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第二章
第60話 旧人類の遺産
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エターナルブリザード(仮)によって、氷に包まれるランドタートル。
しかしランドタートルは首や手足を甲羅の中にひっこめたため、氷は甲羅の表面を覆っただけだった。
「どや! 亀ちゃんはすっかり大人しくなったでしょ?」
どや、じゃないが、それにちょっと呪文が……神バレしてないか? いや、強い言葉を使うのが詠唱魔法の基本ではあるのだが。それにあいつは言ってみたかっただけな気がする。
でも効果は抜群だ、亀はすっかり大人しくなっている。
しばらくすると甲羅から首が出てきた。
「神ノ臭イガスル。随分ナツカシイ、アレハ我ガ幼キ頃ノ……」
「へ? 僕 臭いのかい? 傷つくなー、僕みたいな絶世の美女だって臭いは気にするのさ、香水の文化は世界共通だし! ね?」
ユーギは顔を自分の脇に持っていき臭いを嗅ぐ動作をして見せる。
皆さんそっぽを向く、そのへんはデリケートな話だ。
昨日は山でのキャンプだったのでシャワーを浴びていない。女性陣はそわそわしだす。
「さ、さすがユーギさんだ! それはもしかして氷結の魔女が使ったと言われる魔法なのかい?」
さすがはハンス君だ。周りの空気を読み適切に話題をそらそうとしている。
「ん? そだねー、だったらいいなー。さてカール君に問題だ、君はとってもいい香りの僕と、臭いローゼさんどっちがいい?」
ハンス君の努力もむなしく、ユーギは臭いの話を続ける。こいつの好みは分からないな。今、臭いの話題が大事か。亀も空気を読んでまた縮こまっているじゃないか。
それに亀がしゃべったじゃないか、それよりも臭いの話題が優先なのか? 亀がしゃべったことよりも……。 シルビアさんもアンネさんもさりげなく臭いチェックをしている。
ランドタートル、先程まで俺たちの脅威だったこの巨大な亀のモンスター、なんか無視されて微妙な表情をしている。
諦めたのか身体に付着した氷をバリバリと器用に口ではがしている。亀ってすごいな。いやすべての亀が出来るわけでもないだろうが。割と甲羅全体に首が回るようだ。
俺は、亀の動きに夢中になっている。こっちのくだらない話より興味がわく。
「な! そんなのローゼに決まってる! むしろどんな香りなんだろうとわくわくする! 俺は香水なんてなくてもいい!」
「お、おう、さすがは御曹司だ、その年齢で、その答え、君は将来りっぱな変態になるだろう。その感じで突き進むといいよ、あははは」
「ちょっと! 私の話しで勝手に盛り上がらないで! それに私は臭くないわ! ちゃんと香水だってつけてるし」
まあ、いい匂いなんだと思うけど……香水のつけすぎはダメだと思うね、ローゼさんは特にそのけがある、おそらくアンデッド召喚をするようになってからだろう。
別に臭くないと思うんだけどな、バンデル先生は臭くなかった。多分意識しすぎなんだと思う。
まあお年頃だししかたないのはあるが。正直そろそろ、ローゼさんの香水の臭いは注意しようかと思ってたくらいだ。
昨日のテント内は結構きつかった。ああ、ユーギもそれを指摘したかったからなのかな? いや、どうなんだろう。
お、亀さんは体中に着いた氷を無事落とすことが出来たようだ。すごいなー、動きが可愛いし。亀をペットにする人の気持ちも理解できた。
「……オイ、ソロソロイイダロウカ、我ヲ無視スルナ、貴様ハ何者ダ? 神デハナイノカ?」
ユーギは急に真面目な表情になった。いつもへらへらしているやつだが、急に表情を変えると不気味である。
「ユーギさん、危ない近づきすぎだ!」
ユーギはランドタートルに近づく、噛みつかれてもおかしくない、噛みつくというよりはユーギの身長よりも大きなサイズの頭の亀に丸飲みされてしまうだろう。
しかし、ランドタートルは首を縮めながら、その場にしゃがみこんでいた。
「あはは、大丈夫、ちょっと知り合いみたいだから、ここは僕に任せてくれたまえ」
そう言うと何やらひそひそ話し始めた。
俺は聴覚を強化して彼らの話を聞くことにした。
「やあ、君は一万年くらい前の赤ちゃん子亀だね、最初は我とか偉そうな口調だったから全然分からなかったよ」
「ヤハリ、神様デアリマシタカ。シカシ、ドウシテココニ?」
「まあ、気まぐれだよ、知ってるでしょ? 僕の性格を、しかし、君はずっとここにいたのかい?」
「ハイ、竜王ガ死ンデカラハ、ズットココデ過ゴシテイマス」
「ああ、竜王ね、あいつは僕の言う事を聞かないダメな子だったからね、結局人類の天敵で居続けて敗北してしまった、ある意味可哀そうな子だったよ」
「……我モ、ココマデノ運命ナノデショウカ? アナタ様ガ、ココニイルトイウコトハ……」
「うーん、まあそんなことしても楽しくないし、別に君に恨みもないしね、そうだ、せっかくだし、なんか財宝かなんかあったら僕たちにくれないかな? なんでもいいよ?」
ランドタートルは口から巨大な石碑のような人工物を吐き出した。
「コレハ竜王ガ人類ノ兵器カラ奪イ取ッタ物デス、竜王亡キ後、我ガ持ッテイマシタガ、コレデヨロシイデショウカ?」
「うーん、なるほどね、旧人類の遺産ってことかな。おーい、勇者君、こそこそ聞き耳立ててる勇者君、これでいいかな?」
ち、ばれてるか、しかし旧人類の魔石? のようなものだが。
「ロボさん、あれの魔力量はどれくらいある?」
(はい、解析の結果ですが、計測の上限を超えていますので、はっきりとは分かりませんが、おそらく太陽の魔石に匹敵する魔力量ではないかと思います)
なるほどね、旧人類、このランドタートルよりも上位種のドラゴンの王を倒したという彼らの実力はどれほどであったか。
「問題ない、これでこの身体の魔力は完全回復するさ、でも、なんで、そんなすごい技術をもった旧人類が滅んだんだろう……戦争っていっても全滅するまでやるほど馬鹿だったのか? こんなにすごい魔法技術があったのに」
俺はユーギに聞いた。
「うーん、なんでだろう。マンネリすぎて飽きてたし憶えてないや、たぶん馬鹿だったんじゃない? 僕が滅ぼしちゃった可能性もあるし……あれ? 僕またやっちゃいましたか?」
……こいつはそういうやつだった。
まあ、おかげで目的の一つだった魔力源は確保できた。ロボさんと少年との約束は守れた。少し肩の荷が下りた気がした。
しかしランドタートルは首や手足を甲羅の中にひっこめたため、氷は甲羅の表面を覆っただけだった。
「どや! 亀ちゃんはすっかり大人しくなったでしょ?」
どや、じゃないが、それにちょっと呪文が……神バレしてないか? いや、強い言葉を使うのが詠唱魔法の基本ではあるのだが。それにあいつは言ってみたかっただけな気がする。
でも効果は抜群だ、亀はすっかり大人しくなっている。
しばらくすると甲羅から首が出てきた。
「神ノ臭イガスル。随分ナツカシイ、アレハ我ガ幼キ頃ノ……」
「へ? 僕 臭いのかい? 傷つくなー、僕みたいな絶世の美女だって臭いは気にするのさ、香水の文化は世界共通だし! ね?」
ユーギは顔を自分の脇に持っていき臭いを嗅ぐ動作をして見せる。
皆さんそっぽを向く、そのへんはデリケートな話だ。
昨日は山でのキャンプだったのでシャワーを浴びていない。女性陣はそわそわしだす。
「さ、さすがユーギさんだ! それはもしかして氷結の魔女が使ったと言われる魔法なのかい?」
さすがはハンス君だ。周りの空気を読み適切に話題をそらそうとしている。
「ん? そだねー、だったらいいなー。さてカール君に問題だ、君はとってもいい香りの僕と、臭いローゼさんどっちがいい?」
ハンス君の努力もむなしく、ユーギは臭いの話を続ける。こいつの好みは分からないな。今、臭いの話題が大事か。亀も空気を読んでまた縮こまっているじゃないか。
それに亀がしゃべったじゃないか、それよりも臭いの話題が優先なのか? 亀がしゃべったことよりも……。 シルビアさんもアンネさんもさりげなく臭いチェックをしている。
ランドタートル、先程まで俺たちの脅威だったこの巨大な亀のモンスター、なんか無視されて微妙な表情をしている。
諦めたのか身体に付着した氷をバリバリと器用に口ではがしている。亀ってすごいな。いやすべての亀が出来るわけでもないだろうが。割と甲羅全体に首が回るようだ。
俺は、亀の動きに夢中になっている。こっちのくだらない話より興味がわく。
「な! そんなのローゼに決まってる! むしろどんな香りなんだろうとわくわくする! 俺は香水なんてなくてもいい!」
「お、おう、さすがは御曹司だ、その年齢で、その答え、君は将来りっぱな変態になるだろう。その感じで突き進むといいよ、あははは」
「ちょっと! 私の話しで勝手に盛り上がらないで! それに私は臭くないわ! ちゃんと香水だってつけてるし」
まあ、いい匂いなんだと思うけど……香水のつけすぎはダメだと思うね、ローゼさんは特にそのけがある、おそらくアンデッド召喚をするようになってからだろう。
別に臭くないと思うんだけどな、バンデル先生は臭くなかった。多分意識しすぎなんだと思う。
まあお年頃だししかたないのはあるが。正直そろそろ、ローゼさんの香水の臭いは注意しようかと思ってたくらいだ。
昨日のテント内は結構きつかった。ああ、ユーギもそれを指摘したかったからなのかな? いや、どうなんだろう。
お、亀さんは体中に着いた氷を無事落とすことが出来たようだ。すごいなー、動きが可愛いし。亀をペットにする人の気持ちも理解できた。
「……オイ、ソロソロイイダロウカ、我ヲ無視スルナ、貴様ハ何者ダ? 神デハナイノカ?」
ユーギは急に真面目な表情になった。いつもへらへらしているやつだが、急に表情を変えると不気味である。
「ユーギさん、危ない近づきすぎだ!」
ユーギはランドタートルに近づく、噛みつかれてもおかしくない、噛みつくというよりはユーギの身長よりも大きなサイズの頭の亀に丸飲みされてしまうだろう。
しかし、ランドタートルは首を縮めながら、その場にしゃがみこんでいた。
「あはは、大丈夫、ちょっと知り合いみたいだから、ここは僕に任せてくれたまえ」
そう言うと何やらひそひそ話し始めた。
俺は聴覚を強化して彼らの話を聞くことにした。
「やあ、君は一万年くらい前の赤ちゃん子亀だね、最初は我とか偉そうな口調だったから全然分からなかったよ」
「ヤハリ、神様デアリマシタカ。シカシ、ドウシテココニ?」
「まあ、気まぐれだよ、知ってるでしょ? 僕の性格を、しかし、君はずっとここにいたのかい?」
「ハイ、竜王ガ死ンデカラハ、ズットココデ過ゴシテイマス」
「ああ、竜王ね、あいつは僕の言う事を聞かないダメな子だったからね、結局人類の天敵で居続けて敗北してしまった、ある意味可哀そうな子だったよ」
「……我モ、ココマデノ運命ナノデショウカ? アナタ様ガ、ココニイルトイウコトハ……」
「うーん、まあそんなことしても楽しくないし、別に君に恨みもないしね、そうだ、せっかくだし、なんか財宝かなんかあったら僕たちにくれないかな? なんでもいいよ?」
ランドタートルは口から巨大な石碑のような人工物を吐き出した。
「コレハ竜王ガ人類ノ兵器カラ奪イ取ッタ物デス、竜王亡キ後、我ガ持ッテイマシタガ、コレデヨロシイデショウカ?」
「うーん、なるほどね、旧人類の遺産ってことかな。おーい、勇者君、こそこそ聞き耳立ててる勇者君、これでいいかな?」
ち、ばれてるか、しかし旧人類の魔石? のようなものだが。
「ロボさん、あれの魔力量はどれくらいある?」
(はい、解析の結果ですが、計測の上限を超えていますので、はっきりとは分かりませんが、おそらく太陽の魔石に匹敵する魔力量ではないかと思います)
なるほどね、旧人類、このランドタートルよりも上位種のドラゴンの王を倒したという彼らの実力はどれほどであったか。
「問題ない、これでこの身体の魔力は完全回復するさ、でも、なんで、そんなすごい技術をもった旧人類が滅んだんだろう……戦争っていっても全滅するまでやるほど馬鹿だったのか? こんなにすごい魔法技術があったのに」
俺はユーギに聞いた。
「うーん、なんでだろう。マンネリすぎて飽きてたし憶えてないや、たぶん馬鹿だったんじゃない? 僕が滅ぼしちゃった可能性もあるし……あれ? 僕またやっちゃいましたか?」
……こいつはそういうやつだった。
まあ、おかげで目的の一つだった魔力源は確保できた。ロボさんと少年との約束は守れた。少し肩の荷が下りた気がした。
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