31 / 49
二章
31 伝わらない想い②
しおりを挟む
『ーーーーー世間からは第二王子などと呼ばれておりますが、我々は信じております。ヴェンデル殿下、貴方様こそが未来の王に相応しいと』
『ふん。当然だ』
『しかし、残念なことに愚かな平民共は自分たちと同等な存在である平民出の乙女を支持しておるのです。もしかしたら乙女が妃に迎え入れられたら、自分たちの立場が少しでも良くなるのでは?と、そのような浅ましい考えが透けて見えるではありませんか』
『、、、前振りが長いぞ。結局なにが言いたいんだ?お前は』
『これは失礼致しました。それでは本題に入りましょうーーーーーーーーーこの国の未来を良きものへとする為に』
◇
「ーーーーー【氷ノ岩】」
「火属性魔法」
ヴェンデル様が魔法を放ち、私がそれを防ぐという攻防が続き、ヴェンデル様に疲れが見え始めた頃、ヴェンデル様が懐より石のようなものを取り出しました。
「ーーーーーありったけの力を寄越しやがれ!【天雷ノ恵】」
そのようにヴェンデル様が魔法を発動させると、ヴェンデル様が持っておられた石から電光が放たれ、それはたちまちのうちにヴェンデル様を包み込みます。
少し苦しそうな表情を見せるヴェンデル様。しかし、すぐにニヤリと微笑むと、魔法合戦で距離を置いていたはずのヴェンデル様がこちらに向かって走り出すのでした。それもとても凄く速いスピードで。
その途中、どこからとなく真剣が放り込まれ、ヴェンデル様はすぐさま剣を鞘から取り出します。
、、、今のは、、、?
「ーーーーーはっ!魔導士からすりゃ遊戯のようなもんだが、てめぇーにゃこれで十分だ!くたばりやがれ!」
身体強化の魔法による接近戦ですか、、、いいでしょう、受けて立ちます。
土属性魔法により模造刀を創り、私はお父様直伝ーーーーーエリュテイア流の構えを取ります。
それはお父様が学生時代より試行錯誤を繰り返し編み出された、いわゆる我流。そのためエリュテイア流なのです。ただしかし何方にも認知はされておりませんでしたが。
「死ねーーーーー!!!」
カキンッという音を鳴らし、ヴェンデル様の一撃を弾きます。
お父様が研鑽の末に辿り着いたエリュテイア流、その特筆すべき点とはズバリーーーーー魔力制御による身体強化とそれを活かした剣術スタイル。
この国で騎士さまという存在は、魔導士になれなかった者達の受け皿と認識されているそうです。
世間よりそう認識され、魔導士と騎士は相反する存在とカテゴライズをなされてしまっている世の中。その反発も相まってか騎士さま達は戦いにおいて魔力を用いようとはしないとの事。
ですがお父様は只々ひたすらに剣術と向き合い、騎士としての高みを目指すうちに、そんな常識を一人打ち破り、この境地に達したのです。
しかし、このスタイルもお父様以外の騎士さまには受け入れられず、あまつさえ『誇り高き騎士の精神に反している』と罵られたそうです。
私が幼き頃、お父様がお酒を飲まれた際に、その事をとても悔しそうに吐露しておりました。
その時、私は非常に残念に思いました。
真に騎士道を歩むというのなら、そのような無価値な誇りなど捨てるべきなのです。
失ってからでは何もかもが手遅れなのですから。
「ーーーーーまだ!!!」
ヴェンデル様は続けて剣を振るい、勝負は魔法合戦から剣戟へと移行しました。
「くそっ!?なぜだ、、、?!なぜ当たらない!!?」
「ーーーーーこの程度ですか?」
「、、、クソがッ!!!」
ヴェンデル様の魔法と剣術の組み合わせはとても素晴らしいです。
ですが結局のところ、ヴェンデル様自身に剣術の心得など一切ないのでしょう。
それでも剣に頼り前へと出ていらしたのは煮え切らない思いからか、はたまた接近戦ならば勝ち目があると踏んだからなのか、、、ですがーーーーー。
「ーーーーーお戯もここまでです」
私はヴェンデル様の一撃を受け流し、模造刀の切先をヴェンデル様の喉元に押し付けました。
「不憫ですね。そんな貴方に私は同情いたします」
「、、、あ?」
剣を交え相手の想いが伝わったと、剣豪のような事は言いません。しかし、彼の必死な想いを受けて、今更ながらに気付いたのです。
「貴方は私が知る誰よりも心が貧しいのですね。王族、貴族、平民、そのような上部だけに囚われてしまうのも、貴方がーーーーー」
「ーーーーーざっけんな!!!」
そのように叫び、ヴェンデル様は再び距離を取りました。
「殺す、、、殺す、、、殺してやる!!!」
ヴェンデル様はかなり疲弊しているようでした。しかし、それでもなお攻撃を仕掛けて来ます。今度は魔法と剣術を交互に組み合わせながら。
「、、、はぁ、、、はぁ」
ヴェンデル様の実力は確かのようですね。きっと戦闘センスがもとより高いのでしょう。それこそ、その才能を認めざるを得ないほどに。
「ーーーーー貴方は強いです。その力を正しき事に使われたのなら、良き王となれたでしょうに」
「はっ、、、正しいって、なんだよ、、、?」
「分かりませんか?人を"護る"ことです」
魔力も体力も尽きたヴェンデル様の手から剣がすり抜け、ヴェンデル様自身も膝から崩れ落ちるように地面に伏したのでした。
「くっだらねー、、、、、、」
『ふん。当然だ』
『しかし、残念なことに愚かな平民共は自分たちと同等な存在である平民出の乙女を支持しておるのです。もしかしたら乙女が妃に迎え入れられたら、自分たちの立場が少しでも良くなるのでは?と、そのような浅ましい考えが透けて見えるではありませんか』
『、、、前振りが長いぞ。結局なにが言いたいんだ?お前は』
『これは失礼致しました。それでは本題に入りましょうーーーーーーーーーこの国の未来を良きものへとする為に』
◇
「ーーーーー【氷ノ岩】」
「火属性魔法」
ヴェンデル様が魔法を放ち、私がそれを防ぐという攻防が続き、ヴェンデル様に疲れが見え始めた頃、ヴェンデル様が懐より石のようなものを取り出しました。
「ーーーーーありったけの力を寄越しやがれ!【天雷ノ恵】」
そのようにヴェンデル様が魔法を発動させると、ヴェンデル様が持っておられた石から電光が放たれ、それはたちまちのうちにヴェンデル様を包み込みます。
少し苦しそうな表情を見せるヴェンデル様。しかし、すぐにニヤリと微笑むと、魔法合戦で距離を置いていたはずのヴェンデル様がこちらに向かって走り出すのでした。それもとても凄く速いスピードで。
その途中、どこからとなく真剣が放り込まれ、ヴェンデル様はすぐさま剣を鞘から取り出します。
、、、今のは、、、?
「ーーーーーはっ!魔導士からすりゃ遊戯のようなもんだが、てめぇーにゃこれで十分だ!くたばりやがれ!」
身体強化の魔法による接近戦ですか、、、いいでしょう、受けて立ちます。
土属性魔法により模造刀を創り、私はお父様直伝ーーーーーエリュテイア流の構えを取ります。
それはお父様が学生時代より試行錯誤を繰り返し編み出された、いわゆる我流。そのためエリュテイア流なのです。ただしかし何方にも認知はされておりませんでしたが。
「死ねーーーーー!!!」
カキンッという音を鳴らし、ヴェンデル様の一撃を弾きます。
お父様が研鑽の末に辿り着いたエリュテイア流、その特筆すべき点とはズバリーーーーー魔力制御による身体強化とそれを活かした剣術スタイル。
この国で騎士さまという存在は、魔導士になれなかった者達の受け皿と認識されているそうです。
世間よりそう認識され、魔導士と騎士は相反する存在とカテゴライズをなされてしまっている世の中。その反発も相まってか騎士さま達は戦いにおいて魔力を用いようとはしないとの事。
ですがお父様は只々ひたすらに剣術と向き合い、騎士としての高みを目指すうちに、そんな常識を一人打ち破り、この境地に達したのです。
しかし、このスタイルもお父様以外の騎士さまには受け入れられず、あまつさえ『誇り高き騎士の精神に反している』と罵られたそうです。
私が幼き頃、お父様がお酒を飲まれた際に、その事をとても悔しそうに吐露しておりました。
その時、私は非常に残念に思いました。
真に騎士道を歩むというのなら、そのような無価値な誇りなど捨てるべきなのです。
失ってからでは何もかもが手遅れなのですから。
「ーーーーーまだ!!!」
ヴェンデル様は続けて剣を振るい、勝負は魔法合戦から剣戟へと移行しました。
「くそっ!?なぜだ、、、?!なぜ当たらない!!?」
「ーーーーーこの程度ですか?」
「、、、クソがッ!!!」
ヴェンデル様の魔法と剣術の組み合わせはとても素晴らしいです。
ですが結局のところ、ヴェンデル様自身に剣術の心得など一切ないのでしょう。
それでも剣に頼り前へと出ていらしたのは煮え切らない思いからか、はたまた接近戦ならば勝ち目があると踏んだからなのか、、、ですがーーーーー。
「ーーーーーお戯もここまでです」
私はヴェンデル様の一撃を受け流し、模造刀の切先をヴェンデル様の喉元に押し付けました。
「不憫ですね。そんな貴方に私は同情いたします」
「、、、あ?」
剣を交え相手の想いが伝わったと、剣豪のような事は言いません。しかし、彼の必死な想いを受けて、今更ながらに気付いたのです。
「貴方は私が知る誰よりも心が貧しいのですね。王族、貴族、平民、そのような上部だけに囚われてしまうのも、貴方がーーーーー」
「ーーーーーざっけんな!!!」
そのように叫び、ヴェンデル様は再び距離を取りました。
「殺す、、、殺す、、、殺してやる!!!」
ヴェンデル様はかなり疲弊しているようでした。しかし、それでもなお攻撃を仕掛けて来ます。今度は魔法と剣術を交互に組み合わせながら。
「、、、はぁ、、、はぁ」
ヴェンデル様の実力は確かのようですね。きっと戦闘センスがもとより高いのでしょう。それこそ、その才能を認めざるを得ないほどに。
「ーーーーー貴方は強いです。その力を正しき事に使われたのなら、良き王となれたでしょうに」
「はっ、、、正しいって、なんだよ、、、?」
「分かりませんか?人を"護る"ことです」
魔力も体力も尽きたヴェンデル様の手から剣がすり抜け、ヴェンデル様自身も膝から崩れ落ちるように地面に伏したのでした。
「くっだらねー、、、、、、」
0
あなたにおすすめの小説
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
私は貴方を許さない
白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。
前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる