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一章:転生乙女
22 知り合いましょう
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「ーーー白銀魔導士は魔導士として至高の存在。でも白銀魔導士の称号を得た人はこの国の長い歴史を辿っても、たった一人だけ。それが初代乙女、ミシャ=ラウグス=スオウ様」
「、、、なるほど、そういうことだったのですね。教えてくださり、ありがとうございます。ネモ様」
「いーよ、別に、、、罰ゲームだったわけだし、カヤが喜んでくれてるならさ、、、」
ネモ様は少し不機嫌そうに頬を膨らませました。
、、、可愛いですね。
なんだかとても頬をふにふに突つきたい気分です。ですが、急にそのように振るまっては怒られるでしょうか?
、、、うぅ、、、『白銀魔導士について教えて』ではなく、『頬を突つかせて』とお願いすれば良かったと、いま後悔しております。
魔法試験での結果、どうやら私はネモ様との勝負に勝ったらしく、その日の放課後、二人で教室に残り、私は罰ゲームとしてネモ様に白銀魔導士についての仔細を尋ねたのでした。
「で、君はどうやってあんな凄い魔法を覚えたの?」
「、、、魔法を教わったのは母からです。ただ教わったのは魔法ではなく、魔力の特性についてですが」
そのため私の行使する魔法に魔法名はないのです。いえ、"ない"というよりは知らないのです。
「、、、魔力の特性、、、それって魔学のことだよね?」
「ええ。母もそのように仰っておりました」
「道理で敵わないわけだ。いい、カヤ。僕たち魔導士は魔法を発動するために魔法式を構築してからそこへ魔力を流し、魔法を行使している」
「魔法式?それはどのような物なのでしょうか?なにか紙に書いたりするのですか?」
「ううん、魔法式はイメージさえすればいいんだ。手の前とかね。僕が試験で見せた《円環》は、それを具現化させる為の魔法なんだ。より複雑な魔法式を構築するためにね。だって頭の中でイメージっていっても、限度があるでしょ?だから空中に魔法式を浮かべて、直接そこへ魔力を流すんだ。ってまぁそんな感じで、普通は魔法式を通して魔力を魔法へと変換する。けれど君はそれをしていない。魔力の特性を理解し、更にはあり得ないほどの優れた精度で魔力を制御し、魔法を行使していた。だから君の魔法は何ものにも囚われていない。純粋に羨ましいよ」
ネモ様は優しく微笑まれました。
「、、、ネモ様にはご兄弟はおられるのでしょうか?」
「急にどうしたのさ」
「いえ、つい知りたくなってしまったもので。申し訳ありません。無理にお答え頂く必要はありませんが、可能ならば知りたいのです。そしてよろしければ私と、お友達になっていただけませんか?」
「君は、、、うん、なろう!友達に!だからさお互いに聞こう。そしてお互いに知ろうよ。僕が何者で、君が何者で。これからをどうしたいのか、とかさ」
そうして私とネモ様はお友達になり、お互いの家族構成から身の上話、最近の悩みなんかを語り合うのでした。
「ーーーマリエナ教?」
ネモ様との楽しい会話の際に、そのような聴き慣れない言葉が出てきました。
「そうそう。信徒の殆どが貴族だからあまり広くは知られてないけど、僕はそこで聖女様って呼ばれてるんだ」
「ネモ様が聖女様?その聖女様とはどのような存在なのでしょう?」
「言っちゃえば乙女様の代わりかな。カヤが思うより乙女様の出現はとても珍しい事なんだよ。だって初代国王様と初代乙女様が国を繁栄させ、500年以上の時が経ち、現国王ルードルフ=ラウグス様は十二代ラウグス王国国王なわけだけど、それに対して乙女様は四人目だしね。だから乙女様が現れない時のために、魔法適正の高い僕みたいやつを聖女として王様の妃に迎え入れてたんだ」
「、、、ですがそれでは【神縁の儀】でのお相手とはどうなるのですか?」
【神縁の儀】にて王族と結ばれる女性を乙女様というのならば、確かに聖女様はそれには該当致しません。しかし、ネモ様にだって運命のお相手は存在しているはずです。
「ーーーいないよ。そんな人は」
「いない?そんなはずはないと思いますが、、、?」
ネモ様は首を横に振り、こう言いました。
「【神縁の儀】を受けてないんだ。だから、いない」
「、、、え?どうしてですか?」
「別に僕自身がその儀式を否定しているわけじゃないよ。だけど決まった相手がいちゃ王との結婚なんて出来ないでしょ?それに儀式を受けなければ、可能性はゼロじゃない。乙女様が現れないのはその当人である乙女様が儀式を受けていないから。そして15の歳を過ぎれば【神縁の儀】は二度と受けられない。なら【神縁の儀】を受けていない僕みたいな存在が乙女様だったんじゃないか、そうとも考えられるでしょ」
「確かに、、、そうですね」
私は【神縁の儀】に何一つ疑問を持ちませんでした。お父様やお母様から【神縁の儀】は受けて当然のものと習い育ってきた事もあるかもしれませんが、前世がそうであったように、特定の殿方に対して特別好意を抱いた事も無く、ならば元より運命のお相手を知る事が出来るならば、その方を好きになれるのではないかと思ってしまっていたのでしょう。
「でもまぁ君が現れたから、僕のお役目も終わりなんだけどね」
「、、、っ、ごめんなさい!!!」
そういえばそうでした!そういうお話でした!?私、お友達に酷い事をしてしまったのではありませんか?!!
「いいよ。むしろこっちとしては助かってるくらいだからさ」
「で、、、ですが、、、!」
「僕はね、自由になれたんだよ。君のおかげでね」
「、、、自由?」
「聖女様は乙女様の代替品で、聖女様は乙女様の劣化品。君が現れて周りからはそんな風に言われた事だってあるけど、君と勝負をしてみて、君とこうして話してみて納得したよ。僕は君のようにはなれない。運良くも環境にだけは恵まれ、魔法適正は高かったけれど、僕自身が聖女という称号を求めてなんかいなかった。僕はこの国で平和に暮らせればそれだけで良い。元々妃なんて大役も僕には荷が重かったろうし、君が現れて僕は救われたんだ。だから僕という存在を殺さずに済んで、君には感謝してるんだよ。ありがとう、カヤ」
きっと私にはネモ様の御心を推し量ることなどできないのでしょう。彼女がどのような経緯で聖女となり、彼女がどのような想いで私にそれを告げているのか。
ですがーーー本音を知ることは出来ずとも、今彼女が仰った全てを"信じ"ましょう。
「そうですか、、、でしたら私たちは似たもの同士、という事なのでしょうね」
「うん。そうかもね。だから君が困っていたら僕は君を助けるよ」
「私も、ネモ様の助けになるならば」
「それは乙女様として?」
「いえ、ーーーーー」
「「"お友達として"」」
「だよね」
「はい。もちろんです」
「、、、なるほど、そういうことだったのですね。教えてくださり、ありがとうございます。ネモ様」
「いーよ、別に、、、罰ゲームだったわけだし、カヤが喜んでくれてるならさ、、、」
ネモ様は少し不機嫌そうに頬を膨らませました。
、、、可愛いですね。
なんだかとても頬をふにふに突つきたい気分です。ですが、急にそのように振るまっては怒られるでしょうか?
、、、うぅ、、、『白銀魔導士について教えて』ではなく、『頬を突つかせて』とお願いすれば良かったと、いま後悔しております。
魔法試験での結果、どうやら私はネモ様との勝負に勝ったらしく、その日の放課後、二人で教室に残り、私は罰ゲームとしてネモ様に白銀魔導士についての仔細を尋ねたのでした。
「で、君はどうやってあんな凄い魔法を覚えたの?」
「、、、魔法を教わったのは母からです。ただ教わったのは魔法ではなく、魔力の特性についてですが」
そのため私の行使する魔法に魔法名はないのです。いえ、"ない"というよりは知らないのです。
「、、、魔力の特性、、、それって魔学のことだよね?」
「ええ。母もそのように仰っておりました」
「道理で敵わないわけだ。いい、カヤ。僕たち魔導士は魔法を発動するために魔法式を構築してからそこへ魔力を流し、魔法を行使している」
「魔法式?それはどのような物なのでしょうか?なにか紙に書いたりするのですか?」
「ううん、魔法式はイメージさえすればいいんだ。手の前とかね。僕が試験で見せた《円環》は、それを具現化させる為の魔法なんだ。より複雑な魔法式を構築するためにね。だって頭の中でイメージっていっても、限度があるでしょ?だから空中に魔法式を浮かべて、直接そこへ魔力を流すんだ。ってまぁそんな感じで、普通は魔法式を通して魔力を魔法へと変換する。けれど君はそれをしていない。魔力の特性を理解し、更にはあり得ないほどの優れた精度で魔力を制御し、魔法を行使していた。だから君の魔法は何ものにも囚われていない。純粋に羨ましいよ」
ネモ様は優しく微笑まれました。
「、、、ネモ様にはご兄弟はおられるのでしょうか?」
「急にどうしたのさ」
「いえ、つい知りたくなってしまったもので。申し訳ありません。無理にお答え頂く必要はありませんが、可能ならば知りたいのです。そしてよろしければ私と、お友達になっていただけませんか?」
「君は、、、うん、なろう!友達に!だからさお互いに聞こう。そしてお互いに知ろうよ。僕が何者で、君が何者で。これからをどうしたいのか、とかさ」
そうして私とネモ様はお友達になり、お互いの家族構成から身の上話、最近の悩みなんかを語り合うのでした。
「ーーーマリエナ教?」
ネモ様との楽しい会話の際に、そのような聴き慣れない言葉が出てきました。
「そうそう。信徒の殆どが貴族だからあまり広くは知られてないけど、僕はそこで聖女様って呼ばれてるんだ」
「ネモ様が聖女様?その聖女様とはどのような存在なのでしょう?」
「言っちゃえば乙女様の代わりかな。カヤが思うより乙女様の出現はとても珍しい事なんだよ。だって初代国王様と初代乙女様が国を繁栄させ、500年以上の時が経ち、現国王ルードルフ=ラウグス様は十二代ラウグス王国国王なわけだけど、それに対して乙女様は四人目だしね。だから乙女様が現れない時のために、魔法適正の高い僕みたいやつを聖女として王様の妃に迎え入れてたんだ」
「、、、ですがそれでは【神縁の儀】でのお相手とはどうなるのですか?」
【神縁の儀】にて王族と結ばれる女性を乙女様というのならば、確かに聖女様はそれには該当致しません。しかし、ネモ様にだって運命のお相手は存在しているはずです。
「ーーーいないよ。そんな人は」
「いない?そんなはずはないと思いますが、、、?」
ネモ様は首を横に振り、こう言いました。
「【神縁の儀】を受けてないんだ。だから、いない」
「、、、え?どうしてですか?」
「別に僕自身がその儀式を否定しているわけじゃないよ。だけど決まった相手がいちゃ王との結婚なんて出来ないでしょ?それに儀式を受けなければ、可能性はゼロじゃない。乙女様が現れないのはその当人である乙女様が儀式を受けていないから。そして15の歳を過ぎれば【神縁の儀】は二度と受けられない。なら【神縁の儀】を受けていない僕みたいな存在が乙女様だったんじゃないか、そうとも考えられるでしょ」
「確かに、、、そうですね」
私は【神縁の儀】に何一つ疑問を持ちませんでした。お父様やお母様から【神縁の儀】は受けて当然のものと習い育ってきた事もあるかもしれませんが、前世がそうであったように、特定の殿方に対して特別好意を抱いた事も無く、ならば元より運命のお相手を知る事が出来るならば、その方を好きになれるのではないかと思ってしまっていたのでしょう。
「でもまぁ君が現れたから、僕のお役目も終わりなんだけどね」
「、、、っ、ごめんなさい!!!」
そういえばそうでした!そういうお話でした!?私、お友達に酷い事をしてしまったのではありませんか?!!
「いいよ。むしろこっちとしては助かってるくらいだからさ」
「で、、、ですが、、、!」
「僕はね、自由になれたんだよ。君のおかげでね」
「、、、自由?」
「聖女様は乙女様の代替品で、聖女様は乙女様の劣化品。君が現れて周りからはそんな風に言われた事だってあるけど、君と勝負をしてみて、君とこうして話してみて納得したよ。僕は君のようにはなれない。運良くも環境にだけは恵まれ、魔法適正は高かったけれど、僕自身が聖女という称号を求めてなんかいなかった。僕はこの国で平和に暮らせればそれだけで良い。元々妃なんて大役も僕には荷が重かったろうし、君が現れて僕は救われたんだ。だから僕という存在を殺さずに済んで、君には感謝してるんだよ。ありがとう、カヤ」
きっと私にはネモ様の御心を推し量ることなどできないのでしょう。彼女がどのような経緯で聖女となり、彼女がどのような想いで私にそれを告げているのか。
ですがーーー本音を知ることは出来ずとも、今彼女が仰った全てを"信じ"ましょう。
「そうですか、、、でしたら私たちは似たもの同士、という事なのでしょうね」
「うん。そうかもね。だから君が困っていたら僕は君を助けるよ」
「私も、ネモ様の助けになるならば」
「それは乙女様として?」
「いえ、ーーーーー」
「「"お友達として"」」
「だよね」
「はい。もちろんです」
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