平和な世界じゃ息が詰まりそうなので魔王にでもなろうと思います

夢見月まひわ

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 ギルダから潜入ミッションを言い渡されたかと思えば、その目的は不明。しかしギルダからは再三周りの人達に馴染むように、とだけ釘を刺されていた。

「・・・それにはまず試験に受かんないといけないとか・・・目的もはっきりしないし、全くやる気出ないんだけど?」
「ーーーーー頑張りましょう!アルス様!」
「リーナにそう言われちゃ頑張るしかないな~!」
「ーーーーーメ、メロもおります!アルスさん!頑張ってください!」
「メロもありがとうね~!よーし!やる気も満ち溢れた事だし、さくっと潜入しちゃおうか!」

 盗賊団団員のアルス専属メイド、リーナとメロをお供に付け、フォルカトス騎士学校の試験会場へとやって来ていた。

「ーーーーーこほん。皆さんお静かに。これより筆記試験を行います。制限時間は90分。カンニング等の違反行為は見つけ次第即退場となりますので、決して行わないように。それでは始めて下さい」

 試験官の合図により筆記試験が開始された。

「形式はミリアに聞いた通りみたいだけど・・・えっと、確かここに正解を書けば良いんだっけ?問題は・・・【フォルカトス王国の現国王の名を答えよ】」

 ・・・・・誰?!!

「あ、でも"ふぉるかとす"ってどこかで聞いたような・・・でもどこで聞いたんだっけ?まぁいいや。【分かんない】でいっか。それで次はーーーーー」

 アルスは時間内に解答欄を全て埋め尽くし、自信たっぷりな表情でリーナとメロの元に合流した。

「ーーーーー筆記試験って思ってたより簡単だったね。最後の問題だけ難しかったけど、それでもかなり時間余ったし」
「流石アルスさんです!」
「・・・え、時間余ったんですか・・・?」

 アルスの自信に満ち溢れた表情にメロは賛辞を送るも、リーナはアルスと共に会場から出てきた受験者達の表情や会話を耳にし不安になっていた。

「筆記試験の次は実技試験だったよね。実技試験は観覧自由だから一緒に行くよー!」

 アルスが意気揚々とリーナとメロを連れて実技試験の会場へ訪れると、多くの受験者から注目された。
 その理由は単純にリーナの豊満な肉体とメロの愛らしい姿に多くの受験者が魅了されての事だった。

「え~と、私はDブロックだから・・・あっちに行けばいいのかな」

 受付で渡された紙に書かれた文字と同じ文字が書かれた立て札に向かい、アルス一行が進み出すと、一人の男がその前に立ちはだかった。

「なに?邪魔なんだけど?」
「おうおう、女のくせにでけぇ態度とんじゃねーか!」
「デカイのはあなたの図体の方でしょ。あなたがそこに立ってるだけで道が塞がってるんだけど?早く退いてくんない?」
「それは無理な話だな。だって俺はてめぇみたいなナヨナヨした女がここで傷を負わないように護ってやってんだからな」
「は?何の話?」
「はぁ・・・鈍い奴だな。だからよぉ、引き返せって言ってんだよ!ここは女子供が来るような場所じゃねーんだ!てめぇみてーな奴がここに居るだけで俺らのやる気が下がんだよ!しかもお友達まで連れ添いやがってよぉ・・・!観光気分か!!?このヤロー!!!」
「ーーーーーあーもう!うるさいな!!!」

 【波動打岩はどうだがん

 鋭い目つきでアルスが男を睨んだ一瞬。巨岩がアルスと男の間に出現したかと思うと、その巨岩が男目掛けて急加速し、男諸共会場の端へ激突した。
 その衝撃音の大きさに周りの受験者達も集まり、アルス一行は更なる注目を集めた。

「ーーーーーア、アルスさん!落ち着いてください!」
「いや、もう遅いでしょ。私はあの雑魚の手当てに行くけど、メロは絶対にアルス様から離れないでよね。分かった?」
「は、はい!」

 リーナからそう指示を受け、メロがアルスの腕にべったりとくっ付くと、アルスは落ち着きを取り戻し、メロの頭をぐりぐりと撫で回した。
 落ち着きは取り戻したものの、正気を欠いたままのアルスに試験官より声が掛かった。

「なにをやっている貴様ら!」
「え・・・何って見てわかんない?可愛い子を可愛がってんのよ」
「そっちではない!!!今向こうに飛んで行った岩の事を言っているんだ!!!」
「岩?あぁ、あれね。ちょっと大きな虫がわぁーわぁー言ってたから潰しただけだよ。あーでも大丈夫、まだ死んでないと思うから、たぶん」
「き、貴様自分が何をしでかしたか分かっているのか!!?」
「・・・ん~、虫を殺し損ねた?」
「どうやら分かっていないようだな・・・!」

 試験官が腰から剣を抜こうと柄に手を置いた。
 その時僅かにアルスの右手が動いたのを見てメロが叫んだ。

「ーーーーーア、アルスさん!!!」
「ん?どうしたの?メロ」
「い、いえ・・・急にお名前をお呼びしたくなりまして・・・」
「そっかー。メロは可愛いなぁ本当に」

 その光景を見て神経を逆撫でされた試験官はついに刀身を数ミリ顕にさせた。だがそこで別の試験官と思しき男に手を掴まれ、鞘から剣が抜かれることは無かった。

「ーーーーーやめておけ」
「フォーシス騎士隊長!!?」
「これ以上他の受験者を不安にさせるような言動は慎め」
「も、申し訳ございません、、、」

 フォーシスはその試験官に下がるよう指示を出し、自分はアルスの元へと近付いた。

「部下が失礼をしたようで申し訳ない。先程あなたが吹き飛ばした男については以前から素行を問題視されていた受験者であったため、大方あなた方に迷惑を掛けたのだろうと予想は付く。それでも騎士を志す者として暴力で解決するという事は褒められたモノではない。しかし今回の件、かような受験者を放置していた我々にも責があることは明確。よってこちらとしてこれ以上この件に関し、あなた方を取り立てる事はしない。それで手打ちという事にしないか?」
「・・・よく分かんないけど、それでいいよ。会場壊しちゃってごめんね。騎士の人」

 アルスはメロを連れてDブロックへと歩き出した。

「ーーーーー『ごめん』か・・・あのような目で人を見ておきながら、よく言えたものだ」



 アルスがDブロックに到着するとリーナがアルスの元へと戻ってきた。

「試験が続行出来るようで良かったです。下手をすればあの場で退場させられる可能性だってありましたし、何より危険人物と見なされてしまえば、以降の受験資格だって永久に剥奪されるところでした。ですので本当に良かったです」
「リーナは心配し過ぎだよ。でも私の心配をしてくれてるんだよね。ありがと、リーナ」
「い、いえ・・・主人の事を第一に考えるのは従者として当然のことですから」

 目を伏せながら顔を赤くするリーナをアルスはぐいっと抱き寄せ、その唇に自身の唇を重ねた。

「ーーーーーんっ!!!!?」
「な、なななななななななーーーーー」

 突然の事にリーナの思考は追い付かず、アルスがそれを止める頃には目をぐるぐると回し、顔を更に赤くしていた。

「なななななななななななななな」

 それを目撃したメロはずっと壊れたラジオのようになっていた。

「ーーーーーリーナがそう思っていてくれる事は素直に嬉しいよ。でも続きは帰ってから、ね」
「は、はい・・・」
「ーーーーーチュ・・・チュウの続き・・・」

 メロは倒れた。
 そしてそれとは関係無しにフォルカトス騎士学校の実技試験は開始され、アルスは早々に名前が呼ばれ、Dブロックの壇上へと上がった。
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