転生オトメ恋世界

夢見月まひわ

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一章:転生乙女

18 合同授業をいたしましょう①

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 王族、貴族、平民と。身分は生まれ持ってのステータスです。
 しかし、だからと言って平民が貴族に、王族に劣っているというわけではないはずです。

 だって人は、そんなに浅い存在ではないと、私は信じていますから。



「ーーーおはよう!カヤ」
「おはようございます。クレナ様」

 とても元気よく私に声を掛けていらしたのは隣部屋のクレナ=フィフス様でした。
 ここは王立ラウグス魔導学園敷地内にある女子寮、その食堂です。

 私はエーデルトラウト様の素敵なお申し出を断り、今はこの寮にて生活をしています。

 流石に乙女様の身で学外の宿屋に住まわせるわけにはいかない、との事で私はエーデルトラウト様からこの場を勧められたのでした。

 少し思惑とは異なりましたが、これはこれで楽しいので、エーデルトラウト様には三度みたび感謝致しましょう。
 と、カヤは三日続けてエーデルトラウト様に直接お礼を申し上げたのでした。



「カヤはここの生活には慣れた?」
「まだ1週間と経っていませんので、正確には分かりませんが、しかしーーーーー今は住み良いと感じております」

 魔導学園の寮は平民クラスより選出された特待生と呼ばれる人達にとっては、とても良い環境でした。なぜなら、特待生には宿泊費ーーー寮費が一切かからないからです。そして食費もここの食堂を使えば無料となり、おかわりも自由です。今わたしも有難い事にそのような扱いを受けております。

 とても良い環境にダメになってしまいそうですが、それもこれも勉学に集中させる為、優遇されているからと、怠けるのは愚か者のする事です。
 ここで気を抜いて後悔するのは自身であり、周囲からの特待生という期待を裏切る行為になりかねません。
 自由に生きるとは決めましたが、それはあくまでも法の元に許される自由であり、理性の上で成り立つものです。
 人に迷惑は掛けられませんし、なにより努力を怠ればここまで育ててくださった両親に顔を合わせられませんので。

 目を背けて生きる事は、きっと辛い事なのでしょう、苦しい事なのでしょう。
 寂しさを押し殺し、塞ぎ込みたくなるほどに。



 、、、、、、憶測に過ぎませんが。

「ーーー今日ね。うちのクラスは魔法実技をするんだよ!カヤはもうやった!?」
「いえ、こちらも今日初めて魔法実技を行うと伺っております」
「そうなんだ~!もしかして一緒にするのかな?」
「どうでしょう、、、そのように伺ってはいませんね」
「一緒に出来ると良いね!」
「そうですね」

 と、何気ないおしゃべりでしたが、いざそれが実現されるといなや、一波乱ありそうな貴族クラス、平民クラスの合同授業が始まったのでした。



「ーーーな~んでとろい平民なんかと、一緒に授業しなくちゃなんねーんだよ!」

 そう文句を垂れたのは先日、私の自己紹介の際に大笑いをしていた同級生のアインス=バウリング様でした。
 そしてそれに続き貴族クラスの方々が各々の思いを口にします。

「本当に最悪ですわ。私は子供のごっこ遊びに付き合わされるほど暇ではないのですよ」
「私だってそうですよ。平民なんて魔力制御もままならないと聞きますし、いくら特待生といえども、私たちの足元にも及ばない児戯だと、兄上が嘆いていましたよ」
「平民の分際で俺らの足を引っ張るとか赦されねーんだよ、、、!」

 そんな脅しじみた台詞に多くの生徒が怯えていました。その中にクレナ様の姿が見えました。
 私はクレナ様の姿を確認し、クレナ様の元へと近付いていきます。

 一身上の都合とはいえ、貴族クラスに身を置く私が平民クラスへと近寄ることに、彼らは酷く怯えた様子でした。

「あ、あの、、、私、、、」

 楽しみにしていらしたクレナ様も怯えておられました。
 短い期間ではありますが、それは築き上げた私と彼女との関係が瞬く間に崩れていくようでーーーーー悲しいのです。

 ですが。

 ーーーーーそうはさせません!

「クレナ様。一緒に授業を受けられる事、楽しみにしておりました」
「、、、え?」

 私のご友人を泣かせる事を私は許容できません。私から心優しきご友人を奪う事を私が許可できません。
 繋ぎ留めてみせます!

「あの方達の出自がなんだというのですか?そのようなもの、ただ少しばかり運が良かっただけではありませんか」
「カヤ、、、」
「ですから恐れる事はありません。怯える事もありません。私達は同じ人間なのですから。それに今は難しくとも、いづれは彼らを超えられるでしょう。なぜならここはその為の学舎だからです」

 平民クラスより選出される特待生とは、純粋にその魔法適正の高さを認められた方々の集まりです。
 魔法大国と呼ばれるラウグス王国が優秀な人材を育成する為に設けた措置なのですから、何も劣る事はありません。むしろこの合同授業は貴族クラスかれらに危機感を抱かせる為のもの、彼らの驕りを目の当たりにした今、そのようにさえ思うのです。

「クレナ様は必ず一流の魔導士へとなられますよ。私が保証致します」

 そう言ったものの確証はありません。
 ただの勘です。いえ、女の勘といった方が当たりそうなので、そういう事にしておきましょう。
 しかし、無責任に発言した訳ではありません。責任はしっかり取りますよ。

「、、、ありがとう、カヤ、、、!」

「ーーーーーはっ!平民が貴族に逆らうなんてな、てめぇら反逆罪で死罪確定だ!」

 バウリング様が嘲笑とともにそう声を張りました。

「それではまるで、貴方様の一存で刑を決めれるように聴こえるのですが?」
「なんだ今更?てめぇもしかして俺のこと知らないのか?」
「バウリング公爵家の跡取り、アインス=バウリング様。魔水晶をきいーーーーー」
「そうじゃねー!!!バウリング家といや、法の番人!俺はその後継なんだよ!」

 、、、、、、はい?

 え~と、これは、、、

 あの、あれですね、あれ、、、!

 あの~、、、、、、

 えっと、、、、、、

 、、、、、、、、、、?

「す、凄いですね、、、?」
「ーーーーーなんで疑問系なんだ!!?乙女様だか、白銀魔導士だか知んねーが!平民は平民だって事を教えてやる!!!」

 知識の共有、考え方の擦り合わせですね。
 お互いにどの様な想いなのかを言い合う事で、仲良くなろうという計らいなのでしょう。
 なかなかに言葉遣いも荒く、感情的な方なのかと思いましたが、話し合いにて平和的に諍いを回避しようとなさる器量の持ち主だったようですねーーーーー

「ーーー力尽くでな!!!」



 、、、前言を撤回いたしましょう。
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