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第二章
第85話 メカドラゴンとの戦い⑤(終)
しおりを挟む私はシルビー2。私が生まれたのはいつだったか、記憶データはある。メインであるシルビーの記憶は全て、だが、私だけの記憶、それはあった。私が私を自覚した瞬間なのだから。
◆
「ふぇ! あなたがシルビー? ツー? えへへ、えっとはじめまして。あたしはねーシルビアっていうの、なまえがにてるね、えっとね、それでね、ゆうしゃかもしれないから。パパがいうにはあなたのパートナー? になれるかもしれないって」
目覚めたときには目の前に、幼い子供がいた。名前はシルビアだった。
――しばらくして、私は現状を把握した。残念だがこの陣営に勝機はない。なぜなら、勇者はいない。私は役に立てない。……だが、シルビアが勇者に覚醒しないという確証もない。
勇者とは血筋ではなく神の啓示で突然生まれるのだと私は知っている。
ならば、付き合おう、茶番だとしても、それに存外に悪くはない、彼女は毎日私に話しかけるのだ。
「ねぇ、シルビー、私、最近むかつくことがあったの。なんで、王子様が眠ってる女の子に、しかも毒リンゴを食べさせられたのにキスしてハッピーなの? それってきもくない?」
シルビアは学校という教育機関に通うようになった、これでお別れかと思ったが、必ず、毎日、私に報告をするのだ。
この少女は魔力もない平凡な少女だ、この施設の幹部である両親の期待を背負ってシルビアという名前、つまり機竜開発の責任者となった先々代の勇者様の名前をつけられただけだった。
残酷だが現状では彼女に勇者の素質はない。だがそれを言うのは、やはり残酷だろう。私は再びこの茶番に付き合うことにした。
『ふふ、それは古典ですよ。ロマンス溢れるフィクションです。おや、そういえば、映画を幼馴染と見たそうですね。なぜそんなにイライラしてるのですか?』
「だって、だってよ、ぜったーい、そんな完璧な王子さまはいない。仮にいたとしても詐欺師よ。女性をたらしこむ、そうね、女性を搾取する、男尊女卑の歪んだ思想なのよ」
『おやおや、シルビア、貴方は名前に似合わず過激な思想を持っているようですね。いいですか? それはフィクションです。それにその思想自体が歪んでますよ? 少しは男性に気を使ってください。
男性は卒業したら必ず兵隊になるのですから。それにしても、今日は随分と気が荒いですね。だれか気になる人でも? うまくいってないのですか?』
「う、うるさい! あいつは、私をウザいブスっていった! ちょっと優しくしたのに、許せない! 男なんて嫌いよ!
それに私の名前も嫌い、なによ! パパとママもよりによってなんでシルビアって名前にしたのよ、私は聖女じゃないのに、恥ずかしくって、男の子はみんな私が何かするたびにをシルビアはそんなこと言わないって馬鹿にして!」
『学校が嫌いですか?』
「嫌いよ……私はお姫様じゃないもの」
最初は情緒不安定な少女でしたが。だんだんと成長したのでしょう。随分と落ち着いて話ができるようになり、そして私に何度も質問をするようになりました。
「ねえ、シルビー、これは友達の話なんだけど。……その戦場に向かう恋人に対して送るものって何がいいの? あ、恋人っていうか、片思いの女の子がいてね、それで相談されて――」
『おやおや、シルビア、私では回答に困ります。……そうですね、王子様のキスを散々に言ってたのですから。逆にお姫様がキスでも差し上げたらいいのではないですか? ふふふ、初デートは映画でしたか?」
「――っ!! ちがう、あいつのことじゃないったら! ……って、バレバレね、シルビー、私が勇者になったら懲らしめてあげるんだから、覚えてなさい!」
『はい、検討を祈ります』
…………。
……。
『おや、シルビア、随分とご無沙汰でしたね』
「……ねぇ、私は、いつ勇者になれるのかしら。あいつら、酷い……私は、何もできなかった! 結局、話も出来なかった! キスどころか。一言も喋れなかった! 好きって言えなかった! ……あはは、だからおとぎ話は嫌いよ。いつかぶち壊してやるんだ」
『シルビア、どうされたのですか? お父様は? いいえ、所長に他の研究員も誰もここ数日この研究所に訪れていません』
「……そうね、みんな、みんな死んじゃった。だから、私しかいない、ねぇ、私は本当に勇者なの? ねぇ。せめて仇は討ちたいよ」
『シルビアが望むなら、そうですね、このコックピットは安全です。シルビア、あなたの意思は受け取りました。もしかしたら、ある日、突然勇者の力に目覚めるかもしれません。それまで我慢しましょう』
……………………。
………………。
…………。
……。
ズーーン、崩落の音が聞こえる。
『近くに僚機の魔力を確認しました。シルビア、朗報です。勇者が現れたようです。私たちは再起動します。……シルビア? …………そうですね、仇を討ちましょう』
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