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一章:転生乙女
08 お別れでしたから
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私の生まれ育った村は、人口およそ300人ほどの小さな村で、名をリビットと言います。
リビット村はラウグス王国という魔法大国に属しており、その中でも東端に位置するサーシャ領に含まれます。
村の近くには森があり、そこには清流が流れ、多種多様の美しい花々は見ていて心が癒されます。ここは自然に満ち溢れたとても住み良い村です。
ただテレビや携帯電話がないのは不便ですが、それ以上に村の人達との交流は活発で、ここでの暮らしにはむしろ不要なものなのでしょうね。
そして今日、私はこの世界、この素晴らしき村にて晴れて大人の仲間入りを果たしたのでした。
「「「誕生日、おめでとーーー!!!」」」
ここは村の広場、村人の憩いの場です。
そんな共用の場において、恐れ多くも私の誕生日パーティーが盛大に行われたのでした。
なんだか緊張してしまいますね。
ですがこれも村のしきたりだと言うのでしたら、胸を張って皆様の期待にお応えしなければなりません。
その一つとして、まず初めに。
「ーーー皆様、この度わたし、カヤ=エリュテイアの生誕祭をこのように盛大に催してくださり、感謝いたします」
村の人達の前で威風堂々たる姿を見せ、立派にスピーチを行いましょう。
「今日というこの日を無事に迎えられましたのは、ここに集まる皆様のおかげだと私は思っております。そのことを重ねて感謝いたします。そしてーーーお父様、お母様。わたしをここまで優しく、時には厳しく育ててくださり、本当にありがとうございました。まだまだ未熟なこの身ですが、15という一つの節目に向き合い、これからも精進していく所存にございます。ですのでお父様、お母様。誠に勝手なお願いではありますが、どうか、これからの私の歩みを今暫く見届けてくださいませ。わたしーーー頑張りますから」
その言葉を終わりに、私は深々とお辞儀をします。
すると、村の人達から盛大な拍手を頂きました。
「本当に立派になって、、、うっ、、、うぅ~、、、」
「しっかりして、あなた。娘の晴れ舞台なんだから、ちゃんと最後まで見届けてあげなきゃ」
お父様が目に溢れんばかりの涙を浮かべ、それを腕で拭っていました。
お父様が泣きっぽいっというわけではありません。
だって、私もーーーーー。
そんなお父様を見て私は思わず、お父様に駆け寄り、そしてその大きく逞しい身体に抱きつきました。
「ーーー大好きです!私は子供想いの優しいお父様が、日の光のように温かいお母様が、いつも私を慕ってくれるルクス君が、とても大好きです!」
言葉では伝えきれない感謝は、行動で示すしかありません。それが多少であったとしても、こうするしか他に方法を知りませんから。
ですが少しでも、ほんの僅かでもこの想いが大好きなあの人達に届くことを今は願いましょう。
なにせ私は、明日にはこの村を出なければなりませんから。
「お、俺もだ、、、!カヤ!!!」
「私もよ。ずっと愛しているわ、カヤ!」
お二人のお言葉はいつだって温かいです。
離れ難いほどに優しく、愛に溢れています。
「、、、お姉ちゃん、、、?」
ルクス君が不安そうな顔を浮かべてこちらを伺っていました。きっと幼いルクス君はこの状況をあまり飲み込めていないのでしょう。
ただ、一言いうならここまで仰々しくお別れの挨拶を行っていますが、決して今生の別れというわけではありません。
私は学校に通うのです。
そしてその為にはここ、リビット村を離れ、ラウグス王国の王都へと行かなければならないのです。
それがこの国の決まりですから。
15歳になった若者はその身分に関わらず最低でも3年間学校へと通い、教養を身に付けよ、という事らしいです。つまりは義務教育というやつです。
そして、早々にも私が出立しなければならない理由としては、【神縁の儀】をその道中にて受けなければならないからです。
王都までの道のりが荷馬車で一月ほど、そしてその道中、サーシャ領内にある都市リアーナの教会にて【神縁の儀】を執り行わなければならないのです。
この国の起源より遥か昔からあったとされる、運命の相手を見つける為の儀式。それは生誕より15回目の誕生日を迎えた女性のみが行う儀式です。
私が素敵な恋をしたいからと、待ち望んでいたものでした。
ですがーーーーー。
「ルクス君、お姉ちゃんは貴方を愛しています。家族を愛しています。村の人達を愛しています。すぐには無理ですが、必ず帰ってきます。貴方の成長をこの目で見られないのは残念ですが、大きくなった貴方の姿を楽しみにしています」
きっとこの気持ちも恋といえるでしょう。
リビット村はラウグス王国という魔法大国に属しており、その中でも東端に位置するサーシャ領に含まれます。
村の近くには森があり、そこには清流が流れ、多種多様の美しい花々は見ていて心が癒されます。ここは自然に満ち溢れたとても住み良い村です。
ただテレビや携帯電話がないのは不便ですが、それ以上に村の人達との交流は活発で、ここでの暮らしにはむしろ不要なものなのでしょうね。
そして今日、私はこの世界、この素晴らしき村にて晴れて大人の仲間入りを果たしたのでした。
「「「誕生日、おめでとーーー!!!」」」
ここは村の広場、村人の憩いの場です。
そんな共用の場において、恐れ多くも私の誕生日パーティーが盛大に行われたのでした。
なんだか緊張してしまいますね。
ですがこれも村のしきたりだと言うのでしたら、胸を張って皆様の期待にお応えしなければなりません。
その一つとして、まず初めに。
「ーーー皆様、この度わたし、カヤ=エリュテイアの生誕祭をこのように盛大に催してくださり、感謝いたします」
村の人達の前で威風堂々たる姿を見せ、立派にスピーチを行いましょう。
「今日というこの日を無事に迎えられましたのは、ここに集まる皆様のおかげだと私は思っております。そのことを重ねて感謝いたします。そしてーーーお父様、お母様。わたしをここまで優しく、時には厳しく育ててくださり、本当にありがとうございました。まだまだ未熟なこの身ですが、15という一つの節目に向き合い、これからも精進していく所存にございます。ですのでお父様、お母様。誠に勝手なお願いではありますが、どうか、これからの私の歩みを今暫く見届けてくださいませ。わたしーーー頑張りますから」
その言葉を終わりに、私は深々とお辞儀をします。
すると、村の人達から盛大な拍手を頂きました。
「本当に立派になって、、、うっ、、、うぅ~、、、」
「しっかりして、あなた。娘の晴れ舞台なんだから、ちゃんと最後まで見届けてあげなきゃ」
お父様が目に溢れんばかりの涙を浮かべ、それを腕で拭っていました。
お父様が泣きっぽいっというわけではありません。
だって、私もーーーーー。
そんなお父様を見て私は思わず、お父様に駆け寄り、そしてその大きく逞しい身体に抱きつきました。
「ーーー大好きです!私は子供想いの優しいお父様が、日の光のように温かいお母様が、いつも私を慕ってくれるルクス君が、とても大好きです!」
言葉では伝えきれない感謝は、行動で示すしかありません。それが多少であったとしても、こうするしか他に方法を知りませんから。
ですが少しでも、ほんの僅かでもこの想いが大好きなあの人達に届くことを今は願いましょう。
なにせ私は、明日にはこの村を出なければなりませんから。
「お、俺もだ、、、!カヤ!!!」
「私もよ。ずっと愛しているわ、カヤ!」
お二人のお言葉はいつだって温かいです。
離れ難いほどに優しく、愛に溢れています。
「、、、お姉ちゃん、、、?」
ルクス君が不安そうな顔を浮かべてこちらを伺っていました。きっと幼いルクス君はこの状況をあまり飲み込めていないのでしょう。
ただ、一言いうならここまで仰々しくお別れの挨拶を行っていますが、決して今生の別れというわけではありません。
私は学校に通うのです。
そしてその為にはここ、リビット村を離れ、ラウグス王国の王都へと行かなければならないのです。
それがこの国の決まりですから。
15歳になった若者はその身分に関わらず最低でも3年間学校へと通い、教養を身に付けよ、という事らしいです。つまりは義務教育というやつです。
そして、早々にも私が出立しなければならない理由としては、【神縁の儀】をその道中にて受けなければならないからです。
王都までの道のりが荷馬車で一月ほど、そしてその道中、サーシャ領内にある都市リアーナの教会にて【神縁の儀】を執り行わなければならないのです。
この国の起源より遥か昔からあったとされる、運命の相手を見つける為の儀式。それは生誕より15回目の誕生日を迎えた女性のみが行う儀式です。
私が素敵な恋をしたいからと、待ち望んでいたものでした。
ですがーーーーー。
「ルクス君、お姉ちゃんは貴方を愛しています。家族を愛しています。村の人達を愛しています。すぐには無理ですが、必ず帰ってきます。貴方の成長をこの目で見られないのは残念ですが、大きくなった貴方の姿を楽しみにしています」
きっとこの気持ちも恋といえるでしょう。
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