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二章
42 大切な人②
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これは私がエーデルトラウト=ラウグスと呼ばれる以前の、ただのエーデルトラウトであった頃のお話。
私の母は異国より長き旅を経て、ここラウグス王国へとやって来た魔導士、その名はシェルシア。
母は古くより魔法大国と呼ばれ栄えてきたこの国に、魔導の真髄の手掛かりを求めていたそうだ。
けれど、その国に魔導士は多くとも、誰も彼もが彼女の足元にも及ばない拙い者たちばかりだったと言う。
それは当時の聖女でさえ同様に。
それほど私の母は魔導士として優秀だったのだ。
私の父である現国王、ルードルフ=ラウグスはそんな彼女に興味を抱き、城に招いたという。
その際に父と母は一夜限りの契りを交わしたという。しかし、それは王家により秘匿とされた。
そののち母は私を身篭り、身重な状態で有りながらも誰にも頼らずに母は私を産み、そして女で一つで立派に私を育ててくれた。私にとって母と過ごしてきた時間こそ、何ものにも変え難い至福の時であった。
しかし私が六つになろうという頃に、突然王家の遣いと名乗る者たちが我が家へと立ち入り、私と母は強制的に王城へと連れ去られ、気付けば母と離れ離れにされ、私は身も知らぬ男の前へと突き出されていた。
当時の私はその男が父であるなど思いもよらず、ただただ恐々としていた。
「ーーーーーシェルシアの子よ。名をなんという?」
「、、、、、エーデルトラウト」
「良き名だ。エーデルトラウトよ。其方を今日よりこのルードルフ=ラウグスの息子とし王家に招き入れよう」
男はにこやかに手を差し伸べたが以前私の恐怖は拭えず、私は涙を零し、懇願するようにこう言葉を呟いていた。
「か、母様、、、母様はどこ、、、!?母様、、、母様、、、!!?」
その様子に男は戸惑い、私を連行してきた兵に怒りの目を向け、このように叫んだ。
「ーーーーーシェルシアをどこへやった!!!」
兵士はびくりとし、細々と話始めた。
「、、、このガ、、、あ、いえ、、、、殿下と連れ添われていましたご婦人は、マリエナ教大司祭ホーキス様がご歓待なさると仰られましたので、、、、、道中ホーキス様に、、、、、」
「、、、、、なにを、、、なにを勝手な真似をッ!!?すぐにシェルシアを取り戻して来い!!!この馬鹿タレ共が!!!」
「「はい!!!」」
兵士達は慌てて部屋を去ると、ルードルフ王は複数回深呼吸をし息を整え、私に向かいこのように言った。
「、、、必ず、、、必ず助ける!君の大切な人を必ず、、、、、!」
震える声で、今にも泣き出しそうに。
私はその瞬間この人に親近感が湧いたのだろう。この人は怖い人じゃない。そう感じた。
「母様は強い、です、、、、、誰よりも強くて、誰よりも凄いです。母様はいつも言ってました、、、、、母様は王様にも勝った事があるって。だから離れ離れは寂しいけど、僕は大丈夫、、、です。だからあなたも、、、泣かないで」
「ーーーーーあぁ、そうだな」
私の母は異国より長き旅を経て、ここラウグス王国へとやって来た魔導士、その名はシェルシア。
母は古くより魔法大国と呼ばれ栄えてきたこの国に、魔導の真髄の手掛かりを求めていたそうだ。
けれど、その国に魔導士は多くとも、誰も彼もが彼女の足元にも及ばない拙い者たちばかりだったと言う。
それは当時の聖女でさえ同様に。
それほど私の母は魔導士として優秀だったのだ。
私の父である現国王、ルードルフ=ラウグスはそんな彼女に興味を抱き、城に招いたという。
その際に父と母は一夜限りの契りを交わしたという。しかし、それは王家により秘匿とされた。
そののち母は私を身篭り、身重な状態で有りながらも誰にも頼らずに母は私を産み、そして女で一つで立派に私を育ててくれた。私にとって母と過ごしてきた時間こそ、何ものにも変え難い至福の時であった。
しかし私が六つになろうという頃に、突然王家の遣いと名乗る者たちが我が家へと立ち入り、私と母は強制的に王城へと連れ去られ、気付けば母と離れ離れにされ、私は身も知らぬ男の前へと突き出されていた。
当時の私はその男が父であるなど思いもよらず、ただただ恐々としていた。
「ーーーーーシェルシアの子よ。名をなんという?」
「、、、、、エーデルトラウト」
「良き名だ。エーデルトラウトよ。其方を今日よりこのルードルフ=ラウグスの息子とし王家に招き入れよう」
男はにこやかに手を差し伸べたが以前私の恐怖は拭えず、私は涙を零し、懇願するようにこう言葉を呟いていた。
「か、母様、、、母様はどこ、、、!?母様、、、母様、、、!!?」
その様子に男は戸惑い、私を連行してきた兵に怒りの目を向け、このように叫んだ。
「ーーーーーシェルシアをどこへやった!!!」
兵士はびくりとし、細々と話始めた。
「、、、このガ、、、あ、いえ、、、、殿下と連れ添われていましたご婦人は、マリエナ教大司祭ホーキス様がご歓待なさると仰られましたので、、、、、道中ホーキス様に、、、、、」
「、、、、、なにを、、、なにを勝手な真似をッ!!?すぐにシェルシアを取り戻して来い!!!この馬鹿タレ共が!!!」
「「はい!!!」」
兵士達は慌てて部屋を去ると、ルードルフ王は複数回深呼吸をし息を整え、私に向かいこのように言った。
「、、、必ず、、、必ず助ける!君の大切な人を必ず、、、、、!」
震える声で、今にも泣き出しそうに。
私はその瞬間この人に親近感が湧いたのだろう。この人は怖い人じゃない。そう感じた。
「母様は強い、です、、、、、誰よりも強くて、誰よりも凄いです。母様はいつも言ってました、、、、、母様は王様にも勝った事があるって。だから離れ離れは寂しいけど、僕は大丈夫、、、です。だからあなたも、、、泣かないで」
「ーーーーーあぁ、そうだな」
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