは見透かしているようで、あいつと言われビアンカの顔が思い浮かぶ。キースは一瞬黙り込んでしまうが、ゆっくり息を吐きダメ元で日課を再開した。
「…地図と、赤い石。あと、あいつのペンダント…一体何なんだ?」
「……」
「こっちは命懸ける羽目になってんだ…我慢、続けてやる。だから…いい加減教えてくれ」
ラッカムの眼に殺気が混ざっていく。だがキースはもう恐れたりせず、睨み返したりもせず受け止め、大海賊を見つめた。
暗くてもわかるキースの眸の強さに、老いた海賊は同じように真っ直ぐな瞳を思い出す…あの状況でビアンカを逃せたのは良かった。目の前の盗人に正直感謝している。しつこく聴いてくるのは、他にも訳があるのだろうが…
ラッカムの口元が上がり、表情が柔らかくなった。
「地図と石は、もう勘づいてんだろう…お前の思ってる通り、あれは<王族の時計>の在り処を示してる」
「!」
「だが地図だけじゃ何も解らん。石まで手に入れたのはお前の運だ…相当、悪運が強いらしい」
キースの目が大きく見開かれる。
まるで子供のように輝き出し、無意識に身体が動き鎖で引っ張られても隣の檻へ近づこうとする。
「…マジで、マジか?ホントにあれが…赤い石に光を当てて、地図に翳したら道みてぇのが、」
「そうだ。解き方も合ってる。光の角度が問題だ、ズレれば見えねぇ…苦労するぞ」
「!っ…は……ッ」
詳細なことまで言われ、キースは床に座り込み俯いてしまう。軋音に紛れてくつくつと息遣いが聞こえ、彼が笑っているのだとわかった。
「お前も聴かせろ、お伽話の宝を探す理由…盗人の名でも上げてぇか?」
「……違ぇ、復讐だ」
「?」
「話、逸らすなよ…ペンダントは?石を、なんであいつが…なんもわかってねぇようなあいつが、何で持ってんだ?」
復讐という言葉にラッカムは一瞬眉を寄せるが、顔を上げたキースの問いに鼻を鳴らし笑って、
「…お前が訳を言ったら、教えてやらんでもない」
「あんたには、関係ねぇよ…」
キースも笑い返し、話は結局そこまでとなる……と、思われたが。
「枷抜けみてぇに上手いこと逃げろ。で、もう一度解いてみろ。雲一つ無い、陽差しが一番強い時間がいい」
「…は?」
「あの石は元々<竜の首飾り>だった。熱い色の柘榴石。それを俺が細工して…そういやお前、<首飾り>も手に入れたらしいな?」
「な…なんで、」
「だが地図と石だけじゃ、結局解らん…<羅針盤>。<ジュアンの羅針盤>だ、わかるな?あれが必要だ……それで辿り着けたとしても全部解けるか、見ものだな」
さらに詳しく語るラッカムにキースは困惑した。
──今ラッカムが語った内容は噂や眉唾話ではなく、何人も知り得ぬ秘密のはずで、それをベラベラと。断片ばかりだが三つともどうやってか調べていたあの手帖にも脱帽だ。しかし…逃げろという台詞が引っ掛かり、嫌な考えが浮かぶ。
「…なんで話した?あんたも、逃げる気あんだろ?このまま終わるつもりか?」
「…お前にゃ関係ねぇ」
「なぁ、おい…オーウェンは、<時計>が目当てであんたを?」
「あいつは違う」
「じゃあ、なんで?仲間で…親子だろ…?」
「……」
これまで抱いていた疑問を投げかければ、大海賊はまた口を閉ざし背を向けてしまった。この間も言われた台詞が蘇る。親子の問題…アジトにいた頃、二人の関係は悪そうに見えなかったし、ビアンカや皆から聞いたこともない。実の父子の間に何があったのか、キースは解らず悩みはじめるが…
梯子口が開き光が射し込む。降りて来たのはジェラルドとハリソンで、二人はそれぞれ檻を開け中に入り、
「来い…尋問だ」
ジェラルドが口を開き鎖を引っ張る。
告げられたのはラッカムで、老人は引かれるまま立ち上がり檻を出た。
「待て…っ、俺は、」
「お前はまだ安静にしてろ。それとも…好きなのか?鞭打ち」
咄嗟に止めようとしたキースをハリソンが遮り、聞き捨てならない台詞に思わず眉を寄せ睨みつける。ラッカムが笑いをもらし立ち止まり、
「お前の言う通り、俺は地獄行きだ。悪運に見放されねぇよう大人しくしてろ」
「ちょ…待てッ、待てよ!」
「…守ってくれ」
「「!」」
チラりと視線を送られ黙り込む。すげぇらしくねぇ言い方。傍らのジェラルドも驚いた様子で、一瞬目が合うが逸らされてしまい、ラッカムはそれ以上何も言わず甲板に連れて行かれた。
「今のはどういう意味だ?」
「……」
「…薬を持ってきた。包帯も替える」
「…触んじゃねぇ」
「…寝てる時のが大人しくて、助かったんだが」
「…いっそ死んでやりゃ、良かったなッ」
ハリソンはランプを檻に吊るしキースに近づこうするが、彼は警戒心たっぷりで触ろうとすると引っ掻きでもしそうな様子だった。
「お前が死んだら…彼はどうなる?」
「あ"?」
「ジェラルドだ。将軍に頭下げて、お前の尋問を休みにした」
ハリソンは困り顔で、それでも無理矢理鎖を引きキースを捕まえ、身体の包帯を外していく。
「なにが頭下げただ、頼んでねぇッ、恩着せがましいんだよ!」
「止めろ、お前の為だ」
「死ねクソ軍兵!」
「……お前だって元は軍人だろ」
「ッ」
「ジェラルドから聞いた、俺が探ったからだけど。お前のこと、聞かせてくれた」
「……」
「それに本当の目的も、彼は、っ!?」
話しながら肩に手を置いた瞬間、痛みが走り思わず引っ込める。指が噛まれたのだとわかり見返せば、盗人はかつて見た鋭い眼をしていて、
「お喋り、ヤロぉ…知った口利きやがってッ!あいつが、何言ったか知らねぇがなぁ!好き勝手語んじゃねぇ!!」
怒鳴り声が船底に響く。殺気に満ちた眼。徒ならぬ憎悪のようなものも感じ、目を逸らしてしまう…やはりジェラルドに居てもらえばよかったと後悔する。
噛まれた指先は少し血が滲んでいて、じんと痛んだ。
旗艦、船首にて。
本来はソロウや航海士のための席に今はラッカムが座っていて、向かいには尋問の担当であるジェラルド…ではなく、オーウェンがいた。
「いつまで黙ってんだ?」
「……」
「……我が父親ながら強情だよな、ホント。見習ったほうがいい?」
睨み合いながら笑いをもらし、見張りのジェラルドへ視線を向ける。ジェラルドはラッカムではなく自身を睨んでいて、その目の意味が何となくわかり、オーウェンは笑みを深めた。
「あんたのせいで、また一人死ぬぞ。次やったらマジで死ぬ…手加減する気もねぇしな」
ジェラルドの眼差しが強くなる…面白ぇの。見かけによらず友達思いなんだ?
「まぁ、あんたにとっちゃ、あんな盗人どうでもいいか。家族とか呼んでた仲間も本当はどうでもいいんだしなぁ」
机の上で指を動かす。爪の先で転がる木の物体。それはキースも見たことがある謎の木箱だった。
「あんたの部屋から持ってきた。ガキの頃触ったら、すげぇ怒ったやつ」
「……」
「これも秘密の一つだろ?中身は…入ってねぇ気がするけど。中よりこれに意味がありそうだな?」
転がしながらチラ見するがラッカムは無反応で、だがオーウェンは含み笑いし木箱を掴み、きめ細やかな格子模様を手当たり次第に触りはじめた。
この木の塊の正体は、西世界の細工箱──模様のような格子は全て仕掛けで、動かせたり押せたり出来る。法則を見つければ解くことが出来るが、解らなければ永遠に木の塊…それだけはわかっていて、解き方も何もかも、全ては目の前のクソ野郎が握ってる。
「ずっと黙ってるつもりなら、これ、ぶっ壊してやろうか?」
「……好きにしろ。クソガキ」
今度はラッカムの睨みが強くなり、オーウェンも負けじと見返す。嫌いな眼。この眼に似てしまったことをずっと恨んでいる。いつもいつも、達観したように何処か遠くを見ていて。
予定外なことが続きソロウとの友好関係は少し変わった。相変わらず沈黙しているからと自身まで呼ばれたこの尋問、名ばかりな閣下は成果を見せろと…このまま行けば目的は果たせるが、付いて来た仲間を従わせるためにも、働きを見せる必要があった。
「話題、変えてやる…いつから気づいてた?」
「……」
「俺が仕組んだって、気づいてたんだろ?なのにあんたは素知らぬフリ。お陰でこっちは上手く立ち回れた。陸の野良猫に砂かけられはしたが…舐め腐りやがって」
木箱を置き頬杖を付き、顔を近づける。ラッカムは暫く黙り込んでいたが、
「一年前、お前が俺の部屋を荒らした時」
「荒らしてねぇし。ちゃんと片した」
「バレねぇとでも思ったか?詰めが甘ぇんだよ」
「あっそう。けど…去年ね」
クスりと笑えば殺気が向けられ、愉しくなる。
「もっと前にも入った。アルマスって奴との手紙、あと…あんたの日誌を読んだ」
「……」
「大分前から文通してたんだろ?けど10年前から昔が無かった。日誌も。破いて燃やしでもしたか?」
「……お前にゃ関けい、」
「関係あんだよ」
語気を強め遮る。
さらに身を乗り出し近づくオーウェンに、ラッカムは不愉快そうに顔を顰めた。
「抜けてたって解る。テメェは、25年かそれ以上、ずっと連絡を取ってた。アルマスの前はアルムガルドの王様で、ずっとずっと、連絡だけじゃなくて…行ったんだろ」
「…ッ…」
「何年も何回も、宝隠すのにそんなかかったのか?テメェ、何してやがった?海賊のくせに助けてに応えて、見返りはなんだよ?女やガキでも作ってたか、なぁ?」
段々と声が荒くなり表情も険しくなる。ラッカムは何か言おうとするが口を噤み、目を伏せるが、
「逃げんじゃねぇッ」
「ッ」「…止めろ」
即座に手が伸び胸倉を捕まえる。机が傾き二人の椅子が倒れ、木箱が転がっていく。ジェラルドが止めに入るがオーウェンは止まらず、
「なにしてたか言えよッ、本物の家族は放ったらかしで!テメェが陸行ってる間に島は病気が流行ってヤベぇことになったッ!」
「…違う、」
「違わねぇッ、事実テメェが!母さんも皆も殺して、焼いたんだろうが!!テメェの口でハッキリ認めろよ!!」
襟ごと首を絞めつけるオーウェン。ジェラルドはつい手を放してしまう。怒鳴り声に驚いた軍兵達が覗き見てくるが、オーウェンは構わずに怒りをぶつけ続けた。
「見透かしたような面しやがって!だったらなんで守ってくれなかった!?なぁ!!助けもしねぇでッ焼いて殺して!!答えろエドワード・ラッカムッ!!」
殴ろうとした腕は結局ジェラルドに捕まり、それでも首を絞める手は筋立ち、憎悪が籠もっていて…ラッカムは遂に目を逸らし首を振った。
「…俺だけが目的なら、なんで巻き込んだ?」
「…ッ…」
「俺を突き出しゃ済んだ話だろ…オーウェン」
名前を呼ばれオーウェンは漸く手を放し、ジェラルドも振り払い舌打ちをもらして、
「それもわかってんだろうが…なにが'青色'だ、ごっこ野郎。皆飽き飽きしてんだ…テメェは海賊でも、家族でもねぇッ」
そう言うと先日のキースのように唾を吐き、父親の身体を汚した。息子であるはずの彼はジェラルドに目配せすると、そのまま去って行ってしまった。
「……続けるぞ、座れ」
ジェラルドが溜息をもらし鎖を捕まえ、大人しいままのラッカムを座らせる。大海賊は…もう元と呼ぶべきなのか、目の前の老人は俯き、笑っているようだった。
「みっともねぇ…随分と堕ちたもんだ」
「…今のが裏切りの理由か?」
「そうだろうよ…」
眉を顰めるジェラルドにラッカムは話し続ける。
「流行り病で、戻った時には手に負えなかった。苦しませねぇように殺って…島ごと焼いた」
「……」
「一味の誰かが話したんだろう。あのことだけは、書いてねぇ…それでもあいつは俺の子だ。俺達は親子だ。ずっと…」
語られた真相。だが何かが引っ掛かりラッカムを睨みつける。
ジェラルドは目を逸らさず手を伸ばし、転がったままの木箱を拾い上げ、また息を吐いた。
「今のように、秘密も話せ…あんたらのことなんてどうでもいいが…せめて死に方くらい選ばせてやる」
近くにいた軍兵達を呼ぶ。一人に鎖を持たせ、残りは立ち合いに。唐突に知った真相に胸は騒めいたままだったが、尋問は続けなくてはならない。
「時間の無駄だ…」
睨みを強くするとラッカムは笑みを深め……この後はまた黙りが続き、老人の尋問は失敗に終わった。
「おかえり、どうだった?」
「…途中でパスしたから、わかんねぇや」
夕暮れ。艦船隊の一隻、現在は<昇り竜>とその一味に使用が許された船の甲板にて。
旗艦から向かって来る小舟にはオーウェンが乗っていて、ジュリーは声をかけロープを下ろしてやった。彼はいつもの笑みを浮かべていたが、様子がおかしいとわかり少し不安になる。
「手強いね…それに、何かあった?」
「…いいや、何も」
船縁を乗り越え首を振っても、彼女には誤魔化し切れないようで…先ほどの怒りが蘇り目を逸らす。心配するフリして詮索するこいつが嫌いだ。どうせまた皆にお喋りするんだろ。
「オーウェン、ちょっといいか?」
「…どうした?」
「おお…っラッカム、と一緒に捕まえた盗人だ。あいつ、元軍兵なんだって?」
船室へ戻ろうとしたオーウェンをセディが呼び止める。彼の物言いに思わず眉を寄せるが、さらに数人仲間が近づいてきて、
「閣下に話してねぇよな?なんで?バラしちまえばいいのに」
「あのデュレーって奴と知り合いなんだろ。ちょっと面白ぇことになるんじゃね?」
「ラッカムが口割らねぇんだから、この間みたくあいつを甚振りゃいい」
「……」
セディがなんでと言った途端、四方から思い思いの言葉が投げかけられ、うんざりする。こいつらの根底は'黒'と同じ、身勝手な外道と一緒。'青色'は好きじゃない、だがこいつらも気に食わねぇ…好き勝手話を膨らませて私掠船だの何だの、足引っ張るだけのクズ共が──
「なぁ、オーウェ…ッえ"ぇ?!」
セディがオーウェンの肩を掴もうとするが、逆に捕まり思い切り捻り上げられ、野太い悲鳴が上がる。周りにいた仲間達がビクりとし後退る。
「おッ、オーウェン!痛ぇよ!」
「セディお前、人に物言える立場か?」
「わ、わわわ悪かったッ、大頭!」
「そうじゃねぇ…オフィーリアでのこと、有耶無耶にできると思ったか?」
腕を捻りながら耳元で囁けばセディの顔が一気に青褪め、オーウェンは頬を持ち上げた。ジュリーはこの後のことが読め、止めようと声を上げるが、
「ビアンカは生け捕れって、伝えたろ。鳩ちゃんと届いてたんだろ、なぁ」
「!と、届いてた届いてました!すまんッ!バレそうでつい、」
「中途半端にしくじって船ダメにしてよぉ…俺の船をッ」
「や"…ぁ"ああ!やめ、ごめんなざい"ッオーウェンッ!大頭ぁ!!」
太っちょなセディ相手でもオーウェンは引っ張り舷に叩きつけ、今度は肩や頭を船縁に乗り出させ海へ落とそうとする。セディは半泣き状態で何度も謝り、ジュリーや仲間も慄き助けに入れず、このまま落とされるかと恐怖するが…
「……うっせぇな、アホ」
「…へ…?」
いつもの優しい笑い声が聞こえ、思わず身体の力が抜ける。怒らせてしまったのだろうが、新しい大頭はいつもの笑みを浮かべているようで、ほっと安堵する。
セディはちゃんと詫びなければと思い、振り返った。
「!っ!」「!オーウェンッ」
セディの眉間にピッタリと銃口が当たった瞬間オーウェンが引き鉄を引き、銃声とジュリーの叫びが重なる。
頭から血を噴き出すセディはビクビクと痙攣し、海へ真っ逆さまに落ちていった。見ていた仲間達が響めき、海を覗いたりオーウェンから視線を逸らし……そして沈黙した。
当の本人はやっと静かになった程度にしか思っておらず、短く息を吐き、
「お前ら俺に付いて来たんだろ?なら俺のやり方に従えよ…まだ文句あんなら前に出ろッ!」
小銃を腰に戻し告げる。頼りない声で数人アイと答え、反論無し。これでいい。
「疲れてんだ。静かにしてくれ…」
そう言って船室に向かって行ったオーウェンは、いつもの優しい笑顔に戻っていた。
ジュリーは彼の背を見つめながら震える手を握り、抑えようとしていた。アジト奇襲がしぐじってから彼は変わってしまった。今まで自身で堪えていた感情が顕になってきていて…
大海賊の息子は、怒りと憎しみと殺意を糧に生きているようだった──
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