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第二章
第53話 シルビア兄さんと決闘
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「決闘だ! 私に勝ったら二人のことは認めてやる」
「おや、あなたにその権利はないんじゃないですか? それにすぐ暴力に訴えるのは、よほど未開の人間ですよ? 自分の言ったことを忘れたのか頭が悪いのかどちらですか?」
「うるさい! 私は次期当主だ、文句はないだろう、それにお前の言い方! 部外者のくせにお節介がすぎる」
「あ、はーい、じゃあ僕、馬の世話があるので頑張ってください」
あ、やっぱり言いたいだけ言って逃げやがったな。最悪なやつだ。
それに、もう関心がなくなってる。そそくさと退散して馬の方に向かっていった。
まあ、俺としても、ここでお兄様の了解を得るべきだろう。
正直、家族に認められない結婚はいやだしな。今のところの印象はユーギのせいで台無しだが。
シルビアさんはというと、何やら先ほどの議論を頭の中で消化できないでいた。ぽかんとしている。
あれは議論ではない。一方的に相手をおちょくるいじめに近い、プライドを叩きつぶして悦に浸る類のな。シルビアさん、影響を受けてはいけないぞ。
「ふん、揚げ足取りがいなくなったようだ、どうだ真剣な話、私に勝てば認めてやるぞ、妹に近づいてきたのだ。
それなりの覚悟はできているんだろうな」
話し合いはもう無理だ。怒りに任せて言ったのだろうが、貴族が決闘と言ったら後に引けないのだろう。貴族も難しいものだ。
「お兄様、アールには絶対に勝てないからやめたほうがいいと思います」
ああ、シルビアさんそれは兄に対して、いや貴族の次期当主に言っていい言葉ではない。プライドがズタボロになるだけだ。
「ふ、妹よ、お前も目を覚ますだろう。さて武器はお前の好きな物を選ぶといい。俺はこの剣で充分だ」
俺に有利な条件を提示したつもりだろうが、自分はしっかりと得意な武器を選んでる。その剣、お前の主力武器だろうが。大事に腰に下げているし。
なるほど。こいつも狡猾な性格ということだろうか。
ちなみに魔法での決闘は禁止である。それこそ安全に配慮した施設内で、いろいろルールを決めなければ事故に繋がるようで随分昔に禁止されている。
剣だってそれなりに危険な気がするが、まあ、回復魔法があるし、さすがに殺す気でやるのは決闘の趣旨から外れているのだろう。
「おや、ほんとに決闘するんだね、懐かしいな。僕が立会人になるよ。でも殺しは無しにしてね。めんどくさいから」
都合がいいところでユーギが戻ってきた。こいつ楽しんでるな。まあいい、こういう手合いはいつか痛い目をみる。憶えてろよ。
「だれがそんな無作法な真似をするか! 私をだれだと思っている!」
「いやー、勇者君にいったんだけどねー、まいっか」
こうして決闘は始まった。
「私の剣の腕は勇者の再来と言われるほどだ。まあ私はまだ未熟だと思うが、そこそこの腕だとは自覚はある。だが手加減はしないぞ?
怪我は覚悟するのだな。安心しろすぐに治療してやる」
ぶふっ、勇者レベルの剣の腕か、なら大したことはないな。俺は剣は苦手だ、俺の人生で剣を使ったのは体育の授業での剣道くらいだ。
お兄様、いやアンドレ氏の底は見えたな。
「じゃあ、お二人ともいいかな? よーい、はじめ!」
アンドレ氏は上段の構えをとる。
「おい、丸腰で私の前に立つとは、武器を許可したはずだぞ? 馬鹿にしているのか?」
「安心しろお兄様。すでに武器は装備している。かかってこい!」
俺は手招きをする。
「私をお兄様と呼ぶな! ならば遠慮なくいくぞ!」
シルビア兄さんは、上段の構えから勢いよく走ってくる。おお、なんかカッコいいな、一撃に全てを賭ける潔い戦法だ。
だが、あまいな、俺は拳銃をスカートの中から取り出す。
一瞬、彼の目が、拳銃に移ると僅かに動揺した。おや、思ったよりもうぶなお方のようだ。彼は拳銃というか、ちらっと見える太ももに視線は釘づけだった。
当然、せっかくの一撃も集中力が散漫になり台無しである。
銃の腹で剣を受け止め斜めにそらす。
「お兄様。義理の妹に欲情してはだめですよ」
パン、パン! 二発彼の両足に発砲する。
「ぐ、貴様、卑怯だぞ」
「お兄様、今のは麻酔弾ですのでしばらくお休みなさい。起きて冷静になったら、真剣にお話しましょう。俺はまじめにシルビアと付き合ってます」
その場に崩れ落ちるお兄様。
「真面目なのは知っている。問題はそこではない……いや、もはや何が問題だったのか私にもわからない。何を議論してたのかも……ぐは」
お兄様は意識を失う。
「アール君の勝ちだね。やったね!」
ユーギは俺の右手を持ち上げるが……
「おい、大体お前が悪いんじゃないか、それに先生が起きるまで旅はお預けだ、大体なんだ、あのお騒がせ論破王の振る舞いは! お前には色々言いたいことがあるんだぞ?」
ユーギは口笛を吹きながら、近くにいたハンス君に話を振る。
「お、そういえば草原の民の少年ハンス君よ、今日はどうやら移動はできそうにないから、僕と一緒に馬の調達にでも行こうじゃないか。
今日、一日、そうだな先生が起きるまで僕の指導を受ければ君は免許皆伝だろう。ぜひ受講をお勧めする。残念だがアール君は先生の看病をしないといけないからね、さあ今すぐ行こうか」
逃げ出した、逃げ足は速い。ハンス君の腕をつかむと、そそくさと馬に乗って駆けていった。ハンス君は状況が理解できないまま今度はユーギの後ろに跨っていた。教える気はあるのかよ。まあいい、馬の調達は必要だったし。
先生が目を覚ますまではすることがない。まあいいか、予定通りいかないことも勉強だしな。俺も今のうちに馬に乗れるようにしておこうか。
「シルビア、馬の乗り方を教えてくれないか? とりあえず普通の歩行くらいは覚えたいんだ」
「ええ、いいわ、私にまかせなさい! 私が手取り足取り教えてあげる!」
兄の心配はしないのね。まあ寝てるだけだからいいけど……なるほど、兄は普段は冷静でスーパーエリートなのは間違いないのだが、たまに暴走してしまう、残念なキャラだったのだろう。
「おや、あなたにその権利はないんじゃないですか? それにすぐ暴力に訴えるのは、よほど未開の人間ですよ? 自分の言ったことを忘れたのか頭が悪いのかどちらですか?」
「うるさい! 私は次期当主だ、文句はないだろう、それにお前の言い方! 部外者のくせにお節介がすぎる」
「あ、はーい、じゃあ僕、馬の世話があるので頑張ってください」
あ、やっぱり言いたいだけ言って逃げやがったな。最悪なやつだ。
それに、もう関心がなくなってる。そそくさと退散して馬の方に向かっていった。
まあ、俺としても、ここでお兄様の了解を得るべきだろう。
正直、家族に認められない結婚はいやだしな。今のところの印象はユーギのせいで台無しだが。
シルビアさんはというと、何やら先ほどの議論を頭の中で消化できないでいた。ぽかんとしている。
あれは議論ではない。一方的に相手をおちょくるいじめに近い、プライドを叩きつぶして悦に浸る類のな。シルビアさん、影響を受けてはいけないぞ。
「ふん、揚げ足取りがいなくなったようだ、どうだ真剣な話、私に勝てば認めてやるぞ、妹に近づいてきたのだ。
それなりの覚悟はできているんだろうな」
話し合いはもう無理だ。怒りに任せて言ったのだろうが、貴族が決闘と言ったら後に引けないのだろう。貴族も難しいものだ。
「お兄様、アールには絶対に勝てないからやめたほうがいいと思います」
ああ、シルビアさんそれは兄に対して、いや貴族の次期当主に言っていい言葉ではない。プライドがズタボロになるだけだ。
「ふ、妹よ、お前も目を覚ますだろう。さて武器はお前の好きな物を選ぶといい。俺はこの剣で充分だ」
俺に有利な条件を提示したつもりだろうが、自分はしっかりと得意な武器を選んでる。その剣、お前の主力武器だろうが。大事に腰に下げているし。
なるほど。こいつも狡猾な性格ということだろうか。
ちなみに魔法での決闘は禁止である。それこそ安全に配慮した施設内で、いろいろルールを決めなければ事故に繋がるようで随分昔に禁止されている。
剣だってそれなりに危険な気がするが、まあ、回復魔法があるし、さすがに殺す気でやるのは決闘の趣旨から外れているのだろう。
「おや、ほんとに決闘するんだね、懐かしいな。僕が立会人になるよ。でも殺しは無しにしてね。めんどくさいから」
都合がいいところでユーギが戻ってきた。こいつ楽しんでるな。まあいい、こういう手合いはいつか痛い目をみる。憶えてろよ。
「だれがそんな無作法な真似をするか! 私をだれだと思っている!」
「いやー、勇者君にいったんだけどねー、まいっか」
こうして決闘は始まった。
「私の剣の腕は勇者の再来と言われるほどだ。まあ私はまだ未熟だと思うが、そこそこの腕だとは自覚はある。だが手加減はしないぞ?
怪我は覚悟するのだな。安心しろすぐに治療してやる」
ぶふっ、勇者レベルの剣の腕か、なら大したことはないな。俺は剣は苦手だ、俺の人生で剣を使ったのは体育の授業での剣道くらいだ。
お兄様、いやアンドレ氏の底は見えたな。
「じゃあ、お二人ともいいかな? よーい、はじめ!」
アンドレ氏は上段の構えをとる。
「おい、丸腰で私の前に立つとは、武器を許可したはずだぞ? 馬鹿にしているのか?」
「安心しろお兄様。すでに武器は装備している。かかってこい!」
俺は手招きをする。
「私をお兄様と呼ぶな! ならば遠慮なくいくぞ!」
シルビア兄さんは、上段の構えから勢いよく走ってくる。おお、なんかカッコいいな、一撃に全てを賭ける潔い戦法だ。
だが、あまいな、俺は拳銃をスカートの中から取り出す。
一瞬、彼の目が、拳銃に移ると僅かに動揺した。おや、思ったよりもうぶなお方のようだ。彼は拳銃というか、ちらっと見える太ももに視線は釘づけだった。
当然、せっかくの一撃も集中力が散漫になり台無しである。
銃の腹で剣を受け止め斜めにそらす。
「お兄様。義理の妹に欲情してはだめですよ」
パン、パン! 二発彼の両足に発砲する。
「ぐ、貴様、卑怯だぞ」
「お兄様、今のは麻酔弾ですのでしばらくお休みなさい。起きて冷静になったら、真剣にお話しましょう。俺はまじめにシルビアと付き合ってます」
その場に崩れ落ちるお兄様。
「真面目なのは知っている。問題はそこではない……いや、もはや何が問題だったのか私にもわからない。何を議論してたのかも……ぐは」
お兄様は意識を失う。
「アール君の勝ちだね。やったね!」
ユーギは俺の右手を持ち上げるが……
「おい、大体お前が悪いんじゃないか、それに先生が起きるまで旅はお預けだ、大体なんだ、あのお騒がせ論破王の振る舞いは! お前には色々言いたいことがあるんだぞ?」
ユーギは口笛を吹きながら、近くにいたハンス君に話を振る。
「お、そういえば草原の民の少年ハンス君よ、今日はどうやら移動はできそうにないから、僕と一緒に馬の調達にでも行こうじゃないか。
今日、一日、そうだな先生が起きるまで僕の指導を受ければ君は免許皆伝だろう。ぜひ受講をお勧めする。残念だがアール君は先生の看病をしないといけないからね、さあ今すぐ行こうか」
逃げ出した、逃げ足は速い。ハンス君の腕をつかむと、そそくさと馬に乗って駆けていった。ハンス君は状況が理解できないまま今度はユーギの後ろに跨っていた。教える気はあるのかよ。まあいい、馬の調達は必要だったし。
先生が目を覚ますまではすることがない。まあいいか、予定通りいかないことも勉強だしな。俺も今のうちに馬に乗れるようにしておこうか。
「シルビア、馬の乗り方を教えてくれないか? とりあえず普通の歩行くらいは覚えたいんだ」
「ええ、いいわ、私にまかせなさい! 私が手取り足取り教えてあげる!」
兄の心配はしないのね。まあ寝てるだけだからいいけど……なるほど、兄は普段は冷静でスーパーエリートなのは間違いないのだが、たまに暴走してしまう、残念なキャラだったのだろう。
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