転生オトメ恋世界

夢見月まひわ

文字の大きさ
32 / 49
二章

32 伝わらない想い③

しおりを挟む
「ーーーーー無事か!?」

 生徒の安否を確認するようにイルミナ教師とハーマン教師が慌てて駆けつけて来られました。

「えぇ。どなたも怪我はされておられません。ヴェンデル様は魔力の著しい低下で気を失われてしまったようですが」
「そうか、、、大体の事情は分かっているつもりだが、きっとあんたにはすぐに学園長からお呼びが掛かるだろう。身体に異常はないか?」
「大丈夫です」

 私がそう答えると、イルミナ教師は胸を撫で下ろしたように安堵の表情を浮かべられました。

「ーーーーー授業はこれで終わりにする!各自教室に戻り待機するように!ハーマン、そこのバカ王子を医務室まで連れて行け」
「ヴェンデル王子ですよ、イルミナ。言葉には気をつけてください」

 ハーマン教師がそのように言いながらヴェンデル様を魔法で浮かせて医務室に向かわれて行きました。
 教師陣がその場から離れていくと、他の生徒たちは教師の言いつけ通りに教室へと戻って行かれます。

「ーーーーーカヤ!」
「クレナ様、ご無事でしたか」
「もう!それはこっちの台詞よ!ほんと無茶ばっかりして、心配したんだから!」
「その、、、申し訳ございません」

 私が頭を下げると、クレナ様が優しくも力強く抱きついて来られました。

「謝らなきゃいけないのもこっちだからね。ごめん、無茶なことさせちゃって。カヤは私たちを護ろうとしてくれたんだもんね。ありがと」
「、、、クレナ様」
「ーーーーー二人ともいつまでそうしてるつもりなの!」

 ネモ様が膨れたお顔でそのように仰り、クレナ様の服の裾を引っ張っていました。

「ほらもういいでしょ!さっさと離れなよ!皆んなもう教室に戻ってるんだからさ!」
「そ、そうだよね、、、戻ろっか」

 そしてクレナ様と私が離れると、その間に押し入るような形でネモ様が私の腕を掴みました。

「そうそう。早く戻んなきゃね。クレナはの方にさ」
「ネ、、、ネモちゃん、、、?」
「さぁ僕たちは一緒に教室に戻ろうね。に」

 ネモ様は何故か不敵な笑みをクレナ様に向けておりました。

「、、、なになに!もしかして嫉妬!?ネモちゃんすっごく可愛いー!!!ねぇカヤ!この子やっぱり私に頂戴!!?」
「え?いえ、そもそもネモ様に対する権限を私は何一つ有しておりませんのでーーーーー」
「ダメに決まってるでしょ!?僕はカヤのモノなんだから!!?」
「ネモ様!!?」
「キャー!!!可愛い!!!」





 ヴェンデル様は大丈夫でしょうか。
 いえ、私の大切な方々に刃を向けられた方を心配するわけではありませんが、此度の事件は私なりに腑に落ちない点もありました。

 そもそもヴェンデル様はきっとエーデルトラウト様がここにおられたのなら、あのような事は致さなかったでしょう。ですが今日は緊急のお仕事が入ったからと合同授業を行う直前に早退されていました。
 それにヴェンデル様が初めに魔法をこちらへと向けられた際、教師の方々も校内放送にて急遽お呼びされており、一時的に魔法禁止の自習時間となっておりました。
 その全てが偶然かもしれません。しかしそれもこれもヴェンデル様が私と一対一の勝負を行うのに打って付けの状況がこれ見よがしに用意されたように、今更ながらに思うのです。
 そして極め付けはあの勝負の際に投げ込まれた一本の剣。

 その剣自体はイルミナ教師が回収されていきましたが、いったいどなたが、どこから投げ込まれたのでしょう?



 分からないことが多すぎますね。
 これでは情報の整理もままなりません。

「ーーーーーどこの世も人間関係というものは複雑のようですね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~

紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。 毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

処理中です...