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第二章
第59話 エターナルブリザード(仮)
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ランドタートルが突進してくる。とりあえず逃げるに限る。
ローゼさんが目の前に立つ。
「私にまかせて! 中位アンデッド召喚、ボーンウォール!」
前方に骨の壁が展開される。それに向かってシルビアさん、ハンス君が同時にシールドの魔法を重ね掛けする。
壁の奥からズーンという音が聞こえてきた。壁にひびが入っている。
だが時間稼ぎには十分だ。
膠着状態が続く、シールドの魔法が破られると交代でドルフ君とアンネさんが再びシールドの魔法を掛けなおす。その隙に骨の壁は修復され、再びランドタートルの突進を受け止める。
ローゼさんは満身創痍だ。今回は【血の短剣】は使っていない。しかし、また血の魔法を使わせるのも酷だ。聞いてはいたが、実際に見ると痛々しい。
それでもローゼさんは【血の短剣】を鞘から抜く。
だめだ、俺の個人的な感想だが。女の子にそんなことはさせられない。バンデル先生も魔法道具屋にあったのを知ってたが最後のあの時まで、それを所持すらしなかった。
先祖の家宝であったとしても、この武器はバンデル先生も嫌ってたんだと、今になって思ったくらいだ。
だから、そう思うだろ? カール氏よ! お前が言うんだよ! お前だけが彼女に称賛の声を上げなかっただろ。
「ローゼ! その短剣は二度と、いや、門外漢の俺がでしゃばるのも失礼だけど、しばらく使わないでくれ、頼むよ! ローゼは凄いよ、でも、俺はもう見たくないんだ! ローゼが傷つく姿を!」
「え! ……でも、私はやれることを、これは私の一族の宿命で、 それにカール、あなたに関係ないのよ、これは私の問題で、やらなきゃいけないの!」
「ローゼ……俺のこと名前で呼んでくれた、何年ぶりだろう……う、うう、うれしい」
「ひっ! きもいのよ! それに最近だって呼んだでしょ! この強姦魔! それに……ちょっと! 泣かないでよ、馬鹿なんだから。
……あんたは、馬鹿! 私を助けるために……バンデル先生に殺されるところだったじゃない! う、う、ばかぁぁぁ!…… わ、私は、わたしは、ああぁぁ!…………」
泣き崩れたローゼさん。カール氏はどうしていいのか分からなかったのかオロオロしている。
「御曹司君! だから君はだめなんだよ! そこはハグだ! 男を見せろ! 僕はローゼちゃんの笑顔が見たいんだ。君は無能ではない、ユーやっちゃいなさい!」
カール氏はローゼさんを優しく抱きしめた、泣きながらローゼさんはカール氏に抱き返す。なるほど、ローゼさんは我慢してたんだ。いろんなことに。……それにカール氏も成長したな。
二人の間に入り込む余地はない。もしかしてユーギはこれを狙ってた?
奥手なカール氏をたきつけるために、ローゼさんにちょっかいをわざとしてたのか? うーむ、恋の駆け引きは分からない。それにユーギがそんなことするやつにも思えない、結果がたまたまそうなっただけだろう。
ま、ローゼさんの緊張が解けたのか。骨の壁は崩れ落ちたけどね。
「さてとロボさんや、こちらは一つ問題が解決したんだけど、これはどうしようか?」
(そうですね、外からの攻撃は効率が悪いでしょう、……ここはひとつ、マスターが中に入ってそこから攻撃すれば解決です)
「それは、食べられろという事か……まあそうだな、魔力消費を抑えつつ確実に倒すのはそれしかないか」
胃袋の中から、攻撃するのか……嫌だなー、まあ、巨大生物との戦いでは割とポピュラーな戦法といえるかもしれないが。
……リアルに経験するのはさすがに引くわー。
俺はショットガンに、徹甲榴弾を装填する。うーむ、おなかの中で爆発するのか……。かわいそうだ……。
暴走してるランドタートルはこちらを噛み殺そうと見ている。
つぶらな瞳で結構可愛い。殺しはしたくない。グヘヘ系の盗賊団でも殺すのは嫌だったんだ。
「なぁ、今さらなんだが殺さずでいきたいんだけど……、いい方法はあるかな?」
(さあ、私にはありません。が、そこの自称神様にでも丸投げしてはいかがでしょうか?)
それだ。ロボさん、それが最適解なんだよ。ナイスだ。
「おい、ユーギ、このままだと、ローゼさんとカール氏は幸せなキスをした直後に死んでしまう! お前がなんとかしろ! でないとあの亀をころすぞ!」
あれ? 俺は、どのポジションで何を言ってるんだ? まあいい、神であるユーギ、お前の回答は?
「ふふふ、それは、ん? あれ?……うーん、君は……何が言いたいんだい? どっちの味方に? うん? …………ああ、オーケーオーケー。どっちも助けたいんだね。大丈夫だ問題ない!」
ランドタートルは崩れかけの骨の壁をバクバク噛みついている。なんかカルシウムたっぷりでちょっと美味しそうに見えてしまった。
そして再び俺たちに向かって歩き出した。
「さてさて、亀ちゃんよ、君は久しぶりに竜王の咆哮に似た音を聞いて我を忘れているね」
「ユーギさん! なにを!」
ユーギが一人で前に出る。ハンス君がユーギを止めるが。
「ああ、大丈夫、僕にも考えがあるんだ、そうだね、ランドタートルの弱点は氷属性で間違いないよ。もちろん殺しはしないけど。体温が下がると大人しくなるんだ。さてと――」
ユーギは両手を広げると足元に魔法陣が展開された。
「実はね、僕は氷の魔法が使えるんだよ、それにちょっとそれっぽい呪文を考えたんだ。氷結の魔女ってのが気に入ってね、これからは僕のことは氷結の魔女と呼ぶがいい! あははは」
あんな饒舌な氷結の魔女は嫌だ。
(同感です。彼女の性格はツンデレですが人見知りするタイプでした。それに、もじもじしてる姿がとても可愛らしかったです)
なるほどな。ツンデレのエルフさんってだけで興味がわく。少年に馴れ初めでも聞いておこうか。
周りの空気が冷たくなっていくのを感じる。これだけでとてつもない魔力を行使していることがうかがえる。
「我は神である、冷徹な意思は慈悲である、我は学び与えよう、そして結末を知るだろう。エターナルブリザード(仮)!」
キラキラとしたダイヤモンドダストがランドタートルを包み込む、足元からクリスタルのような氷柱が立ち、一瞬で氷の森となった。
ローゼさんが目の前に立つ。
「私にまかせて! 中位アンデッド召喚、ボーンウォール!」
前方に骨の壁が展開される。それに向かってシルビアさん、ハンス君が同時にシールドの魔法を重ね掛けする。
壁の奥からズーンという音が聞こえてきた。壁にひびが入っている。
だが時間稼ぎには十分だ。
膠着状態が続く、シールドの魔法が破られると交代でドルフ君とアンネさんが再びシールドの魔法を掛けなおす。その隙に骨の壁は修復され、再びランドタートルの突進を受け止める。
ローゼさんは満身創痍だ。今回は【血の短剣】は使っていない。しかし、また血の魔法を使わせるのも酷だ。聞いてはいたが、実際に見ると痛々しい。
それでもローゼさんは【血の短剣】を鞘から抜く。
だめだ、俺の個人的な感想だが。女の子にそんなことはさせられない。バンデル先生も魔法道具屋にあったのを知ってたが最後のあの時まで、それを所持すらしなかった。
先祖の家宝であったとしても、この武器はバンデル先生も嫌ってたんだと、今になって思ったくらいだ。
だから、そう思うだろ? カール氏よ! お前が言うんだよ! お前だけが彼女に称賛の声を上げなかっただろ。
「ローゼ! その短剣は二度と、いや、門外漢の俺がでしゃばるのも失礼だけど、しばらく使わないでくれ、頼むよ! ローゼは凄いよ、でも、俺はもう見たくないんだ! ローゼが傷つく姿を!」
「え! ……でも、私はやれることを、これは私の一族の宿命で、 それにカール、あなたに関係ないのよ、これは私の問題で、やらなきゃいけないの!」
「ローゼ……俺のこと名前で呼んでくれた、何年ぶりだろう……う、うう、うれしい」
「ひっ! きもいのよ! それに最近だって呼んだでしょ! この強姦魔! それに……ちょっと! 泣かないでよ、馬鹿なんだから。
……あんたは、馬鹿! 私を助けるために……バンデル先生に殺されるところだったじゃない! う、う、ばかぁぁぁ!…… わ、私は、わたしは、ああぁぁ!…………」
泣き崩れたローゼさん。カール氏はどうしていいのか分からなかったのかオロオロしている。
「御曹司君! だから君はだめなんだよ! そこはハグだ! 男を見せろ! 僕はローゼちゃんの笑顔が見たいんだ。君は無能ではない、ユーやっちゃいなさい!」
カール氏はローゼさんを優しく抱きしめた、泣きながらローゼさんはカール氏に抱き返す。なるほど、ローゼさんは我慢してたんだ。いろんなことに。……それにカール氏も成長したな。
二人の間に入り込む余地はない。もしかしてユーギはこれを狙ってた?
奥手なカール氏をたきつけるために、ローゼさんにちょっかいをわざとしてたのか? うーむ、恋の駆け引きは分からない。それにユーギがそんなことするやつにも思えない、結果がたまたまそうなっただけだろう。
ま、ローゼさんの緊張が解けたのか。骨の壁は崩れ落ちたけどね。
「さてとロボさんや、こちらは一つ問題が解決したんだけど、これはどうしようか?」
(そうですね、外からの攻撃は効率が悪いでしょう、……ここはひとつ、マスターが中に入ってそこから攻撃すれば解決です)
「それは、食べられろという事か……まあそうだな、魔力消費を抑えつつ確実に倒すのはそれしかないか」
胃袋の中から、攻撃するのか……嫌だなー、まあ、巨大生物との戦いでは割とポピュラーな戦法といえるかもしれないが。
……リアルに経験するのはさすがに引くわー。
俺はショットガンに、徹甲榴弾を装填する。うーむ、おなかの中で爆発するのか……。かわいそうだ……。
暴走してるランドタートルはこちらを噛み殺そうと見ている。
つぶらな瞳で結構可愛い。殺しはしたくない。グヘヘ系の盗賊団でも殺すのは嫌だったんだ。
「なぁ、今さらなんだが殺さずでいきたいんだけど……、いい方法はあるかな?」
(さあ、私にはありません。が、そこの自称神様にでも丸投げしてはいかがでしょうか?)
それだ。ロボさん、それが最適解なんだよ。ナイスだ。
「おい、ユーギ、このままだと、ローゼさんとカール氏は幸せなキスをした直後に死んでしまう! お前がなんとかしろ! でないとあの亀をころすぞ!」
あれ? 俺は、どのポジションで何を言ってるんだ? まあいい、神であるユーギ、お前の回答は?
「ふふふ、それは、ん? あれ?……うーん、君は……何が言いたいんだい? どっちの味方に? うん? …………ああ、オーケーオーケー。どっちも助けたいんだね。大丈夫だ問題ない!」
ランドタートルは崩れかけの骨の壁をバクバク噛みついている。なんかカルシウムたっぷりでちょっと美味しそうに見えてしまった。
そして再び俺たちに向かって歩き出した。
「さてさて、亀ちゃんよ、君は久しぶりに竜王の咆哮に似た音を聞いて我を忘れているね」
「ユーギさん! なにを!」
ユーギが一人で前に出る。ハンス君がユーギを止めるが。
「ああ、大丈夫、僕にも考えがあるんだ、そうだね、ランドタートルの弱点は氷属性で間違いないよ。もちろん殺しはしないけど。体温が下がると大人しくなるんだ。さてと――」
ユーギは両手を広げると足元に魔法陣が展開された。
「実はね、僕は氷の魔法が使えるんだよ、それにちょっとそれっぽい呪文を考えたんだ。氷結の魔女ってのが気に入ってね、これからは僕のことは氷結の魔女と呼ぶがいい! あははは」
あんな饒舌な氷結の魔女は嫌だ。
(同感です。彼女の性格はツンデレですが人見知りするタイプでした。それに、もじもじしてる姿がとても可愛らしかったです)
なるほどな。ツンデレのエルフさんってだけで興味がわく。少年に馴れ初めでも聞いておこうか。
周りの空気が冷たくなっていくのを感じる。これだけでとてつもない魔力を行使していることがうかがえる。
「我は神である、冷徹な意思は慈悲である、我は学び与えよう、そして結末を知るだろう。エターナルブリザード(仮)!」
キラキラとしたダイヤモンドダストがランドタートルを包み込む、足元からクリスタルのような氷柱が立ち、一瞬で氷の森となった。
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