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第七章 学園編3

第114話 仮定の話

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「ドラゴンロードの復活ですって! もしそれが本当なら……、お父様たちにも連絡しないと!」

 ソフィアはティーカップを持ったまま席を立とうとする。
 余程動揺していたのか、伯爵令嬢にあるまじき所作であった。

「ソフィア、落ち着きなさい。まだ仮定の話だよ。それに実際に呪いのドラゴンロードは滅んだ。それを人間の手で生き返らせることなど不可能だよ」

 そう、あくまで仮定の話だ。人間がドラゴンロードをどうにかできる等、あってはならないのだ。

「先生、質問よろしいですか?」

 今まで黙っていたセシリアが手をあげる。

「なんだい? 何でも聞いておくれ、これも授業の一環。私の憶測にすぎないが君たちの意見を合わせると何か見えてくれるかもしれんしのう」

 これはあくまで授業の一環である、例え有り得なくても知識を集合させることで、やがて解に近づける勉強なのだ。魔法使いの感を鍛えるのには重要な授業でもある。

「はい、呪いのドラゴンロードは伝説によれば、復活に眷属の魂を使用するそうですが……、もしかしてその眷属を探し出しているのではと思いまして」

「うむ、たしかにエフタルの歴史書にはそう書いてあったな。さすがはセシリアだね、よく勉強している。
 呪いのドラゴンロード・ルシウス。やつは自身を完全なる不死とするために、魂を分割し、それぞれを強力な魔物に分け与えていたのだ。

 その一体の中で最も強力なのが、ソフィアも知っている通り、あの魔獣王ベヒモスじゃ。その他の魔物は……そうだね、セシリアよ、他の魔物はどうなったのだね?」

 マーガレットの問いにセシリアは話を続ける。

「はい、その他の眷属は母方の一族の方が全て討伐したと、以前母上から聞いております。
 無名仙人という、母上の師匠らしいのですが……」

「セバスティアーナの師匠。なるほどな、あのモガミ流の人外が動いたのか……。 というか、ルカからは何も聞いておらんのだが……。いやルカは聞かなければ何も言わんやつだしそれはしょうがないか。
 であるなら、ルシウスの眷属は全て消失。つまり魂は大地に還元され、新たなドラゴンロードとして自然に復活するには千年かかるか、その辺は神話の話で確証はないがな……」

 ルーシーは話を聞きながら、何か引っ掛かる思いがした。
 ルシウスという響き、やはり自分と関係があるのではと何度も思うが、名前が少し似てるだけで自意識過剰に言っても笑われるだけだし。
 それに、ルシウスというやつは相当に悪いドラゴンロードであり、ベアトリクスと違っておふざけで語れる場面ではない。

 そういえば、なんか夢で見たような……だが思い出せない。それにドラゴンロードになった夢なんて恥ずかしくて言えない。
 だがルーシーとしては気になることがあった。

「セシリアさん。そのルシウスの眷属は全て死んだんだよね。だったら復活って無理じゃないの?」

「うん、ルーシーさんの言うとおり、母上はそう言ってた。ルシウスの魂のストックである大型の魔獣は全て無名仙人が倒したって」

「ねえ、セシリアさん。その眷属って、もしかして人間にもいるんじゃないの?」

「うーん、一般的な知識として呪いのドラゴンロードは人間を眷属にはしないはずだけど、奴にとって人間は嗜好品でしかないと……。
 でも真実は違うのかも……。
 そうだ、無名仙人に実際に聞いてみたら何か分かるかも。せっかくだし母上から無名仙人に会えないか今度聞いてみる」

「え? あの無名仙人様にお会いできるの? お父様の大師匠って聞きましたわ。セシリアさん、私もぜひその方にお会いしたいですわ、ね? ルーシーさんもそうでしょう?」

 ソフィアはルーシーも巻き込んでその無名仙人という謎の人物に会うつもりのようだ。
 当然だがルーシーには全く興味がない、というか、本能的にその仙人というのに忌避感をおぼえるくらいだ。

 だが、親友がそうまで言うならと、しぶしぶ了承したのだった。

 マーガレットもあまりよく思っていないのか、少しだけ間を置くと溜息をつきながら言った。

「せっかくだし、あのジジイ、いや無名仙人にこの研究室にお越し願おうじゃないか。
 セシリアよすまんが、セバスティアーナ殿に伝えておくれ、というか、先帝陛下の権限をもって無名仙人にはぜひお越しいただきたいと……」
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