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第四章 カルルク帝国
第63話 目的地へ①
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冬が過ぎ春が訪れた。
まだ早朝は肌寒いが草原には草花が芽吹いている。
俺は日課の素振りをしている。
この間の任務で折れた剣の代わりに、俺はセバスティアーナさんから、九番の魔剣。鋼鉄の大刀『ノダチ』を授けてもらった。
いいんですか? と聞いたがセバスティアーナさんは俺に言った「私には専用の魔剣の十番がありますので。それに、この剣は私には重すぎます。女の私では振るので精一杯ですから、カイル様こそが相応しいでしょう。
それに元々差し上げるつもりでした。ただ、剣の初心者が修行に使うには荷が重いと思ってましたが、今のカイル様なら丁度よいでしょう」
とのことだったが。……振るので精一杯はさすがに言い過ぎだ。でも確かに重い。前に持ってた剣よりは全体的な重量は軽い。だが手に持って振ると長さのせいか前の剣よりも重く感じた。
「馴染みましたか?」
いきなり背後から声が聞こえた。セバスティアーナさんは相変わらず気配を感じない。まったく心臓に悪い。
だがこれも修行のうちなのだろう。彼女の気配に気付かない俺はまだまだ未熟だ。
俺は素振りをやめ。彼女に振り返る。
「この剣は本当に凄いですね。同じ鉄なのに前の剣とは強度も切れ味も全然違います。魔剣開放が出来ないのに魔剣に数えられているのはなにか秘密があるのですか?」
「いい着眼点です。私も詳しくないのですが、その剣の刀身にはミスリルと鉄の両方が使われております。薄く伸ばした二つの金属が折り重なり何千の層を造っているというのです。
ルカ様が、鍛冶師の方と共同で造った傑作品だとおっしゃっていました。ミスリルの強度と鉄の重さが合わさった理想的な刃ということです。ちなみにこの構造は私の持ってる十番そして二十番にも応用されています」
なるほど、二十番の魔剣のあの異常な切れ味の秘密はそこにあったのか。
「さて、カイル様にはそろそろ、もう一つの奥義を教えておきましょうか。ですが今日は、そうでしたね、本日は皇帝陛下の謁見があるのでした。明日旅立つのですから別れの挨拶ということでしょう」
「分かりました。シャルロットは今どこですか?」
「シャルロット様は先程鍛錬を終えて今はお風呂に入っております。カイル様もその後入られるといいでしょう。なんなら私とご一緒しますか?」
「や、やめてくださいよ」
「ふふ、冗談ですよ」
余り表情を変えないセバスティアーナさんに言われると冗談だと分かっていてもドキッとしてしまう。まったく……。
◆
「いよいよ明日出立ですか。早いものですね。本音を言えば、ずっとベラサグンにいてほしいくらいです。冒険者として随分腕を上げたようではないですか。
……でも、引き留めてしまってはルカに怒られてしまいますね」
「ご厚意に感謝します。それに二十番の魔剣が壊れたままですし。それに俺自身、命の恩人であるルカ・レスレクシオン様には会ってお礼をしないとですし」
「そうよね、私もそれがなければとっくに死んでたんだし。命の恩人……ぜひ会っておかないと」
シャルロットも俺と同じ考えだ。
「ふふ、間接的とはいえ、あのルカが他人を助けるだなんて、あの頃のルカからすると全然想像できないわね」
オリビア陛下は思い出し笑いを浮かべながら遠くを見つめるような目をした。
「失礼ですが。陛下はルカ・レスレクシオンとはご学友だったと聞きましたが。エフタルに留学されてたんですか?」
「ええ、そうよ。そうね、あの頃は私はまだ16歳だった。そしてルカは17歳で留学生だった私のお世話係だったのよ。
当時のカルルク帝国はエフタルほど魔法が優れていなかった。だから皇族である私が代表で魔法を学びいったのよ。懐かしいわね。でももうかつての魔法学院は存在しないのね。残念だわ」
「陛下、余り昔話をされても、お三方も明日は出立とあって忙しいでしょうから」
「あらあら、そうね、ノイマンの言うとおりね。年寄りは話が長くなってしまっていけないわ。
今日呼んだのはルカにこの手紙を渡して欲しくて、貴方たちにお願いしたいのよ、差出人が私だと絶対に受け取らないから……」
皇帝陛下の親書を受け取り拒否するルカは大物だと思った。
「それともう一つ、これをシャルロットさんに差し上げようと思って。学生時代にルカに頼んで造ってもらった、七番の魔剣『ダーリ……』です。
この間の魔獣討伐で魔力切れを起こしそうになったと聞きましたので、これなら役に立てると思ったのです。
この魔剣の『魔剣開放』の効果は魔力と体力の回復ですので、私が持っているよりも役に立つでしょう」
フロストベア討伐任務の後、シャルロットは悩んでいた。魔法の持続力のなさに落ち込んでいたのだ。
でも中級魔法を連続で使って魔力切れにならなかったのはさすがだと思うんだけど。でもそんなことを言っても彼女には何のなぐさみにもならない。
どちらにせよ。彼女の戦力向上になるならいいことだ。
シャルロットもありがたく受け取ったことだし。
こうして、俺達は陛下からルカ・レスレクシオンに親書を届けるという命を受け旅立つことになった。
…………。
「はぁ、セバスティアーナ殿……、最後までメイド服であったか。いつになったら、あの凛々しいお姿で現れてくれるのか……」
「ノイマン……。残念だけどその時は一生ないと思いますよ? 少なくとも貴方の前ではね……それよりも、あなたもそろそろ所帯を持ったらどうです? そうすれば貴方もまともになるでしょうし」
「陛下、何をおっしゃいますか。私の恋人は仕事ですから、彼女は私の女神様、私は敬虔な信者なのです」
「はぁ……まったく、仕事は完璧なのに、どうしてこう捻じれているのかしら……」
まだ早朝は肌寒いが草原には草花が芽吹いている。
俺は日課の素振りをしている。
この間の任務で折れた剣の代わりに、俺はセバスティアーナさんから、九番の魔剣。鋼鉄の大刀『ノダチ』を授けてもらった。
いいんですか? と聞いたがセバスティアーナさんは俺に言った「私には専用の魔剣の十番がありますので。それに、この剣は私には重すぎます。女の私では振るので精一杯ですから、カイル様こそが相応しいでしょう。
それに元々差し上げるつもりでした。ただ、剣の初心者が修行に使うには荷が重いと思ってましたが、今のカイル様なら丁度よいでしょう」
とのことだったが。……振るので精一杯はさすがに言い過ぎだ。でも確かに重い。前に持ってた剣よりは全体的な重量は軽い。だが手に持って振ると長さのせいか前の剣よりも重く感じた。
「馴染みましたか?」
いきなり背後から声が聞こえた。セバスティアーナさんは相変わらず気配を感じない。まったく心臓に悪い。
だがこれも修行のうちなのだろう。彼女の気配に気付かない俺はまだまだ未熟だ。
俺は素振りをやめ。彼女に振り返る。
「この剣は本当に凄いですね。同じ鉄なのに前の剣とは強度も切れ味も全然違います。魔剣開放が出来ないのに魔剣に数えられているのはなにか秘密があるのですか?」
「いい着眼点です。私も詳しくないのですが、その剣の刀身にはミスリルと鉄の両方が使われております。薄く伸ばした二つの金属が折り重なり何千の層を造っているというのです。
ルカ様が、鍛冶師の方と共同で造った傑作品だとおっしゃっていました。ミスリルの強度と鉄の重さが合わさった理想的な刃ということです。ちなみにこの構造は私の持ってる十番そして二十番にも応用されています」
なるほど、二十番の魔剣のあの異常な切れ味の秘密はそこにあったのか。
「さて、カイル様にはそろそろ、もう一つの奥義を教えておきましょうか。ですが今日は、そうでしたね、本日は皇帝陛下の謁見があるのでした。明日旅立つのですから別れの挨拶ということでしょう」
「分かりました。シャルロットは今どこですか?」
「シャルロット様は先程鍛錬を終えて今はお風呂に入っております。カイル様もその後入られるといいでしょう。なんなら私とご一緒しますか?」
「や、やめてくださいよ」
「ふふ、冗談ですよ」
余り表情を変えないセバスティアーナさんに言われると冗談だと分かっていてもドキッとしてしまう。まったく……。
◆
「いよいよ明日出立ですか。早いものですね。本音を言えば、ずっとベラサグンにいてほしいくらいです。冒険者として随分腕を上げたようではないですか。
……でも、引き留めてしまってはルカに怒られてしまいますね」
「ご厚意に感謝します。それに二十番の魔剣が壊れたままですし。それに俺自身、命の恩人であるルカ・レスレクシオン様には会ってお礼をしないとですし」
「そうよね、私もそれがなければとっくに死んでたんだし。命の恩人……ぜひ会っておかないと」
シャルロットも俺と同じ考えだ。
「ふふ、間接的とはいえ、あのルカが他人を助けるだなんて、あの頃のルカからすると全然想像できないわね」
オリビア陛下は思い出し笑いを浮かべながら遠くを見つめるような目をした。
「失礼ですが。陛下はルカ・レスレクシオンとはご学友だったと聞きましたが。エフタルに留学されてたんですか?」
「ええ、そうよ。そうね、あの頃は私はまだ16歳だった。そしてルカは17歳で留学生だった私のお世話係だったのよ。
当時のカルルク帝国はエフタルほど魔法が優れていなかった。だから皇族である私が代表で魔法を学びいったのよ。懐かしいわね。でももうかつての魔法学院は存在しないのね。残念だわ」
「陛下、余り昔話をされても、お三方も明日は出立とあって忙しいでしょうから」
「あらあら、そうね、ノイマンの言うとおりね。年寄りは話が長くなってしまっていけないわ。
今日呼んだのはルカにこの手紙を渡して欲しくて、貴方たちにお願いしたいのよ、差出人が私だと絶対に受け取らないから……」
皇帝陛下の親書を受け取り拒否するルカは大物だと思った。
「それともう一つ、これをシャルロットさんに差し上げようと思って。学生時代にルカに頼んで造ってもらった、七番の魔剣『ダーリ……』です。
この間の魔獣討伐で魔力切れを起こしそうになったと聞きましたので、これなら役に立てると思ったのです。
この魔剣の『魔剣開放』の効果は魔力と体力の回復ですので、私が持っているよりも役に立つでしょう」
フロストベア討伐任務の後、シャルロットは悩んでいた。魔法の持続力のなさに落ち込んでいたのだ。
でも中級魔法を連続で使って魔力切れにならなかったのはさすがだと思うんだけど。でもそんなことを言っても彼女には何のなぐさみにもならない。
どちらにせよ。彼女の戦力向上になるならいいことだ。
シャルロットもありがたく受け取ったことだし。
こうして、俺達は陛下からルカ・レスレクシオンに親書を届けるという命を受け旅立つことになった。
…………。
「はぁ、セバスティアーナ殿……、最後までメイド服であったか。いつになったら、あの凛々しいお姿で現れてくれるのか……」
「ノイマン……。残念だけどその時は一生ないと思いますよ? 少なくとも貴方の前ではね……それよりも、あなたもそろそろ所帯を持ったらどうです? そうすれば貴方もまともになるでしょうし」
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