自分をドラゴンロードの生まれ変わりと信じて止まない一般少女

神谷モロ

文字の大きさ
8 / 151
第一章 我こそが

第8話 朗報

しおりを挟む
「おはようルーシー。今日は自分で起きれたのね、偉いわ」

 寝間着のままルーシーはリビングに降りてきた。 

「おはようございます。お母様……。」

「あらあら、ルーシーったら。寝間着のままで。それに髪の毛がぼさぼさじゃない。もう10歳なんだから身だしなみにも気を使わないとだめでしょ?」

「はい、お母様……」

 母の小言を素直に聞く。

 いつもなら少しの屁理屈で言い返しているところだ。
 少し汗をかいたのでそのまま着替えるのは嫌だから等。

 だが今朝は夢見が悪いのでそんな気分にもなれなかった。

 それに母の言う事は当然だ、寝間着のまま人前に出るのが許されるのは子供の間だけ。
 ルーシーが母親に叱られたのは大人として認められたのだろうと前向きにとらえることにした。

 私はもう10歳、大人なのだ。そしてドラゴンロードとして立派に……。
 うん? ドラゴンロードとして大人になる?
 いや、私はドラゴンロードなのだ……。あれ? ドラゴンって人だっけ?

 夢で見たカッコいいドラゴンの身体を思い出し。そして現実の自分の手の平を見ながら自分の体に違和感を感じたのだ。
 その場でクルクルと身体を捻りながら自分の全身を見ようとするも人間そのものだった、当然だが尻尾は無い。

「ルーシー? もう……、寝ぼけてないで、今日はブラウン先生のところでしょ? シャキッとしなさい。まったく……レオ、お姉ちゃんをお願いね」

 夢のことは後回しだ。今日は塾に行く日だと思い出したのでルーシーは母親の言うとおりに気分を切り替える。

 レオンハルトは既に外出用の衣服に着替えており8歳の少年にしてはなかなかに凛々しい姿だ。癖のある赤毛だが寝ぐせは無く綺麗に整えられている。
 ついこの間までは弟の寝ぐせを整えるのがルーシーの日課だったのに、彼も大人になったということか。
 
 確かにレオンハルトは父親に似て、顔立ちが整っている。将来は間違いなくハンサムな男子になるだろう。

 レオンハルトは寝間着姿のルーシーを見て溜息をつきながら母に返事をした。

「はーい。まったく、今日の姉ちゃんは特に酷いんだから。はあ、今から憂鬱だよ……」

「もう、レオも朝っぱらから憂鬱とか言わない。そうだ、今日はお父様が帰ってくるから、二人とも元気出しなさい。今晩はご馳走よっ!」

 その言葉を聞いたルーシーは先ほどまでの重苦しい表情から一変。太陽の様な笑顔に様変わりした。

「え? お父様が? やったー。レオ! さっさと行って、さっさと帰るわよ!」
「姉ちゃん……。まずは着替えないと。それに塾は早く行ったからって授業はいつも通りの時間に終わるんだから」

 パンを口いっぱいに含みミルクで胃に流し込むルーシー。そしてその場で服を脱ぎ洗濯カゴに勢いよく放り込むと自分の部屋に戻っていった。

「まったくあの子は……。うふふ、でも今日はクロードが帰る。私もおめかししようかしら。そうねアレを久しぶりに着ようかしら、私だってまだまだいけるんだから……」

 クリスティーナは母親として、今行われているルーシーのお転婆を窘めることも忘れて。久しぶりに帰宅する夫の為のパーティーの準備を考えていた。 


 ルーシーは部屋に戻るとクローゼットからお気に入りの白いワンピースを取り出し手早く着替えを済ます。

 彼女は父親であるクロードが大好きだった。
 母と違って怒らないし、元騎士だったらしく礼儀正しく知的な振る舞い、程よく筋肉の付いた身体、そして周りの子供たちの父親と比べてハンサムだからだ。
 もちろん顔の良し悪しは個人の好みであるため一般的かは知らないが、それでも父親がいると周りのご婦人たちの声のトーンが少し上がるのは知っている。
 
 そして彼女が父のことを好きな最大の理由は何より愛娘であるルーシーに甘いのだ。

 弟のレオに対しては同じ男として少し厳しいところがある。それに比べ母親とそっくりな娘を溺愛するのは当たり前の事だろう。

 もちろん一番は母親であるのだが、それで母に嫉妬するのは順番が違うので甘んじて受け止める。いや、むしろ母そっくりの容姿に産んでくれて感謝しているくらいだ。
 きっと今日も何か珍しいお土産を持って帰るに違いないのだ。


 クロードの仕事はグプタの自警団を努めており、数日留守にすることもある。

 今回は西グプタの防壁外で魔物が活発になったため、その対策の応援で一月ほど西グプタに駐屯していたのだった。

 だから久しぶりに父親が帰ってくるという朗報に、夢見の悪かったルーシーの気分は一気に晴れたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

無能勇者の黙示録~勝手に召喚されて勝手に追放されたので勝手に旅に出ます~

枯井戸
ファンタジー
力も強くない、足も速くない、魔法も使えないし、頭も大してよくない、どこにでもいるちょっとオタク趣味の主人公・東雲真緒が白雉国に勇者として転生する。 同期の勇者はそれぞれ力が強かったり、魔法が使えたり、回復ができたりと各々の才能を開花させ頭角を現していくのだが、真緒に与えられた才能は異世界転生モノでよく見る〝ステータスオープン〟のみだった。 仲間には使えないと蔑まれ、ギルドには落第勇者の烙印を押され、現地人には殺害されかけ、挙句の果てに大事な人を亡くし、見ず知らずの土地の最底辺で生きていくことになった真緒だったが、彼女はまだ〝ステータスオープン〟の可能性に気づいていないだけだった。 ───────────── ※投稿時間は多少前後しますが毎日投稿は続けていくつもりです。 ※タイトルは予告なしにガラリと変わる場合があるのでご了承ください。 ※表紙は現在の主人公のイメージ図です。もしまた別の国へ行く場合、彼女の装いも変化するかもしれません。

処理中です...