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第三章
第93話 冒険者ギルド
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魔法学院三年生は、進級しなければ最終学年だ。
元の世界の大学でいうところの大学院が四年生という扱いになる。
実質的に最終学年である三年の授業は座学が大幅に減る、代わりに冒険者ギルドへの登録が課せられる。
実戦訓練もかねて冒険者としての経験が必要なのだ。そのまま冒険者になるのもいいし、卒業後は別の職業になってもいい。
冒険者としての登録と簡単な任務を数回こなせば単位は貰えるので卒業するだけなら別に戦闘する必要はない。だから戦闘の得意でない学生でも留年という事にはならない。
俺達は冒険者ギルドの建物に入り、真っすぐに受付に向かう。
断っておくが、冒険者ギルドといっても所謂ごろつきの様な無礼なやつは基本的にいない。
いたとしても駆け出しのルーキーが現実を知るまでの数か月の間で、余程の真性で無ければ直ぐに真っ当に成長する。
ということで、冒険者ギルドの建物内は清潔感があり、酒飲み等はもってのほかである。まあ役所みたいなイメージに近い。
受付には、清潔感のある事務服を着た女性が立っている。
「魔法学院の生徒さんですね。あら、そのバッチはAクラスの生徒さん、申し訳ありませんが現在Aクラスの方が受けられる任務はないのですが……」
Aクラスの生徒で三年生ともなれば、一流である。
まあ実戦経験は少ないけど。それでも能力的には一般人のレベルではない。
冒険者ランキングで言えば、Sランクが最高だとすると、最低でもAランクかSランクの下といった評価である。
「いえ、今日はボランティアをしようかと思いまして、教会の炊き出しとか物資の運搬がありましたよね、先日こんなパンフレットを貰ったんですけど」
俺はアンネさんが貰ったという竜王教会のパンフレットを受付さんに見せる。
そこには物資運搬のボランティア募集などいろいろと書いてあった。
「ボランティアですか? Aクラスの生徒さんが雑用みたいな仕事、本当によろしいのですか? いえ、失礼しました。とても重要な仕事です。私の立場で仕事に格付けをしてしまうとは申し訳ありませんでした」
ボランティアは、主に戦闘が得意でない冒険者や稼ぎの少ない新人、あるいは魔法学院でも下位のクラスの生徒が主に請け負う。
荷運びや、建設現場の手伝いなど多岐に渡り、軽視してはいけない仕事ではある。まあ雑用係っていうのは正解で進んで受ける者は少ない。
「謝ることはないですよ。俺達も一度は経験しとかないといけないと思っただけですから。学生の間はできるだけ仕事は選ばないようにしたいんですよ」
「まあ、ごりっぱです、では、さっそく調べてみますね…………。ありました。政府が直接、教会へ支給している物資の運搬があります。主に食料と生活用品などです。
最近、教団内部で不祥事があったそうで、人手が足りないとのこと」
「じゃあそれでお願いします。さっそく明日伺いますとお伝え出来ますか?」
「かしこまりました。では場所は竜王教会の……! あのやっぱりやめた方がいいと思いますけど、……皆さんは、その、学生さんですし、女性が多いのでこういう場所はちょっと、というかですね」
受付嬢は言いにくそうにしながら地図を広げる。
「あの、私の仕事がらこういう発現は良くないのですが。その、竜王教会の建ってる場所が貧困街でして……」
「貧困街? 別に俺達にそんなこと気にする人間はいないよ、なあ、皆」
俺が後を振り返ると皆頷いている。
さらにカール氏が続けて答える。
「そうだとも、それに貧困街だからこそ物資が必要なんだし、富める者の義務だと思うよ」
立派になったものだ。彼は彼で事業の儲けの一部を慈善事業に寄付しているらしい。
しかし、受付嬢さんが言いにくそうに答える。
「いえ、その、そういうことではなくてですね、場所が、歓楽街といいますか、夜のお店といいますか、学生さんが行かれるには好ましくないと」
ああ、なるほど、風俗街ってことか。
俺も詳しくは知らないが。貧困街といえば当然あるだろうし、それで女性支援と宗教団体がくっつくわけか。なるほど、どこの世界でもよくある話で笑える。
「エッチなお店がいっぱいってことだね! カール君よ、ここで一つ修行でもしてきたらどうかい? もしかしたら復活するかもだ! あははは」
「しっ! 声がでかいぞユーギ! っと、ごめんなさいお姉さん、俺達もこう見えても、三年生だし大人だ、実戦経験だってある。心配ないですよ。じゃあ、明日現場にいきますので手続きをお願いします」
とりあえずはこれで現場の調査ができるだろう、まずは敵を調べることからだな。
魔法都市ミスリルでの支部が本当に単独でやったとも思えないし。
金は本部に渡ってるはずだ。
まあ、本当に善良に活動してるならそれはそれで問題ないのだが。
十中八九それはない。肥大化した団体はかならず腐るのが人間の営みというのだ。
元の世界の大学でいうところの大学院が四年生という扱いになる。
実質的に最終学年である三年の授業は座学が大幅に減る、代わりに冒険者ギルドへの登録が課せられる。
実戦訓練もかねて冒険者としての経験が必要なのだ。そのまま冒険者になるのもいいし、卒業後は別の職業になってもいい。
冒険者としての登録と簡単な任務を数回こなせば単位は貰えるので卒業するだけなら別に戦闘する必要はない。だから戦闘の得意でない学生でも留年という事にはならない。
俺達は冒険者ギルドの建物に入り、真っすぐに受付に向かう。
断っておくが、冒険者ギルドといっても所謂ごろつきの様な無礼なやつは基本的にいない。
いたとしても駆け出しのルーキーが現実を知るまでの数か月の間で、余程の真性で無ければ直ぐに真っ当に成長する。
ということで、冒険者ギルドの建物内は清潔感があり、酒飲み等はもってのほかである。まあ役所みたいなイメージに近い。
受付には、清潔感のある事務服を着た女性が立っている。
「魔法学院の生徒さんですね。あら、そのバッチはAクラスの生徒さん、申し訳ありませんが現在Aクラスの方が受けられる任務はないのですが……」
Aクラスの生徒で三年生ともなれば、一流である。
まあ実戦経験は少ないけど。それでも能力的には一般人のレベルではない。
冒険者ランキングで言えば、Sランクが最高だとすると、最低でもAランクかSランクの下といった評価である。
「いえ、今日はボランティアをしようかと思いまして、教会の炊き出しとか物資の運搬がありましたよね、先日こんなパンフレットを貰ったんですけど」
俺はアンネさんが貰ったという竜王教会のパンフレットを受付さんに見せる。
そこには物資運搬のボランティア募集などいろいろと書いてあった。
「ボランティアですか? Aクラスの生徒さんが雑用みたいな仕事、本当によろしいのですか? いえ、失礼しました。とても重要な仕事です。私の立場で仕事に格付けをしてしまうとは申し訳ありませんでした」
ボランティアは、主に戦闘が得意でない冒険者や稼ぎの少ない新人、あるいは魔法学院でも下位のクラスの生徒が主に請け負う。
荷運びや、建設現場の手伝いなど多岐に渡り、軽視してはいけない仕事ではある。まあ雑用係っていうのは正解で進んで受ける者は少ない。
「謝ることはないですよ。俺達も一度は経験しとかないといけないと思っただけですから。学生の間はできるだけ仕事は選ばないようにしたいんですよ」
「まあ、ごりっぱです、では、さっそく調べてみますね…………。ありました。政府が直接、教会へ支給している物資の運搬があります。主に食料と生活用品などです。
最近、教団内部で不祥事があったそうで、人手が足りないとのこと」
「じゃあそれでお願いします。さっそく明日伺いますとお伝え出来ますか?」
「かしこまりました。では場所は竜王教会の……! あのやっぱりやめた方がいいと思いますけど、……皆さんは、その、学生さんですし、女性が多いのでこういう場所はちょっと、というかですね」
受付嬢は言いにくそうにしながら地図を広げる。
「あの、私の仕事がらこういう発現は良くないのですが。その、竜王教会の建ってる場所が貧困街でして……」
「貧困街? 別に俺達にそんなこと気にする人間はいないよ、なあ、皆」
俺が後を振り返ると皆頷いている。
さらにカール氏が続けて答える。
「そうだとも、それに貧困街だからこそ物資が必要なんだし、富める者の義務だと思うよ」
立派になったものだ。彼は彼で事業の儲けの一部を慈善事業に寄付しているらしい。
しかし、受付嬢さんが言いにくそうに答える。
「いえ、その、そういうことではなくてですね、場所が、歓楽街といいますか、夜のお店といいますか、学生さんが行かれるには好ましくないと」
ああ、なるほど、風俗街ってことか。
俺も詳しくは知らないが。貧困街といえば当然あるだろうし、それで女性支援と宗教団体がくっつくわけか。なるほど、どこの世界でもよくある話で笑える。
「エッチなお店がいっぱいってことだね! カール君よ、ここで一つ修行でもしてきたらどうかい? もしかしたら復活するかもだ! あははは」
「しっ! 声がでかいぞユーギ! っと、ごめんなさいお姉さん、俺達もこう見えても、三年生だし大人だ、実戦経験だってある。心配ないですよ。じゃあ、明日現場にいきますので手続きをお願いします」
とりあえずはこれで現場の調査ができるだろう、まずは敵を調べることからだな。
魔法都市ミスリルでの支部が本当に単独でやったとも思えないし。
金は本部に渡ってるはずだ。
まあ、本当に善良に活動してるならそれはそれで問題ないのだが。
十中八九それはない。肥大化した団体はかならず腐るのが人間の営みというのだ。
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