転生オトメ恋世界

夢見月まひわ

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二章

31 伝わらない想い②

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『ーーーーー世間からは第二王子などと呼ばれておりますが、我々は信じております。ヴェンデル殿下、貴方様こそが未来の王に相応しいと』
『ふん。当然だ』
『しかし、残念なことに愚かな平民共は自分たちと同等な存在である平民出の乙女を支持しておるのです。もしかしたら乙女が妃に迎え入れられたら、自分たちの立場が少しでも良くなるのでは?と、そのような浅ましい考えが透けて見えるではありませんか』
『、、、前振りが長いぞ。結局なにが言いたいんだ?お前は』
『これは失礼致しました。それでは本題に入りましょうーーーーーーーーーこの国の未来を良きものへとする為に』


 ◇


「ーーーーー【氷ノ岩アイスロック】」
「火属性魔法」

 ヴェンデル様が魔法を放ち、私がそれを防ぐという攻防が続き、ヴェンデル様に疲れが見え始めた頃、ヴェンデル様が懐より石のようなものを取り出しました。

「ーーーーーありったけの力を寄越しやがれ!【天雷ノ恵サンダーグレイス】」

 そのようにヴェンデル様が魔法を発動させると、ヴェンデル様が持っておられた石から電光が放たれ、それはたちまちのうちにヴェンデル様を包み込みます。
 少し苦しそうな表情を見せるヴェンデル様。しかし、すぐにニヤリと微笑むと、魔法合戦で距離を置いていたはずのヴェンデル様がこちらに向かって走り出すのでした。それもとても凄く速いスピードで。
 その途中、どこからとなく真剣が放り込まれ、ヴェンデル様はすぐさま剣を鞘から取り出します。

 、、、今のは、、、?

「ーーーーーはっ!魔導士からすりゃ遊戯のようなもんだが、てめぇーにゃこれで十分だ!くたばりやがれ!」

 身体強化の魔法による接近戦ですか、、、いいでしょう、受けて立ちます。

 土属性魔法により模造刀を創り、私はお父様直伝ーーーーーエリュテイア流の構えを取ります。
 それはお父様が学生時代より試行錯誤を繰り返し編み出された、いわゆる我流。そのためエリュテイア流なのです。ただしかし何方どなたにも認知はされておりませんでしたが。

「死ねーーーーー!!!」

 カキンッという音を鳴らし、ヴェンデル様の一撃を弾きます。

 お父様が研鑽の末に辿り着いたエリュテイア流、その特筆すべき点とはズバリーーーーー魔力制御による身体強化とそれを活かした剣術スタイル。
 この国で騎士さまという存在は、魔導士に者達の受け皿と認識されているそうです。
 世間よりそう認識され、魔導士と騎士は相反する存在とカテゴライズをなされてしまっている世の中。その反発も相まってか騎士さま達は戦いにおいて魔力を用いようとはしないとの事。
 ですがお父様は只々ひたすらに剣術と向き合い、騎士としての高みを目指すうちに、そんな常識を一人打ち破り、この境地に達したのです。
 しかし、このスタイルもお父様以外の騎士さまには受け入れられず、あまつさえ『誇り高き騎士の精神に反している』と罵られたそうです。
 私が幼き頃、お父様がお酒を飲まれた際に、その事をとても悔しそうに吐露しておりました。
 その時、私は非常に残念に思いました。

 真に騎士道を歩むというのなら、そのような無価値な誇りなど捨てるべきなのです。
 失ってからでは何もかもが手遅れなのですから。

「ーーーーーまだ!!!」

 ヴェンデル様は続けて剣を振るい、勝負は魔法合戦から剣戟へと移行しました。

「くそっ!?なぜだ、、、?!なぜ当たらない!!?」
「ーーーーーこの程度ですか?」
「、、、クソがッ!!!」

 ヴェンデル様の魔法と剣術の組み合わせはとても素晴らしいです。
 ですが結局のところ、ヴェンデル様自身に剣術の心得など一切ないのでしょう。
 それでも剣に頼り前へと出ていらしたのは煮え切らない思いからか、はたまた接近戦ならば勝ち目があると踏んだからなのか、、、ですがーーーーー。

「ーーーーーおたわむれもここまでです」

 私はヴェンデル様の一撃を受け流し、模造刀の切先をヴェンデル様の喉元に押し付けました。

「不憫ですね。そんな貴方に私は同情いたします」
「、、、あ?」

 剣を交え相手の想いが伝わったと、剣豪のような事は言いません。しかし、彼の必死な想いを受けて、今更ながらに気付いたのです。

「貴方は私が知る誰よりも心が貧しいのですね。王族、貴族、平民、そのような上部うわべだけに囚われてしまうのも、貴方がーーーーー」
「ーーーーーざっけんな!!!」

 そのように叫び、ヴェンデル様は再び距離を取りました。

「殺す、、、殺す、、、殺してやる!!!」

 ヴェンデル様はかなり疲弊しているようでした。しかし、それでもなお攻撃を仕掛けて来ます。今度は魔法と剣術を交互に組み合わせながら。

「、、、はぁ、、、はぁ」

 ヴェンデル様の実力は確かのようですね。きっと戦闘センスがもとより高いのでしょう。それこそ、その才能を認めざるを得ないほどに。

「ーーーーー貴方は強いです。その力を正しき事に使われたのなら、良き王となれたでしょうに」
「はっ、、、正しいって、なんだよ、、、?」
「分かりませんか?人を"護る"ことです」

 魔力も体力も尽きたヴェンデル様の手から剣がすり抜け、ヴェンデル様自身も膝から崩れ落ちるように地面に伏したのでした。



「くっだらねー、、、、、、」
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