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第一章
第30話 男らしさと言う気はないが、さすがにそれはない
しおりを挟むダンス会場に戻る。
アンネさんはドルフ君とダンスを楽しんでいるようだ。お似合いだよ、本当にそう思った。なんだろうキラキラオーラが見えるのだ。
ドルフ君は身体が出来上がってるので高い服でなくても清潔なシャツとジャケットを着るだけでとても見栄えがいい。
イケメンなら何を着ても許される、まさしく彼の為の言葉だろう。
とても平民とは思えない。まあ魔法学院のAクラスの男子だ。いい男に違いない。アンネさんもうっとりとしている。
……それに比べてカール氏か、あれはドルフ君と比べるのは可哀そうだ……あれ?
ローゼさんはバンデル先生とダンスをしている?
隅っこでカール氏は二人のダンスを見ていた。なんだ? この展開は……。
ざまぁと思ったが。流石にみじめすぎてカール氏に問い詰めた。
俺はカール氏に問う。口より先に手が出たのは言うまでもない。
「おまえローゼさんを誘ったよな。それが、なんで先生なんだよ!」
バンデル先生は素敵な人だ、カール氏ごときで届くはずがない。
それはそれだが。男として……いいのか? 俺もこの状況ならきっとカール氏のような負け犬ポジションに甘んじてただろう。
だけど、できるなら応援したいのだ。そうだ頑張れよ! シルビアさんにしたことは許さないけど、それは俺の感情であってお前はこの先どうしたいんだ!
「……ちょっと強引に、というか好きだって言ったんだ。そしたら逃げ出して……、俺は彼女を追って、その、ドレスの袖を掴んでやぶってしまったんだ」
そこをバンデル先生に見られてしまったと。それで説教を受けてカール氏はとても落ち込んでいるというわけだ。
……なんだ、またやらかしたのか。俺はスカートをたくし上げる。太ももに装備している拳銃をカール氏は見た。
「ひっ! やめろ! 誤解だ、俺はそんなつもりじゃない。勘弁してくれよ。それにお前の魔道具は隠し場所がエッチ過ぎだぞ!」
うるさい。と彼の頭を殴る。もちろん素手で。銃でなぐったら怪我ですまない。
「ばかやろー! エッチとはなんだ! お前の家の系列の店で買ったブルマだぞ。それにこのブルマの赤色とニーソックスの白だ、そして拳銃ホルスターは黒だぞ! デザイン的にカッコいいだろうが!」
俺は一通りカール氏を罵倒すると。再びローゼさんとバンデル先生を見た。
なんだ、ローゼさんはバンデル先生に助けられた感じか。しかしあの二人こうして見ると似ているな。
同じ黒髪だからだろうか。親子に見える。親戚筋とか有りそうだな。
それに負のオーラ的な魔法適正もあるのか……。いや、いくら彼女が嫉妬キャラだからってネクロマンサー適正とかないよね? でもなんかお似合いなんだよな……。
まあ。それはそれで応援しないとかな。あとはローゼさんの気持ちの問題である。
それにしてもカール氏よ、このご時世に男らしくとか言う気はないが……。
それはないだろう……。初登場時のイキリ散らしたお前はどこに行ったんだ?
まあ、俺のせいでもあるのか。男の象徴そのものに銃撃してしまったのだから。
でもそれはお前が悪い。うむ、頑張んなさいね。
それにしてもドルフ君とアンネさんは実にいい感じだ。むしろこっちのほうが心配になる。
ご両親と同じ轍は踏むなよ。……子供は計画的にな。
でも、そうなってもアンネさんの両親は全力で支援するだろうし。おじさんと甥っ子が一つ違いという家族も面白いのでは?
いかんいかん、学生結婚は大変なんだぞ。俺はそんなことを思いながら。カール氏を再び見た。見下すと言う方が正しいだろう。
はぁ、カール氏はまたやらかしたか。ハンス君は彼を励ましている。
おや、これはこれでいい感じでは、俺はそう思ってしまった。俺とシルビアさんが女の子同士であるように、彼らも男の子同士なのだ。
それはそれでいいじゃないかと思ってしまったのだ。
しかしローゼさんとバンデル先生、本当に親子に見えるし。ローゼさんってあんなに乙女顔してダンスする人だっけ。
いや、彼女に失礼なのは承知だが。なんか、そんな違和感がみられた。
そう、違和感がある。良くないことがなければいいのだが。しかしこの空気は異質に思えた。
まあ、今それを考えてもしょうがない。あとでバンデル先生かローゼさんに聞けばいいのだ。
勝手に先走ってもろくなことにならないし。今、俺が何かできるかというとそうでもないのだ。
「アール、お待たせしたかしら。みなさんダンスを再会したし私たちもどう? 次は情熱的な曲だし……」
生徒会から解放されたシルビアさんが戻ってきた。次の曲を知っているようだ。というかさっき音楽隊にリクエストしているのを俺は見ていた。
望むところだ。俺はカール氏とハンス君をよそにシルビアさんとダンスを楽しんだ。
「アール、さっきからちらちら見えてるけど、それ、エッチなやつ?」
「違う、これは拳銃、グロックという、エッチじゃない。でもシルビアがほしいなら作ってあげてもいい」
「ほんと? じゃあ、私もお礼をしなきゃアールって何が好きなの?」
「うーん、シルビアかな」
楽曲は情熱的だった。というかうるさいくらいの音楽にダンスは盛り上がり、お互いの会話は聞こえないくらいだった。
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